私の神様(仮)
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「 ま 」
「政宗様!」
「筆頭がきたぞー!」
「小十郎様も一緒だ!」
「誰かぁー!成実様呼んでこーい!」
「………すっすすすげげげぇ……」
伊達軍のテンションって寒くても、け、健在なんすか…ささささささぶぶぶぶぃぃぃい!!
私の神様(仮)
~てゆーか最北端寒すぎてバナナが凍る!小十郎パパ!バナナはおやつにはいりますか!おやつ代300円って消費税ははいりますか!
ヨーホー!皆様ご機嫌麗しゅう!寒さで凍え死にそうなシズカちゃんだよ☆
甲斐を経って早3日、小田原→甲斐が2日程かかったことを考えるとやっぱりあのお馬さん達はとても早かったんだね!
結構なハイスピードだったから馬は休憩入れるたびに死んだように寝てた、無理させすぎたかもしれないし後で何かあげよう。うん。
さてあの謎の襲撃後、特に変わったこともなく無事最北端にて伊達軍の方々と合流できた私達は、頑張ってくれたお馬さん達を馬小屋に引き渡してウワサの成実ちゃんと面会予定です。
成実っていえば夢で読んだ程度の知識しかないんだけれど、モブのくせに夢に出てくる率が高い、軽いやつーみたいなイメージがある。
「おー!ホントに来たよ!すっげー!」
一揆鎮圧の為につくられた簡易な小屋(今でいうプレハブみたいな物かな)の中でwktkしながら成実の出番を待っていたら軽い声が聞こえた。
ヒャッフォォオオ!!と叫びたい所……だったんだけれど、あれ?なんか聞いたことあるな。
うん?と首を傾げてたら小屋の中に影が一つ入って……き、た……。
「……おい成実、呼んどいてそりゃねぇんじゃねぇか?」
「あは、いいじゃんご愛嬌ご愛嬌!」
「うへぇぇ!マウンテン藤五郎ォォオ!?」
「……あれ?シズカじゃん。」
なんでこんな所にいるの~?と首を傾げたマウンテン藤五郎。
いやいやそれはこっちのセリフです!つかなんで伊達の青い上着着てるんだコスプレか!うらやましいぞコノヤロー!
目の前でニマニマと笑顔を浮かべる鬼畜攻めな兄ちゃんこと藤五郎を皆様覚えておいでであろうか。
かなり前に出会っただけなのだけれど鬼畜攻めで鬼畜攻めで笑顔がちょっぴり胡散臭いあのマウンテン藤五郎だ。
なんでこんな所に、はこっちの台詞やがな!と藤五郎をガン見しているとポン、と彼は一つ手を打った。
「なに、梵てば小田原行ったの?ずるーい!俺だって小田原行きたかったのに!」
下町の小雪ちゃんかわいいんだよー!と唇を尖らせた藤五郎。いやいや待てよ。どっからツッコミ入れるべきだコレ。
「…stop、成実……。一回整理するぜ、シズカが頭から湯気出してる。」
「オッケー、」
政宗も多少混乱しているらしい、額に手を当てて考える人みたいなポーズをとる。
「とりあえず、成実とシズカは知り合い、か?」
「知り合い?だよ」
「ちょっとシズカてばハテナは酷くなーい?俺シズカが茶色いオッサンに襲われてるの助けてあげたでしょー」
「あぁ某ピスメの隊長みたいに?懐かしいねーあっはっは、…あン時はよくも足踏んでくれたな!」
「痛ッ!ちょっと何すんのさ!おらっ!」
「のぎゃ!踵でグリグリすな!いだだだだ!!」
「………政宗様、話が進みませんが」
「I know…分かってるぜ小十郎…」
あ、こらそこのナイス主従ため息つかないの!こっちは今必死で戦って…痛っ!
「……シズカとは小田原で会ったんだよ、ほら一回小田原の偵察に俺と小十郎で行ったじゃん?あんときだよ」
「まさか藤五郎が成実ちゃんだなんて…認めない、私は認めませんからね!」
「お母様!お願いいたします!わたくしを、わたくしを認めてやってくださいませ!」
「えぇい!しつこくってよ!」
「………テメェらまた殴られてェか?an?」
「「すいやせんッしたー!!」」
さっき政宗に殴られたときの痛みを思い出して私と藤五郎……もとい成実は斜め45°で頭を下げた。
あんな痛いチョップ生まれて初めて受けたよ!
