私の神様(仮)
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「 ふ 」
「だから私は、その大根をたたき付けてやったのよ」
「ほう…」
「私にだって作れるから!ってさ!そしたら煮物というよりごった煮みたいになっちゃってさー」
「ふむ」
「姉ちゃん、大根はお湯の中で動かないようにした方が崩れなくてええだよ」
「え!?そうなの!!」
「んだ!」
「へー!生活の知恵だねえ」
「ああ」
頷く松永に内心私はちょっとビビっている。
なんか…なんかさ!?
「卿の知識には驚かされるな」
ずいぶんとこちらの話にノってくれてませんか?!
私の神様(仮)
~野球宗教政治地震雷火事親父~
六爪が欲しい松永に拉致られて早いものでもう半月が過ぎた。松永の人生大謳歌ハッピー武将化計画のために私たちがし始めたのは「とにかく話す」ということだった。
他にやることがないってのはそうなんだけど、とにかくルイスの熱量がすごい。萌え語りしてる私か?ってくらいのマシンガントークが止まらない。
で、松永はそれを淡々と聞いてたし、どうやらいつきちゃんも興味があるらしくて、気がついたら日中は大体誰かが喋ってる…みたいな光景になってたわけです。
私といつきちゃんはどうでもいい話……例えば天気の話や畑の話、美味しいお米の作り方とか…そういう普通の話をしに行くし、
ルイスは聖書を持って聖書を読み聞かせしながら松永はその時間で執務仕事をする。なんてのが最早当たり前になりつつある。
そんなわけで今日も今日とてダラダラお喋りな日々なのだ。
「でもそこで与一がねぇ、」
「…卿はその『与一』がずいぶん好きなのだな」
「ん?そりゃね」
私からすれば大事な家族だし、ツッコミ王だし。つかもう可愛いからなんでも許せるよ私!
うふふふ、と笑っていると松永はずず、と茶を飲んで口端に笑みを浮かべた。
「得難いものを得たらしい。ならば私が貰い受けてしまっても構わないかね?」
「っ?!」
「冗談だ」
ちょ!不吉な言葉言わないでよ!と顔を引き攣らせるとククク、と喉で笑う松永。
横で眉間にシワを寄せながら話を聞いているいつきちゃんも松永を真似してお茶をズズ、とすすった。
「おら、与一に会ってみたいだ」
「よし、じゃあ今度遊びにおいで!与一もきっと喜ぶからさ!…あ、写真あるよ!」
ポケットから充電マックスなオクラ携帯をとりだしていつきちゃんと松永に見せた。
携帯のディスプレイを覗き込む二人。
「?なんだべ、これ」
「…私も見たことはないが…南蛮物かね?」
「んー…南蛮、つか文明の利器?」
携帯ってメイド イン どこ?
よくわからん、と呟きながらデータフォルダを開き目的の写真を見せる。
画面の真ん中に私がいて、その前の列に左からしょーちゃん、やよっちゃん、与一、梵ちゃん。
目をしばたかせるいつきちゃんに私は笑みを漏らす。
「これが与一、んでこの隣は」
「……政宗?」
「そうそう。いつきちゃんよりもっと小さい時の写真だよ」
「…卿が変わってないように見えるが」
「うん、これこの間撮ったばかりだから」
首を傾げて、写真の事やら私の姿だとか考え込む松永に対し、いつきちゃんはずいぶんと興味津々に私の携帯を覗き込む。
私は思い付いた。
「松永、これこっちに向けて…ここ押してみ?」
カメラ機能にして松永に手渡す。
松永は訝しい顔をしながらカメラを自分に向けて、シャッターを切った。
シャッター音に携帯を回して不思議そうに観察してる松永に若干萌えながら私は今撮った写真を開く。
「ブッ!」
「あはははっ!」
顎の左下からかなり近い位置で撮られた写真。
携帯が頑張ってピントを合わせようとしたんだろうけど、近すぎて残念な事になってる。
これは ひ ど い!
「……………」
「あははは、あー笑った…ごめんごめん。」
凄い微妙な顔をしている松永に謝って、私はしっかりデータを保存した(サムネが既にやばい)
すると松永が携帯のデータが見たいと言って来たので、別に見られて困る物じゃないし手渡す。
使い方を教えながら一緒に画面を見ていたら松永の手がとある画像で止まった。
「………」
「あ」
わぁお、それは伊達佐のえろがですた。
いやん☆松永さんてばそんな目で私を見ないでん☆(キラッ☆
「…卿の趣味だろう。私は何もいわぬ」
そういう言い回しが1番傷つくとは知らない松永は口端を気持ち引き攣らせながら携帯を閉じて私に手渡す。
えへえへ萌えるからよくないか!伊達佐!
『あんたが嫌いさ、独眼竜。……殺したいほどに』
『は、感情丸だしだぜ?monkey。忍びの定めも忘れたか?』
『…ふーん。挑発してんの?乗るよ?』
『…上等。』
『――…真田忍隊が長、猿飛佐助……いざ忍び参る』
『奥州筆頭独眼竜、伊達政宗……推して参る』
みたいなさぁぁぁああ!
伊達佐は殺し愛で良いと思うんだよ!しかも相当殺伐としたやつ!ぐふぅぅう
自分の妄想に萌えて心の机をバンバンと叩いていると松永は相当不審な目で私を見てきた。
だからそんな目で見ないでん★
「ってそういえば、松永は陶磁器集めるの好きじゃない?」
「卿のソレと同じく趣味…のようなものだ」
「ソレって!」
…ダダダダダダ!
