私の神様(仮)
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「ほ」
「よーーーし、やっと終わりそう!与一、そっちは?」
「おいらももうすぐ終わる!」
「ここのごぼうエリアは小十郎と名付けよう…そっちのトマトエリアは幸村だ…ふふふふ」
「姉ちゃん怖い!」
トリップして最初の昼、日輪は美しいくらいに天と、植えたばかりの野菜の苗たちを光らせている。
フハハハこの日輪はアニキのビーチクに捧げ奉ろう!
レーンごとに区切ってもらってきた種や苗を植え、与一と一緒に井戸から水を汲み上げていると、朗らかな笑い声がしてきた。
「あらあら!早速植えてるの?」
「あっ隣のおばさん!」
腕に何やらごちゃりと抱えたおばさんがこちらをみてほほほ、と笑みを浮かべている。
そう!何を隠そうこの超天使スーパーかぁちゃんなおばさんと尻に敷かれてン十年の旦那さんがこの簡易家庭菜園キットと知恵を貸してくださったのである!
マジで神。おばさんには今後1週間はいいことしか起こらないでほしいね!!
「丈夫だったらねぇウチの人も貸すんだけど、ほらあの足だから。」
「いえ、ほんとこれをいただけただけでもありがたいので…」
「あっ、そうだシズカちゃん、これ。私のお古なんだけどまだ使えると思うんだ」
おばさんはそう言って両腕で抱えていた塊をこちらに差し出してくる。
井戸から桶を引き上げ切って慌てて受け取ると、それは金物だ。お釜や深めの鍋、まな板のようなものやしゃもじにお椀、その他もろもろ。どうやらわざわざ引っ張り出してきてくれたらしく、おばさんの額には汗が浮いている。
「あ、これは包丁だから気をつけてね」
「えっこん、こんなに?!」
「全部使い古しで悪いけどね!」
「い、いえ、あのめちゃくちゃ助かります…!!」
ええええおばさんマジで神通り越してメシアなのでは?!
もうこれから1ヶ月いいことばかり起こってくれ!
隣で与一がぺこりと頭を下げたのをみておばさんはわっはっは、と笑う。
「いいって、それより2人で大変だと思うけど頑張るんだよ」
「はい…!」
隣のおばさんの家にご挨拶に行った時に、私と与一は兄弟だと言うことにしておいた。
戦で親を亡くし親類を頼った結果、空き家になっていたここを当てがわれた……というのが大脚本家の与一大先生が考えた設定である。
実際そんな感じだし「へんに設定作っても姉ちゃんすぐ嘘バレしそうだからやだ」と真顔で言われてしまって思わず泣いちゃうところだったよね…おっと涙が……
「じゃあ、なんか他にも必要なものあったら声掛けなよ!」
「はい!ありがとうございました!」
ひらりと手を振ったおばさんに90°感謝を送り、そして私に続いて与一も深々と頭を下げて、私達は部屋へと戻った。
いやーーー持つべきものはやっぱりお隣さんだね!!本当に…めちゃくちゃ助かる…おばさんに宝くじとか当たりますように…
おばさんにいただいたものを確認して片付けていると、ふと与一が声をあげた。
「そういえば…姉ちゃんあの手紙って」
「ん?」
手紙?なんかあったっけ?と首を傾げたら、与一がこれこれ、と部屋の片隅から引っ張り出してきた。
それは私宛なのか怪しいナメクジが這った後みたいな手紙だった。
「これ…小判は床下にってかいてあるけど…」
「…………」
床下……と思わず今自分が座っている畳が目につく。そしてぐるっと視線を回して、それっぽい場所がないことを確認して…再び畳へ。
「……あるとしたら…この下…?」
「……だね…」
「畳って…剥がせるもんなの…?」
「えっまぁそうなんじゃないかな…おいらはやり方知らないけど…」
チラリと繋ぎ目を見てみるが結構ギチギチに詰まっているようで、まぁ確かに外せるだろうとは思うけれど、これもちろん爪で剥がすようなもんじゃないよな…….もしそうだったら幼児期の私は無限に畳を剥がすモンスターだったはずだ。
「いやでもさぁ…そのお金使って暫くしてからこの家の家主帰ってきて『何使ってるんだー!それは死んだ親父の遺産だぞ!!』とかってなったら最悪じゃない…?」
家だけならかろうじて許されるかもしれんけど、お金を勝手に使うのはちょっと…
お金の貸し借りは怖いからね、と身をもって体験した与一が激しく首を振る。
キャーッ!そんなに振ったら取れちゃうよ!!