「つまりあれか、成実は小田原でシズカに会った後下町の小雪とやらに会いにいった、と。」
「ノンノ!違うよー小十郎を撒いて下町の小雪ちゃんに会いに行ったら軽く迷ってなんとか大通りに出たらなんかブツブツ言ってるシズカに会ったんだよー」
にゃは~、と笑った成実に政宗は口端を持ち上げてグッと拳をにぎりしめた。
「つまりテメェは仕事をサボって敵国の女と遊んでたのか、」
「…ぼ、梵…?」
ワナワナと政宗の震える拳が目に入ったのか成実が頬を引き攣らせる。
逃げようと回れ右をしようとするのと政宗の拳が落ちるのと凄まじく良い音がしたのはほぼ同時だった。
「~~ッ!!」
「自業自得、だ。」
うーわーいたそぉぉぉ!ズガンっていったよ!頭からしちゃいけない音だったよ!チョップも痛かったけどこれも痛そ!
意外に鉄拳な政宗にガタブルしているとくるりと政宗が振り返った。
「で、小十郎。状況をどうみる」
「…農民達は各々の武器を持ちいきり立っております、死人が出る前に手をうたねばなりますまい」
「…状況はもっと酷いよ。」
政宗に殴られた箇所を押さえながら成実が政宗を見た。
「一揆が勃発した村を中心に周りの村も同調しててさ。多分一揆衆は村6つ分ほどの大きさになってる」
いつきちゃんを中心に他の村の人達も一揆に参加してるって訳か。
人間、集まれば集まるほど刷り込みは強くなるから村6つ分だなんて相当の勢いがあるんだろう。
で、勢いに巻き込まれた他の村の人達も…みたいな。何と言う悪循環。
政宗と小十郎は成実の言葉に眉間にシワを寄せて唇を結んだ。
「……シズカ、」
「うん?」
「お前はここに残ってろ」
「…は?」
政宗を見遣るといたって真剣な目で私を見ている。どうやら本気らしい。
「興奮した農民達ってのはdangerousなんだよ」
「死に対しての恐怖が薄れてるからな、容赦がないんだ。…俺達でも手を抜けば殺られる。」
「だからお前を連れてはいけない。Okey?」
と、確認しながらも目は有無を言わさない程に真剣だ。
しかし、だ。
私の答えは決まっている。
「No!だね」
「おいシズカ…」
「シズカ、危ないんだ、死ぬかもしれない」
「でもここまで来ちゃったよ」
北端まで来てしまったし、そもそもの目的は私がいつきちゃんに会うことだ。
じ、っと政宗を見たが政宗もてことして意見を曲げるつもりは無いらしい。
ほんの少しの間、私は政宗とにらめっこをするハメになったが、状況を打破してくれたのは成実だった。
「……本人がこう言ってるんだしいいんじゃないの?」
「What?!」
「俺なら連れてくけど?」
そう言って成実は私の肩に手を置く。思わず成実を見上げると目が合って、それから笑いかけられた。
「だって俺は守りきれる自信、あるし?」
「…ah?」
「梵は人一人守れる自信ないわけ?…じゃあシズカは俺と一緒でいいよね。」
「ンだと?!」
「だって、そういう事でしょ?」
「違ェ!!」
そこまで怒鳴って政宗は一度大きくため息をついて私を見た。もう一度ため息をついて政宗は成実へ視線を向ける。
成実は睨みつける政宗を「にゃはー」と受け流して笑顔を作る。
その笑顔に根負けしたのか、政宗は脱力した。
「…成実、小次郎は来てるか?」
「もっちろん!」
パチンと指を鳴らして成実は天井へ視線をやった。
うん?コジロー?あのポケ●ンに出て来るラブリーチャーミーな彼ですか!?まさかのポケ×BASARAですかァァァ!!
