私の神様(仮)
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「 め 」
翌日、与一と久しぶりに寝たらびっくりするくらい爆睡できた。子供体温ありがたすぎる!
代償として例のごとく与一にたたき起こされたのはいいけど、与一はなんかやることがあるらしくて早々に小太郎を連れてどっかに行ってしまった。
政宗と幸村は鍛錬してるし、チカちゃんナリちゃんは終わらなかった荷物の整理と同盟の条項のための軍議(つまり仕事!!)があるとかで見当たらないし、私は暇になってしまった。
ををを!暇だ…!魔女を殺す唯一のものは暇なんだよね!
暇、ダメ、絶対!
「よし、遊びに行こう」
珍しくアウトドアな気持ちになった私は廊下に出た。どっちに行くかは悩み所だけど、どっちにしても迷子になるのは目に見えていたので、適当に行こうと思う。
よほどヤバそうなトコに出なきゃ大丈夫だろ!多分な!
私の神様(仮)
~激帝!走れ高速の!戦国華撃団!~
「……ん?」
某八九寺さん家のマヨイちゃんのキャラソンに従って右左ひぎみだりしてたら、どこからか笛の音が聞こえてきた。
どうやら二つ向こうの部屋から聞こえてきてるらしい。
気になって障子の隙間から覗いてみたら、随分と見慣れた顔のKGが見たこと無い服を着て立っていた。
「なにしてんの?」
「よっシズカ!ちょっくら今夜の予行練習をってね」
「練習?」
足元からキキッと鳴き声がしたから視線をやったら一匹の小さい猿が晴れ着を着て私を見上げている。
ってうおおおおおこいつは夢吉じゃないかぁぁああああ!
「か、かわええええeee!!」
「キッ?」
「可愛いってさ!よかったなぁ夢吉!」
「キキッ!」
「んー可愛い可愛いおー可愛い可愛いよしよしよしよしよしよしよし!」
エヘンと胸を張る夢吉を人差し指でグリグリ撫で回す。踏ん反り返り過ぎてのけ反った夢吉を全力でムツ●ロウさん風に愛でてみた。ヘアースタイルが乱れたと恨み混じりの視線を受けたから、整えてやったら嬉しそうに鳴く夢吉。嬉しそうな夢吉マジアイドル!
私の肩に飛び乗ってきた夢吉に癒されてると慶次がそうそう、と私を見た。
「今夜は宴会だからさ、舞の練習してたんだ」
「え、宴会やるの?」
「元親に元就がいろいろ持ってきてくれたから、このまま同盟組めたら新鮮なうちに食っちまおう!だってさ」
楽しみだなぁ夢吉ーなんて言いながらお腹を押さえる慶次と夢吉。
そんな可愛すぎて思わず食べたくなっちゃうような(じゅるり)二人の様子を見ながらふと思った。
まい…マイ……My…舞!?
「舞?!できんの!?」
「え?まぁ人並みにはできるけど…」
「うわ見たい!マジ見たい!全力で見たい!」
慶次のこの体格であの舞をやるんでしょ?すげぇ!やっぱり筋肉質でムキムキで風来坊な慶ちゃんだからこそ見たいよね!踊るムキムキ!
と、テンション上がった私に慶次は照れ臭そうに笑いかけると、夢吉を自分の肩に移した。
「夜を楽しみにしてな!最高の舞を見せてやるよ!」
「ウキッ!」
「うんうん!楽しみにしてる!」
夕飯何が出るんだろ!チカちゃんたちが持ってきてくれてるってことは新鮮な海鮮とかかな!ふと慶次の後ろに山積みにされた服の山が目についた。
「これ衣装?」
「あぁ、俺と夢吉のな。」
小田原に置きっぱなしにしてる衣装だと言う慶次。
……そんな頻繁にきてるんか、なんてツッコミを脳内でしつつ私は服を見た。
「………ん?」
山の上から3番目の衣装を見て、ふと手が止まる。
紫色の綺麗な着物で、思わず広げたら少し小さめ…というか慶次サイズじゃなさそうだ。
つーかこれさぁ!
「ねぇ、これ」
「ん?ああ、そいつはもう着れないなぁ。気に入ってたんだけど」
「な、なぬ?!じゃあ私にく れ な い か !」
「良いけど…でかくないかい?」
「いや、少しデカいぐらいで良いのだよ!」
「?」
この色見た瞬間思ったんだよね!某サクラの大戦のすみれさんじゃなイカ!!ややエロスなあの服!これで舞やったら演劇じゃないけどすみれさんそのものや!コス!
「すみれさんが居るならサクラも欲しいところだ」
「は?」
「あ」
「え?」
「ポニテktkr!」
今慶次が着てるのも(黒いけど)袴だし!リボンつければサクラだ!よし!花組できそうだね!
