Phototaxis
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「…まぁこんなものか」
学年掲示板にでっかく張り出された夏休み前の試験結果。
中学のテストはだいたいこの辺りから実力差が明確になってくる。
私は中の上、もしくは上の下。
わざと間違えるって言うのもなかなか面倒なものだと頭を抱えながらも受けてよかった。
十年ぶりの中学生活ができるか不安だったが、以外にも、入ってしまえばあっという間だった。
元気があふれまくっている中学生達の中にチラホラと見慣れた顔ぶれがあったりもしたけれど、ほんとにちゃんとかかわることもなかった。(……まあさすがにクラス全体で!とか班で、とか言われると多少はあるけど)
そんなこんなで懐かしい中間テストを受けたわけだけど。
あの独特の緊張感はこの年になっても(いや、体は中学生なんだけど)緊張するもんだなとおもっていた。
そうしてようやく発表された結果……はまさかの廊下に張り出し式だった。
(番号だけじゃなくて名前で張り出すんだ、ここ…。)
個人情報の漏洩ですよ雷門さん。
上位になったらこれは目立つわー…
なーんて人気のなくなった廊下で成績順位を眺める。
そして何気なしに視線を落としていく。
なんか他クラスだし私あまり教室から出ないから気にしなかったけどちょいちょい見慣れた名前があった。
私の少し上に風丸、もうちょっと下にマックス。
半分より少し上に秋ちゃん。
ぶ、半田ちょうど真ん中なんだ。……可愛い。
そう思ったけど顔はできるだけ引き締める。
もしかしたら少しニヤけていたかも知れないけど、今は放課後、みんな部活にいそしんで…
「あ、凪木」
「(げ)…染岡くん、部活は?」
人相悪く・ガラ悪く。廊下の向こうから同じ斑の染岡が歩いてくる。
一年生夏休み前。彼らとはここまで「同じ班の」レベルでのかかわりで済んでいる。
特に何も頑張らなくても、普通の生活を送ればいいのだ。そうすれば問題ないし、私も疲れない。
そして今も普通に返事する。
「雨降ってきたから帰るんだよ」
「え、うそ。降ってきちゃった?」
「ああ。まだそこまでじゃねえけどな」
窓の外を見れば地面の色が変わってきている。そして避難する人たち。
ゲリラ豪雨である。赴きよく言えば夕立。
どんよりと重たい雲がみえて、一気に冷たい空気が木々を揺らしているようにみえる。
「あーあ、折りたたみ置いてきちゃったや」
すこし待てば止むだろう、それまで図書室で本でも読んでようかな。
時間を持て余している今だからこそ本を読んでおきたいなと思うわけで。
どこまで読んだかな、とぼんやり思考を図書室へ移したところで声が飛んでくる。
「傘使うか?」
「へ?」
染岡から提案。染岡を振り返ると、まっくろの折りたたみ傘を手にしている。
え、なに?
「折り畳み貸してやるよ、凪木もう帰るんだろ?」
「まぁそうだけど…いいの?」
「ああ、俺はこっちがあるからな」
そして同じく黒い本傘をかかげる。ちゃんとお母さんに持たされたんだろうか?
なんだかおっさん臭いが、妙に染岡に似合っている。
ほらよと投げ渡されたそれを受け取った。
「ありがと、明日返すね」
「ん。」
これくらいじゃ関わり合いに入らない、はず。
少しだけ悩んで、私はそれをありがたく借りる事にした。
そして何の気なしに成績順位に視線を戻す、染岡はやっぱり下のほうにいた。
円堂は更に下のほうに名前があった。