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メアドを教えた覚えも無いのにマックスから「明日御影専農と試合なんだ~応援よろしく(=^^=)」というメールが届いた昨晩。
そうか次は御影だったか。あーだから最近見かけなかったんだ。
もっと早く教えてくれれば修練所に差し入れとか持っていったのに。
マックスも私に予定があるとか思わなかったんだろうか。前日の夜に予定入れるなんて失礼極まりないだろう。
「とはいえ予定が無いのも本当なんだけどさ…」
借りてきた本も読み終わってしまったし、丁度良かった。
マックスに「行くけど、次はもっと早く連絡入れてよね。あと勝手にメアド交換しないでください」と返信をして私はベットに潜り込んだ。
* * *
「見事にアウェーだなぁ…」
周囲には御影の生徒しかいない。
農業中学にしてはやたらメカだらけな設備を通ってなんとか客席まで来たものの、これは最高に居心地が悪い。
雷門イレブンがベンチでふゆかいセンセーに何か言われてるのを眺めつつ視線を客席の中に向ける。
「ん」
「…お前は」
鬼道と目が合った。
いや、なんでこんなタイミングよくここに居るわけですかね…
目を逸らす。鬼道が居ようと関係ない。
御影戦は最高に熱い試合なんだから。
笛が鳴る。
皆ぐんと動きが良くなっている。けれど御影は動かない。
「ファイアートルネード!!」
威力の上がったファイトル、けれど弾かれる。
「まだだ!豪炎寺!ドラゴントルネード!!」
染岡が追撃する、杉森のシュートポケットでなんとか弾く。
「豪炎寺さん!イナズマ落とし!」
駆け込んできた壁山君は以前のような弱さはどこにも無い。
この数週間でみんな大きく成長した。
顔つきもぜんぜん違う。
威力の上がったシュートをなんとか弾いた杉森。ボールは御影のものに。
下鶴が駆ける、早い。
そしてそれをブロックする風丸はもっと速い。
(皆…別人みたい)
それだけ修練所が厳しいということなのだけれど。
宍戸に渡ったボールがブロックされ、パスとフェイントによって御影が先制する。
一点入るやフォーメーションを大きく変えて守備に徹する御影に観客席は静まり返ってしまった。
何人かつまらないといって席を立つ。
私の隣の人もこれ以上見ててもつまらないとぼやいて立ち上がった。
そして変わりに何故か鬼道が座った。
「…」
「……」
ん? な ん で 座 っ た ?
土門がバラしたのだろうか、私のこと。
いや、まさか。
試合に集中したいが、隣が気になって仕方が無い。
鬼道はなにか用があるわけでもなさそうでただ腕を組んでフィールドを眺めているだけだ。
だからこそ余計に意味が分からない。
もしかして私のこと完全に忘れてるのかもしれない。
あ、その可能性高そう。
だからたまたま席が空いてたここに座ったんじゃない?
うん。そうだ、土門がばらしていない限りそのほうが可能性が高そうだ。
前半が終了した。
1-0で雷門は負けたままシュートも打てて居ない。
このままじゃ後半も何も変わらない。
「…お前はこの試合どう思う」
「…………
………え、私?」
「当たり前だお前以外にいるか」
「いや…」
突然鬼道が話しかけてきた。
私のことを覚えているのかそれともたまたま隣が雷門の生徒だったからか。
しかもこんなド素人に何を聞いているんだろう、戦術的なものだったら鬼道のほうが詳しいに決まっている。
何が聞きたいのかと思ってじっと鬼道の顔を見ると鬼道はフィールドを見たまま口を開く。
「この試合、楽しいか?」
「ぜんぜん」
「だろうな」
「……」
「………」
会話終了。
(…え、ちょっと本当なんなのこの子…。)
これは私から何か話しかけたほうがいいんだろうか。
でも鬼道に何を話せばいいんだろう、というか世間一般的な会話通じる?
もやもや悩んでいる間に後半戦が始まってしまった。
「だぁぁあああああああ!!!」
円堂がゴール前から雄たけびと共に走り出す。
動揺する御影たちの合間を抜いてシュートまで飛び込んでくる。
「えんどぉ!!なにしてんだ早く戻れ!!」
染岡の怒った声がここまで響いてくる。
チラリと視線を鬼道に向けるとすごい驚いた顔をしていた。
私は思わずふふふ、声を漏らす。
「…なにがおかしい」
「やっぱり雷門イレブン好きだなぁて思ったから」
「なんだそれは」
「さぁね」
豪炎寺と円堂のシュートが御影のゴールに突き刺さる。
そして立て続けにドラゴントルネードが決まって1-2、雷門が抜いた。
打って変わって攻撃フォーメーションになった御影。フィールドの上を、真剣だけどすごく楽しそうに駆け回る選手達。
「いけー!みんな!!御影!雷門!がんばれ!!」
声を張り上げる。
豪炎寺が御影のゴール前に駆け込む、ファイトルが、飛び上がった下鶴と激突する。
「う、ぉおおおおおおお!!」
杉森がボールを蹴って雷門に迫る。
洗脳の無くなった、一人の選手として、勝つために駆け込む。
そして試合終了のホイッスル。雷門の勝利だった。
「やはりアイツは馬鹿だ」
「いいでしょ、うちのサッカー馬鹿」
「…さあな」