私の神様(仮)
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「や」
駄目だ、今年はもう…
「もう、お侍にあんな高い年貢さ払えねぇだ…!」
「どないするだよ…!」
浮かんだ一つの提案に同じ村人を振り返る。
みんな目の中に宿る気持ちは同じだ。
「ッこうなったら一揆だべ!!」
振るった槌が風を切った。
私の神様(仮)
~恋の予感は死の香り!貴方のハートを狙い討ち!~
「にゅふふふ、暖かいねぇ~…」
「暖かいでござる……」
「warmだな…」
陽射しが心地よい、上田城。午後2時。
私を挟んで右側に幸村、左側に政宗っていうカオス信号機でさっきあやめ姐様の置いてったお茶をズズ、と啜る。
ぶはーウマウマ。茶はやっぱり美味しいね!
ぷふーと息を吐き出すと同時に吹いた風が乾された洗濯物をバタバタと音をたてた。
「へいわや…」
「さて!某は鍛練致すでござる!」
「真田幸村!俺とbattleしようぜ!」
縁側から立ち上がった幸村を追うように政宗がポケ●ンのテラかわゆすな主人、肩には電気鼠のサートシ君風に「バトルしようぜ!」と持ち掛けた。
ニヤリと笑んだ政宗に幸村は一瞬にして闘志をみなぎらせる。
「うむ!受けて立つ!うぉぉおお!見ていてくだされお館さむぁぁあぁああ!!」
幸村がそう叫ぶとどこからともなく木刀が二本降ってきて、ざっくり地面に突き刺さった。
え、と一瞬固まったら後ろから声が降ってくる。
「お二人さん、なんなら武田道場でやったらどうだ?」
「てゆーかこの辺でやられると洗濯物が吹き飛んじゃうんだよねー」
「出た、武田のツッコミーズ!!」
「勝手に役割決められちゃったし!」
後ろ手をつきながら振り返ると銀の髪が綺麗な勘助兄ちゃんと、迷彩オカン佐助が立っていた。
てか佐助の手の中にしっかり洗濯物が入ってるんだけどココは笑う所なのか。
「ah?武田道場?」
「先日お館様が造られた道場だ。」
「はーん」
なんでもやっちまうんだな、なんて政宗が声を漏らす。
「俺はその道場だろうが構わねェぜ?」
「なれば道場にて手合わせ願うでござる!」
やる気をみなぎらせて幸村は地面に刺さった木刀を引き抜く。
ん?幸村って木刀使えたっけ?
同じく木刀を引き抜いた政宗を見て首を傾げると洗濯物を抱えたまま佐助がこっそり「旦那は体術、槍術、剣術できるから」と教えてくれた。
ええええ3つ?!すげェよそれ!
幸村はお馬鹿さんだと思ってたけど実は相当な天才じゃまいかぁぁぁあぁ!
SUGEEEEE!!
「独眼竜と幸村か、わかったお館様にお伝えしてくる。」
「俺が行きますよ?」
「猿飛はソレが先だろ?」
「…………」
勘助兄ちゃんが指差したソレは佐助の腕の中でじんわりと湿っている。
佐助がすっごい微妙な顔をした。
「どうせ俺も用があるからな、」
勘助兄ちゃんは笑って佐助の頭を撫で付けると(ぐっは!この身長差萌ええええ)廊下の向こうへ消える。
佐助はその姿を見送って洗濯物を改めて抱え直して、庭へ下りた。
物言いたげな佐助の視線が突き刺さる。
「……ねぇシズカちゃん」
「ん?」
「俺様ってそんなにお手伝いさんみたい?」
「言葉濁してるけど、佐助ってば十分オカンだよ☆」
「………」
ガクリとあからさまに肩を落として佐助はため息をついた。
のろのろと洗濯物を乾そうとする佐助の後を軽く追いかけて洗濯物を指差す。
「手伝うよ?」
「…本当にできるの?」
「あたぼうよ!これでも一応政宗含むチビちゃんズの面倒見てたんだから!」
ドン、と胸を叩いてみれば佐助はふぅん、と言われる。
信じてないだろその顔!
絶対綺麗に乾してやる!と意気込んで私は佐助の抱える洗濯物に手を伸ばした。
「ではこれより試合を始める!」
また例の如く武田道場に集結した私とお館様とノブさんマー君勘助兄ちゃんに佐助の前回のメンツ+小十郎。
小十郎は深いえんじ色の着流しを着て私の横にどん、と立っている。
横顔がすっごい男前だと思います!あ、でも男前っていっても豆腐じゃないよ!