「Hi!松永サーン!study time!今日も続きから一緒に聖書!学んでいきまショ~!」
「おや…もうそんな時間かね」
「yes!Let's異文化コウリュウ!」
だらだらとそんなことを喋ってたら襖を吹き飛ばす勢いでルイスが駆け込んできた。
今日もそんな時間かぁ、と窓の外をみる。ダラダラおしゃべりしてるだけなのにあっという間に時間が過ぎていく。
そしてあれやこれやといううちに、これまたいつものようにルイスの聖書の朗読が始まった。
「――"Behold the fowls of the air: for they sow not, neither do they reap, nor gather into barns; yet your heavenly Father feedeth them. Are ye not much better than they?"……」
ダラダラお喋り……もとい英語の授業の眠気に苛まれながら私といつきちゃんは今日もよくわからないけど有難いんだろうなぁって感じの流暢な英語を聞く。
窓の外でチチチ、と鳥が鳴いている。枝は揺れてるし葉はなってるけれどどこにいるかまではわからない。
何の鳥だろうなぁ、やよっちゃんなら知ってるかもなぁ。
そうだよ、やよっちゃん、今どこで何してるんだろう?梵ちゃんは正しくこの世界の政宗だったわけだし、しょーちゃんもきっと毛利元就に名を変えて瀬戸内にいるんだろうけど。
なんて思いながら空の青さを眺めていた。
「――空のトリをよく見なさい。」
どき、としてルイスの方を見る。
空と同じくらい青の瞳が私を見て、それからニコリと笑顔を浮かべた。
「種を蒔かず、刈り入れず、蔵へ納めもしない、…だけども天の父は鳥もお護りくださる。アナタたちは鳥よりも価値あるものたちではないか――、ってイミ!」
松永の方を向いて、いつもの笑顔のままルイスが大きな声で言う。
び、び、びっくりした!突然授業で当てられた時みたいな、そういうさ?!5限目の、お昼の後でウトウトーとしてるときに当てられてビクッ!ってするやつね!
焦ってる私に気づいているのか気づいていないのか、ルイスはニコニコと楽しそうに松永に話かけている。
「私たちの国のカミサマは私たちを大切にしてクダサってる!」
「…価値、とはまたずいぶん畏れ多いことを言うのだな、卿の神は」
「そんなコワくない、だって皆頑張って生きてる!それを我らが神はちゃんと見てくれてるってだけ」
「信じたものを、だろうに」
「Yes!そう!だからスゴイ!」
ぶんぶんと顔を縦に振ってルイスは頷く。
私はドキドキする心臓を抑えながら目をキラキラさせているルイスを見る。まるでなんだか面白いことを話しに来ている時の梵ちゃんみたいだ。実際ルイスにとっては大事な話なんだろうし、達観の鬼こと松永から見ても面白い価値観なのかもしれない。
いつきちゃんも南蛮の神様ってことで結構楽しく聞いているようだった。
私はといえば、「政治宗教野球と推しカプの左右は、確信があるまでするな」の世界で生きてきたもんだからルイスの宗教の話はちょっとだけドキドキしてしまう。いつ何が火種になるかわからんって散々学んできたからね!特にサナダテなのかダテサナなのかで天下は二つに分かれているし!!
ルイスからも何度も「シズカならきっとわかってくれるハズ!!」と鼻息荒く詰め寄られたけれど、私は目をそらして「ま、まあ…ハハハ」と現代人日本人の必殺・お茶濁しで誤魔化している。
その度にルイスは何だか不満げな顔をするんだけど、Noと言えない日本人…許して!!
そんなことを思い出しながら横目で見ていたら、いつきちゃんが少し考えたそぶりをみせて、そして少し身を乗り出した。
「るいす姉ちゃんの神様は何の神様だか?」
「?なんの神?」
「おらの村だと田植えの神様や山の神様、雨の神様…ってたくさんの神様たちがいるんだ、だから姉ちゃんのその神様は何の神様なのかって」
「……」
問いかけに、ルイスの動きが止まった。
い、い、い、い、いつきちゃん!!それあかんやつかも!!!
「いいいいいいいつきちゃん……!」
「?」
「ルイスのところの神様は全部の神様…っていうか!ちょっと私たちの知ってる神様と違うっていうか!」
「??」
首を傾げるいつきちゃんはベリーキュートなんだけど、本当にセンシティブな話だから何で言ったらいいかわからなくなって私は結局言い淀んでしまって、思わず助けを求めて松永を見た。
松永はそんな私を見て、鼻でフ、と笑うと目を逸らす。
ちょっと!!私を見捨てないで!!
