Phototaxis
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結果から言うと、雷門イレブンは地区予選の決勝戦まで進んだ。
秋葉名戸にもメガネ君の活躍で勝ったのだ。
数日後、見事に寝坊した私は諦めてのんびり登校を決め込んだ。
最近疲れてるのかなぁ…
ぼんやりとした頭で考えてあくびを漏らす。
授業中の学校は凄く静かで、風の音と遠くの車の音とそれから「がこん」…。
車庫からふゆかい先生が出てきた。
私に気づかず校舎に戻っていく。
「…オイル抜いたな…」
写真とってやれば良かった。
そんなことしてる暇があったら少しでも授業を面白くしようと努力して欲しいところだ。
「…くそっ、俺はどうすればいいんだよ!」
つまらない授業に定評のあるセンセーに文句を言っていたら車庫の中から土門君の声が聞こえてきたものだから、そっと車庫に近づく。
こっそり中を覗けば、彼は車を蹴り飛ばして悪態をついている。
(土門、)
思わず踏み出したところで小枝を踏みつける。
「?!誰だ!」
土門の低い声。
怒ってる時の声はこんな声なんだと思いながら、車庫の中に入る。
彼は私だと分かると、一瞬驚いた表情を浮かべてそれから苦笑する。
「は…、また凪木さんか」
「うん。どうやら運が悪いみたいで。センセの悪行もばっちし。」
「……凪木さん、俺、どうしたらいい」
土門の声が震えている。
本当に雷門イレブンが好きだから、心から一緒にサッカーやりたいから、だからこんな顔をしているんだと思う。
それで私に言い訳もせず、こうして向き合っている。
彼は本当に良い子だ。
だから信頼できるし、助けてあげたい。
「…土門君はどうしたいの?」
「え?」
「…誰の命令とか、そういうの全部なくしてみてさ。そしたら土門君はどうしたいの?」
考え込む。
そして自分の心臓の辺りをぎゅうと握り締める。
「…サッカーしたい。あいつら、雷門イレブンとして、サッカーがしたい」
「そしたら、それで良いんじゃないかな」
「でも!」
あの方がそれを許すはずが無い、と小さくぼやく土門。
こうやって子供達を縛る大人たちは汚い。
もっと子供は笑ってやりたいことをやって、間違っていたら正す、それが私たち大人の務めじゃないか。
(影山のそう言うところが気に入らないんだけどね、でもそれがあの人だから否定するつもりにもなれないけど)
「土門君がやりたいようにやればいい。もしそれが悪いことだって言うやつがいたら私が怒りに行くから。」
「なんだよそれ…」
「二度と余計なことするなって、君がサッカーするのを邪魔するなって怒ってくるよ」
「…は、はは…簡単に言うよな…」
「私ファンだからさ。君達の。…雷門イレブンのね」
「……」
ね、だから土門君がやりたいようにやりなよ。そう笑いかけて、苦笑した土門を見る。
「それに雷門さんに伝えればあの人学校から追い出せると思うし」
「追い出す…って」
お前本当むちゃくちゃだよ、と言われたからオイル抜くよりは正攻法でしょと笑って見せた。
「それにあの先生の授業つまらなくて起きてたこと無いし」
「ああそれは同感」
とにかく作戦決行である。
頷きあった私たちの決意を表すが如くチャイムが鳴り響いた。