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01 潮凪の春
……報告内容。
1.やっぱりここはイナズマイレブンの世界だった。
2.やっぱり私は中学一年生になっている。
3.同じクラスに染岡とマックスがいる。しかも染岡は班が一緒だった。
4.未成年になったのでお酒が飲めない。
朝の2時間にもわたる大規模家族会議で出た議題の結果をまとめる。
独り暮らしの部屋そのままの、だけどドアを開けた先には見慣れた実家があって、ポカンとする私と弟が顔を見合わせ、それからなぜかいつも通りの両親たちと、それぞれ確認しなきゃいけないことを書き出した議事録。
私は家族の中で唯一この世界に見覚えがあるわけだし、他にも確認しないといけないことは山ほどある。
(とりあえず日常的に生活してても問題おきそうな世界じゃなくて良かった)
見上げた空にはどこから飛んできたのだろう桜の花びらが舞っている。
近くに桜の木があるのかも知れない。買い物袋を提げながら何十年ぶりかのスカートを揺らす。学生服に袖を通すことに抵抗が凄かったけれど、店先のガラスに反射する姿がすっかり中学生で、帰るころにはすっかり慣れてしまった。
母親は近所の人たちとそれとなく会話をして情報を得るとか言っていたけど、あののんびり屋の母親に出来るのだろうか。
父親は会社で情報収集。仕事内容とか変わっていないと良いとぼやいて出勤したが、そもそも無事会社にはつけたのだろうか。
弟は某ジブリの映画のように友人が迎えに来たけれど、ボロを出さずに生活できたんだろうか。
(まあ…でも、雷門中に私だって迷うことなく行けてしまったわけだし…みんな案外何とかなってるのかも。)
額にべちりと桜の花びらがくっついて顔を上げた。
見上げた先に鉄塔が見える。
この世界の主人公、円堂守は今日もあそこにいるんだろうか。
(せっかくだから一回昇ってみたいな、…もちろん円堂は避けて。)
この世界は前世から(と言っていいのか分からないけど)大好きだ。
関わることで世界が大きく変化してしまうかもしれない。
それはやっぱり避けたいし、私は別にサッカーがやりたいわけじゃない。
熱い青春をおくれるような年齢はとっくに過ぎてしまったし、そんな半端な自分が彼らの邪魔をするわけにはいかない。
だから、遠巻きに見ていたいなと思うわけで。
…この世界にどういうわけだか家族ぐるみで来てしまったが、来る前同様に平凡で平和な毎日を教授して生きたいところである。
とりあえず、お金もあって住居もある。家族も皆いるし、生活していけそうだった。
(しいていうならお酒が飲めないのが辛い…)
年齢の割りに老けきった表情を浮かべた、ぴかぴか一年の女子生徒はため息混じりに商店街を後にした。
凪木、稲妻町1日目の出来事である。