私の神様(仮)
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「 ゆ 」
「でさ、そこいたのが機動戦士ホンダムでさ、」
「なんか…すごい強い人なんだね…?」
強いっていうか、デカイというかロマンが詰まってるというか…
あれは見れば一発でわかるけど。見てみないとわからんよね!
ドゴォォォオン!!!
「わ?!」
「なっなに!?」
私の神様(仮)
世界はそれを愛と呼ぶんだぜ!!!
与一とのんびり雑談をしていたら、突然爆音と地響きがしてきた。
すっかりくつろぎモードだった私たちは慌てて飛び起きて部屋から飛び出す。
縁側に身を乗り出して左右を確認したけどそこには何も無い。
なんだったんだろう、って二人で顔を見合わせているとまた建物全部が揺れるほどの大きな揺れ。
地震とも違う揺れ方に天井を見上げたら、天井のチリが目……に入ったぁぁぁ!
「ぎゃぁあああ埃くそ痛ぇぇえ!」
「何やってんの姉ちゃん!」
今のは回避不可能な事故だよ!痛みで出てきた涙でなんとか埃を追い出すと、私は辺りを見回した。与一も顎に手を当ててうーんと唸る。
「何だったんだろう…今の」
「…お館様と幸村の殴り愛とも揺れ方違うしなぁ…」
ていうかお館様達だったら声も聞こえてくるだろう、それにこの建物全部に響くぐらいの愛なら、いくらなんでも佐助が止めているはずだよね。
すると右から一人の家臣さんが歩いてきた。
あの人なら分かるかな、と与一は家臣さんの所へ小走りにかけていく。
「あの、今のドシンっていう音…なんですか?」
まさか黄色い巨人じゃないよね、という私のセリフを華麗にスルーして与一が尋ねると家臣さんは「……あぁ…」と一瞬にして諦めた顔になった。
「あっちに行けば分かるよ。…くれぐれも巻き込まれないようにね」
「は?」
そんな不安を煽るような意味深なセリフを残して家臣さんは歩いて行ってしまった。
ポカンとしていた私達は今の様子からそんなに急ぐ程じゃないと悟って、家臣さんが教えてくれたのんびり教えてもらった方向にゆっくりと歩き始めた。
そろそろ部屋の位置が分からなくなってきた頃、廊下を曲がってすぐなんだか懐かしい後ろ姿が見えた。
暗い灰色の着流しに、銀髪の…
「どぅぉわぁぁああ勘助兄ちゃんやぁぁあ!」
「うわ!」
会いたかったでござんしゅぅぅぅ!とかなり高い位置にある腰目掛けて飛びつくと、ほんの少しだけ体制を崩しながら受け止めてくれた。素敵な細腰ヌヒョヒョとニヤつきながら顔を上げると相変わらずのラスボス顔が私を見ている。
いやぁ、相変わらずのゼムっぷりですなあ!
「あっれェシズカじゃん!久しぶりだねぇ」
「ナルちゃん!?おひさ!」
勘助兄ちゃんの横からひょっこり顔を出したのはナルちゃんだ。相変わらず気の抜けるヘラっとした笑みを浮かべている。勘助兄ちゃんの腰越に挨拶するとナルちゃんは手をひらりとふった。
「ナルちゃん北端以来じゃね?」
「あれ、そんなに会ってなかったっけ?」
時が経つのは早いなあなんてオヤジ臭いセリフをぼやく。まあたしかにあれから結構経った気もするしつい最近な気もする。
ねー与一、と声をかけようとしたらさっきまで横にいたはずの与一がいない。
「あれ?」
辺りを見回すと、与一が廊下の角からこちらをジッとうかがっている。じっと固まってる与一の視線を追っていくと苦笑してるラスボス…じゃなくて勘助兄ちゃんがいた。
……あー、勘助兄ちゃんか…。
本人も気づいたらしく額に手を当ててため息をつく。
「……またか…」
「…あのね与一、勘助兄ちゃんは普通にいい人だから!そんな怯えてあげないで!」
「そうそう、この人こわ~い顔してるけど、イイ人だよ」
「あれ、ナルちゃんと勘助兄ちゃん知り合いなの?」
はしっと私にしがみついてきた与一の背中をさすりながら二人を見ると、勘助兄ちゃんは「あー」と間延びした声を上げた。
「まあ伊達はな…」
「そーそー。ほら梵と真田ってただならぬ因縁があるじゃん?」
「――…伊達軍はみな『おおらか』ですから」
さらに声が聞こえてきてそちらを見ると、いつものようにニコニコとしたノブさんと、やっぱり☆前世は絶対ハムスター☆のマー君だった。私と目が合うと、マー君はあわわわわや!!と言いながら頭を下げる。うーん、マー君も相変わらずのキョドりっぷり!
