私の神様(仮)
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「 こ 」
私の神様(仮)
~ゆらゆらゆれて進むよ籠は~
それからどのくらい経っただろうか。
籠は緩やかに揺れて、たまに小さく跳ねる。
まわりから人の気配も馬の蹄の音もするけど、籠の中は全体に暗くて気分が欝々としてくる。そんなわけで私は激萎えテンサゲぽよになっている。
「くそぅ…ビビって言ってしまった…しかもあんな大勢の前で!政宗にあんなに怒られたのに…!!」
なんやかんやで行く先々で未来から来たのがばれてるのはなぜ?
私そんなにペラペラしゃべってないと思うんだけど誰か私じゃない人が喋ってるでしょこれ!!ぐぐぐぐ絶対許すまじ!!
「…これ次政宗に同じ事聞かれたら本当に一生外に出れなくなるかもしれん…」
そんなことを考えながら時間をつぶしていたら、急に籠が大きく揺れて動きが止まったのを感じた。
「ん?」
顔を近づけて隙間に耳を近づけると半兵衛の声が聞こえるのはわかった。
けど上手く聞き取れない。んんー?とおもって顔をしかめていると急に錠前が開く音が聞こえて、光が差し込む。
「出ろ」
「うわっ」
ぐ、と縄を引かれて私は転がり落ちるように籠から飛び出した。
久しぶりの日光に目を細めると、ぬ、と目の前に秀吉が立っている。
あまりの大きさにちょっと体を引くと、同じくらい大きな腕が伸びてきて体を持ち上げた。
「うわわわわ」
「大人しくしていろ」
そしてそのまま馬の背中に放り投げられる。
身をよじって何とか状況を理解しようとしていたら、馬が鳴いて秀吉が顔を覗き込んできた。
「なっ、なに」
「……馬には乗れるか」
「え。あー…今のところ落馬したことはないです…」
「そうか」
幸村が突っ込んできたとき以外は。
そういうと秀吉は私の後ろ…馬のお尻側に乗り込んで、わたしを前に座らせた。思わず「え?」と顔を上げるとムスっとした顔がそこにあって私は首を傾げた。
そして何も言わず馬は歩き出して、あれだけ大勢いた豊臣軍の人たちは道をそれていく。え?え?と秀吉の顔と豊臣軍の人たちを見比べていると、隣に半兵衛が並んだ。
「僕らは別の場所へ向かう。…人が減ったからって逃げ出そうなんて思わない方がいい」
残ったのは精鋭ばかりだからね、と半兵衛は言う。
後ろを見ようと思ったけれど秀吉の身体がデカすぎてなんも見えなかった。
「この状態で逃げれるわけないじゃん!」
「懸命だね。まだ先は長いことだし…君の話を聞く時間は十分ある。だろう?」
「……」
こ、こいつ!人をラジオ代わりにしようとしてるな?!
ギッと半兵衛を睨んだけど半兵衛はどこ吹く風で、ふふんと優雅に笑って見せた。くそ!美人さんめ!!デパコス広告みたいなキラキラを背負っていやがる!
馬は歩き出し、ゆるゆると秀吉&半兵衛の尋問が再開する。
「…お前はどのくらい未来から来た」
「…多分、400年後くらい」
「400…」
「なぜ我らを知っている?」
「6歳になると学校っていう…みんなで勉強する場所に通うことになるんだけど。…そこで学んだから」
「学んだっていうのは?」
「…歴史の授業っていうのがあって、…日本が…どうやって私たちの時代につながってきたのかを、教わる」
「なるほど」
「…ならば、お前は各国の国主がどのように没していくかを知っているな?」
「……しらない」
「――…嘘をつかない方がいい。」
「う、そじゃないよ。本当に知らない」
「なぜ?秀吉が天下統一を成し遂げるのならば、それほどの偉業を達成したんだ、その覇道は当然学ぶだろう」
「……」
「……」
学ばないよ、と言いかけて口を閉じた。
彼らが何を成したかは学ぶけど、その人にフォーカスすることはほとんどない。だから私は秀吉たちがいつに生まれて「いつ」天下統一をするのか、そしてどうして死んでいったのかなんて知らない。
だからそんなことを聞かれたって知らない。私たちが学ぶのは、歴史そのものであって、その偉人の半生ではない。
「先刻、お前は平定ののちに『南蛮から敵が来る』と言っていたな」
「…」
「どこだ」
「……言ってもわからない」
「解らずとも良い。その名を悪鬼とし、その気があれば討つ」
「……」
余計なことを言ってはいけないと本能で思う。
下手なことを言うと、この人を刺激する、と。
背中にある大きすぎる気配に私はまた頭が痺れる感覚になって、意識しないと呼吸が上手くいかない。
私は鼻から大きく息を吸って、そして吐き出す。
「…言わない」
「何?」
「言わない」
これ以上秀吉のペースに乗せられちゃいけない。
ワンチャン…どっか殴られるかもしれないけど、それでもいい。
空気がまた凍る。
半兵衛から鋭い視線が飛んできているのが分かる。背後からの気配は変わらないけど、それが逆に怖い。
そしてどのくらい空気が凍っていたのかはわからないけど、ふいに首を撫でられた。秀吉の大きな指がほんの少し首に食い込んで痛みを感じる。
「っ」
「貴様の判断は、間違っている」
「…」
「我に言葉を隠す必要がなぜある。その恐れは、判断を鈍らせるだけだ」
「……」
「――シズカ、何を迷う」
名前を呼ばれて、首への圧迫感が増す。
もちろんゲーム中の秀吉のことを考えると、ちょっとその気になれば私の首なんかあっという間に折れるだろう。それを私が理解しているとわかっていて、こんな事をしているんだろうってわかるから、なお質が悪い。
だ、けど私にだって意地があるわけ!!
