私の神様(仮)
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「 あ 」
海上戦となった今回の急襲。
我が毛利水軍に海上戦を挑むとは、愚策もいいところだ――そう思った。
風は逆、潮も味方せぬ。
それでも、海は我らの庭である。負ける道理はない。
やがて、沖に見えた黒い影。
数は聞いていたよりも少ない。
総力戦になると踏んでいたが……これは陽動か?それとも誘いか?
愚策を仕掛けてくる判断の鈍さといい、違和感が胸をよぎった。
元親も同じことを感じていたらしく、「妙だな」と隣で小さくこぼれるのを聞く。
攻め込むべきか、待つべきか――その刹那。
海の向こうに、巨大な影が現れた。
陽光を裂き、風を鳴らす。
あれは……本多忠勝だ。
徳川の懐刀であり、戦国最強とも噂される存在だ。
なぜここに?知らぬうちに織田と徳川が手を組んでいた?
それとも我ら共々沈める気か?
判断の暇もなく、本多が手をかざした次の瞬間。
ドガァァン!!
織田の帆柱を粉砕した。
閃光が走り、巨大な黒船は一瞬で戦闘不能に陥った。
あっけにとられているうちに、織田の船団は一斉に方向を返して引き上げていく。
――何が起こっている。
理解が追いつかぬまま、我と元親はその場に立ち尽くす。
やがて、海上を裂いて何かがこちらへ飛んできた。
陽光の中で揺れる小さな影。
あれは…………
「ナリたぁぁぁぁあん!」
……なんだあれは…
私の神様(仮)
~S線上のC&M~
機動戦士本多忠勝のおかげで、一瞬にして戦闘終了となったのを見届けた私達は、チカちゃんのあのやたらごちゃごちゃした家紋の描かれた船へ向けて空を飛んでいた。
下を見るとこちらをポカンと見つめている2人に自然と顔がにやける。
へ、へへへ…前回の政宗と違って今回のナリちゃんは心構えができてるからね!おしゃぁ!いつでも飛び掛かっておいでナリちゃん!
あとはやよっちゃんさえいればチビちゃんズ勢揃いだったんだけどなぁ…。しかしいくら私のショタレーダーでも、この広い日本の中からじゃ見つけられないし…いつか探しにいったげるからねやよっちゃん!!
なんて意識を飛ばしていたら何時の間にやらかなり甲板が近付いてきている。ヨホホこの高さなら跳べるんじゃね!?
なんかさっき忠勝に滑り落ちるなよって言われた気がしたけど、思い立ったらすぐ行動!精神で私は「とーう!」と甲板に(さほど高さはない)ジャンプして華麗に着地して見せた。
「もぎたてフレッシュ☆キュアアボガド参上!」
『……………』
はいシラけたー。
背後で忠勝がズゴゴゴと音を立てて着地する音だけが響いてるのがなんか余計に虚しい。
しょんぼりしつつポーズを解除すると目の前にほんの若干見上げる程度に背の高い緑が立っていた。
まだポカンとしている彼を復活させるべく、ニンマリ笑顔を浮かべて私は言う。
「お久しぶりだね、しょーちゃん」
「……………」
「え?反応なし?!」
まさかの人違い?!だとしたらなんて恥ずかしいんだ自分!
「……。…あ…、あね………うえ……?」
「良かった!人違いじゃなかった!」
今だポカンとしたまま私を見るしょーちゃんこと毛利元就さんの呟きに大きく頷けば彼は弾かれたように私を真っすぐ見つめた。
さぁ!私の胸に飛び込んでOIDE!!
両手を大きく広げてナリちゃんを受け止める姿勢をとる。
後はナリちゃんが飛び込んでくるだk
「シズカ姉ちゃーーん!!」
「げぼっ!」
バゴンッ!
予想外な方向から突如巨大な何かが自重しないスピードでタックルしてきた。
そのまま私は横に大きく吹き飛ぶ。
な、なんかぶつかってきたんですけど!
ていうか甲板におもっきり激突して痛いんですけどぉぉ!!