やたら棘のある『おおらか』発言をしたノブさんはそのまま前髪を払うとナルちゃんの前に立った。そしてノブさんとナルちゃんはお互いを見つめる。
「……」
「……」
「……え、なにこれ」
2人の時間?!
ニコニコとニヤニヤと、お互い笑っているのになんか空気がものすごい殺伐としている。腐女子的にはすごく妄想しがいのあるシチュなんですけどなにこれ?!
「あ、の、のっ信春は、…あまり成実殿のことがっっす、す、すきではないのです……ッ!」
「国士無双と名高い伊達成実殿の前じゃ俺の策もめちゃくちゃだからな」
つまり無茶苦茶に暴れて勘助兄ちゃんの軍略の邪魔をしてるナルちゃんがすっげぇ目障りって事か!
…え、ノブ→勘?
うそぉ!公式ってノブマサじゃないの?!それはそれで萌えますけど!むしろこの場合ノブ→勘→ナルの一方通行ですよね!むふふーもえ!
「嫉妬ハァハァ」
「違いますよ、失礼ですね」
「んもう素直じゃないんだから!」
ニヤニヤしていると相変わらず気持ち悪い顔でニヤけてますね、と言われた。
相変わらずひでェ!ぐふっ
「…ところで、さっきの音は何だったかわかるか?」
じりじりと火花を散らしていた二人を見かねて勘助兄ちゃんが話題を変えた。
「わ、わ、わわ我々もその音が気にっっ…気になって…!」
「俺たちもだ、それで丁度成実殿と会ってその話をしていた」
「うーん?」
どがぁぁぁあんッ!
「うぉおおおぉおおおぉおおお!!」
「な、なに?!」
想定してたのとはまったく掛け離れた方向から爆音と絶叫が聞こえてきた。これにはみんな驚いて見つめ合ってた二人まで音のした方を見ている。
それが何の音か思い当たる前に、続いて地鳴りがして赤いなにかがぶっ飛んで来て…って
「ぶつかるぅぅうう!……なんてなァァァァ!」
吹っ飛んでくる赤い何かが激突するより早く私は本能的に回避した。何に当たることなく地面に激突した赤い…つか幸村はヤムチャよろしく地面にクレーターをつくってダウンしている。
「ふ、ふ、ふふふ…ッッふははははは!ついに…ついに回避ったぜェェェ!」
これまで吹き飛んでくる幸村に何度ぶつかったことか!n回目にしてようやく…ッようやく回避!!私知らず知らずのうちにレベルアップめちゃくちゃしてますやん!!
今なら政宗の飛びつきだろうとナルちゃんの踏み付けだろうと信長様のマントから生える刺的なものだろうと回避できる自信があるよ!
ふははははは俺にひざまづけぇぇぇ!
なんて高笑いしてたら幸村の槍がすぐ真横を通過してった。
「……自重しろって神様までそんなエグい事勧めてくるわけね…!」
本音としては自重したくないんだけど、仕方ないから相当譲歩して高笑いは自重しておこう!
高笑いを止めた私は吹っ飛んでいった幸村の槍の方を見る。すると奇跡的な軌跡を描いて吹っ飛んだ幸村の槍はこれまた天文学率的な奇跡で幸村の側に落ちていった。
…幸村と幸村の槍投げた人すげぇコントロール良いな!?
