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図られた。
してやられた。豪炎寺に。
じっと睨みつければ豪炎寺はそ知らぬ風で視線を逸らした。んにゃろ
「え、えええ凪木さん?!」
「…やあ土門君」
「な、なんで凪木がここにいるんだよ!?」
「やあ染岡くん、…ちょっとそこに居る怪我人に騙されてね…」
どういうことだと問う雷門イレブンの視線も気にせず、対戦相手を見ている豪炎寺。私はため息をついてベンチの端っこに荷物を置いた。
そう、ここ秋葉名戸には観客席が無かった。
試合は生徒にネット配信しているらしい。だから要らないんだと。観客席。
で、じゃあどこでなら試合が見れるかと聞いたら、メイドさんにせっせと背中を押されて気づいたらベンチに押し込まれていた。
ずるい。これはずるいぞ豪炎寺。
「まあ凪木がここで応援してくれるなら心強いよな!」
円堂が笑う。ああ、ついにベンチに来てしまった。
皆がんばろーぜ!おおー!なんてやってるイレブンにため息をついてベンチに腰掛ける。
「うらむ」
「お前は尾刈斗中じゃないだろ」
「じゃあ足踏む」
「それは止めろ」
豪炎寺との応酬をききながら、凪木ちゃんが居るってなんか新鮮だね、と秋ちゃんが笑っている。
メイド服の秋ちゃんが。
うぁああああめっちゃ可愛い眼福!
その後ろから顔面蒼白な夏美ちゃんが出てきた。
耳ついてて可愛い!!
わたし!私はどうです?!とドアップな春奈ちゃんだって当然の如く可愛い。
あとで秋葉の人たちに焼きまわしてもらわねば。
マネジたちを眺めてニヤニヤしていたら、ぬっと光がさえぎられて笑顔のメイドさん達が目の前に
…あれ、なんか嫌な予感が
「貴女も雷門中の方ですか?」
「そ、そうですけど」
「この学校に入るマネージャーの方は皆着替えなくてはいけません」
「なんですかそれ…!」
ちょ、ちょ、ちょ、ちょっとまて!!
じりじりと間合いを詰めてくるメイドさん達。
あれでしょ貴方達ここの生徒さんなんでしょ!?
「わ、私マネージャーじゃないんですよ!!それに、ほ、ほらこれ!雷門中の制服のコスプレ!ね?これでいいでしょ!?」
「あっ貴女ずるいわよ!」
夏美ちゃんから抗議の声が飛んでくる。
そんな事言われても自分の身が大事なもので!
「いいえ、着ていただきます」
避ける間もなく死んだ。
「死にたい」
「試合前から暗い影を落とさないでくれないか」
「あら、凪木さんとても似合っていてよ」
「本当に似合ってます凪木先輩!」
「消えたい…」
「ほら、凪木ちゃん、似合ってるよ、すっごい可愛い」
「…泣きたい……!」
なんでこんな年してコスプレしなくてはいけないのか。
見た目はJCだが中身はBBAなんだぞ!
戻ってきたらもうみんなフィールド入りしてるし!
私のプライドがズッタズタになっていることなんて素知らぬ皆はポジションについている。そして、試合が始まった。
前半は秋葉名戸の防戦一方。
雷門はボールも奪えず体力だけを消費していく。
雷門は攻撃サッカーだからこういうテンポを崩してくる相手は苦手だろうなぁと眺める。
しかしベンチから見ると円堂君が遠いし、MFの子達は凄く近く見えるし、ううん。やっぱり皆が見え辛い。
絶対次は観客席から見ようと心に決めていたら、隣の怪我人・豪炎寺が声をかけてきた。
「どう思う?」
「きついね…1点さえ取れれば相手の攻撃は受け流せると思うんだけど、どうにも向こうのテンポに持っていかれてて攻めきれてないというか」
「お前やっぱり戦術詳しいんだな。……くくっ」
「ちょっと何笑ってんのよ」
「い、いや…」
誰のせいだと思ってるんだ。
こちとら足がスースーするわメンタルはどんどんダメージ受けていくわで辛いんだからな覚えてろ!
笑いをこらえる豪炎寺の足を本当に踏んでやろうかと画作していると前半終了のホイッスルが鳴り響く。
「おかえりー」
「ああ…ってうわぁ?!」
戻ってきた風丸に声をかけたらものすごい驚かれてしまった。
すいませんねベンチでこんな奇妙な生き物が待ち構えていて…。
「す、すまない凪木さん、まさか凪木さんまでそんな格好してると思わなくって」
「私もまさかこんな格好するとは思わなくて。ごめんね」
「いや、そんなことないよ。似合ってるよ、すごく」
イケメンスマイルが突き刺さる。
ぐ、止めてください恥ずかしいです、メンタル大ダメージです風丸さん
ベンチに戻ってきたほかの面々も一瞬ギョッとして足を止めている。
もう本当に消えたい。
居所に困って視線を逸らせば、ふと隣に半田のドリンクが置いてあることに気づいた。
当の本人は何をしているのかと顔を上げて見れば、訝しげに向こうを見ていて、ドリンクのことなんて頭になさそうだった。
なにやってるんだ、ちゃんと水分取らないと。
「はい、半田」
「ん?おーありがと…ってぎゃあ!!」
「ぎ、ぎゃあって…」
さすがに今の凄い傷ついた。
悲鳴を上げて飛びのく半田。私の手の中のドリンクが空しく宙で揺れている。
…なんていうか
「…ごめん…」
「え?!や、今のは条件反射っていうか!」
「半田先輩今のはさすがに酷いです」
小林くんがぼそりとこぼす。
それに更に慌てる半田に、ここにドリンク置いておくねと声をかけておとなしくベンチに腰掛ける。
あああもう本当泣きそう豪炎寺ゆるさん…
じわじわと涙腺がゆるんでくるのを感じながら泣いてたまるかとこらえる。
あああもう恥ずかしすぎて穴に埋めてほしい
「…ほら、コレ着てろよ」
「ぶっ」
頭に何かかけられて視界が悪くなる。
それをとると雷門ジャージだった。
顔を上げれば顔を赤くして照れくさそうな染岡が居る。
「…借りていいの?」
「おう、そんなんでも無ェよりマシだろ」
「あ、ありがとう…!」
なんだ染岡くんマジ天使じゃないか
吹雪君、今なら君の気持ちが分かる。染岡君まじリスペクト!!!
染岡からありがたくジャージを借りる。
うむ、さすがに男子サイズはでか…
「お、ぉおおぉお…ッッ?!彼ジャー…ですか!?」
…ちょっとメガネくん五月蝿い。
「リア充め!!!」
隣のベンチも五月蝿い黙れ。