「っ迷ってんじゃなく、て!い や だ !って言ってんの!!」
「キミ!」
「う~~~るさいなもう!!私は!そんな頭が良くないんだってば!!半兵衛たちみたいに頭のいい会話とか!腹の探り合い見たいなのは!できないのッッ!!」
私は一般腐女子ですよ?!口を開けば萌え語りにCPトーク、出かけ先でいちゃつくカップル見たら全部二次元にしか見えないタイプの重症型のオタクなわけ!!こんな頭の使う会話…したことないっつーーの!
「ほんとに滅茶苦茶シリアスな空気なのも気に食わない!!シリアスに耐えれる充電が切れてるわけ!だから!こんな空気が続くくらいなら話したくない!会話終了!!」
縄で縛られてるから頭を振るくらいしかできないんだけど私は歯を剥いて秀吉を見上げた。目を見たら、また何も言えなくなるかもとちょっと思った。けれど、意外にも秀吉はさっきまでの威圧的な態度をすこし緩めた…ような気がする。
その意外な反応に、思わず続きを言おうとした口をそのまま閉じた。
「――…反抗するか」
「…そりゃ、そうでしょ」
フン!と思い切り顔にだして言うと秀吉は、じっと私を見たのち半兵衛に視線をやった。
半兵衛も意外と怒った顔じゃなくて、私をせせら笑うような、馬鹿にしたような(あいやこれはいつもの顔かも)表情を浮かべている。
え、二人とも何その顔…と混乱していると、アイコンタクトで何を話したのか、二人は小さくうなずいた。
「秀吉が寛大なことを喜ぶといいよ」
「は?」
「シズカ」
「……」
「己が言葉で怒りを口にし、背いて見せる。弱いだけの者にはできぬ芸当よ。…その愚かさに免じて不問とす」
だから!とおもってもう一度秀吉の顔をみる。
彼の顔はまた――
「ぅ…」
いや、今度はもっと酷い。獲物を見つけたような、そういう捕食者の顔だ。
じっとりとしていて、なんだか居心地の悪くなる視線を受けて、私の頬が引きつる。
「だがしかし、しかと覚えていることだ。……――いずれお前の方から語りたくなる日が来るということを」
「…!!」
その言葉の奥になにがあるのか、私にはわからない。
わからないけど、なんかすごーーく嫌なことを言われたような気がして、私はそっと視線をそらした。
その態度に秀吉はそれ以上は何も言わず、半兵衛もまた静かに馬の速度を落とさせた。
本当にものすごく先行きが不安です!!!
@
特に誰が喋るでもなく、気まずすぎる時間が過ぎ去って数日。
秀吉の気まぐれで前に座らされたあと、またすぐに籠に押し込められていたもんだから身体中がバキバキだ。アニメとか見れれば時間も潰せたのに!まじで暇だった!!
そうやってようやくなんだかいろんな食べ物の匂いとかがするエリアを過ぎたのち、おもむろに籠の揺れが止まった。
「ん?」
「…よくぞ参られた秀吉公!心より歓迎いたす!」
「うむ」
なんだかここ数日の陰険とした空気を吹き飛ばすような軽やかな声が聞こえてきた。
えっっ今のって
「家康!??!」
ゴンッ
「い”」
「……この籠は?」
「…先の戦の戦利品よ。用があって連れ帰る途中だ」
「なるほど」
ま、間違いない!絶対あの三河武士、てんぷら大好き徳川家康だ!!
籠に空いた隙間からどうにかまた外を見ようとしたけれど、やっぱり上手く見えなくって私は深いため息をついた。
え、ていうかなんで家康がいるんだ?