「なに?今の音…って旦那ぁっ?!」
さっきの爆音を聞いて現れた佐助は私を見、ノブさんから目を反らし、そうしてようやく地面に倒れ込む幸村が入ったらしい。
慌てて駆け寄る佐助に、続いて現れたのはかすがとコタ。
かすがは庭を見て深いため息をついて、コタはぐるりと顔を巡らした後無言で(いや、いつもだけどね)腕を組んだ。
「………なんだこれは…」
「……」
「あー…、上杉のに北条の。これはあとでちゃんと直しておくから…」
「ほっほほほん、本当にもっ、もっもうしわけ、ない…です…!」
ヘコヘコ頭を下げたマー君に、かすがはもう一度ため息をついてそれから私をみた。
「で、お前か、真田を吹き飛ばしたのは。」
「いやいやいや!なんでそうなるの!」
「シズカならばそのぐらい仕出かしそうだからな」
失礼な!いくら私がレベルアップぅ↑したからって幸村を吹き飛ばせるぐらいの体格はねぇですよ!
そう伝えるとかすがは「冗談に決まっているだろう」と真顔で返してきた。
「真顔で言われたら冗談ってわかんないじゃん!」
「それを狙った」
「ムキャァァーっ!」
なんなかすがが酷い事言ってくるんだけど!あらやだナニコレ反抗期!?
楽しそうにニヤニヤ笑うかすがを恨めしく思ってたらいつの間にか真横にいたコタが頭をなでなでしてくれた。うほぉコタってばまじでいい子!
「………」
コタは私の足元にいた与一の頭も撫でるとほんのちょっぴり口端を持ち上げて満足そうにまた腕を組んだ。
で、だ。
私達の背中側、つまり幸村が吹っ飛んできた方向でジャリッと砂をにじった音がして振り返ると、そこには不機嫌オーラMAXのオクラ…もとい元就様がいらっしやった。
「な、ナリちゃん…?」
「………」
私が呼び掛けてもなんの反応も無い。
あまりに不機嫌に幸村を睨むから佐助も幸村を背に思わず身構え…主従もえ!!ハァハァやばいナリちゃんが佐助見てニヤリと笑ったとかこの絶体絶命感!ハァハァ
「姉ちゃん気持ち悪い」
「ぐはっ」
久しぶりに与一にきッつい一言を言われてのけ反っていると、同じ幸村が吹っ飛んできた方向から政宗にチカちゃんが、これまた同じく不機嫌そうにやってきた。
「ちょ…なんでみんな不機嫌なの?」
誰からも返事が返ってこないので、後ろに私は数歩後退する。
な、なんかみんな怖いんだけどぉぉお!
殺意ムキムキなデカちびちゃんズに引いていると勘助兄ちゃんとマー君が私達の前に立って庇うような姿勢をとってくれた。ありがたい!!
「……真田ァ、Good jokeだったぜ。ホント、…笑えなくてよ」
いつもより低い声で政宗が口を開く。
政宗に名前を呼ばれて幸村が殴られたんだろう頬に手を当てながら身を起こした。
「旦那、大丈夫?」
「あ、ああ…」
警戒する佐助が邪魔だとガンをつけながら政宗が指をバキバキと鳴らす。その政宗の横から完全ヤンキーモードのチカちゃんがガラ悪く口を開く。
「てめェ、もう一遍言ってみろや!」
「日輪に捧げられたいか…!」
完全に見下した視線を幸村に向けてナリちゃんも参戦する。
この4人の介入で完璧背景となってしまった私達は視線だけで「なに?どーしちゃったのこの人達」「しらねw」と会話して首を傾げた。そんな怒りのボルテージが最高潮なのをみて本当に楽しそうなニヤニヤを浮かべたナルちゃんは声を上げる。
「ちょっと梵てばどうしたの?」
「うるせぇ成実!お前にゃ関係ねぇ!」
質問に答えない政宗にナルちゃんは「じゃ、俺にはわっかんないねぇ」と頭の後ろで手を組んでにへら~と気の抜ける笑いを浮かべた。
「おー、やってるやってる!」
「慶次!」
楽しそうに笑いながら観光気分の慶次が、続いてお館様に謙信様に氏政おじいちゃん、小十郎がのんびり歩きながらやってくる。
幸村が激突したおかげで庭にあいたクレーターを見つけた氏政おじいちゃんが、「お、おぉ…」とよろめくのを後ろにいた小十郎が支えて、ぱっと見心優しい893のワンシーンのようだった。
…このメンバーでいたら氏政おじいちゃんいつか気を失ったまま帰ってこないんじゃないかなんて凄く不安になりました!
