Phototaxis
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帰り道の河川敷で、一心不乱にボールを枠にぶつけている染岡を見つけた。
なるほど、あれは確かに暴れ馬かもしれない。
しばらく様子を観察していたが、休憩する様子がなさそうなので、河川敷を下った。
「染岡」
「あ!?…って凪木か」
「うん。…なんか怒ってない?」
「怒ってねぇよ」
「嘘だぁ」
「怒ってねえっつーの!」
「ほら、怒ってるじゃん。…なにかあったの?…豪炎寺のこと?」
とりあえずどうしたらいいか悩んだのでマックスに習っていきなり核心を突いてみた。
染岡は思いっきり動揺していて、顔に「なんで分かったんだよ」と書いてる。
とてもわかりやすい。
「…あいつら、豪炎寺に期待してやがって…雷門のストライカーは俺だって言うのによ」
「ふんふん」
「…次の試合が決まったんだけどな、…尾刈斗中っていうとこなんだけどよ、そこに豪炎寺が来るかもわかんねぇのに期待してて」
「ふんふん」
「サッカーってのは全員でプレーするんだよ、なのに」
「…」
「だから俺も豪炎寺みてぇなすげぇ必殺技覚えてあいつらの目を覚ましてやろうって思ってよ」
「…うん」
「なのに、ぜんぜん上手くいかねぇんだ…!」
「……」
「くそっ、なんでできねぇんだよ…!」
「染岡はさ」
「あ?!」
じぃと無言で染岡を見つめる。
一瞬たじろいだが何も言わない私に業を煮やして「だからなんだよ」と語気粗く問う。
私は必殺技のアドバイスなんて全く出来ない(どうやって乗り越えるかは知ってても、だ)
だから今日一日授業の時間を使って一生懸命考えた。
何を言ってあげればいいんだろうって。
で、思い出したのは、言ってあげるのではなく、自分が言って欲しいことを言うだけって言う、とある台詞。
私がもし染岡なら、言って欲しいのはなんだろうか。
「…ずっとサッカーしてきたんだよね」
「?…おう」
「今のサッカーはその染岡が作ったスタイルなんだよね」
「おう…」
「んじゃぁ、染岡らしいサッカーすればいいんじゃないかな、雷門のストライカー染岡らしいやつ」
「……」
「わたし染岡のサッカー殆ど見たこと無いけど、でも染岡のプレー好きだよ、染岡らしくて。だから、そのままでいいんじゃないかな」
「…適当なアドバイスだな…」
「経験者じゃないからね、このくらいしか言えない」
「はは、それもそうか」
ぐしゃりと染岡の手が頭に伸びた。
さんきゅ、笑う。
「そうだよな、俺らしいサッカーすりゃいいんだよな」
「…きっとそうだよ。」
「っしゃ、もうちょっとやって帰るか」
「…見てるよ。…ううん、違う」
「?」
「見てたいから見ててもいい?」
「!おう、」
にんまりといつもの笑顔を浮かべて染岡は再びゴールに向き直る。私はベンチに腰掛けて、ぐしゃぐしゃにされた髪の毛を整えた。
あー恥ずかしかった。
私は染岡の彼女かよぅ、なんてぼやいて、染岡のシュート練習を眺めた。
数日後、教室でうとうとしていた私の手を取り「完成したぜ!!」と笑顔の染岡が見れるけど、それはもう少し先の話だ。