「私に計画があるんだ。聞く気はなイカ?」
「計画?なんか楽しそうだな!聞く聞く!」
「……失礼します」
「へ?」
盛り上がってたら急に声がして障子がすっと開いた。そっちに視線を向ければ、にこりと素敵な笑顔を浮かべたフェイタン風の兄ちゃんが座っていた。
う、うごぉこの国宝級の笑顔…ってまさか!
「こーちゃん?!」
「はい、お久しぶりですね」
にこりとまばゆいばかりの国宝級の笑顔を浮かべた兄ちゃんは政宗の弟、小次郎ことこーちゃんだった。
うわわすごい久しぶりだ!相変わらず眩しすぎて笑顔が直視できねぇぇえええ!!
後光すら射してるような笑顔を崇めていると慶次が一歩前に出た。
「そうそう、今日の舞は小次郎とするんだよ。なっ!」
「ええ、文化人として名高い前田殿と並びたてるだけの才があるとは思いませんが……めでたき席を飾ることができるのならば、謹んでお受けしようとおもいまして」
慶次はどうやらこーちゃんと知り合いらしい。
流石慶次ってば顔が大海原くらい広いね!よっ前田の風来坊!
こーちゃんと慶次の舞のことを考えてえへへへとニヤニヤしていたら、慶次が「あ。そうだ」と声を上げた。
「よかったらシズカちゃんも一緒にどうだい?」
「私?」
首を傾げる。
や、まあ確かにスパルタン信之兄にちょっと教わったことはあるけど、人前でできるようなものじゃとても…
「大丈夫、俺が教えるよ!一緒に若虎たち驚かせてやろうじゃないか!」
「ヴっ陽キャの笑顔!!眩しすぎる!」
ぺっかーー!!とこーちゃんと慶次の笑顔で無事に消滅した私は、「あ、うん、はい」と消える声で返事をしてしまった。よーしそうとなったらシズカちゃん用の準備がいるね!と慶次はやる気満々で袖をまくるジェスチャーをして見せた。
くうう!こうなったら、信之兄ちゃんに教えてもらったところも飛び越してパーフェクト目指して覚えてやろう!そんでもって最初の目的通り、幸村達とちびちゃんズを驚かせるのと、次会ったとき信之兄とか三成とか半兵衛を驚かせてやろう!
ふふふ、やつらの驚いた顔が目に浮かぶわ!
ぐっとこぶしを握ったら、こーちゃんが「頑張りましょうねシズカ殿」と国宝級の笑顔を浮かべて私は塵にも残らなかった。
「よっしゃ、じゃあ今から手本見せるから二人とも真似してくれよ!」
「あ、じゃあ一通りやったら私の計画を聞いてくれマイカ!」
「計画…ですか?」
ぐふふ、楽しみにしててくれたまへ!
タン、と音をたてて畳に足を落とす。手を腰に添えて、扇を開いて、スパッと鳴らして扇を翳す。
少し間を開けて口を開いたのは慶次。
「…ずいぶん早く覚えたなぁ、小次郎」
「そんな…恐縮です」
「こーちゃん凄いね…迫力ハンパないよ…」
見てて圧倒される動きに思わず呟いた。
いや、まじですげぇ…さすがこーちゃん伊達じゃねぇな!
「シズカ殿も素晴らしいではないですか」
「基礎がちゃんとしてるよ、誰か名のある人にでも習ったのかい?」
「んまぁ、幸村の兄ちゃんに習ったんだけど…」
名のある人っつうか武将なんだけどねー。なんて脳内で補足してたら膝を叩いて慶次が立ち上がった。
ちょ、夢吉が転がったよ慶次!
「そろそろ笛に合わせてみるか」
「そうですね…」
「ん?笛は誰がすんの?」
なんか横笛って鳴らすの難しいって聞いたことあるんだけど…。
首を傾げたら慶次が布から笛を取り出した。濃茶色に白く線が引っ張ってあるシンプルな笛だ。
見た感じがすごく高級な笛なんだけど…my笛?
「慶次の?」
「ああ、もらいもんだけどな。一応吹けるんでね」
「へー、」
慶次って遊びに関しちゃプロだゃね、達人だよね。と言うと「褒められてる気がしないよ」と苦笑した。
「ここにいたのか…ってシズカ…と小次郎まで…」
「小十郎殿、」
「こじゅ!」
障子をがらりとあけて入ってきたのはこじゅだった。
いつものぴっちり決めたオールバックが今日も決まってんね!こじゅにガシッとくっつくと、こじゅは私の頭をするりと撫でて慶次たちの顔を見た。
「シズカたちも舞やるのか?」
「ええ、皆を驚かせようということです。」
「ばっちしマスターしてがっつりビビらせてやろーって訳だよ!」
ガッツポーズ決めた私を見て小十郎はため息をつきながら(そんな顔しないで!)慶次の笛を見る。慶次も視線に気づいて「こいつがどうかしたのかい?」と小十郎に差し出しながら尋ねた。
「風来坊、なかなかいい笛持ってんじゃねぇか」
「そうなのか?俺、笛自体の質の差はわかんないからなぁ。……使うかい?」
「使っていいのか?」
「ああ、俺は構わないけど」
その言葉を聞いて小十郎は「しばらく借りるぜ」と言って笛をとった。
え、ちょ、それって間接キs
「うおおおおおおおまさかのCPktkrエェェェエエ!」
「うわ!びっくりした!」
「いきなり大声あげてどうしたんですか?」
いいやなんでもな…くはないけど…!