「こじゅ、楽しみだね!」
「ん?……あぁ、そうだな」
私に苦笑した小十郎。
なんでそんな微妙な顔……あ、も、もしかして小十郎ってば政宗が取られると思って不安だったり!?
「大丈夫だよこじゅ!」
「は?」
「政宗も小十郎大好きだから!そして小十政GJ!!」
親指をぐっ!とおっ立てて言えば小十郎は目を大きく開いて硬直した。
うふ、ふふふふ…!小十政!嫉妬嫉妬嫉妬!
でへへ萌えええええ!!!主従逆転カプサイコー〜〜!!
「…Ha!真田ァ!今日こそテメェをぶっ飛ばしてやるぜ!」
「なんの!某とて負けぬ!」
ニヤリと口端を持ち上げた政宗は顔の横で木刀を構える。
幸村も静かに剣道の構えみたいにして木刀を構えた。
ひゅー、なんて何処からともなく風が吹いてくる。
先に動いたのは政宗だ。
「Let's party!覚悟しな真田幸村!」
「のぎゃぁああああイキナリ生パーリー来たァァァァ!!」
うわぁぁぁ生パーリーやばい!カッコイイ!
なんだよもう本当武田道場バンザイ!お館様一万年と二千年前から愛してるよ!
鼻頭を押さえてグフ、と悶えを吐き出すと小十郎に背中を撫でられた。「大丈夫か?」なんてテラ優しス!でも別に吐きそうな訳じゃないんだけどね!
「ハッ!」
「く…ッ!」
悪役みたいな笑みを浮かべて幸村に猛攻撃を繰り出す政宗に苦しそうな表情の幸村。
流石に普段から刀使って戦っている政宗に比べて二槍使いの幸村は剣術では敵わないかもしれないらしい。
ぶっちゃけ剣道だったら島津のおじちゃんが1番強いと思うんだ。あのモーションは剣道に似てる気がする、ものすごく。
と、突然ダゴンと低い、嫌な音がして幸村が道場の壁際まで吹き飛んだ。
どうやら政宗に飛ばされたらしい、幸村を吹き飛ばした張本人政宗はおおきく振りかぶった(三阿部っていいよね!萌え!)姿勢から戻ると一度肩を回す。
そして吹き飛んだ幸村は木刀を杖のようにしてゆっくり立ち上がった。
「うぐ…ッ」
低く呻くその姿は辛そうだ。
「幸村大丈夫!?」
「ッ…無事でござる!」
「シズカ、俺は心配してくれねェのか?」
「あんたは万全状態でしょーが」
こっちを見ながら唇を尖らせる政宗。
う、うわ予想以上に萌える!ウホwと口元を緩ませると佐助が小さく「旦那…」と呟いた。そしてまさかの幸佐!?
「幸村ァ!気合いじゃぁぁぁっ!」
「お、お館様…!」
「その程度の気合いではシズカを娶れぬぞ!」
お館様の魂の一言のあと、一瞬道場内の空気がフリーズした。
まさにカキーーンなんて効果音がつきそうなほどに、甲斐にしては恐ろしくなるほどの静寂。そして数秒フリーズしたのち
「め、っめ、め、め、め、めめめめめめっ娶るぅぅぅうッッッ?!!?!」
幸村が木屑の中から絶叫した。
「大将なに考えてるんスか!?」
「シズカを娶るだ!?Say whaaatッ?!何言ってやがる!」
佐助が悲鳴に近い声でお館様を見て、政宗がとんでもない勢いで睨みつけてくる。
「シズカとめ、夫婦など破廉恥でござらぁぁああぁあ!!!」
さっきまでの体の痛みに歪んだ顔はどうしたと裏手ツッコミを繰り出したくなる程、顔を真っ赤にさせて壁にバゴンと頭をぶつける幸村。
「アンタが先日言ってた策ってこれ?!嘘でしょ、俺様そんなの聞いてないよ!ちょ、シズカちゃん説明してよ!」
「のぎゃぁぁああシェイク止めぇぇぇ!!」
襟首を掴んでガクンガクンと揺らして脳みそを揺らす佐助、うげぇぇ!酔った!