「で、前田。アレは一体なんだというんだ」
たしか北条・武田・上杉・伊達・長曾我部・毛利+慶次で話し合いしてたんだよね?と慶次に尋ねると慶次は微妙な笑顔を浮かべた。
うぎゃお!その緩い笑顔超もゆるす!慶次も上着のひらひらしてる部分をめくりたい衝動に駆られながら慶次の話に耳を貸す。
「なんて言うか…、普通に話してたんだよな?」
「あぁ。そうしたら長曾我部がお前と真田の関係を聞いたんだ」
慶次に相槌をうたれた小十郎が頷きながら頬をポリポリと掻く。私と幸村の関係…ってぇと…。
「許婚のこと?」
「あぁそれだ」
「シズカちゃんが認めたってのは本当の話なのかい?」
「まぁ、一応……?」
私の言葉にニンマリと慶次の笑みが深くなる。そりゃめでたいね!と言って慶次は楽しそうに笑った。
別に結婚が決定した訳じゃないから今から祝われても、っていう事を伝えたけど慶次は「そうかい、あの初な若虎がねぇ」と聞いちゃいない。
人の話聞けよっ!
「貴様のような猪武者が我らの義兄になるなど…笑止!」
「武田のオッサンが言ってるだけだと流してたが、お前本気で言いやがったのか?……Haaaah、ッざけんなよ真田ァ!」
「軍議の場で惚気るとかナメてんのか!?若虎は随分躾がなってねえな!」
もうまったく佐助が眼中Guyになってるらしく殺気というかそんな感じのオーラは幸村にだけ向かっている。佐助は会話の流れから騒動の原因を察したらしく、構えを解くとヒラヒラ手を振って幸村の肩を叩いた。
「…ま、越えなきゃならない試練ってヤツだね」
頑張ってね旦那ー。
ポカンとする幸村を尻目に佐助がこっちに向かってため息混じりに歩いて来た。
「…おかえり?」
「本っ当シズカちゃんてば随分愛されてるねぇ」
やれやれ…と肩を竦めて諦めたような笑顔を浮かべる佐助。
愛される?いやいやこっちとしては幸村を庇う佐助なんつー素敵シチュが見れて大満足っつーか。
で、佐助にまで置いてかれた幸村は状況をまったく理解できてなさそうだったんだけど、突然政宗からの蹴りがきて後ろに素早く下がった。
「な、政宗殿!?いきなり何を!?」
「てめえの覚悟試させてもらうぜ…おい成実ェ!」
「おっけー梵!」
ナルちゃんは政宗に言われて待ってましたと言わんばかりに、どっから出したのかナルちゃんが持ってた曲刀を2本とも投げ渡す。それを空中でキャッチした政宗は口端を持ち上げて笑うとそのまま真っ直ぐ幸村に突き付けた。
「俺と元親、元就からの攻撃に堪えきって見せろよ」
それなら認めてやったっていいよな?と瀬戸内組に尋ねれば頷きが2つ返ってくる。いやばりめっちゃカッコイイんですけどね!?ちょっとまってよ!!結婚することになるかもしれない張本人、つまりの私を放置して勝手に会話を進める政宗達。
「うぇん皆私の意見無視する!」
「それはそれは残念ですね」
「慰める気無しだよねノブさん」
「おや分かりましたか?」
「そりゃそんな笑顔で言われたら解るよ!」
「ヌフー隠す気もサラサラ無いみたいだよねぇー。やなやつー」
「当たり前ですよ、というより貴方みたいな方にも思考能力があった事にに驚きです」
バチバチと私を挟んで睨み合う2人にため息をついてチラッとマー君に助けを求めてみた。
マー君は何度かあわわわ…!と呟いてたけど、それから決意したみたいに口を結んで私の腕を引っ張った。
バランスを崩した私を勘助兄ちゃんが支えてくれる。
「や、ややめてお、け…信春…っ」
「…おや、貴方が言ってくるなんて珍しいじゃありませんか、昌景。」
ビクビクするマー君の額を人差し指で小突いて(ぎゃぁあおぉぉお顔近いぃぃいい!)ノブさんは笑う。鬼畜ノブさんはぁはぁと内心悶えていたら、チカナリ組の武器を持ってきたお館様が二人に武器を手渡した。
「幸村よ!これもシズカを娶る為の試練じゃ!」
「はッ…!果してみせまさぁぁあぁああぁ!!うぉぉおお!!み な ぎ るぁぁあああああ!」