やっべナイス細腰だよとハァハァしていると天井からスタッと降りてきたのは忍び。ゆっくりあげた顔は…顔、は………
「ええええドッペルゲンガー?!」
「…頼むから日本語で話してくれ」
「こじゅサーセン!政宗が二人!」
そう、降りてきた忍びの顔はどっからどう見ても政宗in眼帯無しだったのだ。
のはぁぁまさかの影分身!?ポケと見せ掛けてNAR●TOだと!!
「シズカ様、お初にお目にかかります、政宗の兄、小次郎と申します。」
「あ、ご親切にどうも…」
「stop、小次郎テメェは兄じゃねぇだろ!」
「冗談です。」
にっこり笑って小次郎さん、ノブさん臭が若干するのは気のせいですかそうですか。
「こいつは小次郎、…俺の弟だ」
「改めましてシズカ様」
「あ、はいシズカです、初めまして………?」
「なんで疑問系なの?」
「いや…あまりにそっくりで。」
敬語で日本語な政宗が目の前に居る。マジで怖いんだけど!
ニコニコと癒し系オーラを漂わせて笑う小次郎さんに成実がニヤリと笑んだ。
「でもまー小次郎のがしっかりしてるよな」
「確かにな」
「うっせ!」
「ふふふ…兄様が楽しそうで何よりです」
綺麗に笑う小次郎さんに政宗は何がつまらないのか眉間にシワを寄せて小次郎さんに言った。
「小次郎、お前のmissionはシズカを守ることだ。ことが落ち着くまで成実と一緒にシズカを守れ。Okey?」
「御意に」
頭を下げて小次郎さんは微笑んだ。
「小次郎さん、なんかもうマジすいません…!ありがとうございます……!!」
「いえ、構いませんよ。私も楽しいですから。」
「シズカー俺にはぁー?」
「成実のどの辺りが案内してくれてるのか教えてくれる?」
「この辺?」
「顔かい。」
あの後すぐ、伊達の足軽さんが入ってきて(リーゼント本物だった!すげぇ!)政宗と小十郎にたくさん書類を持ってきて、邪魔になるからと小次郎さんがこの辺りを案内してくれる事になり、楽しそうと成実もついてきた。
大急ぎで整えたという仮設の野営地にしては広く、1つ1つの施設?みたいなものもしっかりしている。
天然言葉攻めだったら萌える政宗の弟さん、小次郎さんは確かに面倒見のいいお兄さんタイプだ。
「シズカ様、私に敬語は無しでお願いします」
「え?」
「主である政宗様が呼び捨てなのに私が敬語であるのは問題があるでしょう。」
「…じゃあいっそ砕けて、こちゃーんって呼んでいいですか…ッ!」
こーちゃんでも構いませんが、と続ければ小次郎さんはふんわりと笑みを浮かべて「どちらでも」と言う。じゃあこーちゃんで!
「よろしくお願いしますね、」
くそぉぉおお!なんだそのお嬢様な笑みはぁぁあ!しかし言葉攻めだよこーちゃんは!
「えー!ねぇねぇシズカ、この超カッコイイ俺にもつけてよあだ名!こちゃーんだけズルーい!」
ぶーと口を尖らせる成実。てかお前も呼び方こちゃーんかよ!
「成実なんかもうナルちゃんで良いよナルちゃんで。」
もちろんナルシストのナルちゃんでな!
ちょっとどこぞのゴーストハントの主人公みたいだけどまぁ良いや。
しかし思ったより気に入ったのかナルちゃんはニンマリ笑顔を浮かべてアハー☆と後ろ手に手を組んだ。
「こちゃーん!俺の事はこれからナルちゃんと呼べよー!」
「はい。心得ました」
……あ、今気付いてしまったよ。ナルちゃんと、こーちゃん……どっちが攻めだろう…!
こーちゃんは顔が政宗だけど控え目紳士だし…、ナルちゃんはアニキ気質…。
「うわぁあ…どうしよう!すっげえ重要問題!」
寧ろ両方強き攻めとかでもいいですか!だってどっちも美味しいぜ!?