ドギマギしてる私を訝しげに見た後小十郎は笛を吹く姿勢になった。
ちょおお…!こじゅ×慶次?!それとも慶次×こじゅ?!どっちも新境地すぎる!
考えた事なかったけど、どうなの?!ここに来てまさかの新CPなんて…ドッキリすぎるわ!
うへ、へへへへへ……なんかすげぇ燃えてきた…いや、萌えてきた!
脳内でちょっとしたビック・バンが起きてたら、小十郎が突然笛を鳴らした。高い音が響いてビリビリと肌を打つ。私は脳内会議をとりあえず中断して(のちのちじっくり妄想する予定)真剣に耳を傾けた。
力強い笛の音が天井、壁、空気、ここにある物すべてを震わせている。
気のせいかもしれないけど、体内の臓器までが震えてるような感覚。
音楽に関しては知識0な私にでもわかる。
「す、すご……!」
「こいつはすげえや…」
呆ける私たちをよそに音慣らしが終わったのか、小十郎は笛から口を離した。
「やはりいい笛だな、」
「この音をバックに踊んなきゃいけないのか…!」
小十郎さんマジぱねぇっす!ううう…プレッシャー感じる…!
慶次も同じこと思ってたのか、自分の両頬を叩くと真剣な目で言った。
「俺たちも頑張んなきゃな!」
「そうだね!よし練習すっぞおおおお!」
「小十郎様に負けないよう頑張りますね!」
小十郎のおかげでやる気が893%上昇しました(当社比)
* * *
がやがやと騒がしい声が離れた場所から聞こえる。その一方でリリリリと虫が鳴く声が聞こえてきて妙な感じだ。
すっかり日も落ちて、宴会が始まったのは小1時間前。みんな自重をどっかに置き忘れて騒いでるんだろうなー。
「さー出来たよ!」
慶次の声で目を開いた。鏡に写った私の顔…顔………って
「これ誰だよ!?私か?これマジで私なのか?!」
「ああ、綺麗じゃないか!」
「いやぁ慶次とこーちゃんの手ほどきがあったからこその美人顔だよコレ!」
鏡に写った私の顔は生きてきて十ン年かつて一度も見たことがない顔だった。存在を引き立てるための化粧。
…ただし、ややコス用メイクっぽくしてもらった。
うぉぉおおすげぇええ…人ってこんなに変わるものなのか!元の顔がわからんぐらい美人やがな!
「…こんな顔が突然現れるとか、漫画でいう大ゴマで『どん』って描かれるアレだよね…」
「へ?」
「いや、なんでもないよ美人慶次」
横で首を傾げる慶次と、衣装合わせをしてるこーちゃんも化粧をしている。(結構はっきりした化粧だけど、元の顔がいいせいで更に美人さんになってる)(武将の本気ぱねぇ)本当はこの部屋にいる3人は仮面をつけて舞うから、あまりちゃんとした化粧はしないらしいんだけど、私の案で顔が出るので化粧を慶次にしてもらった。
慶次ってマジでなんでもできんね!さすが風来坊!
「シズカ殿素敵ですよ」
「衣装も似合ってんじゃないか!」
「そんな、確実にこーちゃんと慶次のおかげだから!」
慶次には予定通りリボンを着けてもらって(似合いすぎ)、こーちゃんはフェイタン風の変装真っ最中だったから茶髪に戻っていただいた。
慶次にも影武者ってばれたくないらしい。顔はフェイタン風のまま譲れないというので、仕方なくカンナさんになってもらうべく、額に白ハチマキを巻いてもらった。
そんでもって私が緩い着物の上に舞用の衣装を合わせる。
見渡せば完璧な『帝國歌劇団~花組~(一部除く)』だ。
「ぐふ…体格さえ見なければみんな似合いすぎて私悶え死ねるよ…!」
本物クオリティーだもんなこれ!違和感は仕事しようか!
ニコニコしている私にこーちゃんは微笑むと、隣の部屋で待機していた小十郎に声をかけた。
「小十郎様、そちらはどうですか?」
「ああ、準備はとっくにできてるぜ」
そういって襖が開けられる。そこには青み掛かった灰色の着物を着た小十郎が、慶次の笛を帯に挿して立っていた。うほぅイケメン!