「……日本の考え方はオモシロイね」
「う」
ルイスはゆっくりと。つとめて口角を上げてそう言って見せた。
その動作に私はピシリと固まって背中に嫌な汗が浮いてくるのを感じる。一瞬空気が止まり、私は呼吸の仕方を忘れたけれど、頭の中では必死にフォローする言葉を探していた。いつきちゃんが怒られないようにしなきゃっておもって、でもルイスの信じる神様のために遥々日本まで来てるような人に何を言えばいいんだって思って、ぐるぐると言葉が回る。
「フゥ」
「!!」
松永の口から紫煙がこぼれる音で私は思わず目をやった。
「人の世を儚ぶときに祈る先が何であれ、何かに念うのは同じだろう。卿らには必要、という点では何も変わらない」
「……」
「間違っているかね?その尊い書物に神がいるわけではあるまい」
「……yes」
なにか言いたげな顔をしているルイスに追い討ちをかけるように、松永が言葉を続けて再びキセルを口にする。
そして私に視線を送ってきた途端、私は何だか息苦しさを感じ始めた。松永の視線が、何か痛烈に訴えてきているような、その先にはぽっかりと穴が空いているような、なんだか底知らないなにか。
「卿たちは、目に見えないモノに祈り、願い、そして欲するのだ。世闇を照らす神光あれと。」
「…、松永は違うの?」
「……」
松永の視線は相変わらず降り注ぐ。
私に答えを求めているのか、呆れているのかはわからないけど、その視線が冷たいのはわかる。じっとまっすぐ見つめるその目が私は居心地が悪くなって目を逸らした。
けれどルイスといつきちゃんは負けじと目を見つめ続ける。
「…ワタシは知ってるよ、迷った時にこそ言葉と教えから学べって」
「おらもだ、じっちゃん達が受け継いで来たこと見てきたことを学べって。…大根の煮方だってそうだ!」
「…松永サンの言ってることはわかる。それでも生きていくPowerになるのなら、神様は正しいってことでしょう」
「清廉なのは結構だ、そうであるほど……いや、そうであることを望んでいるという方が正しいか」
その浮かべた薄ら笑いのまま、松永の視線がこちらを再び射抜く。
私が目を逸らしたことなんて御構い無しで無遠慮だけど、私はその目をもう一度逸せない。
「卿はどうだ?察するに…公論然として立ち振る舞っているようだが」
「……」
ずしん、と空気が肩に乗ってくる。
そんなのだって私、考えたこともない。気にしたことだってない。そもそも興味だってない。もし、考えていたとしても……この3人を前にしてそんなこと話せるわけない、じゃない。
だって、私は現代(いや、ここから見たら未来人だけどさ)を生きてる平々凡々なちょっと腐ったオタク⭐︎な華も恥じらうJKでしかないのに急に「アナタは神を信じマスカ〜?」と言われても困るっつーか!
「あ、えっと…私は…」
「松永サン」
ルイスの強い声。
「それはダメ。信仰はココロの内から出るもの」
そして今度は私の目を見る。
「ねぇ。シズカにだって一回刺さったら抜けない…パワーをもらえる言葉、あるでしょう?」
「…………」
ルイスの言葉は、本当に信じられないくらいまっすぐに私に飛んできた。私はガツンと頭を殴られたような、そんな心地になってルイスの青い目をまっすぐに見つめ返すしかできない。
言葉を選んでみるけど、どれもなんか違う気がして私はもう一度口を閉じる。
「……なるほど。」
ずいぶんと間を置いて、松永はそう呟いた。
そしてゆったりと上を向く。その顔からは何も読み取れないけれど、今し方まで向けられていた痛くてたまらない空気が霧散する。
「……それの読み上げを再開するといい」
「!oh…ハレルヤ!!いくらでも読む!!」
そうしてルイスはウキウキで聖書の続きを読み始めて、松永は静かにその言葉を聞きながら書簡で何かを綴り、いつきちゃんはルイスに時折質問をする。
ここまで毎日あったいつもの光景に戻った。
けれども私の頭の中にはルイスの問いかけがぐるぐると渦巻いている。
私にとっての刺さって抜けない言葉、ルイスにとって刺さって抜けない言葉。……言葉を力にする事に何の違いがあるのだろう。
「――…はー!今日はココまで!聞いてくれてアリガトね!」
パタリと本が閉じる音で我に返った。
顔を上げると窓の外は柔らかな色になっていて、それなりに時間が経ったのだとわかる。
深く深く考え事をしていた私は思わずルイスの顔を見たけど、ルイスは嬉しそうに松永の顔を覗き込んでいて、目が合うことはなかった。
「ねっ、ねっ、松永サン、お願いしたいことがある!」
「なんだ?」
「ワタシの部屋にあるツボ!すごいbeautiful!ほしい!」
目をキラキラさせて話すルイスにいつきちゃんがコテ、と首を傾げる。
「…ツボ…って、るいす姉ちゃん、それ持って奥州行くだか?」
「ッ!Oh my gooooooooood!」
…確かにこんな花瓶を持って奥州まで行くなんて無理だ。
絶対荷物になるし、ヘタすりゃ割れる。さっきまでのテンションはどこへ行ったのか目に涙を滲ませて膝から崩れながら半泣きなルイス。
「……。可能性はあるのだろう?」
「?」
「また来たときにそれを渡そう。それで構わないか?」
「wow!」
苦笑がちに言った松永にルイスはカビンを下ろして松永に飛び付く。
やたらテンションがハイなルイスの勢いを殺し切れず微妙に傾く松永。
「松永サンNice guy!アンタが社長!また遊びにくる!よろしくね!」
まるでお父さんにおねだりする娘のようなルイスの姿に、平然とパパな松永。
ふと思い付いた考えがあまりにピッタリ過ぎて危うく吹く所だった!
ルイスに飛び付かれて更に揺さ振られている松永はふ、と短く息を吐き出して天井を見上げる。
そうしてもう一度口端を持ち上げて、顔を戻した。
「…ルイス、」
「what?」
「あの部屋にあったものなら持って行って構わない」
「oh!松永サン太っ腹!よ、タイショー!」
え?!
あの、超傲慢☆本能がまま★ヒロシ☆な松永が…無償で集めた陶磁器をプレゼントした?!あ、明日は忠勝が頭から降って来るんじゃないの!?