「て、てゆーかお館様!」
「ぬ?」
「まだ私は頷いてないし……っていうか誰にも話してなかったんですか!」
幸村はともかく佐助には話してると思ってました!と言えばお館様は腕を組んだままむぅ、と唸る。
「婚姻はもしも、の話じゃ。もしもお主が元の場所に戻る手段が見つからなければ…というな。故に…幸村には発破をかけたまでよ!」
ドン!と効果音がつきそうな勢いでお館様は言葉を切った。
つまりお館様は…私が帰る手段が見つからなかったら幸村はどうだ、と居場所を用意してくれている…?!?
「おっ…お館様……!」
「…シズカ……」
「おやかたざばぁぁあッ!」
「シズカよぉぉぉおおッ!!」
お館様ってば思慮深い!!そこに痺れる憧れるッッ
殴り愛を求めて叫んだらお館様にいつかのようにブンブン振り回してもらった。
佐助のシェイク+コレはきついんだけれど仕掛けたのは私だし、お館様のコレ楽しいからいいんだげへへへふおぇッ、
「あ、あぅう、シズカ殿…ッ!か、顔色がよ、よ、よろしくな…ッ!」
「大丈夫ですよ昌景、シズカ殿は強いですから」
「とか言いながら信春、顔笑ってるぞ?」
仕方ないよノブさんてば笑顔は癖のような感じなのですよ、だもんね!
「で?シズカちゃんあの二人にも勿論俺様にも解りやーッすく説明してくれるよね?」
「ぐふ、佐助の笑顔が突き刺さる…イタタタ!肩に親指刺さってるよオカァァァン!」
「本当に刺すよ?」
「すみませんでした。」
ニッコリ笑うオカン佐助に冷や汗ダラダラかきながらなんて説明しようか悩んでいたらふと佐助が一瞬にして消えた。
え、佐助?
「何?佐助トイレ?」
「と…といれ?とはなんで御座ろう…?」
「toiletか?厠だよ厠。」
「はっ、破廉恥!」
「―――……竜の旦那、右目の旦那、」
やたら早いトイレを済ませた佐助が帰ってきて鋭い視線を二人に投げかける。
その眼差しに二人の纏う空気がすっ、と重くなった。
佐助が軽く天井へ視線を移すと、それを合図に、ほの青い黒が降りてくる。一瞬なんだか解らなかったけれどどうやら忍びらしい。その忍びの人は片膝を立てて頭を下げている。
「ま、政宗様…!小十郎様…!急ぎお伝えせねばならないことが!」
「……What happen」
「話せ、」
小十郎の言葉にバッと忍びの人が頭をあげた。
「ほ…北端にて一揆が勃発!その規模300名以上!現在小隊を編成し鎮圧へ向かっておりますが……至急小隊へ合流願います!」
「ッ!!」
「一揆…だと?!」
小十郎と政宗が息をのんで目を丸くした。
ほく…たん…ほくたん…北端!?
「い、いつきちゃぁぁああ!!」
北端って言ったらいつきちゃんが居るじゃないか!てこれ最北端フラグだよね!
というか戦!?
「シズカ、いつきを知ってんのか?」
「一方的にだけどもあたぼうよ!いつきちゃんつったらあの北端のアイドルいちいちオプション装備が可愛いあのおにゃごじゃまいか!」
そしてレベルと金とコンボが稼げる所よね!
ニヤリとしそうになったけれど雰囲気が軽くシリアスだから頑張って真面目顔を維持する。
「クソッ…なんでまたあいつら…!」
「政宗様、」
「解ってる!…虎のオッサン!悪いが聞いての通りだ!俺らは行かなきゃならねェ!」
「うぬ、必要ならば武田からも使者を遣わすぞ?」
お館様が軽く眉間にシワを寄せて言った言葉に政宗は首を左右に振った。
「これは伊達領の問題だ、甲斐は口だし無用だぜ」
そういうと政宗はこっちを振り返る。
「悪ィシズカ。奥州は先延ばしにするぞ」
ほんの少し寂しそうに眉を寄せた政宗。つまり私は連れていかないって事?
「え、やだよ」
「シズカ、だが」
「どうせ政宗の事だから交渉するんでしょ?」
小十郎の言葉を遮って私は口端を持ち上げた。
「ちびっ子の扱いは私の方がプロだと思わない?」
てか、つい先日まで本業みたいなものだった訳だし!