小十郎は部屋に入るなり私たちを見回して、へぇと声を上げた。
「ずいぶん洒落たじゃねぇか」
「えへへ。慶次にこーちゃんがやってくれたんだよ!」
ちなみに化粧されてる最中行われた脳内会議の結果、慶小十は親子かぷでごちそうさま!になりました!
うふふふ、慶次と小十郎の親子かぷウマウマ!うふへへへ
「おい化粧が落ちるぞ」
「なぬ!それはアカン!!」
せっかく慶次がしてくれた化粧が!慌てて涎を吸うと、慶次がアハハと笑った。
「そんな美人になっちゃぁ、他の連中がほっとかないね!」
「あー、慶次もこーちゃんも気をつけてね!」
世の中狼しかいないんだから!拳を握れば顔を引き攣らせて慶次が頷く。本当!気をつけないとチカちゃんとか政宗とかに襲われちゃうんだから!
私も原点に返って、大ゴマどん!→舞姫に惚れる佐助→任務が手につかなくなる→怪我をして帰ってきた佐助に幸村がアーッを目指すよ!
そしてそれを相方のオクラ携帯にばっちり保存してやるんだから!チカちゃんの時は湯煙で曇ってまさかの音声オンリーだったけど、今度はそうは行かないんだから!
いざリベンジ!
「じゃあそろそろ行くぜ」
「あ、ちょいまち!円陣くもうZE!」
小十郎が廊下へ続く障子に手を伸ばした。
それを止めさせて円陣の提案をしたら「なんだそりゃ兵法か?」と首を傾げられた。
なぬ!円陣を知らないだと!
「円陣ってのは、肩組んで気合い入れる…おまじない的なものだよ。」
「おっ、そりゃあいいね!やろうぜ!その円陣ってのをさ!」
「じゃあこじゅと慶次で肩組んでこじゅと、こーちゃんで肩組んで、」
んで最後に私が慶次とこーちゃんとで肩を組めば完成。
「私がファイトーって言ったらオー!って返してね!」
「了解!」
「よっしゃやるよ!ファイトー!」
『オーッ!』
小十郎の甲高い笛の音が部屋から鳴り響いてきた。
私は唾を飲み込んでこーちゃんに続く。
最後にセンターに慶次がたどり着いて構えれば、さっきまでの喧騒はどこに行ったのか、シン…と静まり返る。
うぉぉお…慶次やっぱ迫力がちげぇ!久しぶりにこんな緊張してるよぉぉぉ!
震えそうになる足を叱咤して私も構えた。これも幸佐のためじゃぁぁぁぁあ!!頑張れ俺!!気合いを改めて入れ直して、私は視線を上げた。
仮面の少しの穴から見える、ドヤ顔の政宗とナルちゃん。
そうかそうかそんなに小十郎が大好きか!なんて萌えてたら緊張がどっかに吹っ飛んだので、単純な自分に悲しくなりつつ感謝して集中する。
静まり返った部屋に、小十郎の笛が突然響いた。
ビリビリとそこにあるもの全部が震えて共鳴している。圧倒的な音量に体が押されるような感覚を振り切って、私は扇を振り始めた。
信之兄が教えてくれた通りに扇の先にまで気を使う。動かすときは動かして、止まるときは止まる。ピシッと決める場所はきちんときめて、緩く流れるように……舞の半ばまで来るとようやく楽しむ余裕が出てきた。
信之兄のスパルタン教育の意味がようやく分かってきて、知らず知らずに笑っていた。多分慶次とこーちゃんも楽しんでるんだろうな、なんて考えながら覚えたての動きで舞う。
やがて笛が高く鳴って、舞が終わった。
こじゅが立ち上がって深く一礼。
合わせて私たちも一礼。割れるような拍手が鳴り響く。
「すげぇじゃねぇか!」
「片倉殿の笛もまことに素晴らしかったでござる!!」
「当たり前だぜ!」
「なかなかのものであった。感謝するぞ氏政」
「ほほほ」
「うつくしきまいでしたね、つるぎよ」
「は…はい!」
なんて会話が拍手の切れ目切れ目に聞こえて来る。
ふ、フハハハハ!!驚くのはまだ早いぜ皆の者!
仮面の下でにやける顔を浮かべて、私はテンションが上がってる皆を見回した。
舞手は誰か?ならば教えてやろう!!
「一体誰だ?と聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」
と、こーちゃんが乗ってくる。うん?と何人かが首を傾げて(主に幸村)何人かが硬直し(主にデカちびちゃんズ)残りの何人かがあれ?という顔をした。
「世界の破壊を防ぐため…」
「世界の平和を守るため!」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリー・チャーミーな敵役!」
私の指導でカタカナの発音ができるようになったこーちゃんの声で、私は仮面に手をかけて一気に外し放った。
そう!まるでアニメのあのワンシーンの如く!!
