Phototaxis
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「凪木ちゃん、これ」
「秋ちゃんありがとう、それから昨日はゴメンね?」
「ううん平気だよ、それより用事は大丈夫だった?」
「うん、間に合った。」
「そっかよかった!私たちの勉強で用事に遅刻しちゃってたらどうしようって思ったんだ」
「…ごめんね」
「気にしてないってば、意外と凪木ちゃんって気にしいだね」
「秋ちゃんも心配性だね」
「だって近くに居るのが円堂くんだもん」
「…そっか」
マフラーから秋ちゃんちの良い臭いがする。
女の子だなぁ、うちなんて駄菓子の匂い充満してるのに。
にこにこ笑う秋ちゃんは本当に女神様だ。素直に素敵だと思う。
私はといえば、結局いい嘘なんて思いつかなかった。
「そうだ、今度一緒に買い物行こうよ、駅前にケーキ屋さんできたんだって」
「へー知らなかった、うん、今度行こうね」
「うん!楽しみだなぁ」
私はこれ以上関わるべきじゃないと思う。
昨日円堂が何を言おうとしていたのかは分からない。
いつもの「サッカーやろうぜ」か「一緒にサッカーやらないか」だろうか、はたまた別の言葉か。
それを聞いてしまったらわたしはどうなってしまうのだろうか。
彼らと青春、するんだろうか。
円堂守にはそれだけの力があるって思っているから、だからやっぱり怖いなと思う。
予鈴がなって秋ちゃんは自分のクラスに戻っていく。
私も自分の席に戻ろうとして染岡からの視線を受けた。
「凪木、教科書」
「え?あ、そうだっけ、」
「おう、さんきゅ、助かった」
そうして小さなチョコレートの包み紙と一緒に教科書が返って来た。
え、なんでチョコレート。
ココアの報酬は受け取ってるのに。
そんな顔をしていたのか、染岡は恥ずかしそうに目を逸らして頬を掻いた。
「なんつーか、昨日忙しかったのに無理に誘っちまったからな、その侘びだよ」
「……」
「な、なんだよ」
「染岡君って紳士だよね…」
「なっ、要らないなら返せ!」
「やだ。もらう、食べる。ありがとう」
彼は何か言おうとして口を開いて閉じると、それから肩に手を置いて席に戻っていった。
そんなに離れてないから耳まで真っ赤なのは私から見ても明らかだった。
ああ、本当に彼らはいい子だ。
どこまで、線を引くべきか。
どこまで関わり、どこからは踏み込まないようにするか。
今日一日そんな事を考えて過ごしていくことになりそうだった。