私があまりにポカンとしながら松永を見続けていたからか松永が顔を持ち上げて視線を合わせてきた。
「…卿も欲しかったのかね?」
「いいや、いらねっス」
たしかに漬け物用の壺が欲しいっちゃほしいんだけど、私だってここから小田原まで持って帰れるとは思わないし…
道中の馬移動絶対耐えられない!そう思っていつきちゃんを見ると、いつきちゃんも目をキラキラさせていた。
それに気づいたらしい松永が、書簡から顔を上げていつきちゃんをしっかりと見る。
「卿も見てくるといい」
「!ええだか?!」
「いつぅき!Let's go!見に行こ!」
「あぁ!」
ルイスは嬉しそうにぴょんと跳ねるとそのまま「アリガトネーーー!!」とハイテンションのままいつきちゃんと一緒に部屋を後にしてしまった。
しん、と静まり返った部屋にどこかで鳴いている鳥の声と庭のシシオドシの音が入ってくる。
……あー平和。
「…さて、そろそろ姿を現したらどうだ。」
「は?」
伏し目がちにお茶を飲んでいた松永が突然天井を見上げてそういった。
私が意味を理解するより早く、私の前に黒と金が降ってきて松永と向き合う。
こ、この後ろ姿は……!!
「…何故わかっ「のわわわわわぁぁあ!かすがぁぁぁあああ!」はっ、離れろ!!」
降り注いだ金は宝塚な越後の龍、上杉謙信の懐刀、わたくしのうつくしきつるぎ、かすがだった。
目の前にボンキュッボンなナイスバディーがあったらもう抱き着くしかないっしょ!!
「うへへへぇへえへへっナイスバディたまらんのぅ!ムチムチボイン!ぎゅふるふるふ!」
「何だお前!邪魔をするな!へっ、変な所に抱き着くなぁっ!」
なんでさ!目の前にナイスバディがあるのが悪いんだ!
ニマニマしていると松永が椀を置いて私とかすがを見て武将『松永久秀』の笑みを浮かべた。
「その卿にくっついているのがシズカだ。」
「……知っていたのか」
「もう少し気配や視線はうまく消すが良い。」
「ッ!」
松永にそう言われてかすがはクナイを一本投げ付ける。それは松永の頬の横スレスレを飛び、壁に突き刺さった。
「…黙れ」
「これはこれは失敬。」
おどける松永にかすがは大きな舌打ちをする。そしてまだ、しがみつく私を見た。
「お前を送り届けに来た。」
「………は?」
私?いかでか何故?!
「…てゆーか、私達初対面…だよね?」
「お前は何故か私を知ってたがな」
あちゃーやっちまったZE☆
しかし目の前の素敵腰かすがたんはどこぞのオカンな忍びみたいに追求して来なかった。
ありがたい!
「……卿に問うが」
そういって松永はかすがを見た。いつもと同じ読めない表情。
「どうしてシズカを小田原に?…あそこの現状を知らぬ訳ではないだろう」
「だからなおさらだ。」
「え?え?」
ちょっとぉぉ!二人の間で会話を成立させないで!当事者っぽい私が1番話を理解してませんー!
必死の私の視線の意を汲み取ってくれたのか、かすがが説明してくれた。
「…小田原を豊臣が奇襲している」
「ッ!?」
奇襲…ってあそこには与一もコタも氏政おじいちゃんも…私に良くしてくれたおじさん達に元気はつらつなおばさん達が…!
「お前には家族がいるだろう、猿飛がお前を連れていくよう言って来た」
「…佐助が?」
「ああ。今、小田原で武田と上杉も抗戦している。…伊達にも要請したが本軍の位置が悪い。おそらく間に合わない。」
お館様にまだ見ぬ謙信様まで……。小田原に、みんな…。
かすがは「奇襲までおよそ半刻程度だろう」と付け足す。
「お前も行くだろう。」
「当たり前じゃん!」
みんな、小田原を守るために動いてる。
私だって家族の、大切な人達のピンチだ。行かなくては。
小田原に残して来た与一が心配だった。
くっと口を結んでかすがから離れて、そうして松永と目があった。
彼はいつものように興味なさそうに、凪いだ視線を向けてくる。その視線はお前はどうするんだと聞いているようだったから、私は口にする。
「松永…私、行ってもいいかな」
もし、もし松永が駄目だと言ったら無理矢理にでも向かうつもりだ。人質……という割には自由にさせてもらってるし、政宗の六爪が欲しいと言った割にはこの半月、特に動いている様子もない。だから、もしかして。
松永は既に空になった椀の縁をつつ、と指でなぞる。
「……卿にとって『家族』とはそんなにも大切なものなのかね。…それこそ命をかける価値があると?」
「……そりゃ、確かに面倒だなぁとか煩わしい時はあるけど…」
私の頭の中には元の世界に置いて来た家族と、小田原で危険な目に遭っている家族がいる。
どちらももう、随分と会っていない。
「でも、私のわがままとか嫌な所も受け入れてくれるのが家族だから…すごい大切だよ。私にとって。」
それはとても大切で掛け替えのなモノだから、だからこそ私は命をかけてもいい。今私に出来ることは一秒でも早く与一の所に向かうことだ。
真っ直ぐ見つめてくる松永を真っ直ぐ見返す。
「…松永にとってのルイスと同じだよ、多分」
「…………」
血が繋がってなくたって家族になれるっていうのは与一が、ちびちゃんズが証明してくれた。
松永がルイスに多くを許しているように、きっとそういう繋がりみたいなものがあって、なんかあったら手を貸してあげなきゃって思ったりする、そういうもの。
「同じ屋根の下で暮らしてたら、それってもうちょっとした家族じゃん」
「………卿はルイスと似ているな」
「うっそ!」
私あんなにKYかな?!クツクツ笑う松永に私は真剣な解答を求めた。
顔をあげると、そこには見たことない顔をした松永がいて。
「…彼女にも言われたのだよ、卿と同じ事を」
「…………」
「行くがいい、卿が思うままに」
「……ありがとう」
もしかして、本当に話し相手になって良かったのかも。あるいはルイスのありがたい教典音読タイム。
なんだかちょっとだけ柔らかい感じの空気を感じて私は満面の笑みを浮かべた。
これまた成長……あるいはザビー教への入信か、兎にも角にもいいことに違いない。
「いつきも村へ帰しておこう。……やはり人には在るべき場所があるようだ」
「!!マジで?いつきちゃん喜ぶよ」
「ついでに六爪を持ってきてくれると信じよう。我々は"家族のようなもの"らしいからな」
うーーんそれはどうだろうか……
政宗から六爪取ったら本当にただのレッツパーリー筆頭というか、どこかのマリモ頭な海賊というか。
そう思って松永の顔を見るとうずらと笑みを浮かべている。まさか…じょ、冗談を言うまでになった……だと!!