「シズカ!」
「小次郎!!」
「銀河を翔るロケット団の二人には!」
「ホワイトホール!白い明日が待ってるぜ!」
「なーんてな!」
ガショーン!なんて音を立てて、政宗とナルちゃんが持っていたおちょこが、勘助兄ちゃんが注いでいたとっくりが、ナリちゃんの箸が落下した。
最後に慶次の投げた仮面が背後でカコーンと虚しく音を立てる。
ふ…決まった!シラけた空気?んなもの食ってやる!
「な…シズカ姉ちゃん?!」
「what…小次郎まで…!?」
「こちゃーんすげぇ!」
「あ、ありえぬ…!姉上に前田の風来坊だと…!」
なんて驚きまくってる連中が想像通りだったので、思わず笑いそうになったけど何とか堪えて私は記念に皆を写メっておく。
うはー皆ナイス顔面だッチャブル!
* * *
「姉ちゃんいつの間に舞できるようになったの?!」
「ふっはっはっは!すごいだろ!頑張って練習したんだぜ!」
あのあと、慶次がポニテにリボンをつけたまま剣舞まで披露してくれた。生まれてはじめて生の剣舞見たけど、すげぇカッコイイんだよ!本当慶次って文化面だとプロフェッショナルだね!そんなこと考えながら刺身を食べてる与一の頭を撫でる。
相変わらずサラサラした髪が気持ちいい!
撫で回しながらにやにやしてると、「シズカ姉ちゃん!俺の釣った魚食ってるか!?」そんな声が降ってきて肩に衝撃がきた。
「うわっチカちゃん酔ってない?!」
豪快にアニキ笑いをしながらチカちゃんが私と与一の間に割り込んできた。
見ればチカちゃんの手にはデカめのとっくりが握られているし、すっごいお酒臭い!
「ちょっと飲み過ぎじゃない?」
「ンな事ねぇよ!信玄に謙信の二人はもっと飲んでるし負けてらんねぇ!」
「あの二人はしゃあないわ」
確かにチカちゃんは多少顔は赤いけど、それ以外に変わりはない。もしかしてザル?
ちぇっ…酒で酔ったアニキを×××~なノリはできないか…
「チッ」
「シズカ姉ちゃん?」
「別になんでもないよ!」
しいていうならザルに見せかけて酒に弱い設定なチカちゃんっていう萌え設定が無くなって悔しいってぐらいかな!
淡い希望を胸に試しにナリちゃんを見てみたら、ナリちゃんと目が合った。
「我は飲まぬぞ。」
「ですよねー」
お父さんもお兄さんもお酒が原因で死んでしまったと話してたからそうだとは思ったけどね!でもきっとそれってお酒に弱いって事でしょ?ひゃふい!
酔っ払いチカナリチカとかぷまいです!ごち!
「ぐへへへ」
「姉上自重せよ」
「はーい」
「hey元親!!」
チカちゃんが釣り上げたらしい魚(ちょ、いつの間に!見たかったのに!!)を刺身で食べてたら政宗もやってきた。
政宗からもお酒の匂いがしてくるけど、チカちゃんとちがって顔は赤くない。前の甲斐の宴の時もだったけど政宗はとんとお酒に強いタチらしい。
政宗はどっかり腰を下ろすと、チカちゃんが持ってた酒を奪って飲んだ。
「おい勝手に飲むなよ政宗」
「いいだろ別に」
「ぶふぁっ!」
なんだそのやり取りぃぃぃいいッ!チカダテ?!ダテチカ?!うはぁぁぁあ萌えるぅぅぅううう!ちょっ、二人とも近い近い近い!けしからんもっとやれ!
「そのまま押し倒せ!イケイケっ!ごふ、ぐふぅぅッ!」
萌えて吐血してたら「姉ちゃん気持ち悪い」と与一に冷たい目を向けられた。
ぷぎゃー!その視線痛い!
そしてその向こうからはナリちゃんの冷たい視線も飛んでくる。
「…元親、おまえ酒を飲まずとも煩いが、今宵はなおのこと煩いな」
「ンだよ水を差すなって!こんな最高の宴、早々ねェんだからよぉ!お前もたらふく食ってちったァ筋肉つけろ!」
「その結果貴様のような脳筋になるくらいならこのままでよいわ」
「アァ!?」
「フ」
鼻で笑ったナリちゃんに、チカちゃんが身体を押し付けてダル絡みをする。
政宗がそれを笑って、もう一杯盃を傾ける。
ッはああああまじで!まじで瀬戸内!!!本当に神様ありがとう天国はここにあったかも!!!!!こんなの腐女子冥利に尽きるっつーか尽きすぎて滅しちゃいそう!!!