そんな意味を込めて政宗を見てやれば何か言いたげに口を開いてため息混じりに口を閉じた。
「……ok.付いて来てくれ」
「オフコース!」
「政宗様…!」
「諦めろ小十郎、シズカは肝が座ってるって言ったろ」
「……」
グッと親指立ててやれば政宗はまた溜息をついて肩を落としつつ私の顔を見た。そして私と親指を合わせるように政宗も親指を立てた。
なんか某友情物語の血の絆を思い出すねぇ!
「Hey小十郎!とっとと準備始めるぜ!」
「御意に」
北端……寒いんだろうな…。
でっ、でもいつきちゃんと政宗の為だもんね!シズカ負けないッ!
ヒヒヒン
目の前にいる二頭の馬に私は冷や汗を流した。
わ、私忘れてたんだけど移動って馬じゃないの!?
「ケツ!」
「ah?」
「いや、尻が死に絶えそうだなーと。」
でもって移動距離は小田原→甲斐間より長い、と。
え、死にますよ?主に腰とケツが。
チラリと目の前にいる馬二頭を見てみればブルヒヒヒと満足そうに鳴いた。
「安心召されよシズカ!この馬二騎は武田騎馬の中でも一二を争う速さを誇ります故!」
「つまりちゃんと乗ってないといつぞやの様に落馬しちゃうって事だよー」
アハーと笑う佐助を一睨みすると佐助はあ、そうそう。と口を開いた。
「はい、コレ。お弁当」
「……め、メイドイン佐助?」
「冥土?」
「いやいや、佐助の作ったお弁当かなーって」
渡された笹包と佐助を見比べながら問うと佐助は眉間にシワを寄せてハァ、とため息をついた。
「俺様はちょっと手伝っただけだよ」
「うわ勿体なくて食べれない!家宝家宝!」
佐助の作ったお弁当なんてレアだよレア!
だって佐助はお館様と幸村にしか作らないはずだものね!親子に夫妻ハァハァ!
「シズカ、」
「勘助兄ちゃん?」
「気をつけろよ、武人でないにしても武器を持ってるんだ。怪我をしてもおかしくない」
真剣な眼差しの勘助兄ちゃんと目がかちあう。
風が吹いた。その隣にいたノブさんも頷いて前髪を耳にかけた。
「そうですよシズカ殿。シズカ殿は元より戦う術もありませんし。気付いたらザックリ斬られてるだなんて止めてくださいね」
そういうノブさんの笑顔がやたら輝いて見える。
なんかまるでそれを望んでるみたいな顔に見えたから気のせいって事にしよう、うん。
「政宗殿……」
「真田、決着はまた今度だ。you ok?」
「いえ、そうでは御座らぬ。ともかく…道中用心下され。」
「…ハン、テメェに言われなくても解ってら」
「違うよ政宗!今の幸村ってば政宗が行っちゃうのが寂しいんだよだから今の尻尾垂れてるかんじでショボンとしちゃってるんだよげふえふぇダテサナもぇぇえええ!」
「シズカちゃん、常に自重って単語を思ってね頼むから。」
「はーいママ!」
「…………」
黙りこくった佐助の睨みをスルーして私はアワワワとしているマー君を見た。
「マー君、」
「あ、あうう…う、シズカど、殿…たっ、体調にき、気をつけてください…」
「うん、大丈夫。ありがと!」
そして最後に深い赤の着流しを着たお館様が口端を持ち上げて言う。
「シズカ、またいつでも来るがよい。その時は我ら快く迎えようぞ」
「…はい」
苦笑をもらしてお館様は私の頭をその大きな手の平で優しく、力強く撫でた。
うううお館様の手のひらめちゃくちゃデカい!!
「気をつけるのじゃぞ。」
「お館様お世話になりました、私、また来ます!」
「うむ、待っておるぞ!」
私の言葉に頷いてお館様は笑って見せる。
政宗に手を引かれて馬の上に乗れば政宗の前、つまりたづなを握れば政宗の腕の中、そんな体制。
大きかったお館様より視線が高い。なんだか高さを意識してしまって内臓がキュッとしてしまう。おおう政宗の前で吐かないように気をつけなくては……!一応これでも『姉ちゃん』ですからね!!
ぐっと気合を入れていると、幸村と目が合った。
バタバタしていたけど、そういえば幸村にもちゃんと訂正しておかねばなるまい。
「幸村」
「シズカ…」
「あの、ほらさっきお館様が言ってた娶るってやつだけどさ」
「!!!!」
幸村は忘れていたのか顔をとたんに真っ赤にさせて、ぐぅ!!!と顎を引いた。いやそんな反応されるとこっちも恥ずかしくなってきたんですけど?!
