私の神様(仮)
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「は」
『いい?子供っていうのは鳥みたいなものなの、優しくしてくれたりお菓子くれる人には簡単についてっちゃうんだから。貴方もそうなのよ、』
「うう…母さん酷い教育しないでよ…ゔゔ、……ハッ!!」
ピーチクパーチク雛鳥に餌を与えながらそう語る母親、という変な夢を見て目が覚めた。
なんだ今の夢……と思いつつも私の母親は歯に衣をきせな…げふげふ、ちょっと独自性の強い教育をする人だから、もしかしたら本当に言われたことがあるのかもしれない。
雨に濡れすぎて走馬灯でも見てたのかも、と思い至って、それから謎に落下したことを思い出す。
「ッハー!?なにここ?!」
よくよく見れば、私はいつの間にやら純和風な古民家っぽい所で寝かされているではないか!
囲炉裏にかまど、屋根は藁葺き屋根っぽいし、見渡す限りガラスやフローリング、現代文明っぽいものが見当たらない。
あっ、畳の匂い良いにおーい⭐︎
「ってそんな匂いを嗅いでる場合じゃなくって」
入口と思しき場所にはスダレが揺れていて、そこから差し込む光でどうやら今が夜時間らしい、ということはわかった。とっさにポケットに入れていたスマホに手を伸ばすが、何もない。
慌てて周囲を見回すとなんだか心持湿ったままの鞄が部屋の隅に置いてあって、私は四つん這いのままカサカサと駆け寄った。
「よかったスマホあった!!」
んーーマイラバースマートフォンちゃんチュッチュッ!最近そろそろ寿命が見えて来ててたまーに突然電源が落ちちゃうスマホちゃん!今は何時か教えてくれよ!
そう思ってディスプレイをみると…時間がなんと表示されてない!こんなハイフンだけが並ぶことってあり得るのか?!
そしてさらに不幸なことに電波のところに漢字が見える気がする。
「け、圏外て……この近代文明、2020年代に?!そんなことありえます?!」
ぶんぶんとスマホを振ってみたり一回フライトモードにして再接続してみたりと知ってる限りあの手この手を試してみたが、マイラバーことスマホちゃんは頑なに外界と繋がってくれなかった。
「おおぉん…ハッ、もしかして屋内だから?!」
兎にも角にもスマホが生き返ってくれないことには今の時間も場所も分りゃしない。それに今日は楽しみにしてたアニメの放送日だ。最速視聴してオタク仲間と感想共有せねばならない。
思い至って私は部屋から恐る恐る顔を出す。
まず、最初に目に入ったのは桜だった。月に照らされているのか、それぞれが光を放っているかのように美しく散っている。そして見える民家は大体藁葺き屋根だし、街灯らしき影は一つもない。
そして何より大通りの先にある巨大な建造物。
あれは城だ。
「は、はは……」
フラフラと通りに出る。
地面はもちろん舗装されてないし、目を凝らしても電柱やマンションも、ビルもみえない。
私が今の今までいた建物を見る。
他の建物と比べても多少真新しく見えるが、どうみても現代の建築ではない。どっちかっていうと歴史博物館的ななにがしで見るような家だ。
家の周りを小さな柵が囲っていて小さな庭みたいになっている。
その庭先にも桜が植えられていた。
こ、これはさ。あきらかに、さ!!
「は、はは、ハーッハッハッハ!!これってトリップじゃん!!!?」
どわっはっは、よくこれ夢小説で見るやつじゃない?!だってこの現代文明の利器であるスマホが使えないって言うのが何よりの証拠では?!
やっほぉぉぉおおおい!!!
しかもしかもこれもしかしなくても私が大好きな戦国BASARAの世界なのでは?!!
(だってあのお城!桜!!めちゃくちゃ見覚えある!!!!!!!!)
もしかしなくても、ここは上田城のマップ(のすごい外側)なのではないか?!
やっっっっっったーー!!!!!!!
ありがとう神様!!ずぶ濡れになった私を憐んでくれたのね神様!!んもーーいっぱいKISSしちゃう!チュッチュッ
どこにいるかわからんのでとりあえず全方位に投げキッスと感謝の言葉を送る。
これが現実、トリップ……ってこもはもしかしてナマでアツアツカップルフォーリンラブが見れちゃうのでは?!
例えばサナサスとか!!