「…そういえば、なんか毛利と長曾我部が戦を最近までしてた…って聞いたけどあれってホントなの?なんか二人見てると絶対嘘じゃんってなるんだけど」
ふと思って聞いてみる。
豊臣のところにいるとき、信長様たちがそれで瀬戸内を狙ったってみんな言ってたけど、どうみても戦をしてたようには見えないし、なんなら織田の船も結構準備万端で迎え撃ってた気がするけど。
すると私の隣で刺身をつついていた与一がおずおずと口を開いた。
「…元親と元就…戦してたの?」
「ばーか、ンなわけあるか。」
きっぱりと言い切ったのはチカちゃん。
「最近俺のところで新しいカラクリを作ったんだ、その試運転はしたぜ」
「かなり実戦を想定したからな。おおかたその様子を見た何者かが勘違いしたのだろう」
我らは表立った同盟関係にないからな、とナリちゃんが続ける。
それに与一は少しうれしそうな表情をして、それから言葉をモゴモゴとお刺身と一緒にかみしめている。
何か言いたいのかと思って私たち全員の視線が与一に向いた。
「……ま、こいつらが本気で喧嘩してたら小田原に着いた時点でシズカ製のたんこぶ作ってただろうよ」
「…当たり前でしょ!そんなの絶対許さないからね」
拳を作ってパンチするジェスチャーをすると与一はホッとしたような表情を浮かべた。それをみてチカちゃんが視線を揺らして、「あー」と口を開く。
「なあ与一、俺たち、おめえが思ってるほどそんなに変わってねえからよ」
「…!?き、貴様がそれを言うのか…!?」
「No way!鏡でも水面でも見て来いよ!」
「うるせえ!」
政宗とナリちゃんが茶化すような声をあげて、チカちゃんは声を張った。そしてチカちゃんの手が与一の前髪に触れる。
目に入りそうな髪をよけて、それからニカッと笑みを浮かべた。
「だから、お前も普通にしてろや。その方が俺たちも嬉しいからよ」
「!」
なっ!そういって屈託のない笑顔を浮かべたチカちゃんに、ナリちゃんと政宗は肩をすくめて見せた。与一はその光景を見て「あ…えと…」ともう一度視線をさまよわせる。
「うん……わかった、」
「おう!」
「うわわわわ!髪ぐちゃぐちゃになっちゃうよ!」
* * *
夜が深まり、気がついた頃には宴会場からもだいぶ人がいなくなっていた。
家臣さんたちもパラパラと部屋に戻り、氏政おじいちゃんは眠くなって早々に、ナルちゃんたちも「いやぁ食った食った!西海の鬼さんごちそーさま!」とか言って帰って行った。
そしてぼちぼち終わりの気配が見えて来た頃、私はふと縁側に影があることに気がついた。
「ん?」
気になって立ち上がって外の様子を見ると、少し先の縁側に幸村が腰掛けていて、灯籠の灯りが影を伸ばしているようだった。
1人で静かにお酒を呑んでるその様子に、ちょっと一瞬声をかけるか悩んだ。けれど、私がどうするかを決めるより先に幸村が気がついて私の方を見た。
目が合ってちょっとだけ驚かれる。
「っ、シズカ」
「……幸村、1人でどしたの?」
そっち行っていい?そう聞くと幸村は何も言わずに隣に少しズレて場所を開けてくれた。私はそれを承諾ととって部屋の外に出る。
部屋の外は新鮮な空気が凛と冷えていて、思わず深呼吸したくなる。この部屋の中がいかに人の熱気で熱く、酒臭いのかが身に染みた。
「外の空気、気持ちいいね」
「あぁ、頭を冷やすのにちょうど良い」
「頭を?」
お館様と謙信様が飲み比べ対決を始めるまでは確か幸村となんか話してたと思うんだけど、それでまたなんか燃え上がってしまったんだろうか。でもソレいつものことじゃんね、と思って甲斐での姿を思い出していると、幸村が空になった盃を私の方に向けた。
「シズカは飲まぬのか?」
「ブブーッ私は未成年なので飲んじゃダメでーす」
あれ?でもこれって戦国時代でも通用するんだろうか?そもそも戦国時代に未成年って概念はあるんだろうか…。
どっちにしても甘酒でやよっちゃんにセクハラしまくった前科があるから迂闊に飲まないようにしなきゃとは思うけど、さ!!