「あ、あれさ、……変な意味じゃなくて、私が帰る場所無くなったらおいでって意味だからね!」
「……っ!」
幸村は目を丸くする。え、いや本当に何なのその反応!
お館様は私が佐助の失態でここにきちゃったことを知ってるから、そう言ってくれているだけでそれ以上の意味なんてないってことなんですけど?!ちゃんと伝わってる?
まじで思ってたんと違う反応が返ってき続けてて不安なんですけど!
「あー、だから、つまり…そういうの気にせずまた遊ぼうね、ってこと!!」
「!うむ!……であれば…、シズカ、今度また…次こそはもっと遊ぶでござる!某待っております故!」
「次は城下に行こう!そんで沢山甘味食べよう!」
さっきまでの顔面七色はどこに行ったのか、本当にどう納得したのかは怪しい限りだけど大きく頷いた幸村は手を差し出してきた。おお、握手まで出来るようになったのね!進歩!
お姉ちゃんう、嬉しいよ…!
「某、それまでにシズカも手放しで喜ぶ程の甘味屋を見つけておくでござる!」
「アハハ、期待してるよ!」
政宗と視線を合わせると政宗は頷いて馬鞭を鳴らした。
「じゃあな虎のオッサン。」
「うむ、くれぐれもな独眼竜よ」
「行くぜ小十郎!」
「はっ!」
小十郎の声を合図に政宗は手綱を叩いて馬を走らせる。
がくんと揺れながら馬は一声鳴いて勢いよく地を蹴り走り出した。
政宗の腕越しに振り返ると、大きく手を振る幸村と仁王立ちのお館様、頭の後ろで手を組む佐助に後ろ手に組む勘助兄ちゃん、ドギマギしながら手を振るマー君と控え目に手を振るノブさんが目に入った。
始めは目立っていた赤達は秒刻みで遠くなっていく。
耳元で唸る風にみんながかけてくれた言葉が掻き消されていく。
「ッみんな本当にありがとう!また来るからね!!」
政宗の邪魔にならない程度に身を乗り出して私が大きく振った手が見えてくれてたらいいな、なんて。
そう思った。
馬はパッカパッカと蹄を鳴らして甲斐の国を駆けていく。
最初来た城下町を過ぎて坂をあっという間に過ぎた。今なら幸村が胸を張った理由がわかる。それぐらいにこの馬は速い。
つまり、
「け、ケツがぁぁああぁああ!!」
「Ha!やっぱり風は気持ちいいな小十郎!」
痔フラグなんか見たくないィィィと叫ぶ私を軽無視して政宗は風で聞こえないと叫んだ。
「アイツらの衝突までどのくらいだ?!」
「成実が先陣を切っていますが…保って数日かと!」
「成実がleaderだァ?!は、中々niceな人選じゃねェか!…いいか小十郎!甲斐を抜けたら奥州を素通りして真っ直ぐ北端に向かうぜ?!」
「承知しております!」
「とばすぜシズカ!Haッ!!」
「のあぁぁぁあああ!!」
それから瞬く間に市井を抜けて、気づけば来た時のように森というか木々の合間を抜けていた。その間ずっと何だか難しい話をしていた政宗と小十郎にスルーという名の放置プレイをくらってたら、ケツも痛いが心も痛くなってきた。
あれ、目から汁が…。これは…冷や汗……っ!
「…そういえば、」
「ん?」
結構ギリギリのラインで意識を保っていたら急に政宗が私に話しかけてきた。
「シズカ……俺たち以外にシズカがどこからきたか知ってるやつは誰だ?」
「んぇ?」
何だ急に。
どこからきた、って言い方的に、私が(正確には違うけど)未来から来たことを知ってるってことだろうか。
「……んっふふふ」
「何だよその笑い」
「私は賢いからね!!あまり色んな人に言っちゃアカンやろってわかってるんですよね!!」
エッヘンと胸を張る。
そりゃあだってそんなのトリップ夢あるあるあるあるでしょ!!ド定番もド定番!
未来の話とか死ぬキャラを救済するために立ち回ったせいで余計な事件に巻き込まれちゃうとかさ!でもそれがいいんだよねぇ〜!!!