お館様の一言で幸村の闘志に火がついたらしい、幸村はビリビリとするぐらいの大声で吠えると目の前で睨みつけてくる3人を見据えた。
いや、あのお館様も…私別にまだ嫁ぐって決めたわけじゃ…
「試練とあらば真田源次郎幸村!受けて立ちましょうぞ!」
「…okey、そうこなくっちゃな…。奥州筆頭伊達政宗!さぁpartyの始まりだぜ!」
「鬼ヶ島の鬼…長曾我部元親ァ!ナメんじゃねぇぞ?!」
「我は毛利元就!貴様を瀬戸内の底に沈めてやろう!」
それぞれのポーズを決めてやる気満々な4人。
本当にものすごくかっこいいんだけど、本当に誰も私の言葉なんて聞いちゃいないので、もう特に何かを言う気も起きない。
ピリリとした空気が張り詰める中、真っ先に動いたのは…チカちゃんだった。
「おるァ!」
真っ先に動き出したチカちゃんの重そうな碇がぶぉんと風を切った。地面を割るんじゃないかというくらいの重量感がある音がして足元の砂が巻き上げられる。
幸村はそれを後ろに下がって避けた。が、間髪入れず、政宗が一気に間合いを詰めて、一閃、更に踏み込んで残光を残していく。
「ひゅッ」と風を切る鋭い音がして幸村の髪が少し舞う。
しかしそれも幸村はかわした。おおお避けた凄い!
フッと幸村が短く息を吐き出して、反撃の構えを見せた。
一瞬の静寂があって、拳を握りしめた幸村だけど、次の瞬間には影が落ちていた。
瞬時に見上げるとチカちゃんの背中を踏み台にして緑が跳び上がっていて、そして…
ゴンッ
「ぐぁっ…!」
鈍い音がしてナリちゃんの全体重がかかった拳が幸村の頭のてっぺんに落ちた。
い、今の普通に痛そ…ッ!
ナリちゃんのチョップとか叩く力の強さを身を持って分かっている私は思わず息をのんだ。
ナリちゃんのえぐるようなゲンコツに殴られた場所をとっさに押さえた幸村だったけど、殴ったナリちゃんはナリちゃんで痛かったらしい。
声にならない声をあげて、幸村を殴った右拳を震わせてる。
あー…石頭だもんね幸村…。
痛みに悶える幸村の盛大なスキを東西アニキズが見逃す筈もなく…
「スキだらけだぜ若虎ァ!」
あっという間に囲んで足蹴にしてますた。
…ご愁傷様です、ちーん。
「…大丈夫?幸村…」
「ら、らいろーうれおある」
「あんまり大丈夫じゃなさそうだね」
あのあと文字通りフルボッコにされた幸村は、私と勘助兄ちゃんと与一の必死の仲裁によってなんとか一命を取り留めた。いやマジで一命を。
で、みんなが庭のクレーターとか吹き飛んだ植木を埋めてる間、私は幸村の怪我の手当てをしていた。
いくらお館様との殴り愛で慣れてるとはいえ、放置してたらまずいだろ、コレな状況なのに幸村は穴埋め手伝おうとするしね!
デカちびちゃんズ、どんだけ本気で殴ったんだよっていうね!
「あー、口腫れてるし」
「ほれはおやはははられおらる」
「うは日本語でおk」
多分今のは「これはお館様でござる」的な事を言いたかったんだろう。今の分かるとかやっぱり私テレパシー使えるんじゃね?!
与一から預かった塗り薬を幸村のアザになってる部分に塗ったくって布を巻き付けたら、幸村の眉間にギュッとシワが寄る。
「あ、ごめん痛かった?」
私の問いに幸村は首を左右に振って(与一が強制的に)口に突っ込んだ布を出した。与一曰く「口から血が出てるのに叫んだりしたらもっと出血が酷くなる」だとか。
いつどんなタイミングで絶叫するかもしれない幸村にはいいアイテムである。よし、これから叫ばれそうになったら口に何かを突っ込んでやろう。
「…ってハッ!口に突っ込むなんてなんだかエロスな響き!」
真昼間からイヤン!なんて一人でテンション上げてたら幸村が胡座をかき、両拳を地面につけて頭を低く下げてきた。
ゴンッてまた勢いのある音がして、私には幸村の頭頂部だけがみえる。…あ、たんこぶ。
「っシズカ、誠に申し訳なかったでござる…!」
「…は?」
え、なんで謝られたの?!てゆーかそれ謝ってる姿勢だったの!?てっきり政宗に曲刀の柄で殴られた後頭部が痛いのかと思ったよ!