『ちょっと、旦那ってば……もー悪ふざけがすぎるって』
『冗談などではない!某は……いや…俺はずっとお前のことが……!』
『だ、旦那……』
例えばマサコジュとか!!!
『おいおい小十郎、テメェのmasterは誰だ?』
『だ、て……政宗様…にございます…』
『ハッ、よくわかってるじゃねえか!なら、次にすることもわかるだろ…?』
くぅぅぅぅう味の違う主従カプまじクソ最高of最高です…!!おっと鼻血が。
私はふらつく足取りで庭の桜へ向かう。
なんとか脳内で暴れる主従カプ(意味深)を押さえつけようとしたところで、不意に木の根元に人が立っていることに気づいた。
その人物は、私の奇行を全て見ていましたと言わんばかりに冷たい視線を投げて来ている。
あっいやあの通報はやめてくだちぃ…!!
「ふ、不審者ではないです」
「嘘でしょ」
「う、嘘じゃないよ!ただちょっと妄想が爆発してどうしようもなくなってしまっただけで私はただの健全な腐女子!!ナンモアヤシクナーイ!」
「こんな時間に1人で暴れてるのに怪しくないって流石にちょっと頭が心配だよ」
「えっひっっっど?!私そんなに暴れてた?!っていうか今何時かわかる?!」
「今は…亥の刻かな」
「い?」
「亥」
「??」
「あっ、ほんとに危ない姉ちゃんだ」
「いやーーーん!!!お願い通報だけはしないでぇぇえ」
さっきからキレッキレのツッコミを入れて来ているのは事もあろうに(背が)私の半分ほどもあるかないかレベルの少年だった。
私を冷めた半眼で見ていなければきっと真っ黒なおめめはくるんくるんで可愛いだろう。
月明かりが明るいおかげで彼の着物が黄色なのもわかる。そしてもちろん、彼の視線がとんでもなく冷たいのもわかる。
「っていうか、それを言ったら少年だってこんな時間に外にいるジャマイカ!」
「ぅ」
「もしかして家出?」
「ち、ちが……その……。オトンもオカンも…薬草を採りに行って……戦に巻き込まれて、それで」
「……」
「おいらだけ…なんとか逃げれたんだけど、そしたら……家、借金の代わりにって…持っていかれちゃってて……っ」
「oh…」
なんたることだ、気軽に聞いて良い話題じゃなかった。
彼はつまるところ行き場を無くして彷徨っていたところだったんだ。どれだけ不安に感じたのだろうか。どれだけ、孤独だったのだろうか。
言葉を詰まらせて涙をグッと堪えた少年はそのまま俯いてしまった。
静かな空間に、少年が鼻を啜る音が響く。
「ええと、君の名前は?」
「……与一」
「与一君、ね。私はシズカっていうの。あのさ、君さえ良ければなんだけど、今日は一緒に寝ない?」
「えっ」
パッと顔を上げると同時に堪えきれなかった分の
涙が舞った。
私は与一君に向かって手を差し出す。
なんで私がこんな所で寝てたのかとか、そもそもこの家誰のやねん、とか、あとまぁトリップのこととか?更に言えば明日からの生活どうしよう案件なのだが、こんな夜遅くにどうこうしたってどうしようもない。
それにきっとこの家に放置されてたってことは「自由に生きるのじゃ」的なお告げかもしれないし!
与一くんは私の手と私の顔を交互に見比べて、ほんとに、いいの?と聞いてくる。
その質問には「当たり前じゃん、人は助け合いって言うでしょ」と返しておく。一応常識もある腐女子なのでね!こんな時間にショタ…おおうふ、いたいけな未成年を1人にするわけにもいかないしね!
「えと…じゃあ、おねがい……します」
「オッケーー!!!まかせて!!」
戸惑う与一くんの手を無理矢理とって、私は家に向かう。掴んだ手のひらはとっても小さくて柔らかい。まるで焼きたてのパンみたいで思わず笑みが溢れた。
「姉ちゃん…」
「ん?」
「……あり、がと」
「フヒッ」
うわぁぁぁぁぁぁぁギャン可愛いいいいいいいい!!おかしい私にはショタコンの気はないはずなのに!!!!
結局布団は1組しかなかったのでぎゅうぎゅうになって眠りました。
ううーーん与一くんからめちゃくちゃ良い匂いがする……。