幸村はそうか、と言ってとっくりを手にする。
私はソレを横から掻っ攫って顔の横で軽く振った。
「まあまあまあまあ。注がせてくだせぇ幸村殿」
「む?そうか。すまぬ」
幸村が持ってる平たい器にゆっくりとお酒を注ぐ。少しとろとろとしたお酒が杯を満たして、月明かりを反射した。ソレを少し眺めて、幸村は口をつける。
その横顔はなんか遥か遠くを見ているようだ。
「…幸村、氏政おじいちゃんみたいだよ、なんか」
「そ、そうでござろうか…」
「うん。なんかめっちゃ考え事してまーす!って感じ?」
私の言葉に幸村は目を瞬かせて、それからまた考え事に戻ってしまった。
これが噂の『ちしょう、さなだゆきむら』(ほんとに??)ってやつだろうか。なんか真剣っぽそうだから声をかけるのも憚られて、私も幸村が眺めている先を一緒に眺める。
星空はやっぱりチカちゃんの船の上で見た方が綺麗だったなぁ。このお城がすごい明るいからなのか、あの時より見えている星は少ない気がする。
それでもやっぱり現代で見る夜空とは全然違う。
なんとなくただ見てるだけなのが勿体無い気がして、見てもわからない星座を探してみる。
背後では相変わらず、誰となしに声を張って騒いでいて、手を叩く音と笑い声が響き渡っている。なんか、その喧騒を背中に感じているこの空間もすごい良いものに感じて私は深呼吸をした。
すると急に鼻がむず痒くなる。
「へぶしっ」
急に涼しい風にあたったからか、鼻の奥がむずむずする。
くしゃみをして鼻を啜ると、幸村がコチラを見た。
いやごめん!!めっちゃ『エモ』い空気だったのに私のくしゃみで空気ぶち壊しちゃったね!
「や、ごめん、ズビッ、急に涼しいところに来たからかも…」
「外は冷えますゆえ。…使ってくだされ」
そう言って幸村は自分が羽織っていた上着を私に差し出す。その下はかなり薄着に見えて私は慌てて首を振った。
「えっ大丈夫だよ!幸村のが冷えちゃうでしょ」
「某こそ。この風にもだいぶ慣れてきた。」
そう言って幸村は身を乗り出してきた。
急に顔が近くなってびっくりした私は思わず身体を引くけど、幸村はそんなこと気にもかけず、そのまま私の肩に上着を羽織らせてくる。
上着は、幸村の温かさが肩甲骨の間に沢山残っていて私の身体を温める。申し訳なさと恥ずかしさで萎縮した私の肩に幸村の指が当たった。
「っ」
「!すまぬでござる!」
いやこっちこそごめん、ありがとう。と言うと幸村は「うむ!」と満足そうに頷く。
お酒を飲んでいるからか、恥ずかしさからか、多分どっちもなんだろうけど、幸村の頬は灯籠の火よりも赤い。幻覚で見てえる尻尾がぶんぶんなのもあって思わずニヤニヤしてしまった。
くううぅううどシンプルにワンコかわいい!!
「――はぁああ?!そんなのってアリかよ!」
「馬鹿め、勝ちは勝ちだ!」
「……」
「……」
部屋からチカちゃんの絶叫とナリちゃんの声が聞こえてくる。これ絶対なんか勝負挑んだでしょ、中で何が起きてるのか見えてないけど、想像はできてしまうことに口角を上げると幸村も似たように笑っている。
「――戦より騒がしいやもしれぬな」
「ははは、ありそー」
まぁ、元気なのは良いことだよね。デカちびちゃんズも、幸村もさ。
私は足を投げ出してゆらゆらと揺らす。幸村から借りた羽織からなんだか優しい匂いがする。よく日の当たる庭先に干してあったんだろうか。佐助辺りがしわが無いようにって丁寧に干したのかもしれない。また少し風が強くなるのを感じて、もう少し深く羽織って前を隠した。
「……シズカ」
「ん?」
「…先日の、その……気を、悪くしていないだろうか」
「あー」
佐助への告白練習事件のやつのことを言ってるんだろうか。思わず幸村の方を見ると、幸村は目を細めて眉を寄せて苦い顔をしている。そんな苦い顔しなくても、私は別に何も気にしてないんだが?
「マジで何も気にしてないよ」
「しかし…"某と共にいてくれ"などと……軽率だった。元の世に戻れば、シズカには――」
「想う人も…いるやもしれぬのに」そう言って幸村は顔を逸らす。その尻すぼみになっていった言葉が危うく風に流れそうになって、私は真っ直ぐに幸村に向き直る。
うーん。確かにトリップはトリップだし、いつかは決めなきゃいけない時が来るかもしれない…のかも?あるいは来た時みたいに選択の余地すらないかもしれないし、その前に佐助とかに首を掻かれて消されるかもしれない。
でも少なくともそれまではバサライフを思う存分堪能できるってわけですよ!
幸村ってば、知ってたけど真面目すぎますねちょっと!このこのっ優等生くんめ!!
「気遣ってくれてありがとう。…まぁでもさ見てわかる通り、私は全然気にしてないんだよね」
確かに佐助の術が失敗したせいかもしれないけど、でも私は戦国バサライフをめちゃくちゃエンジョイしてるし、後悔だって1ミリもしてない。だってそのおかげで仲良し瀬戸内も見れたし幸佐も見れたわけですしおすし!?