「むほうふうふふ…!」
「シズカー顔面崩壊してるよー」
「うわ、やば!」
慌てて頬を押さえたら目の前でこーちゃんがフフフ、と笑う。麗しい笑み。え、なにこの国宝。
政宗と同じ顔なのにここまで笑顔の質が違うのもすごい。
んもーー政宗もこんな美少年な弟さんがいるなら教えてくれればいいのに!梵ちゃんはそんなこと一言も…
「あ、そういえば」
「うん?」
「景綱さんって人いる?」
「………は?」
ポカンとした表情で私を見るナルちゃん。
こーちゃんも目をしばたかせている。おぉ、ナルちゃんのこの顔は若干レアだぞ!
「よく梵ちゃんから聞いてたんだけどさ、どんな人?」
てかなんで2人共そんな(°д°)って顔してんの?!え、もしかしてタブー、だったとか!
「…シズカ、それさ…」
「……う…うん…」
「小十郎、だぜ…?」
「……what?」
え、小十郎?小十郎って今、政宗と必死に書類片付けてるあの奥州のオトンの、893顔のあのお方でごぜーますか!
「うそぉ」
「本当です」
じゃあ梵ちゃんが唯一っていっていいぐらい話してくれなかった周りの人達の中で1番話してくれた景綱さん、つまりの小十郎に1番気を許してたっていうことに!?
「のばぁぁあああ!もへぇぇええ!」
うはぁぁ!昔から心許していた存在と背中合わせだとかァァ!MO☆E!
なにその昔かたぎな絆WAAAAA!!
「くふぅ、口から血が出そう。色んな意味で。」
「そりゃお疲れー」
「私萌え死ねるならそれで構わない…!」
むしろ本望じゃ!と両手をワキワキしていると、ひゅう、なんて冷たい風が通り抜ける。
着物一着だと流石に寒く、ブルリと体が冷えた。
「寒い…」
「この辺りは特に風が抜けますからね……、大丈夫ですか?」
「うん、ごめんありがとう」
「いいえ」
心配してか、肩を軽く擦ってくれるこーちゃん。何この人!見た目も良いし中身もgodだなんて最強じゃまいか!
「確かに寒いよな、この辺」
「うぅう…いつきちゃんはよくあんな寒い姿で居られるよね…!」
「あれ?シズカ、いつきを知ってんの?」
「んまぁ一方的にね…」
子供は風の子だなんてよく言ったものさね…風の子って言ったらコタは子供だね!
うへへへショタコタギザもゆるすとニヤニヤしていると、ふと考えが致る。
そういやいつきちゃん、なんでまた一揆を?
「ねーナルちゃん。」
「をう?」
「いつきちゃん達ってなんで一揆を?」
なんか政宗達の話を聞く限りじゃ前にも一度一揆の鎮圧したみたいだし。あの政宗が力で屈服させたとは思えないし…。
うーんと首を傾げるとこーちゃんが僅かに目を細めて口を開いた。
「実は…原因がよくわからないのです」
「え?」
「確かに彼女達は過去に一度一揆を起こしています。しかしそれには原因があり、兄様は解決した筈です。」
「じゃあまた違う原因、とか?」
「あるいは。……いずれにせよ、一度会わねばなりません。」
うーんと私が頭を捻っていると、ナルちゃんがでもさーと続けた。
「いつき、前に一揆を起こした時は梵を信じるって言ってたのになー」
やな感じーとロ●ット団みたいな台詞をはいて、ナルちゃんは口を尖らせる。
ゲームじゃいつきちゃん、年貢が納められないとか、そういう理由だったかな。確か。
でもこーちゃんの話しからすると、政宗が解決したみたいだし……。
「うあああ……頭痛くなってきたぁぁ」
強い風が吹いて、灰色の空から雪が降り始める。
何だかちょっとだけ嫌な感じだ。
「…大丈夫か?」
「うん、」
小十郎に聞かれて思わず頷いたけど、実はあんま大丈夫じゃない。足のさ、指先に感覚ないんだこれが。ぜってーしもやけだぜコレ!!
