Phototaxis
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
放課後の廊下、エアコンの暖気から逃れたコンクリート空間は底冷えするほど冷えていて、私は思わず身震いする。
こんなに冷えているとあったかいおでんが食べたくなる。
廊下だけど吐いた息が白くなるんじゃないか、なんて思って1人ハァ、と息を吐き出したけど、流石にそんなわけはなくて少しがっかりした。
「……よくやるなぁ」
窓の外を見れば円堂たちが雪合戦をしているのが見える。
積もった雪でいつもと少し違う景色、だけどそこではしゃいでいる彼らはいつもと同じでなんだか笑ってしまう。
あんな青春が送れたら楽しいだろうなぁ。
そう思って、私の本当の世界での私の、冴えない青春を思い出す。
特別なことの起きない放課後
モテる男子と持て囃す女子
図書室で偶然手が触れ合う日……
文化祭にメイド喫茶はないし、露骨な不良も喧嘩もないし、生徒に親身になってくれる先生も、胸踊る冒険も、いつもよりオシャレした夏祭りも、そんなものは漫画やアニメの中だけだと現実に納得してしまったのはいつだったろう。
努力しても現実は上手くいかないし、頑張っても見てもらえないこともたくさんあって、大人になってからでも子供みたいなことで怒る人はいるし、求められる社会人のおしゃれをしたところでただの自己満足だし、家に帰っても出かけた時の散らかったワンルームが広がっているだけ。
そんなどうしようもない当たり前と現実に期待をやめたのはいつだろう。
そんな日々を。
惰性で生きているだけの私の人生を。
「…………私は」
この世界がアニメの世界だろうと。
私の時間が中学生まで巻き戻っていたとしても変わることなんてないだろう。
これが私で、私の人生だ。
「……青春、おでん〜…」
早く帰ろう。
そして早く寝て、今日という日をセーブして、終わるのだ。