「むしろめっちゃ毎日楽しくてこんなので良いのかとすら思ってるよ!!」
「…しかし……某は」
「んもーー!!優等生!本人が気にしてないって言ってるんだから気にしなさんな!」
「……」
クソ真面目幸村は、そう言う私の顔をまじまじと見る。まるで嘘はないかと言いたげな様子に私は3回くらい頷いてみせた。
きっとこんな真面目すぎるくらい真面目なところが佐助の凍った心を溶かして、旦那フォーリンラブ⭐︎にしたんだろうな!わかる、わかるぞ佐助!!
「それにあの時の幸村の顔、めちゃくちゃカッコよかったよ!」
「!!」
「あの顔で迫られたら佐助だろうと政宗だろうとコロッといっちゃうね、間違いない!自信持って!」
「――…」
幸村が、はく、と口を開いた。薄く開いた口から息をのむ音が漏れる。私にまで聞こえたその音に気を取られていて、私は幸村の顔を見逃した。
「……それは…――どうにも困るでござるな」
はっと我に返った時、すでに幸村は顔をそらしていた。
耳も頬も真っ赤だけど表情までは見えなくて、だけどその少し見える横顔は可哀想なくらいだ。鼻筋にまっすぐ月の光が当たって、端正な顔立ちなのが映えている。
わたしはその姿に心臓がぎゅっと痛くなるのを感じた。
「ゆきむ、「おーーい!!二人とも!!」」
なんだか無性にこの空気をどうにかしないといけない気持ちになって、苦し紛れに幸村を呼ぶと同時に、夜に響く声が聞こえてきた。
そっちを見ると、腕の中に酒俵を抱えて顔を赤くした慶次がドシドシと歩いてくる。
「慶次!」
「見てくれよこれ!氏政秘蔵の酒!空けていいって言ってくれたらしくてさァ!残ったやつらだけでコレ飲ん…じまお、う……」
ニコニコと嬉しそうにやってきながら喋る慶次。私は立ち上がって慶次を迎え入れたけど、目の前に来るなり慶次の笑顔も声も急に冷めていった。「ん?」と首を傾げる私に視線が落ちて、それから幸村の隣にあるお酒、そして最後に幸村の赤い耳に目を向けた。
「……」
「……どうしたの慶次」
「なぁーーーーんだよ!!!!!!おいおいおいおい!!恋の話かい!??いいねえ!粋だねえ!!」
「こここここ恋ィ!??ちちちちち、違うでござる!!」
慶次のクソデカボイスに幸村がまた顔を真っ赤にして立ち上がった。
手をぶんぶんを振って顔もぶんぶんと振って、全身吹き飛びそうな勢いで否定する幸村だけど、慶次は「いやあ邪魔しちゃったなあ!悪い悪い!」なんてカラカラと笑って聞く耳を持ってない。
「おおぅい!元親!聞いてくれよ今そこでさぁ!!」
「わ”ぁああ!!!待ったまった慶次!!それはダメダメダメ!とまれ酔っ払い!!」
昨日それで幸村が流血沙汰の大惨事があったことをお忘れか!?
酔っぱらって足元がフラフラの慶次のポニテを引っ張ると「ぐえ」と声が上がるけど、慶次のニヤけ顔はそのままだ。
連日流血沙汰は嫌だからね!??
慶次は真剣な私の顔を見て「ちぇ」と唇を尖らせた。
「わかったよ、せっかくいい酒の糧だったのに…」
「だから!違うと申しているだろう!」
「はいはい、相談したくなったらいつでも来いよ!若虎!!……ほら二人ともこっちで飲もうぜ!」
慶次が顎で宴会会場を指し示す。
確かに羽織を借りたとはいえまだかなり冷えるし、そろそろお開きになるなら、その前に部屋に戻っていたい感じはある。
私は幸村の方を振り返った。
「信之兄に『ユキをよろしく』って言われたんだけど、なんとなくわかったかも」
「――兄上が?」
「うん」
私の置かれた状況を、わざわざ言いに来てくれて、私を逃がすのを手伝ってくれた人。
『まっすぐなまま、疑うことも知らない…俺がもう持ってない、そういうまっすぐさをユキが失わないようにさ』『もし、この先この国がどうなっていこうと、ユキのこと…よろしくね』
信之兄は冗談でも、言葉遊びでもなく、本気で幸村のことを私に任せたのかも、と思った。そういう真面目な所が信之兄も幸村もすごく似ている。
幸村に借りたままの羽織が風をはらんで少し膨らむ。
残された体温の代わりに私の熱が風に混ざって、そして流れていく。
私はその冷たさを感じて幸村の手を取った。
「ほら、戻ろ幸村」
「…ああ!」
宴会会場は相変わらず酒臭いし煩いし、人の熱で熱気がある。
だけどそれがとても居心地が良くて、私は慶次のポニテを幸村と一緒に追いかけるのだった。