降ってきた雪は溶ける事なく着実に積もっていき、降り始めからわずか一時間半、あっと言うまにゲームでみたように一面雪で覆われた。
深い雪に暗い空、なんとまぁ色彩的にも寒々しい。
いつきちゃん率いる一揆衆達は政宗達が来ていると知るや否や速度をあげたらしく、ろくな準備もできないまま衝突する羽目に。
揚げ句雪が深くて馬が使えないとかナルちゃんがぼやいていた。
確かに足がめがっさ沈んでく。そのせいで藁靴の中に雪が入り込む→冷える→しもやけという悪循環。
あっはっは!指先凍死できるよこれ!
「報告、一揆衆は現在山頂近くにて進軍停止。どうやらそこで我々を向かえ討つつもりのようです。」
政宗の前にこーちゃんが跪づいて頭を下げた。
政宗の前に前が跪づくっていうカオスな絵図が生まれていて私は物珍しさを感じていたけど、伊達軍幹部の皆様には見慣れた光景のようで誰も気に留めていない。
「Ok、下がっていいぜ小次郎、」
「は、」
こーちゃんの言葉に政宗は後ろを振り返った。後ろには80人前後の伊達軍の人。
「いいか!いきり立って武器持ってようが俺らの相手は農民だ!間違っても殺したりするな!俺らは戦い慣れてる!力加減しろ!」
政宗の言葉に伊達軍の人達は片手を突き上げておぉー!と意気込む。
…普段レッツパーリー!とかいってて若干セクハラ気味で全然武将って感じじゃないから多少違和感がある。
けれどやっぱり、みんなを引っ張るリーダーだ。政宗の一声で一気に伊達軍の人達の士気が上がった。
「……ほへー…やっぱり政宗って筆頭なんだね…」
「あぁ、普段はあんな様子だが政宗様は正真正銘、伊達家17代当主だ」
横に立つ小十郎が目を細めて口端を持ち上げる。
その顔超オトンなんですけど!って思ったんだけど小十郎の顔見てたら誇らしげだったから黙り込む。
「いいかテメェ等!Are you ready!?」
『Yeahー!』
「Let's party!」
片手を上げて走り出す政宗、そのすぐ後ろに小十郎、
「さぁて、俺らも行くよー。ちゃんと着いてこいよな!」
「了解!」
右後ろに私とナルちゃんが続く。更にその後ろに伊達軍の皆様も走り出す。
ザクザクと雪が深くて走りにくかったけれど、私達はいつきちゃんを目指して走った。
「みんな!おら達の村を守るだ!」
「お侍ぇさん達にゃ農民の苦しみなんかわからねぇ!」
振り下ろされた鍬をナルちゃんの鞘が受け流して反対の手にあった刀の柄で耳の上辺りを殴打する。
殴られた農民はくぐもった声を上げて崩れ落ちる
息つく間もなくもう一人、もう一人。
私達の後方にいた伊達軍の人達の数を、気絶させた農民の人達の保護の為に少しずつ減らしながら私達は先へ進む。
多少複雑化はしていたけれど、テレビで飽きるほど見ていたステージ。農民の配位置。間違いない、ここはBASARAのあのマップだ。このステージならおてのものだ。
「っ政宗!その先に伏兵!雪の下から来るかもしれない!」
「雪の下ァ?!」
「うわ、寒そ…!」
眉を歪めながらナルちゃんが言う。
少し進むとやっぱり雪の下(というより雪の堀?)から沢山の人達が出て来る。
邪魔にならなさそうな所で、かつナルちゃんの近くをうろうろしながら私は最後にプレイしたのは随分前なBASARAのステージを思い出そうと必死こいていた。ええっと、ここは二股に分岐してて……
ふと政宗を見ると刀を随分器用に刀を一本から五本、ついで二本と出し入れしながら確実に一揆衆を減らしていく。
と、後ろに揺らめく影。
「政宗!」
「政宗様!!」
小十郎が来て鳩尾にエルボーを叩き込む。
村の人は横へ倒れる。
「あまり一人で飛び出さないでくだされ!」
「thank you小十郎!」
こほぉおぉぉぉおおッ!このナイス主従め!