なんだし!誰だし!と激突した原因を見たら、白がいた。
「シズカ!シズカ姉ちゃん!」
「…えと…」
な、なんでアニキ?!
私どっかでお会いしましたっけぇぇぇぇ!ていうか姉ちゃん呼び怖いんですけど!!
あぁハァハァていうかアニキのチクB当たってまいかこれハァハァハァハァ(ヨダレじゅるり)
「…久しぶりに会っても変態は治らないか…」
「ひひぃん!そんな目で見ないでナリちゃんんん!!」
これが噂の絶対零度の切れ味抜群視線ですか!?これは心にぶっ刺さるね!!ぐふっ
「シズカ姉ちゃんっ久しぶりだな!」
「元親!貴様いい加減離れよ!」
びしぃっ
「いてぇ!」
うわ、痛そう。
今の首刀、後頭部にめちゃくちゃ当たったぞ…!
首刀の当たった辺りをポリポリ掻きながらしぶしぶ離れていくアニキ。
そんなアニキを視界の隅に入れつつ私はナリちゃんをガン見していた。
首刀が痛そうだったとか、それより気になったことが…!わ、私の聞き間違い…?!
「いっいいいいい今も、もしかして……『元親』って…よっ、呼んだ…!?」
「?ああ。」
「ほぎゃぁぁあああぁぁぁああまさかぁぁあぁあ!」
まっままままままさかの名前呼びぃぃぃぃい!
え、何もう結婚決定してるから?!だからこその名前呼びですか!
くはぁぁあ萌えぇえええ!
「おっ、おいシズカ姉ちゃん!あまり叩くと船がブッ壊れちまう!」
「はっ!つい無意識に…!」
しかし元親呼び&元就呼びですか…ンフフフ…!なんと萌える響き…ッ!
しかもちゃっかり私まで呼び捨てっていう……ってあれ?
「私アニキに名乗ったっけ?」
なんでアニキ私の名前知ってんだ?
私まだキュアアボガドとしか名乗ってない気がするんだけど……。
…………。
あ!わかた!ナリちゃんが私を紹介してたんだな!
結婚前に両親へご挨拶イベント発生フラグか!
『元就を俺に下さい!』
『駄目だ!私の可愛い可愛い可愛い可愛い元就をお前のような素敵チクビに渡せん!』
『お父さん!』
『元就は黙っていなさい!』
『っ…』
『…元親君、君も一端の海賊だというなら何故わざわざ私に挨拶に来た?』
『……?』
『海賊は宝を持っていくときにわざわざ挨拶をしていくのかね?』
『っ!お父さん…それは…』
『………』
『…じゃあお父さん…宝は有り難く頂いてきます!』
『…ふん…好きにしなさい』
『ありがとうお父さん…!』
『じゃあ行くぜ元就!』
『ああ!』
みたいなイベントよね!うまうまな父さん役はむろん私!
ヴァージンロードは私とナリちゃんで歩く!ふふふるへへへへへ
「チカちゃん結婚おめでとう!っとその前に私の可愛い可愛い可愛い可愛い元就を嫁にはやらぁんッ!」
「どっちだよ!」
むはぁ、チカちゃんてばナイスツッコミだね!
私の意見は反対賛成両方だよ!
「んでなんでチカちゃんは私の名前を知ってた訳?」
まさかエスパー!?と半歩引いたらチカちゃんは「えすぱぁ?」と首を傾げた。
うは!可愛いぞアニキ!
そんな会話を何回か繰り返しているのに呆れたのか、いい加減にしろなのかはわからないけど、ため息を交えて、ナリちゃんが口をいれてきた。
「…やはり姉上でもわからぬか」
「は?」
うっすらと笑みを浮かべつつ(のわぁぁぁ笑ったよ奥さぁぁん!)言うナリちゃんに今度は私が首を傾げた。
するとチカちゃんが「…あ!」ぽんと一つ手を打つ。
「俺だよ!弥三郎!」
「…………………。
…………………ワッツ?」
ニコニコとして嬉しそうに名乗ったチカちゃん。
えっと、弥三郎?弥三郎ってなんか聞いたことあるぞ?
…。え?
あははは結論出したくなくって脳みそが思考を放棄してるぜー!