「それは置いとこう…畳を剥がす方法を会得したらまたその時に考えよう…」
「うん…おいらもそれがいいと思う…」
「では一旦忘れよう…あ、一応その手紙私のカバンの中に入れておこうか…」
なんかあった時にこれで戦える…かもしれないし……今更ながら知らん人ン家占領してることに気が引けてきた…。
……まぁなるようにしかならんけどな!!
「そうだ。与一さぁ、なんか手っ取り早くお金を稼ぐ妙案を持ってたりしない?」
「え?」
「あっ!体を売るとかはダメだかんね!!お姉ちゃん許しまへんで!」
「まだ何も言ってないよ!」
いっけなーい先走りしちゃった!
えへ⭐︎と舌を出したら与一がものすごく嫌そうな顔をした。ひぃぃぃい心に突き刺さる!!私でもちょっとキモ…ってなってるから許して!!
与一はうーん、と唸ると、あ!と手を叩いた。
「大道芸とかどう?」
「だ、大道芸?」
大道芸ってぇと、あの火の輪潜りしたり包丁お手玉したり猛獣とツーショット撮ったりするあれ?!!
いやもしかして二人羽織でアツアツおでん的な伝統芸能の方?!
「違うよ、芸じゃなくて歌とか」
「歌?」
私の歌を聞けええええええ!的な??
それともジャイアンリサイタル的な?!
「歌なら…道具とかもいらないと思うし、場所も選ばないんじゃない?」
「なるほど?けど歌……歌かぁ……」
そんなに歌上手いわけじゃないから人前で歌うの恥ずかしいな……
……いや、そんなワガママ言ってる場合じゃない!お金を稼がないと2人して路頭に迷って本当に与一が体を売るなんてことになってしまう!それだけは!!ショタとロリに手を出すな!!見守れ!!委員会委員長としては絶対に死守せねば!!
「今歌ってみたら?どうせおいらしか聞いてないし」
「んぇ〜…聞いてドン引きしない?」
「しないよ」
「絶対?」
「絶対」
「誓う?」
「誓う」
与一に心底引かれたら私ほんとに生きていけないよ……そんなことを思いながら自分のレパートリーを思い出す。むむむむ脳内デンモクがんばれ!
そして色々考えた欠点とりあえずカラオケに行ったら一番最初に歌う歌を歌うことにした。
「そら♪けせらせらうーららっ」
「きららせきらら、ひとりふたりぴたり♪」
「ぴったんたんたもじぴったん」
えへへへあえてのリメイクバージョンの方だぜ!
時間も短くてでも喉を温めるのにぴったりなのだ!
元ネタがわからない?でもそんなの関係ねぇ!!
「……すごい歌だね」
「うん、でもそれがシズカクオリティ!!」
与一は小首を傾げると、でも、と言葉を続ける。
「逆によく分かんない方がいいかも」
「と言いますと?」
「ほら、臭いものを嗅ぎたくなっちゃうのと同じでさ」
「君めっちゃ失礼だね」
「分からないからこそ聴きたくなっちゃうみたいな。注目されると思う。……もしかしたら姉ちゃんに惚れる人とか出るかも」
「はっ……!そうか!城下町の様子を探るために潜入した佐助とかが」
歌姫に惚れる(あるいは歌が気になって忘れられなくなる)→仕事が手につかなくなる→怪我をして帰ってきたところを幸村に見つかる→問い詰められる→心奪われた佐助に嫉妬して押し倒し……ッッッッ
「最高かよ……!!くぅぅうサナサスの嫉妬でどろどろの主従愛カプ…!!」
せっかくBASARA世界に来たんだ、絶対拝んでやるからな!!!
「よーし、目指せ歌姫!!」
「(歌姫?)うん、頑張ってね姉ちゃん!」