そんな素敵なワンシーンを見せられて、喉元まで出て来ていたステージについてはすっかり頭から抜け落ちていた。
「シズカ!」
「へ?…ぬぉ!」
ナルちゃんに声をかけられて振り返ると、私の肩口があったあたりを通り過ぎて鉈が雪にザックリ刺さる。
な、鉈!?
顔を上げると目が座った村人がもう一つの鉈を振りかざしている。バイオレットなひぐらし!?レナか!
まさかの鬼隠しルートに私は目を閉じることも忘れて鉈と目を見開いている村人を見つめていた。
「シズカ様!」
瞬間、目の前で鉈を振りかざした村人が横からとんできた拳に顔を殴られ沈む。
「ご無事ですか!?」
「…え、どちらさまで」
焦った声音には悪いが本当にどちら様?
黒を基調としたスリムな服を着て口元を隠した黒髪長髪なフェイタン風味なお方。
ぶっちゃけた話、伊達軍のモブの人っぽい。
「ナイスタイミング!こちゃーん!!」
「こちゃーんんんんんんん!?」
ちょっと離れた所でナルちゃんが親指を立てる。
つかこーちゃん!?このフェイタンみたいな人が!?
色々と聞きたいことはあるのだけれど、なんせ人が多くてそれ所じゃないので、足を引っ張らないように軽やかな動きで村人を翻弄する(あ、ソッチの意味じゃないよ!)こーちゃん?達に必死こいてついていく。
ある程度進んでいくと篝火のような物が見えた。
そして何故か銀世界に不釣り合いなピンクも見える。
あ、あれはまさか…!
「皆ー!お侍ェ様達が来ただよ!」
「今こそ俺達のいっき団結ぷりを見せ付けるだ!」
私が内心、めちゃくちゃwktkしている事も知らず政宗はその桃色の集団を目を細めて訝し気に見つめた。
雪の白さからナチュラルに浮くピンクの後ろ姿、つかあのはっぴ!
「いつきちゃーん!」
「大好きだぁぁぁ!」
「愛くるしいべぇぇ!」
『い・つ・きちゃーん!!』
ヒュー!といつき団結する村人の人達…否、いつき親衛隊の方々。
まるで声優ライブの前のハイでアドレナリンな人達のノリ(揚句空回り)である。でもそんな姿は妙に私は親近感がわいた。
「…Why…なんだコイツ等」
「おほー!なんか楽しそう!」
引き気味な政宗に目をキラキラ輝かせるナルちゃん、呆気に取られた顔の小十郎。
多分政宗の反応は正しい。多分。
ごめんね政宗、私もあっちの人間なんだよ。私みたいな人が@倍で増えるとああなるんだよ!
「てな訳でゴメン政宗!!いつきちゃぁぁぁん!愛してるよぉぉお!」
「オイシズカ!」
「おぉアンタも解るだか!」
「あたぼうよ!いつきちゃんの笑顔は世界を救う!」
「んだ!仲間だベ!」
「アンタ名前はなんて言うだよ?」
「シズカでっす!」
「シズカも名誉あるいつきちゃん親衛隊の一員だべさ!」
「いつきちゃーん!」
『Fuー!』
「帰ってこいシズカ!」
小十郎の何故だか必死な顔が切なかったので私は彼らと向き合った。
「あのさ、私いつきちゃんに会いたいんだけど、」
「ならねぇ!シズカはともかく後ろの青いお侍ェ様達は信用ならねぇだ!」
唇を尖らせてそう言う親衛隊の人。うーん…信用できないと言われましても。
「もともとはそっちが裏切ったんだべ!」
「……ちょっと待て、そいつぁどういう意味だ?」
目を細め、声を若干低くした政宗が私を手で制しながら前へ出た。
「な、なんだ!」
「俺は奥州筆頭伊達政宗だ。……話せ」
「ひィ!だっ…伊達政宗…?!」
「政宗、脅えてるんだけど。」
「梵てば顔怖いぞー?」
「Shut up!!」
ちゃらけて言うナルちゃんを政宗は睨み付けてから、親衛隊の人達を見据えた。震え上がる親衛隊の人達。
「…えと、つまりどういう事でしょ?」
「、この間いつきちゃんの所に使者を送って年貢の引き上げするって言っただ!」
「冬の間は米さ採れねェだか年貢は半分で良いってこの前の一揆の時約束しただよ!」
「お侍ェ様達が裏切ったべ!」
口々に言う彼らから私は政宗へ視線を移した。
「……それ、どういう事…?」
「…待て、俺はいつきに使者なんか送ってねぇし、年貢の引き上げもしてねェぞ?」
政宗は眉を寄せて腕を組む。
あれ、証言が食い違ったけれどどういう事?