ここどこ?!てっきり大阪城まで遠路はるばる行くんだと思ってたんですけど!!
ソワソワする私のことなんて誰も知らないんだろう、また少しのあいだ揺れて、そして今度こそ地面に降ろされた感覚があった。
錠前がまたガシャン、とわざとらしいくらい大きな音を立てて外されて、外の光が差し込む。
「…着いたよ、出ておいで」
「…ここは?」
「ここは三河。君の知ってる『徳川家康』が治める地さ」
「…」
「半兵衛様、彼女はどうしましょう」
「部屋を用意してもらってくれ。」
「……承知しました」
そんな声を聞きながら、私は籠の中から這い出る。
やっぱりすごい眩しくて目を細めると、その隙に半兵衛は手早く私の縄を解いた。
半兵衛の顔を見ると、半兵衛は相変わらず白すぎる綺麗な顔に笑みを貼り付けて私の顔を見ている。
「じゃああとは任せたよ」
半兵衛はそう言って私の肩に手を置くと、そのまま踵を返してどこかへ行ってしまった。ほ、放置プレイ!?
これまで私が乗ってきた籠もそそくさと運ばれて行ってしまって、あとには私と、半兵衛に私を任された人、あと……
「………」
視線の先に女の子が一人立っていた。
眉間に深い深いしわを刻んで、口をへの字に曲げている。
彼女の馬なのか、傍らには赤茶の馬がいてその手綱を握り締めていた。
「………」
「…………あの」
「馬鹿五月蝿い黙れ話すな阿保」
「えぇー…?」
思い付く限りの罵倒の言葉が、早口言葉よろしくの弾丸みたいに降り注いできた。
か、可愛い顔してなんたる暴言…ッ!
とりあえず話すなと言われたので何も話さず、女の子と睨み合い。すると今度は「ジロジロ見るなドアホ」なんて無表情に言われた。
いくらなんでも理不尽んんんんん!
「お嬢ってば、その顔やめなよ」
お嬢!?
某学園青春もの、主人公が893系の家系というのを隠して先生をする、有名な漫画の主人公みたいな呼ばれ方をした女の子は眉間のシワもそのままに視線を私の隣にいる人に向けた。
半兵衛から私を任されたその人は、呆れたように肩をすくめると「こんにちは」と私を見た。
「初めまして、俺は島左近。左近ってよんで」
「……ん?左近…?」
左近って事は…。も、もしかして……
「…この子…もしかして…」
どう見ても兄妹にしか見えないこの二人、なんだか聞き慣れた名前が来る予感がして私は女の子に視線を向けた。
目が合うや否やぷいっと目を反らされる。
そんな女の子の様子に左近は、はぁ、と小さくため息をついて顔を上げた。
「この方は石田三成、俺の上司」
「………やっぱり…」
なんとなーく左近と聞いて「あれ?」って思ったさ!でも、この女の子があの石田三成だなんて思わないじゃん!だって女の子だし!
無双の三成はツンデレだからナリちゃんと組んでWナリってよく言われるよね!
ニヤリと笑った私を見てか解らないが三成が腕を組んで私に言う。
「……名乗ってやったんだからお前も名乗るのが礼儀だ」
「いや、名乗ったの俺だし」
「五月蝿いぞ左近」
「…………」
この子、三成はどうやら相当な俺様私様三成様らしい。
がっくりと肩を落とした左近に目を向ける事なく私を睨み付けた。
「私はシズカ、…まあここまでのを見てたら知ってるかもだけど、実質人質」
「………シズカ」
三成の目が真剣になる。
「絶対お前なんかに秀吉様は渡さないからな!」
「………はい?」
何を言っとるんだこの子は。
私が日本語を理解するのに相当の時間を要していると、ズビシ!と効果音をつけて三成が私を忌ま忌ましそうに指差す。
「あそこはアタシのものだったんだ!」
「お嬢が秀吉様の前に座ったのはたった一回だけでしょ」
「それでも初めに座ったのはアタシだっ!」
すげぇ置いてけぼりを喰らっているが、どうやら三成は秀吉が好きで、
私が秀吉の前に座っているのを見てなんか勘違いしたらしい。
別に私はそんな狙うつもりなんかない…っていうかここまでの様子を見てよくそんな勘違いしたな!?
どっからどうみても人で遊んでる秀吉とビビり散らかす一般市民だったじゃん!
