私の神様(仮)
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「 後日談4 」
山々が赤く連なっている。
山頂より吹き下ろす風は地面を凍らせるように冷たい。
凍えるような風を受け、葉が音を鳴らして落葉する。
全く人が分け入らないのだと一目でわかるほど、木の根は好き放題伸びて、芳醇な土の匂いを立ち上らせている。
そんな山々の奥…一際勾配が強い場所に、ひとつ、石があった。
小さく盛られた土の上にちょんと乗せられたそれは、気を向けなければ蹴り飛ばしてしまいそうだ。
盛り土もまるで、野うさぎが掘った土を避けただけのようにあるばかりで、その輪郭は酷く曖昧だ。
深く亀裂の入った渓谷を見下ろすように置かれたその石の前に――不意に影が落ちた。
「――」
少し迷ってしまった。
かろうじて石があるから見つけることができたが、それももう厚い落葉の下に埋もれて、形はほぼ残っていない。
きっとこの石もいずれ苔むして、腐葉土を被り、雨に削れて、ただの路傍の石へと戻っていくだろう。
獣が掘り返してしまって、とっくにこの下には何もないかもしれない。その時に石の場所が動いてしまっていてここではないかもしれない。
それを確かめる術は、もうどこにもなかった。
渓谷の遥か下の方で滝が流れる音がする。
岸壁にぽっかりと開いた洞は、光を飲み込むように薄暗い。
あの洞に降りることができそうな細い道も、崩れて形はすでにない。
影は振り返ってその洞を見る。
ォオオオ…
風が悪魔のような唸り声をあげて、渓谷に響き渡る。
湿り気のある強い風が崖を噴き上がってきて頬を打った。
フ、と影が息をした。
がさり
音が鳴る。
少し奥の森の中で、猿が葉音を立てた。
その瞬間にもう影はない。
あとには風の唸り声ばかりが残されていた。