「嘘だべ!確かにお侍ェさんのと同じ青い服を着てただ!」
「おい小十郎…こいつァちと厄介かもしれねぇぜ」
「えぇ。…問題は何者がしたのかと言うことですが……」
小十郎も腕を組む。
え?いつきちゃん達は政宗の部下の人に言われて、本人はそんな使者送ってない?
「……この一揆、何やら仕掛けられたみたいだねェ」
スッとナルちゃんの目が細くなる。
政宗が「小次郎、」と指示するとこーちゃん?らしい人物が頭を下げて瞬間的に居なくなった。
ぇぇぇぇえ?!忍びだったのこーちゃんんんんん!
こーちゃんには驚かされてばかりなんですが!!
「な、なんだかよくわかんねぇだが、とにかくお侍ェ様達をいつきちゃんに会わせる訳にはいかないだよ!」
ピンクの羽織りを着直して親衛隊の人達は政宗を噛み付くように睨んだ。
しかし困った。ナルちゃんの言った通りこの一揆が仕掛けられてたとしたら、一刻も早く終わらせないとまずいのでは?
「ねー頼むよー、俺達を合わせてくれよー」
「駄目だ!」
「…あ、じゃあ私いこうか?」
「what?!」
「そもそも私、この為に来たんだし。」
それに私では武器を持ってないから、いつきちゃんに危害加えられない(恐ろしくてンな事できないけど)し私なら平気じゃまいか!
「危ねェってんだろ!」
「いやいや、抵抗しない腐女子を襲ったりしないよ、いつきちゃんは。……どこぞのオカンな忍びじゃあるまいし!」
よくトリップとかであるアレね!あの首にクナイとか当てられちゃうやつ!
政宗はぐっ、と言葉に詰まる。
「ね?私ならいいでしょ?」
「……」
ぐるりと親衛隊の人達を見返すと彼らは数回目をしばたかせて、互いに顔を見合った。
「…シズカなら構わないだ」
「同じいつきちゃんを応援する仲間だしな!」
「んだ、じゃあお侍ェ様達は待っててけろ」
そう言って親衛隊のリーダー的な人は私に背中を向けた。
私は一度政宗達を振り返って「んじゃー行ってくるねー」と手を振って『いつき』と書かれたピンクのはっぴを着た人を追いかける。
くそぉぉおお!親指の感覚がヌェェェ!なんでこんな雪積もるのさ!かき氷にして喰ったろか!?
ざくざくと深い雪を蹴散らしながら私は一人悪態をついた。
「いつきちゃーん、いつきちゃんに話したいことがあるって人連れてきただよー!」
のそのそと歩いて山を登ること数分、途中坂の上ででっかい雪玉を生産している人達を見て真剣に恐怖を感じ(あんなの当たったら絶対骨折なんてものじゃ済まないって!)リアルに親衛隊の人達蹴散らしてここまで来なくてよかったと思った。
その坂を登りきった所に一際小さな姿を見つける。
横に等身大(と書いてありのままと読む)のハンマーがある事からして…
「いつきちゅわぁぁぁぁぁぁぁああん!!」
「あ、抜け駆けは禁止だべ!」
「どこのジャ●ーズだ!」
抜け駆けとお触り禁止って!腕を掴まれうぎぃぃい!と叫んでいると、こちらに気付いたのかとててて、と小さい影が近付いてきた。
「?おめーさん誰だべ?」
「こんぬづわ!いつきちゃん!私シズカ!よろしくね!とりあえずいつきちゃんのかっこ寒そぉぉおおおおお!」
脚とか腰とかぱねぇ!白いから余計に寒そうなんですけどぉぉおおお!