「俺はやよっちゃんだ!」
「嘘だッ!!」
思わずレナっちまったがな!
そ、そんなみみみみみみ認めままませんよよよよよ!!
「い、いくらナリちゃんとの結婚認めてもらいたいからって我が心の癒し聖域にして無敵のやよっちゃんの名を語るとは見損なったぞアニキ!それでもチクビが素敵だアニキ!」
びしぃっと指を突き付けてやるとアニキはがっくり落として、そんでもってもう一回「あ」と声をあげた。
「おら、これが証拠だ!」
アニキの素敵腰から下がってた小さな袋から出てきたのはかなり小さな、いびつなお手玉。
うをををを…!激しく見覚えがあるぞアレ…!
「これシズカ姉ちゃんがくれたんだぜ、覚えてっか?」
「うわぁぁ…できたら認めたくない事実…!」
あんなにも華奢でふわふわしてて超プリチーだったやよっちゃんがまさかアニキなんて…!
私はてっきり別人かと思ってたんだよ…!
きっと目を見開いてポカンとしていたんだろう私の顔を見てチカちゃんはブフッと吹き出す。失礼な!
「久しぶりだな、シズカ姉ちゃん」
「…うん、やよっちゃんもしょーちゃんも久しぶり。元気そうで良かったよ」
「姉上も元気そうでなによりだ」
歯を見せて笑うアニキと目を伏せて薄く笑うナリちゃん。
おお、という事はこれで無事、私はちびちゃんズ全員との再会を果たした訳か。
与一、喜ぶだろうな!
そんな事を思いながら二人の顔をぼんやり見つめていたら背後から機械音がした。
ギュィィイイン
「あ、ごめん忠勝…すっかり忘れてた!」
振り返るとドリルを回しながらずん、と忠勝が立っている。私をここまで運んで来てくれた忠勝は、どうやら今の一騒動の間ずっと待っていてくれたらしい。サーセン!
ブィィィン
気にするな、なんて忠勝ってばエエ子や…!
「で、忠勝はやっぱり家康からの増援か?」
「徳川は今豊臣と同盟を結んでいる。何故我らに加担した?」
チカちゃんが頭の後ろで手を組みながら忠勝に尋ねて、間髪いれずにナリちゃんも口を開く。
頭上遠くにある忠勝の顔を見ると忠勝はうんともすんとも言わずじぃっと私を見ていた。
え、何?私に訳せとかそういうアレなのそういうフラグなの?
キュイイン
「…えっと、確かに豊臣と徳川で友好同盟を結んでいる」
「なんで言ってる事がわかんだ?!」
「私と忠勝の愛の差?」
「……良いから続けよ」
ツッコミを入れて来たチカちゃんにうふっ、と返したらナリちゃんに流された。いやん!
デュルルルル
「その同盟を結んだ理由のうちは勢力を伸ばしてきた織田への対抗、だって」
「…なるほどな、だから俺らの所に来たって訳か」
ふむふむ、と納得するチカちゃん。
でもやっぱ個人的にヒーローズネタで「元親!助けに来たぞ!」が良かったな!忠勝の上に乗って颯爽と現れる竹千代さん!
「うわぁぁ大佐のくせにかっけぇぇ!」
指パッチンな錬金術師大佐!あの人将来心配よね、生え際的な意味で。ププッ
ギィィイン
「ん?ああ、そういえばそうだったね」
「どうかしたか?」
「んにゃぁ、さっきの織田の船に信長様が乗ってなかったよねーって」
「…それは本当か?」
聞いて来たナリちゃんに「出て来てなかったよ」と告げると忠勝が更に「船の指揮は魔王の妻が行っていた以上、魔王は乗っていなかったはずだ」とモーターを動かしながらと追記する。
ナリちゃんはそうか、と呟いたまま顎に手を添えて考え込んでしまう。
え、なんで信長様居なかったんだろう?
そうだよね、普通は2国も相手にするんだから信長様は居て当然なんだよね…?
って事は信長様てば妻のピンチに駆け付けられないって訳ですか?!