「某は…あの御三方に勝てず…試練も果たせずじまい…シズカの前で醜態を晒してしまった…」
「いやあ…まあでも仕方ないんじゃない…?」
いいながら幻覚の耳としっぽが垂れていく幸村。
そんな凹む事かなぁ…、武器持ち×3(怒りブーストマックス)に武器無しで勝てるなんてハナから思ってなかったよ私…!もしあれに勝ってたら幸村に私の分まで団子捧げてたね!絶対!
でも幸村はやっぱり気にしてるみたいで更に深く頭を下げる。
「しかし某は…あのお三方に認めてもらわねば…っ」
「いや、そこまでせんでも」
だって別に許嫁だって仮免許みたいなものでさ、そもそもお館様的には「幸村が成長するために必要なこと」として据え置いてるだけだし、そんな認めるも何も…。
そういう顔をしていたのか、幸村は私の顔を見ると首を左右に振った。
「シズカと離れている間に…お館様から全てをお聞きした。その…シズカが遥か未来より参られたことも、それが佐助の手違いだったということも。…そして、帰り方も分らぬままだ、と」
「あ…」
…あ、あれ?まだ話してなかったんだっけ?なんかすっかり話した気で居たんだけどなぁ…。べっ別に幸村にだけ隠すつもりなんて無かったんだから!ただ言うの忘れてたっつーか!
「――それに先の小田原急襲の折……シズカは…自ら豊臣のところへ行き、兵を引かせたとも」
「えええ…?」
いや…なんかそれは美化しすぎでは?
あれはだってドS仮面参謀竹中半兵衛の作戦っていうか、私は目の前に合った選択肢を選んだだけだし、そこに迷う理由もなかっただけでさぁ…。
なんだか幸村も微妙に様子がおかしいことに気が付いて私は眉を寄せる。なんだなんだ、なんか私の知らんところでまたなんか起きてるかコレ!?
「某は、シズカのことをもっと知りたいのだ」
「……え」
「お館様が我らを……許嫁として宣言なされたのはきっと”努めを果たせ”ということに違いない!」
努め、なんて重たい単語が出てきて私は瞠目する。
私自身このトリップをすごい楽しんでいるし非常に萌えさせていただいております故!幸村には申し訳ないけど、謝られたって全然響かない。
とにかく私は気にしてないって伝えなきゃ。
「ゆきむ」
「お待ちくだされ!もう少し…もう少しばかり聞いてほしい。……”努めを果たせ”…そう思っていたが…どうしてか、シズカが豊臣の元へ行ったと聞いてから…少し違うような気もしている」
「……」
「故郷を奪われたも同然だというのに、佐助にも笑いかけるその理由を、自ら進んで豊臣の元へ向かう気概も、…某自身がシズカのことを知りたいのやもしれぬ、と」
幸村の喉が震えた。そして包帯を持ったままだった私の手を握り締めると、爛と煌めく大きな瞳で私を見てきて、
「だから」
……あ、やば。目が反らせな
「この時代にある限りは…某と共にいてくれぬか」
ソレガシトトモニイテクレヌカ
SOREGASITOTOMONIITEKURENUKA
…。……えーっと?なに?今の何語?
そこまで言って幸村は私との距離が近くて頬を赤くさせた。それでも幸村がいつものように「は、破廉恥でごさるわぁぁああああぁああ!!」と絶叫して逃げる事もなく、ただじっと私を見ている。
…………えっもしかして返事待ちとかいうやつだろうか。
いやいやいやこんな「俺と同じ墓に入ってくれ!」的な発言したけど言ったのは天然ワンコ幸村だぞ落ち着け自分!
今のはきっと佐助とか佐助とか佐助とかに言うための予行練習なんだようん!
