Phototaxis
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「姉ちゃん、なんかやっぱ虎丸が変だ」
「…あぁ…」
「なんか知ってるだろ」
「まぁ知ってる」
「教えてくんね?俺あんな虎丸見てたくない」
夕飯を食べ終えてまったりテレビを見ていたら弟が声をかけてきた。
なんかへん、と言われても普段の彼を知らないうえに虎丸くんの変調なんてもっと分からない。
でもまぁ多分本編に関わってきそうなところで言えばアレだろうなとは思う。
生返事ばかり返す私の正面に弟が立つ。
「じゃま、見えない」
「姉ちゃん、教えろって」
「…そもそも私の知ってる変がそれに当てはまるのかもわかんないんだけど」
「…サッカーやってても楽しくなさそうだって俺は思った」
「……まぁ虎丸君は上手すぎるってこと、じゃないかな」
「は?」
間違いなく本編で解決される事案のひとつ。
上手すぎる虎丸君のサッカー。
弟もサッカー上手ならいいんだけど、生憎彼も私同様見る専だった。
私たちの会話を聞いていた父親が顔をテレビに向けたままぼやく。
「どんなに上手くてもパスが通らなきゃシュートできないだろ、サッカーってのはそういうスポーツだからなぁ」
「そゆこと。さすが見る専代表。…分かりやすく言うとね、ゲームで強くなりすぎるとつまんないでしょ」
「…虎丸が強すぎて浮いてるってこと?」
「うん、…でもそれは本編で解決されることなんだなぁ」
「…じゃあ俺にはなんもできないってことかよ」
「そんなこと言ってないでしょーが」
「でも、」
今の姉ちゃんの言い方そう聞こえた。
んなコト言われても。
すると今度は皿洗いをしていた母親の声が飛んでくる。
「あんたいっつもそうでしょ」
「悪かったね」
「ほら、そういうとこも。冷たく聞こえるの気をつけなさいって何度も言ってるでしょ」
すいませんね、言い方キツくて
弟が真剣に悩んでいる。ここまで真剣な弟久しぶりに見た。
どうすればいいんだろう、私もよく分からない。
「なぁ、それって、本編にけっこう重要な出来事?」
「…えー…?どっちかといえば家庭事情のほうが関わってくるかも」
「じゃあ、俺が解決しても、もんだいない?」
「え?」
「サッカー、やろうかな」
「は??」
何を言ってるんだ。
父親も私もじっと弟を見つめる。
「上手くなれるなんて思ってないけど」
虎丸とサッカーできたら解決策が見つかるかも、しれない。
「おかあさんは賛成よ」
手を拭きながら母親がリビングに来た。
「運動する良い機会じゃない、アナタもはじめたら?」
「やだ。見てるだけで十分」
「あらそうなの?たまには運動しないと、ほら一応いまあなた達子供なんだから。」
母親はのんきにソファに座る。
父親が真剣な弟の顔を見てそして笑う。
「誰かの為にやるっていうなら止めないけど、どうせやるなら強くなるくらい言え」
「ていうか、あの子世界レベルだよ、そんな子とどうやって一緒に…」
一緒にサッカーがやれると思うの、と言いかけた私に弟の視線が突き刺さる。
そして、弟は言った。
「うだうだ考える前に、やってみなきゃ分らないだろ。とにかくさ、やってみるよ」
「………」
「まあダメだったらその時考えるよ」
本当に私と弟は似てない。
真っ直ぐに向けられた視線をそらして、私は逃げるようにテレビに視線を向けた。