『―――』
『貴様…なぜ先に死んだ』
『――…』
『誓ったであろう…余より先に逝かぬと…誰でもなく余自身に』
『――――…』
『……濃…』
うびゃぁぁぁああツンデレ信長様もゆるす!!
そ、それで濃姫様の顔の汚れ拭って身なり整えて上げてください!
そんでもって信長様自身がプレゼントする予定だった綺麗なかんざしを付けて上げてください!壊れた方はむろん信長様がお持ち帰りで!
げへ、へへへへ…っ
ドルルル…
「え?ヨダレ?おっとありがと忠勝、じゅるり」
「んで?オメェ等どうするんだ?」
私の妄想がナリちゃんによる頭への平手打ちにより止められたところでチカちゃんが口を開いた。
ちらりとナリちゃんを見てみたけどフン、と鼻を鳴らして笑われた。
くそぉ!この容赦ない自重の平手打ち久しぶりに受けると痛いぜ…!
「おそらく信長の目的は我々ではなく九州だろう」
「え?なんで?」
なんでそこであえての九州?九州ったらザビーと島津のおじちゃんじゃない?なんで?
「あンな、…まぁ四国もそうだけどよ。」
うん?と首を傾げて頭の中が?で埋まっていたのを見てチカちゃんが口を開く。
「本州の、しかも京の辺りにいる奴らからすりゃあ四国や九州は十分に異国なんだよ」
「それって田舎って事?」
「だいたいな。…だから四国や九州の噂なんてェのは殆どいかねぇんだ。だが九州の島津兵は強いっつーのはある程度の奴なら全員知ってる」
「……つまりそれほど島津兵は強いという訳だ」
確かに地方チャンでやるような内容は東京とかじゃやらないしね!
そんな中万人に共通してるって事はやっぱり強いって事ね!
「やっぱり島津のおじちゃんを倒しに行くのかな」
「まぁ島津が織田に降伏すりゃあ良い事だらけだろうよ」
新勢力であるザビーの監視と、九州からの挟み打ちと、強い兵と、抜群の戦闘力。
「もし島津と共に攻め込まれれば我らは持たぬ」
ナリちゃんの呟きにチカちゃんは真剣な顔で頷く。そ、そんなに無理なものなんだ…
「じ、じゃあどうするの?このままだと瀬戸内組が危ないんでしょ?」
「……我らも同じ手段をとるよりないだろう」
「え?」
同じ手段?と私は更に首を傾げる。そろそろ首傾げ過ぎて筋が痛くなってきたんですけど。
ナリちゃんは一度言葉を切ってぐるりと辺りを見回した。
「我らも織田を挟むよう同盟を組めば良い」
「あ、そっか!なるー!」
「…ってなると1番近いのは豊臣か?」
「………それは今しがたの動きで十分すぎる。なあ本多よ」
ギュィィィ
「……さすが聡いな……って言ってるけど」
「今ので我らが既に豊臣方に通じているのだと噂が出回るであろう。であれば、織田も迂闊にこちらへ手は出せまい」
豊臣徳川が良い牽制となるか。とナリちゃんは呟いた。
「時を稼げるうちに…我等は甲斐と結ぶ」
「……………ハァ!?」
予想外の同盟相手にチカちゃんが声を裏返しながら言った。甲斐?!遠くね!?