「やっ……、やだなあ幸村ってばあ!!!!なんか言う相手とか!場所とかいろいろそれ間違ってるんじゃない?!ほら、本命は佐助とか、佐助とか、政宗とか!あと佐助とかさ!!!そんなこっ…告白?みたいな!!」
「――はッ!?こっっっ、こここ、こくはくゥ!?!?」
「そそそそうだよ!なんかさっき政宗たちに怒られてた時もそうだけど、幸村ちょっとおかしいって!!」
「ち、違うでござるっ!某はっ、こ、これはっ、さきほども…ッッ!!礼儀を通すべきだと思い…ッ!!」
っっっ!失礼仕ったでござる!!!!!!!!!!
とんでもない爆音で声をひっくり返しながら叫んだ幸村は、そのまま部屋を飛び出していってしまった。
あまりの勢いに障子が外れてバターンッッと倒れる。その風圧が私の前髪をどこかへ吹き飛ばして、ようやく落ちてきたころには幸村のエンジン音みたいな足音ははるか遠くへ行っていた。まるで嵐だ。
「――…本当に何事よ」
握られていた手首がとても熱い。
少しだけその熱の残りを見ていたけど、ここが甲斐じゃなくて氏政おじいちゃんのお城だったことを急に思い出して、私はあわてて立ち上がった。
「あばばばばまじで氏政おじいちゃんの心臓が止まっちゃう!!」
「あ、俺様がやるよー」
「どっせえええぇぇい!!」
なんか落ちてきたァァァァアア!!
いきなり天井から振ってきたのは言わずと知れた迷彩オカン、佐助だった。佐助は今し方幸村が外して行った障子を「よいしょ」と直すと、いつも通りに頭の後ろで手を組んで笑顔を貼付けた。
な、なんでここに?!つか佐助も一緒に穴埋めしてたよね!?
そんな私の言いたいことを読み取ったのかアハーと佐助は笑った。
「今向こうは俺の分身が行ってるよ」
「……へ~、屋根裏に潜んで盗聴ですか、ぃやらしー」
「主を見守るのも仕事のうちってね」
そんないちいち分身作ってまで幸村の心配?!そそそそんな心配しなくても私は幸村とらないよぐふふふふるふりゅふっ!ニヤニヤするのを隠さずニヤついていたら佐助にデコピンされた。
うごぅ!なにげに少し痛かった!
「ニヤニヤしないの!」
「あーあ、今ので頭蓋骨陥没したー佐助のせいだー痛いなぁー」
「嘘つかない!」
「いでッ」
こいつ…ピンポイントで同じ場所狙ってきやがった!しかもさっきより強いぞ…!まじで陥没したんじゃねぇのコレ?!
ジト目で佐助を見れば佐助は楽しそうに口端を持ち上げている。
私の視線をハハハ、と笑った後佐助は急に真顔になった。
「でさ」
「うん?」
「全国行脚してどうだった?」
「え?」
「見たこと、教えてよ」
あ、これ豊臣ゼミでやったやつだ!
あまりに覚えがありすぎる視線を受けて、私は逆にまっすぐ佐助の顔を見返した。佐助は私の対応に少しだけ眉を吊り上げると、またすぐに表情を消す。
「……」
「……」
また静寂。
そしてやがて先に折れたのは佐助だ。
「はぁ」
「ため息つくと幸せ逃げるよ~!」
「誰のせいだっつーの」
ふっふっふ。秀吉&半兵衛のゆるゆる尋問道中を耐え(てないけど)私の実力をなめてもらっちゃ困るね!ドヤ顔でふんぞり返ったら、また佐助がデコピンの構えをしたので私はあわてて姿勢を戻した。
「な~んかヤな感じ。シズカちゃん豊臣で何吹き込まれたワケ?」
「べつに?柿とお茶美味しかったなってくらい。あとはー…秀吉は見ての通りすごい人だったし、半兵衛はまつ毛がながい美人さんだった」
私のごまかしなんかわかってる、という視線が佐助から飛んできているけど、私はそれを無視した。ふーんだ。余計なこと言ったら政宗から頭ミシミシされちゃうしナリちゃんから拳骨とんでくるもん!わが身が可愛いから絶対言いまーせんっ!