「おい、いつまでも待てないぞ。」
「あおん!かすがたん!!今行くよ!!!」
怒ったような声をかけられて、私は眉を吊り上げて睨む美女の元へ進む。そして一度松永を振り返った。
「ひとつだけ松永が好きそうなこと教えてしんぜよう」
「なんだね」
「今よりずっと昔のものも、私たちはたくさん見たことあるよ」
「……そうか」
松永は大きく目を伏せた。
けしてこちらを見ることをしない松永。拾い部屋に一人残される彼に私は、
「じゃあ、またね松永」
「……………」
私の言葉に彼はゆっくり「また、いずれ」と呟く。そして私は振り返らないで、かすがの背中に乗った。
かすがは私をしっかり背負うと、そのまま有無を言わさず窓から飛び出した。
あっという間に木も風も流れていく。顔だけ振り返ると、上田城を後にした時よりも早く松永は見えなくなって、やがて私たちがいたお城すらも見えなくなってしまった。
私はかすがの肩口に回した腕にほんのわずか力を込めた。
「…お前も物好きだな」
木から木へ跳躍していたかすがが不意に口を開いた。
かすがの髪ってば良い匂いうぇふぇへぇっしてた私は突然言われて何の事か解らなかった!
「松永軍は盗賊紛いの輩揃いだ、そんな所にまた、など…」
「心配してくれてる!かすが、かわゆすなぁぁぁっ」
「ああもう!」
もうお前なんか心配してやらないからな!と見事なツンデレを発揮するかすがにニヨニヨしていると、私の顔を見たかすがが荒々しい移動を始めたので気持ちスライディング土下座しておいた。
さすがに酔ってかすがにゲロゲロはないからね!
…に、しても、私もかすがも初対面と思えない程打ち解けてしまっている。
多分一方的に私が知ってる、ってのもあるんだろうけれど。じゃ、じゃあさ!BASARA七不思議を一つ聞いてみちゃおうかなっっっ!
「ねぇ、かすが」
「なんだ」
「謙信様って男?女?」
「!!」
私がかすがに乗っているからか解らないが、あからさまに肩が跳ねた。
若干スピードが落ちたような気もする。
やや間を開けて、恐る恐るかすがが口を開いた。
「お前…それを知ってどうする?」
「あぁいやさ、男だとしたら謙かすはNLになるけど、女だとしたらお館様とNLでかすがと百合百合するでしょ?」
個人的にはどっちも美味しいが、何となく女であって欲しい気もする。謙かすって公式のワリに少ないからなぁ。
むーん、と私にしてはかなり重要な問題なので唸っていると、押し黙っていたかすがが前に視線を向けたままいう。
「謙信様は麗しい…この世に類いなき程に」
「……はい?」
なんか急にのろけられた。
背中からかすがの顔を見たらとぉぉおおおっても幸せそうだったのでつっこむのは止める。
「例えば美しい花が男か女と聞かれても解らないように…」
「謙信様が男か女かはどうでもいいことだと」
「…………そうだ」
あまりにのろけ話が長くなりそうだったので強制ストップすると、ずいぶん不満そうにかすがは返事を返してきた。
「かすがってば謙信様大好きだね、」
「なっ…!」
「私かすがと謙信様の仲、応援してるから!」
「お、前そんなふ…不謹慎だぞッ!」
とか言いながら顔を赤らめてブンブンと振るかすがはとっても一途で萌えた。ウフフフ可愛いなぁぁぁぁっ。
で、とっても可愛いんだけど頭は振らないで欲しいな!
乗ってる私がバランス取れなくて落ちちゃうゾ☆★
かすがの乙女スイッチを入れてしまった事を後悔しながら私は必死にかすがにしがみついた。
「でもやっぱり佐かすに虎龍だよなぁ」
「?なんの話だ?」
「いやこっちの話です。」
凄まじく冷えた風が頬を打つ。
北に向かってるのかと思ったら凄い速い速度で移動してると気付いたのはふと流れる景色を見たときだった。
今まで体感したことないぐらいの速さだったのにそれに気付かなかったのは、かすがのバランスがとてもいいからなんだろう。
…つか、今気付いたけどBASARAの3忍集全員の背中(若干一名俵担ぎだったけど)を堪能した自分すげぃ!