マヌケな顔をしているチカちゃんを心底呆れたような顔をしながら見下げて、ナリちゃんはフフンと鼻で笑った。
「なんで甲斐なんだよ!」
「ふん、やはり貴様は情報を知らぬな。…武田の機動力は織田も恐れているのだ。愚直に正面切って戦うことなどないだろう」
ナリちゃん曰くそれが理由だとかで。でも甲斐から瀬戸内ってやっぱり遠いから危なくない?同じ考えらしくチカちゃんの反応も微妙だ。
するとナリちゃんの視線がふい、と忠勝に向いた。
「貴様の主人もその考えだな?」
「………」ギュイイイ
「あぁ、って」
「ならばその恩義、ありがたく使わせて貰おう」
忠勝のドリルが止まって会話が途切れた。
なんか考え事でもしてるんだろうか、しばらく忠勝のモーターが動いてる音と波の音だけが響く。そしてしばらく忠勝とナリちゃんは見つめあった。
ドルルル
「……っええ、忠勝行っちゃうの?!」
いま何気なしに忠勝翻訳機やってたから焦ったわ!嘘ぉ、と声を上げつつ忠勝の顔を見ると忠勝もじぃっとこっちを見ていた。
忠勝ともうお別れなのか…!なんだかそう思うと悲しくなって来た!私もじっと忠勝を見ていると忠勝のドリルがぎゅいんと回った。
名残惜しいなら一緒に帰るか?と冗談めいて聞いてきたので私は首をすっごい勢いで左右に振る。
「いやいや!もうあそこのプレッシャーはお腹いっぱい!!ここまで連れてきてくれてありがとう」
見上げて言うと忠勝はそうか、と言ってモーターを回す。忠勝の顔を見上げてたらなんだか悲しくなってきた。
私の気持ちに答えて危険かもしれない場所にわざわざ連れてきた忠勝。涙腺がぶわっと緩んだ。あ、やばい。なんか泣きそう。
「忠勝…」
多分半泣きだったんだろう私の頭を、忠勝のすごく大きな手が撫でる。撫でるというよりもう包んでると言った方が正しいかもしれない。
……きゅいぃん
(元気でな、また会おう)
そう言ってくれた忠勝の装甲にがっしり抱き着く。冷たい装甲がなんだか名残惜しい。名残惜しい、けど
「またね、忠勝!家康と…信之兄にありがとう!って言っといて!!」
忠勝に挨拶をする。また会おうって忠勝が言ってくれたんだもん、絶対また会えるよね!うん!
忠勝はモーター音とドリルの音を響かせて浮遊を始めた。行きもそうだったけど強い風が吹き始める。私は忠勝から少し離れた。
「忠勝!家康によろしく言っといてくれよ!」
アニキが今にも飛び立ちそうな忠勝に向かって声をあげる。忠勝はチカちゃんを一瞥してだんだん高度を上げていく。
「バイバイ忠勝!」
忠勝は凄い勢いで飛んでいった。もしかしたら速度は行きより速いかもしれない。やっぱ私が乗ってたから自重してくれてたらしい。ありがとう忠勝!!
やがて青い空の向こう側に消えてあっという間に見えなくなっていった。限界まで手を振ってい居た私は腕がジンとするのを感じながら、改めてナリちゃんチカちゃんを見た。
いやあ二人とも大きくなったねぇ!アニキは勿論のことだけど、ナリちゃんも私とほとんど変わらないくらいに成長したわけだし、これでしばらく船内でいちゃつく二人が見られるって訳ね!
チカナリかナリチカ…どっちだろう!どっちもうまーなんだけどな!
「よし、じゃあ早速…まずは小田原か?」
「ああ。どちらにせよ甲斐と組むのであれば、北条とも話をつける必要がある。」
我らの水軍が着港できる港が必要だからな、とナリちゃんは言う。
「ンじゃあ元就、遣いは頼んだぜ」
「貴様は船だ。よいな元親」
「おう」
目の前で誰かを呼ぶように指示を出すナリちゃんと「船出の準備だ!」と声を荒らげるチカちゃん。うふふふ瀬戸内かぷ萌え…!ぶっちゃけ殺伐とした瀬戸内かぷもめっちゃいいんだけど、気心の知れた腐れ縁瀬戸内が最強なんだよなあ!
それぞれの軍の部下の人たちに指示を出している二人をニヤニヤと眺めていたら、チカちゃんがやってきた。
「…しかし…シズカ姉ちゃんは全然変わらねえな。まだ、あの家は近江にあンのか?」
「ううん、あそこは小田原だよ」
チカちゃんに聞かれて答えると小田原か、じゃあついでに寄ってみるか、と呟く。それを聞いていたナリちゃんがバッと勢い良くこちらを振り返った。
「小田原だと?あそこは先日豊臣に急襲されたばかりではないか!」
「っ、そうじゃねえか!与一は、他の人達は無事なのか?!」
ひぇ、凄い剣幕…!すごい真剣な顔で言う二人に私は半歩後ろにのけ反る。
チカちゃんもナリちゃんも目が据わってますけど!