つか細ェ寒そうちっせェハンマーでけぇぇぇええ!
「村の衆…じゃなさそうだべ?姉ちゃんどっからきたんだ?」
「ああ、えと、いつきちゃん、今すぐ皆を止めてくれないかな?」
「え?」
「政宗は、年貢を上げるって使者を走らせてないって」
「嘘だぁ!おら…おらは確かに会って話を聞いただよ?!」
彼女の小さい体がぴょんと揺れる。動揺しているのかキッと目を吊り上げて私を睨む。
「うん、でもね?その使者の人が偽者だったんじゃないかって」
「そんな…」
「このままだと皆が酷い目にあっちゃうかもしれないから、今すぐ一揆を止めてほしいって政宗が言ってる」
「……あのお侍さん…来てるだか?」
「来てるよ」
いつきちゃんは視線をあちこちさ迷わせて、そしてもう一度私を見た。どうやら判断しかねているらしい。
いつきちゃんだってこんなに小さくてもいくつもの村の人達を率いて、たくさんの命を預かっているんだ、慎重になるのも無理はない。
「大丈夫、政宗がいつきちゃんを信じてるように、いつきちゃんも政宗の事を信じてあげて?ね?」
でも、政宗だってたくさんの命を預かっている。いつきちゃんの背負った物と同じくらい重い物を背負ってるのだから。
もう一度、ね?と言って笑いかければいつきちゃんは真っ直ぐ私を見て、力強く頷いた。
「…分かった、おら政宗に会うだよ。」
「本当?会ってくれる?」
「政宗と姉ちゃんを、信じるだ。」
いつきちゃんの真っ直ぐな目を見て私はありがとう、と言葉を紡いだ。
「…いつき」
「政宗、どういう事だか?おらにはさっぱり…」
少しして、政宗と小十郎が登ってきた。
小十郎に聞いたらナルちゃんは一揆が終了した事を告げに戻ったらしい。ついでに捕虜にした村人達も全員解放するのだとか。
いつきちゃんが凄く喜んでいた。くそぅ、かわいいぜ!連れ去りてぇぇぇ
「おらは確かに政宗の使者って言ってた人に会っただ。見たことのある押印も押してあった」
「だが俺は送ってねェ、年貢の引き上げなんて以っての外だ。……なんなら今ここで最初に結んだ量にするって宣言したっていい」
「………」
軽く腕を組んで政宗がそう言う。
いつきちゃんは足元に視線を落として唇を噛み締めた。
「…じゃあ、おら達はダマされてたって事だか?」
「そうなる」
「……いつき、でもなこいつァ無駄じゃないぜ」
「…え?」
「俺らを相打ちにさせようとしたずる賢い奴がいるって分かった、それだけでも十分だ」
気にすんな、と政宗はいつきちゃんの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
いつきちゃんは撫でられた所を押さえて上目遣いに政宗を見上げる。
「おら、政宗をもう一度信じるだ。姉ちゃんも、」
私と視線が合う。私はいつきちゃんによろしく!と挨拶した。それにしても可愛い子だなこの子!
「いつきちゃん!私と結婚してくだs、あだっ」
「女が女に求婚するなよ」
政宗のチョップが突き刺さる。
だからおま、痛いんだっつの!ジト目で刺さるチョップを繰り出した政宗を睨んでいるとザクザク掻き分けてナルちゃんが坂道を上がってきた。
「ぅおーい梵ーこじゅーシズカー!」
「成実か」
「ちゃんと全員解放したよ~!俺らも一揆衆も多少の怪我はあるけど重傷とか死亡者はいないって!」
ナルちゃんの言葉にいつきちゃんはほっと肩を下ろして力無く笑った。
「よかったねいつきちゃん」
「あぁ…ありがとな」
いつきちゃんはそういって小さく頭を下げる。
なにはともあれ一揆は終わった、らしい。
「でも誰がこんなことしたんだろう?」
「んにゃ、こちゃーんが探しに行ったからすぐ見つかると思うよー」
「え、なに?こーちゃんって結局忍び?」
「忍び頭だよ~」
「…………すげぇ」