「あ、あのですね石田三成さん」
「……なんだ」
「私(やや曖昧だけど)許婚いるんだよ。秀吉…さん以外に。」
むろん上田城にいるどこぞの朱いアレの事なのだが、まぁあまり言わない方がいいだろう。とにかく面倒ごとを片っ端から起こしたくない。秀吉に三成が言ってしまったら本当に面倒なことが起きる気がする。
私の言葉に目をしばたかせた三成。そして少ししてゆっくり口を開く。
「って事は、お前は秀吉様より好きなヤツがいるから、アタシと張り合うつもりはないのか?」
「うん、まぁ。」
私が幸村を好きかどうかと言われれば確かに好きだ、CPとして。
ほら、幸村って受けも攻めも美味しいじゃないか、色々とさぁ!ムフフフ!
ニマニマとしながら頷きを返すと三成はもう一度「本当か?」とうたぐり深く問うてくるので私は再び頷いた。
すると、まるで別人のようにニコリと人懐っこい笑顔を浮かべて三成は手を差し出してくる。
「悪かったな!改めて、アタシは石田治部小輔三成!よろしくなシズカ!」
差し出された手をしっかり握って握手すれば私より小さくて、それでもしっかりとした手の平にびっくりする。
改めて三成を見ると、三成はニッコリ笑みを浮かべたまま私を見ていた。
「……どうやら一段落?」
「なんだ左近、まだ居たのか」
ガクッと肩を落としてあからさまなため息をついた左近に笑いを漏らして三成はもう一度口を開く。
左近を見た顔はめちゃくちゃ年相応で揚々としている笑顔。かわええ…!
「左近、アタシは馬を繋いでくるからシズカを案内してやってくれ」
「はいよ」
「じゃあまた後でなシズカ!」
馬の手綱を握って三成もまたいなくなってしまった。
とたんにシン…と静まり返った辺り。秀吉と半兵衛に虐め尋問され続けてた時はどうなることかと思ったけど三成すごくいい子っぽいし、これはうまくやれそうじゃない?
やっといつものテンションになれる…とおもって左近の顔を見上げると、気づいた左近がこちらをみた。
その顔は…あまりに興味がなさそうな顔で…思わず私は瞠目する。
「行こうか」
「……」
冷たい声。
さっきまで三成と話してた時は別人だったんじゃないかと思いたくなるような豹変っぷりに心臓がキュとなる。声をかけるのをためらった私を視界の隅に入れて歩き始めた左近。
置いて行かれないように、私はあわててその背中を追いかけた。
「シズカはこの部屋だから。」
「う、うん」
「じゃ。逃げようとか思わない方がいいと思うよ。念のため伝えとく」
「はい…」
案内されたのは奥まった場所にある部屋。
庭にも面していなくて、圧迫感がある。ぎいぎいと床は鳴っているしこんなの逃げようとしたら一発でバレるだろう。
私はなんだかまたテンションが下がっていくのを感じて、部屋の中に入る。もう一度ちらりと左近の顔を見ると、やっぱりどうでもよさそうな顔をしていて、目すら合わない。
左近はコンビニ店員がテンプレを話すみたいに抑揚無くそう言うと、そのままスッと障子を閉めてしまった。
ギィギィ、と床が鳴って遠ざかっていく。
やがて部屋には耳が痛くなるほどの静寂が下りてきた。
「……はぁぁぁ…」
つ、つらすぎる
思わず通された部屋の隅っこの方に寄りたくなってしまった。
秀吉も半兵衛もアタリが強いし、三成はキャワたん乙女って感じで話しやすいなと思ってたら、左近は二面性ありすぎて小学校のいじめっ子達のこと思い出すかんじだったしで、マジでしんどい!
ここにいる人達の温度差で風邪ひくっつーの!!
「うう…」
自分から来たし、ちょっとでも小田原が無事…というか与一が無事ならそれでいいから後悔はしてないけど、それでもこの…居場所がない感じ!!
ころんと畳の上を転がる。
揺れてない地面も数日ぶりなんだけどちっとも嬉しくない。結局この部屋から出れないってことは、籠がデカくなっただけっていうか
「や、…まあさ…足伸ばせるし寝がえりに気を使わなくていいって点でみるとそれは嬉しいんだけどさ……」
ぐっと体を伸ばしてぼんやりと天井を見る。
与一たちは大丈夫だろうか。…ちゃんとだれか…謙信さまとかお館様たちに助けてもらえただろうか。
松永のところにかすがが来てくれたのだって佐助が頼んだって言ってたし…佐助が勝手に動くことはないと思うし、もしかしたら幸村が言ってくれたのかも。
…幸村達のところにいたのがすごく前に感じる。松永のところにも半月くらいいたし、数ヶ月くらい前なのにもうすでにちょっと懐かしさがある。
……。
「会いたいなあ」
皆に。
―――…そうぼんやり考えてたからなのか、疲れたからなのか、私は気づけばすっかり意識を手放していた。