「よ、与一だけは無事を確認したよ…。多分今は氏政おじいちゃんの所で保護されてるかと……」
「……そっか」
与一は無事の言葉に安心したのかふたりは乗り出してた体を戻す。あー、ちょっと焦った…。
「…心配してくれたんだ、与一の事」
「当たりめェだろ!与一は俺らの兄弟も同然だぜ?」
「兄弟を心配せぬ程コイツとて落ちぶれておらぬ」
「俺かよ?!」
アニキのナイスツッコミが入った所でナリちゃんは私を見る。じぃっと私を見つめ…いや何?是非とも熱い視線はチカちゃんによろしくお願いします!
「な、なんですか…」
「もしや姉上…小田原急襲の時に豊臣に……?」
「……」
「豊臣の引きが良かったのは……」
「…………えへっ」
「……はぁ」
ものすごい眉にしわをつけてナリちゃんはため息をついた。顔にありありと「何をしてるんだか」と書いてあって私は目をそらした。
「おい、今のなんだよ」
「……まったく大方竹中あたりが、姉上のことを知っていたのだろう。そして未来の情報と引き換えに撤退した…といったところではないか?」
「うぐっっ」
すべて丸っとお見通し!?
その場にいたんじゃないかってくらい全部当ててみせた知将・毛利元就の貫禄にうげえという顔をするとナリちゃんはまたクソデカため息をついて額を抑えた。
「ったく…相変わらず訳の分からぬことをする」
「自分から豊臣に行ったってことだろうが…また随分無茶しやがるぜ」
「いやあ…だって…」
そうしたら小田原から引いてくれるって言ってたし…選択肢なんてなかったも同然って感じだよあれは。今にして思えば半兵衛は最初からそのつもりだったのかもなあと気づく。
くそ!あの漂白ドS仮面め!!
「まあ、その無茶のおかげで我らはこうして損害なく居られるわけだが…」
「たしかに!私が忠勝に乗ってきたおかげ!だよね!?」
「自分で言ってちゃ世話ねえな。」
「はあ…。姉上がここに来るまでどれだけ余計なことをしてきたのか、考えるだけで我の頭痛の種が増える」
「い、いやほんとに、そん…そんな変なこと…ししししししてない…し!!」
確かに…半兵衛たちに未来の事話しちゃったし、余計なこと言ったけどそれはちゃんと深く深くこの船より深く反省してるもん!!あ、あとそれに半兵衛が私のことを知っていたの、私のせいじゃないって!きっと誰かが噂をばらまいてるせいだから!政宗のあの握力が怖くて、そんなもう言いふらしたりできないってば!
「……あ、そうだ。私、梵ちゃんにも会ったよ」
「…梵に?」
「うん今はもう伊達政宗ってなってるけど」
驚くかな!と相当wktkしてた私の期待は見事に打ち砕かれた。
この二人、政宗と聞いて笑ったんだもん!
「……やはりか」
「ま、何となくだろうなーとは思ってたけどな」
アイツも昔から変わらないな、なんて言いながら二人はまた指示を出しに戻った。
チカちゃんもナリちゃんも何となく梵ちゃんが政宗だって解っていたみたいで確信を持ってたような笑顔を浮かべてる。
なんだ、ちびちゃんズ達だって立派に繋がりは途絶えてないじゃん。
「おっしゃ!行くぜ野郎ども!」
『アニキー!』
「目指すは小田原!ついではお館様率いる武田!いくぜヤローども!」
『アネキー!』
「うお?!なんか気持ちいいコレ!」
チカちゃんの船は私達を乗せて海を行く。
* * *
「アネキ!アネキはアニキのこれですか?!」
「アニキのそれはナリちゃんでしょーが!そこは絶対譲らないからな!」
「ええっ!あねさんは元就様の許婚では…」
「ナリちゃんの許婚はチカちゃんだっつの!」
「…じゃあアニキと毛利は…」
「え?夫婦でしょ?」
「……………」
「なにそのびっみょーな顔」