佐助は目を少し動かすと、ニパッとものすごい人当たりのいい顔を浮かべて手のひらを開いた。
「まっ旦那の”イイナズケ”様だからね、いくら豊臣がいいところでも、もちろん旦那の味方でしょ?」
「ち、違うよ!私はその……友達だし!」
「へぇ~友達、ねぇ」
佐助の声が、少しだけ低くなった。私はその声に心臓がびくりと跳ねた。
くっっ!だから!頭のいい会話を私に仕掛けてくるのをおやめください!!
佐助は相変わらず…いや、なおのことくっきりと笑顔を貼り付けて私を見ている。
「…その割にはさっき顔真っ赤だったけどね?」
「そりゃあ、……イケメンに突然言われたら誰でもそうなるでしょ」
「うんうん。わかるわかる。旦那がモテるのも納得ってかんじ」
私はこの目が笑ってない、底冷えするような佐助の笑顔が嫌だと思った。
なんか壁を急に作られたみたいな、他人と吐き捨てているような。
…もしかしたら今までも、こんな目をして私を見ていたことがあったのかもしれない。私が気が付かなかっただけで。時々刺さる冷たい視線は全部こういう鋭さがあったのかもしれない。
分からないことはいっぱいあるけど、でも佐助とこんな会話も、腹の探り合いもしたくないことだけは確かだった。
「……ねえ、佐助」
「なに?」
「今…私のことちょっと疑ってるでしょ」
「まさかぁ。俺がそんなことするように見える?」
「見える」
「お、今日はやたら鋭いね。正解正解っ」
私的には結構クリティカルなことを聞いたつもりだったのに、佐助は悪びれもせずに言って、手近な壁にもたれかかった。あまりにいつものトーンのまま刺さることを言うものだから、私はBADコミュニケーションやらかしたかと思って背中に嫌な汗が浮くのを感じる。
利があるから、仲良くしてるだけ。
豊臣で感じたあの寂しさがまたむくりと頭をもたげてくる。
知らず知らずのうちに視線が落ちてしまっていて、慌てて目線を上げると佐助が薄っぺらい笑みのまま私を真剣に見ていた。
そして「今度こそ終わり」と言いたいのかわざとらしく指をパチンと鳴らして見せる。
「――ま、冗談半分だよ。俺は“敵”を疑うより、“味方”を確かめたいだけ」
「……それ、どう違うの」
「違うんだよ、そういうのは」
「……」
佐助は壁にもたれるのをやめて、オーバーなくらいに肩をすくめる。
そしてそのままチェシャ猫みたいにニヤァとした笑みを浮かべて悪戯っぽい表情になった。
「それよりさ。旦那、ホントに初心でかわいかったよなぁ。きいた?!“共にいてくれませぬか”だって!いやああの小さかった旦那がねぇ。…なんだか時の流れ感じちゃうなあ」
「……」
「で、シズカちゃんとしてはどうなの?」
「へ?」
「旦那からああ言われてさ、『トキメいちゃった♡』とか『キュン☆』とか、そういうオトメ心みたいなやつ!どきどきして夜眠れなさそう?」
「いやそういうのは…」
全然ないですね…というか今のあまりにお茶目なネクロマンサー30歳すぎて思考が持ってかれたんですけど!?
そう言うと佐助は「あーらら、旦那ってばカワイソ」と笑った。
「ま。でもシズカちゃんが笑って答えてくれてるうちは、旦那も大丈夫でしょ」
「……う、ん?」
「やーやー、まあこっちの話」
くるりと佐助はそう言ってかかとを軸にくるりと遊ぶように向きを変えた。
佐助の刺さりそうな髪がこっちを向いて、ひらひらと振られる手の甲が見える。
「じゃ、俺様仕事に戻るね」
そろそろかすがに分身なのバレる頃だろうし、そう言い残すと佐助は一瞬にして姿を消した。ほんの少し風が頬を打つ。また部屋がシンと静まり返って、私のため息が大きく聞こえる。今度こそ幸村にも佐助にも置いて行かれてしまった。
「……与一に返さなきゃ」
とりあえず散らかった与一の治療セットを片付けながら、私は深く考えるのを辞めようと思った。
今日の夕飯なんだろうなぁ。チカちゃんナリちゃんがなんか美味しいものを追加で積んでくれたってムキムキの兄ちゃんがいってたから、早く食べたいなぁ。
私は油断するとよみがえってくる幸村の爆弾発言を頭から追い出すべく、丁寧すぎるくらいに片づけをするのだった。