私の神様(仮)
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「に」
「……姉ちゃん、起きて」
「ゔゔんあと5時間……」
「長いよ!!」
「ヘヴッッ」
朝、外でスズメがちゅちゅんがちゅん、と鳴いている。その音をBGMに、与一くんがツッコミがてらお腹の上に飛び乗って来たので中身が出た。
「姉ちゃんこれ!!何?!」
「な、なにが?ごめん寝起きで目が開かなくて…」
「こーれ!囲炉裏のところに置いてあった手紙だよ!」
外に出た中身を戻して、朝から元気はなまるな与一を見ると、彼は何やら必死に紙を押し付けてくる。
手紙?と思って紙面を見るが……これは……
「文字…??」
「えっ」
「ごめんマジで全然読めないわガハハ」
「……」
「えっいやんそんな目で見ないで⭐︎」
昨日からなんか半眼しか見てないんだけど?!君のきゅるんきゅるんお目目をみせてくれよ!
そもそも現代を生きるピッチピチJKにこんな文字が読めるはずないだろ!
「だって『家は譲る、しばし待て。小判は床下に』って……家を譲られるなんて…!姉ちゃん何者なわけ!?」
「……………いや、それ、ほんとに私宛か?」
「えっ違うの?」
「ゔゔーん……」
いやまぁ、私がこの家で勝手に寝込んでただけで別にこの家が私に譲られたわけではないような……?
うーん……
「とりあえず、ごはんにしよう?!」
とにかくお腹が空いた。そりゃ夕飯食べてないもんな!
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私はとりあえず与一君に教わった通り井戸水で顔を洗い(信じられないくらい冷たかった)カバンの中に入れっぱなしだった購買のパンを取り出して、与一くんに甘いのとしょっぱいのどっちがいーい?と問う。
即答レベルで「甘いの」と返ってきたので、私はクーリムパンを渡した。
「はいどーぞ。それめちゃくちゃ美味しいよ」
「??なにこれ?」
しまった、そうだこんな純和風な場所にパンなんてあるはずがなかった!
「えーっと、なんていうか…西洋…?南蛮……?の食べ物」
「……この透明のつるつるしたやつは?」
「あーーーっとそれも……物を入れておく袋…」
「……」
「……」
「……姉ちゃん本当に何者…?」
「ま、まぁとにかく食べてみてよ!美味しいから!ねっ?」
フィルムの開け方を教えてあげて、それから与一くんにほらほら食べないと私が食べちゃうぞ!と促す。
未知の食べ物にかなり警戒していた様子だったが(完全にネコチャンだった)(きゃわ)口に入れた途端目を丸くしてそのまま停止した。
クリームパンから空気がぷしゅーっと抜けた。
「な、なにこれ、美味しい…!!」
「でしょー?私のお気に入りなんだよそれ!」
人気の変わり種系は別にあったけど、それを支えるモブとしても一躍有能枠、何にするか悩んだらとりあえず甘い系はこれを選んどけ、枠というか!
ちなみにしょっぱい系でオススメなのは意外ですがミートパン。これいっつも残ってるけどマジうまい。育ち盛りの胃にもぴったりのボリューム感。
目をキラキラさせてクリームパンを口いっぱいに頬張る与一くんにニチャリとした笑顔を向けて、かくいう私はひっくり返してぐちゃぐちゃになった弁当をつつく。
流石にひっくり返してる物を人にあげるなんて不躾なことしませんよ。
早々にクリームパンを食べ終えた与一くんは、まじまじとフィルムを眺めて、私の弁当箱の金具(あの蓋の部分のやつね)がバコン!とデカい音を立てたのに肩を跳ねさせて、こちらもまじまじとみていた。
うふふふ美少年に見つめられて…お姉さん穴が空いちゃうぞ⭐︎
「ねぇ、この透明のやつもらってもいい?」
「いいけど…ちゃんと洗ったほうがいいよ」
「わかった!」
大きく頷くと、与一くんはパタパタと外まで駆けて行ってしまった。
あんなの貰ってどうするんだろ。井戸水をカラカラと引き上げる音を聞きながら考える。
まぁ、考えた所でなーんも思い付かないんですけど!
私がご飯を食べ終えると同時に与一くんが駆け戻ってきた。
本当に丁寧に洗ってきたらしく、袖周りがちょっと濡れてる(そんなところもキュート)それ何に使うの?と聞いたら「珍しいから取っておく」とのこと。
うわわわわ小学生あるあるじゃん!!なんか面白い形の石とかとっといちゃうやつだ!ぐぅかわ!!
「与一くん…キュート……最高……」
「姉ちゃん、…もしかして南蛮の方の人?」
「へ?」
「おいら、こんな透明で薄い物みたことないしコレも南蛮ものなんじゃない?」
海の向こうは文明がすごいって聞いたことあるよ!と嬉しそうに与一くんは言う。
実は私は、宇宙人未来人超能力者で、それは文明の利器の1つだ。そんなキラキラした目でこっちを見られても、この時代の南蛮は産業革命とかあったくらいとかなんじゃなかろうか。
「うーん。信じてもらえるかわからないんだけど。実は私未来から来たんだよね」
「……は?」
「今から…大体…400年くらい?後の時代なんだけど」
「???」
「あっ、その顔きゃわゆ撮っちゃお」
頭の上に大量のクエスチョンマークを浮かべた与一くんがあまりに可愛くて手癖で写真を撮ると、与一くんはきゅうりを置いた猫みたいにバビョッ!と飛び跳ねてすごい勢いで後退り、家の隅で体を小さくさせた。
「なっなっなっ、な、何?!?」
「あ、ごめん。ええっと…これがその400年くらい後の時代でみんな持ってる物で」
ほら、こうやって風景を絵として…残しておけるんだよ!と言って画面を見せるとさらにギョッとした顔をして、それからまじまじと画面を見て、「おいらってほんとにこんな顔してるんだ…」と呟いた。そうだよ君はプリティフェイスだよ!
「じゃあ姉ちゃんほんとに未来から…?」
「イエーーース!なんか、気づいたらここにいたんだよねぇ」
「……」
じっと私の顔を見上げてくる与一くんの大きな目を見返す。何を考えているんだろう、そんなに見つめられると穴が開いちまうよ……。
やがて与一くんは大きく一つ頷くと私にスマホを差し出した。
「わかった、信じる」
「えっ?!」
「まぁなんか姉ちゃんの格好もこの小さいやつも、それから…くりぃむぱん?も初めて食べたし」
それに、と言葉が続く。
「なんか、姉ちゃんって嘘つく人じゃなさそうだから」
そしてへらり、と力の抜けた笑みを浮かべた与一くん。
私はその言葉と笑顔に一瞬涙腺が緩まるのを感じて、それからぶんぶんともげるぐらいに首を振った。
「っじゃあさ、じゃあさ!一緒にこれから生活しようよ、そんでさ、ひとりよりふたり、ふたりよりたくさん!っていうし、一緒に頑張ろ!」
「う、うん…!」
「よーし!いい返事だ!じゃあ与一くん改め、与一!えいえいって言ったら一緒におー!って返して拳を突き上げてね!!」
「う、うん?」
「いくよー!せーの、えい、えい」
「「おーーっ!!」」
お母さん、新しい家族ができました!!