「いや、もう奇跡に近いよこれ…!」
「…小田原まで後少しだ。…気をつけろ、少し荒くなる。」
「はい?なに、がぁぁぁぁぁぁあああ」
荒くなる、と言い終えるや否やガクンと大きく揺れて木の枝が沈んだ。枝がしなる。かすがと背中の小亀状態な私が跳ねる。
また少し上がった速度の中一際目立つ城を見つけた。
目を白黒させながら私は、見てしまった。
夕暮れといってもまだ明るい時間だというのに赤く燃え上がる城下。黒い雲が上がり、煤の匂いが鼻につく。
いつも淡いピンクの桜が降り注いで来た小田原に真っ赤な火の粉が舞い落ちる。
「ッ!」
与一が、あそこに。
私は一瞬怖くなって緩んだ涙腺に唇を強く噛み締めた。
かすがはそんなわたしの様子を知ってか知らずか、スピードを緩めないまま火の手の上がる町の中へ飛び込んでいく。熱風が頬を撫でて、息苦しいほどの煙に巻かれながら、かすがはまっすぐに地面へ着地した。
「っ」
ここは、私がよく荒金稼ぎ、もとい歌を歌っていた広場だ。辺りを囲むようにして建っていた家々も真っ赤になっている。
火の熱気で体の中が焼けそうに熱い。
そんな中、調度私達の正面にその人は立っていた。
「謙信様、」
「もどりましたか、わたくしのうつくしきつるぎ」
細くてキレのある、涼し気な瞳が振り返る。
越後の龍、軍神と謳われる上杉謙信。
どうやら指示を出していたらしい、兵士の人が頭を下げて足速に去っていく。
小田原を包む炎のなかでも凛とした空気が漂っている。
謙信様はかすがを見て、それから私に目をやった。
「そなたが、あのどくがんりゅうをも、てなずけたというしょうじょですか」
「手なずけたって…」
そんな暴れ馬みたいな認識なのか政宗は、と思ったけれど「つるぎよ」と言う声でかすがが差し出したものを見て私は言葉を詰まらせた。
「な…」
「家族のもとに何も持たずに行くつもりか?だとしたら相当の馬鹿だぞ」
かすがに手渡されたのは小ぶりのナイフ。ハタからみればただの木の枝にしか見えない。
謙信様は言う。
「もとよりにんずうがすくなく、ひとをさけなくもうしわけありません、」
「大丈夫です、お気遣いありがとうございます!」
むしろ人が割けない状態なのに腹心のかすがをわざわざ連れて来てくれただけありがたい。
私はかすがと謙信様に頭を下げると家の方向へ走り出す。途中で二人を振り返った。
「謙信様、かすが!また後で!」
かすがから受け取ったナイフを帯に挿して私は一直線に走る。
与一が無事に逃げ切れてますように…!
双子が営む八百屋と魚屋の前を過ぎて呉服屋へ続く道を横切る。
途中に転がる塊はできるだけ見ないようにした、火がついて炭化したものやまだ喉から鮮血を流しているようなもの、道のあちらこちらにゴミのように転がっている。
あの美しかった桜も町も人もみんな赤に喰らい尽くされて、私の記憶の景観とは程遠い景色を走る。
「ッ…!」
やっと家の近くまで来て、私は白に近付くマスタード色を見つけた。
「与一!」
「え、姉ちゃん!?」
「ッ!」
まさか私が来るとは思ってなかったのか与一は目を丸くして私の方を見る。
与一はこんな状況だというのに何を入れたのか、かなり大きな荷物を背負っていた。思わず駆け寄って与一を抱きしめる。
「姉ちゃ…」
「よかった…本当…」
なんだか細く感じる与一の背中を何回か撫でた。ちゃんと心臓は動いているし、温かい。よかった…!間に合った!そう思って背中を何度かさすったら、与一の腕がキュッと強くなった。
「げほっ」
「え、半兵衛?!」
むせ返った声に我に返った。
そちらを見るとなんだか見慣れたXの仮面をつけた真っ白な人がいた。
や、まあ、豊臣ってわけだし!そりゃ半兵衛だっているだろうけどさ?!なんで、……ハッ!与一に手を出そうとしたわけ?!
「い~~ッくら石田彰ヴォイスだったとしても!未成年に手を出すのは犯罪ですぅ!ショタとロリに手を出すな!!見守れ!!委員会委員長なんで見過ごせません!!」
い"ーーっ!!と威嚇すると、半兵衛はものすごく険しい顔をしながら顔を上げて私を睨みつける。
けど見えてしまった。口に当てられた手は真っ赤だ。
与一がハッと我に返って手に持っていた葉っぱを手渡す。
「兄ちゃん、これの葉っぱを口の中ですり潰して」
この葉っぱはどうやら薬草らしい。
よ、与一ってば天才…?!与一の懐の広さに感動していると、半兵衛は一瞥して手を思い切り払った。
与一の手から薬草が飛ぶ。
「こんなものは…不要だ…ッ!」
「ちょっと!」
真っ直ぐ半兵衛を見つめる与一を気にしながら私は薬草を拾う。
反らそうとしない与一の目を半兵衛は見て、それから私へ視線をやった。
「…何かと思えば君は政宗君を説得した子じゃないか」
「(無視かよ)」
どんだけ政宗は猛獣扱いされてるんだよ!
どっかで育て方間違えたかも…と遠い目をする私にお構いなく半兵衛は立ち上がる。
「君には興味があったんだ、あの独眼竜をどうやって説得したのか…是非話を聞きたい」
「…………」
「もし来てくれたら…そうだな、今すぐ小田原から引き上げよう。」
「!」
薄ら笑いを浮かべて半兵衛は手を差し延べて来た。
わ、私そんな政宗を手名付け選手権優勝者みたいなVIP対応される覚えないんですけど?!
まさか自分がどこぞのヒロインのような選択を迫られるなんて思わなかった。
ふと左を見ると与一が泣きそうな顔で私を見上げていた。
そうだ、私だって今のこの小田原はとても怖い。
でもそれ以上に与一は怖がっている。強がって泣きはしないだろうけど、怯えている。
なら、私が選ぶ選択は決まっている。
「本当に引き上げてくれるの?」
「姉ちゃん…!」
「ああ、約束しよう」
半兵衛が頷いて、私は続けた。
「……もうひとつ、条件を呑んで欲しい。」
「………聞こうじゃないか」
私は今拾い上げたばかりの薬草を突き出した。
はたき落としたそれを怪訝そうに見つめる半兵衛。私はその顔にムッとして声を張り上げた。
「ッちゃんと薬を!飲めーーっ!!…いやこの場合は食べろかもしれないけど!!」
現実の半兵衛、炎で顔が照らされてなおこの土色!!あまりに見た目が病人すぎる!!人の善意を払いのけとる場合か!!
「姉ちゃん」
「ここにいる少年は薬師の息子なの!!これはその子が処方したちゃんとした薬草!!半兵衛は薬をきちんと摂る!それが守れないならいきません!!」
与一が服の裾を握った感覚があったけど、私は真っ直ぐに半兵衛をみる。
半兵衛はしばらくジッとしていたけど、どこかで家屋が崩れる音がしたのを皮切りに私の手から薬草を奪い取った。
そして口の中に含むとしばらく私たちを見ながら口を小さく動かした。その様子を見て私はヨシ!と頷く。
ようやく視線を落とすと今にも泣き出しそうな与一の顔が見える。
「姉ちゃん…」
「ごめんね、久しぶりに会ったのにあまり話できないや」
与一の頭を撫でてやると猫みたいに目を閉じた。
その拍子にハタリと涙が零れる。
「大丈夫だって、死ぬ訳じゃないんだし。」
「…う、ん…」
「また帰ってくるから、ね?」
「……うん」
背後で半兵衛が秀吉に報告を、とかなんとか言っている。
半兵衛は私が魔法みたいな方法を使ったみたいに思われてるみたいな雰囲気だったし、すぐにどーこーされるってことはないだろう。
与一の耳元で私は呟いた。
「ここから離れて武田か上杉か北条の人に会ったら私の名前を出して国頭に会わしてもらって保護してもらいな、」
「………」
「絶対追っちゃ駄目って言って。私なら心配ないから。」
「……わか…ったよ…」
おじいちゃんやお館様、謙信様なら解ってくれるだろう、あわよくば政宗に会わしてもらえるかもしれない。
小田原に1人でいるよりもその方がずっと安全なはずだ。
「いい?与一、…もう少しだけ留守番お願いしていいかな」
「…わかった、おいらもう少し頑張る」
そういって笑った与一は、振り返らずに燃え盛る町を走って行った。
小さな背中とおっきな荷物を背負って遠くなる姿を見送って私は半兵衛を見据える。
「今、豊臣は撤退を始めている。……さて、僕らもいこうか」
「……」
一度燃え盛る町を振り返って、それから笑みを張り付けたままの半兵衛の背中を追い掛けた。
「豊臣かぁ…」
豊臣って言ったら乙女半兵衛に天然秀吉が王道だよね!秀吉がためなら死ねる半兵衛にはんべは親友な秀吉!
報われない半兵衛てらかわゆす!!
「私目の前で半秀されたら萌え死ねるかもしれない」
「なら君を始末するときは是非それを使わせてもらおう」
「まじでか!」
半兵衛のサービス精神ぱねぇ!
きっと半秀を兵器か何かの名前だと思っているんだろう半兵衛が是非、半秀をしてくれると信じてる。てか死ねる。
「むふー楽しみ」
「きちんとした対応をさせて貰うよ。…君が話さえしてくれればね」
「え、半秀について?」
「…そうだね、それについても聞きたいね。どのくらいの破壊力を持っているのか知っておきたい」
もしかしたら秀吉の役に立つかもしれない、なんてブツブツ言う半兵衛。半秀について私に語らせる気ですか?!寝れないよ?!
破壊力…うーん、腐女子一人を爆死させる威力はあるんでね?私も真剣に半秀の破壊力を考え始めたので互いに黙って歩く。
少し歩いた所で、ふと半兵衛が足を止めた。
「君を秀吉に会わせるよ。……粗相のないようにね」
「うほwまじでか!」
なんか思い切り勘違いしたままのようだけどラッキーってことでお口チャックしとこ!!
そうやってしばらく歩いていくと、徐々に同じ旗をつけた人たちが増えてきた。流石の私でも見覚えがある。豊臣軍だ。そうして頭を下げられたり訝しげな顔をされながら進む。
一般兵っぽい人たちがいっぱいいるエリアを抜けて、陣の張られたエリアの中へ。そこには。
「半兵衛、」
なにやら重々しい空気の中で、一際威圧を放つ人物…教科書にも載る程の偉人、豊臣秀吉が中央に座っていた。
すげー威圧感!とびくびくしながら半兵衛の後について行く。半兵衛はムンと座る秀吉に(爽やかな)笑顔を向けた。
「秀吉、彼女が例の子だ」
「…このような幼子なのか…」
そりゃそんなデカイ秀吉からすりゃ私は小さく見えるさ!座ってるのに見上げなきゃいけないんだぜ?!
立ったらどんだけ大きいんだろう、と一種の好奇心にかられている私を、秀吉はまじまじと見てくる。
「女…名前をなんと言う?」
「あ、私まだ自己紹介してなかったっけ」
危うく下いネタに思考がぶっ飛びかけてた私は慌てて姿勢を正した。
「マイネームイズシズカ!好きな音楽ジャンルはむろんアニソンと電波です!最近無意識にやっちゃう事はCVに石●さんがいると☆さんを探しちゃう、そんないたいけな腐女子でッす★」
…………………。
…ふっ、シラけた空気にももう慣れたもんよ。
微妙な空気が流れる。
「……。」
「貴様、それは異国の言葉か」
「…えっ」
「答えろ」
いつもの調子でがはは、と内心笑っていたら、抑揚のない声で秀吉が言ってきた。す、と重たい空気が両肩にのしかかるような心地がして、私は思わず息を詰まらせた。
深く赤い目が真っ直ぐに…真っ直ぐすぎて澱みない目が私を貫いて、私は途端に空気に飲まれる。
「――あ、…えと、……はい…」
「……未来から来たというのは誠のようだな」
「え」
思わず声が上擦る。
な、な、なんでそれを
「この戦乱の世は誰が治める」
「!」
耳を震わせる低い声が響く。
私はその眼を見て、思わず周りを見渡した。豊臣の家臣さんたちだろう。ゲームの中では見たことのない顔ぶれが並び、誰もかれもがじっと無表情に私を見ている。そしてそのまま視線を巡らせると背後の半兵衛と目が合った。
半兵衛もじっと私を見て、小さく顎で指し示す。その眼に優しさもなにもなくて、目が思わず泳いだ。
もう一度秀吉を見たけど、その眼は変わらずまっすぐ私を貫く。
「言え」
「……あ、あの…」
「…もう一度は言わぬ」
「…!!」
逃げ場のない質問に頭が痺れる。
喉の奥がきゅうと閉まって、私は「…あ」と声を絞り出す。飲み込まれた、とおもった。
「……あ、あなた」
「…」
「豊臣、ひでよしが……天下統一を」
「…なるほど」
ハ、と短く息を吐き出す。
くらくらとしそうなくらいの圧迫感と、耳の奥がキーンとなるような、世界の輪郭がぼやけている。けれど私を見つめる秀吉の顔ははっきりとしていて、その眼が私を捕らえて離さない。ぼやけた世界で秀吉だけがその存在感を持っている。
「…未来はどうだ」
「……」
「我が収めた世は。」
「…………」
ちら、と顔を見る。
視線を落としたって、目を伏せたって見える景色は何も変わらない。
「あなたは、すぐに亡くなって」
「…」
「あっという間に、戦になって……とくがわ、いえやすが、天下を取る」
「……徳川が?」
「その…あと長く、平和は続くけど、数百年後には…今度は敵が海の向こうに」
「南蛮か」
「……あなたたちの知る以上の国がある」
黒い船に乗ってペリーがやってくるまで。
豊臣の残党を倒して江戸幕府は200年以上続いていく。
そう、だから…秀吉が天下を取ったところで数年もたてば別の人が立つ。
身体が震えて、視線が泳ぐ。
そしてシン…と静まり返ったこの場所、この空気を最初に壊したのは、半兵衛だった。
「……なるほど。もう少し詳しく聞きたいところだけど時間が惜しい。道中、たっぷり聞かせてもらうよ」
君の生きている時代のことをね。
そういって半兵衛は声を張り上げた。意味はよくわからなかったけど、家臣さんたちが一斉に動き出して、あれよあれよという間に陣が引き上げられていく。
浅く息をつく私の上を、ぴろろろ、と鷹が飛んでいく。その声に顔を上げて、その姿を見つけるより早く身体を無理矢理引かれる。
「よくできました」
「っ…い、たい」
「おや、さっきまでの威勢はどこにいったんだか」
半兵衛が私の手首をまとめて引っ張る。
その強さに思わず体をよろめかせて、半兵衛の顔を見るとなんでか滅茶苦茶勝ち誇った顔をしている。
…まあ、それもそうかも。未来では秀吉が天下を取って野望を叶えたってことなんだから。こんなドヤ顔にもなるだろう。
でもそれは私のいた時代の「過去」の話であって、この「戦国BASARA」の話じゃない。そもそもBASARAはマルチエンディングだ。だからこの秀吉が天下人になるかなんて補償にはなるはずもない。
半兵衛は誰かに指示を出して、私は一般の武士に身体を引かれていく。
そして何を言う間もなく私は籠の中に押し込められて、外側からガチャリ、とわざとらしい程の錠前の音をたてられた。
わたしは狭い床の上に転がってほんの少しだけ体を丸める。
「……」
本当に、本当に久しぶりに感じる怖さに少しだけ身体が震えて、唇をかみしめた。
* * *
「おい、そっちは見に行ったか?!」
「無論!前田殿、そちらは…!」
「謙信が指揮をとってる!」
「幸村よ!状況はどうじゃ!」
「はっ、ただいま佐助に確認させに遣わしましたがどうやら豊臣は撤退したものかと…」
「旦那、今見てきたけど綺麗に一人残らず撤退してる。…どうする、追うかい?」
「っちょっとまって!」
「?お主は…?」
「シズカの弟の与一です!姉ちゃんが話を聞いてもらえって…とりあえず追っちゃ駄目…です…!」
「…氏政に伝説君は?」
「後始末に追われてるよ。…風魔を呼んでくる」
「お主がシズカの弟の……。某、真田源次郎幸村と申す者でござる」
「……えと…初めまして…」
「…………」
「あ、小太郎兄ちゃん!」
「さっそくで悪いけど話してもらっていい?シズカちゃんからの伝言と、なんで本人が伝えに来ないのか…。」
「うん……」