政宗の骨っぽい手が偉いな、と言わんばかりに私の頭を撫でる。
「…really?」
「オフコース!任せなさいって!……ええっと、ちびちゃんズでしょ、氏政おじいちゃんでしょ、お館様でしょ、佐助でしょ、あとコタかな!!もしかしたら武田軍の家臣の人たちもお館様ツテに知ってるかもしれな…」
「…………」
「あーだだだだだだぁっ!痛い痛い!!指食い込んどる!!」
ギギギギと今し方まで私を撫でていた手のひらがそのまま私の頭を粉砕する勢いで力を込められる。ぎっ、ギチギチ言うとるて!!政宗ってば刀六本持つ自分の握力の強さをご存知でないのですか?!?!
「シズカ…お前はどうしてそう…!!」
「だだだだだって!!みんないる場だったし!そりゃその場で発表したら、みんな聞いてっいだだだだだ!」
「ま、政宗様…っ!」
小十郎の静止の声で政宗は一度大きく深呼吸して、それからはぁぁぁ、と信じられないくらいデカいため息を吐いた。
そしてこめかみを指圧すると私をみる。
「いいか、ここにいる俺らが!最後だ!」
「?」
「お前が、未来から来たってこれ以上広めんなって言ってんだ!you see!?」
「わ、わ、わ、わかったからその手どけてェェェェッ」
やばい音してるって!!!!
ようやく離れた指に半泣きで振り返ると、政宗は政宗でものすごい顔をしている。
えっほんとに怒ってるじゃん……!
「うえーーん!こじゅーー!!政宗が暴力振るった!!」
「泣くな、シズカ……政宗様、流石に少々やりすぎです」
「Shut up!!」
こじゅに助けを求めたけど、馬の距離では直接的なヘルプはできなくて政宗に一喝されてしまった。うわん!ごめんねこじゅ!!
「……いいか」
とんと、真剣な声。
「武田のおっさんをあまり信用するな。あいつは食わせ物だぜ」
「…………」
「どうせ真田との婚約話だって言い始めはあのオッサンだろ」
「…………うう」
そん、……いやまぁ…たしかに…。
私はお館様をゲームの中で知ってるし、あの人は凄い人なのも知ってるし……だから疑う必要とか気を張る必要がないって思ってたけど政宗は違うんだった。
フランクな表現になっているけれど、彼らがしているのは殺し合いで……こういった一つ一つも気を配らなくてはいけないのかも。
思い至らなくて迷惑をかけたかも、と思って視線を落とす。
「…ごめん…」
「……Guess it…、…can’t be helped。」
政宗は私にわからない英語でなにか言って、それからジッと私の目を見た。
さっきまでの怒りは一瞬成りを潜めたように見える。なにか感情がぐるぐると回って、それからもう一度政宗の手が頭に落ちてくる。
「悪い、……ただ…」
「……」
「お前がtroubleに巻き込まれるのは気に食わねえんだよ」
「……政宗…」
政宗は私を心配してくれてるだけ。
私はもう一度ごめん、と謝ってそれからありがとう、とお礼を言う。
「次は気をつけるよ」
「あぁ……、少なくとも、その話はこれがlastにしてくれ。」
政宗の指が揺れて髪をすく。
馬が風を切って走っているからちょっと乱れてしまっているだろうか。政宗の顔を見上げる。政宗はジッと私の顔を見たのちにもう一度私の頭をポンと撫でると「まぁでもシズカはもう伊達が奪っちまったからな」と歯を見せて笑った。
「あとはシズカがフラフラどっかに行かなきゃ大丈夫だろ」
「……えっまるで私がいつもフラフラしてるみたいな言い方じゃん!!」
「間違ってないだろ」
そりゃ腐女子ですから?!
萌がある方に吸い寄せられちゃいますよ!!
「できる限り全力で気をつけさせていただきます!」
「――…よし、この辺りで休憩にするぜ小十郎!」
政宗の一言に小十郎の乗った馬と私達の乗る馬は徐々にスピードダウンして河べりに寄ったらしい。
上田城を出てだいたい半日ぐらい経っただろうか、やっと馬から降りた私はフラフラとバランスを崩してしまった。
ぐはぁぁあケツが終末を迎えるところだったんですが!
腰への追加ダメージにも深手を負った私に小十郎が心配そうな声をかけてくれた。
「シズカ大丈夫か?」
「うう…尻が3つに増える…」
ふらふらとしながら草むらに倒れ込むとぎゅるるると腹が切ない音をあげる。
「…腹減ったぁぁ」
ふぅ、と息を吐いて空を見上げて思い出す。
そういえばオカン佐助からお弁当貰ったじゃまいか!
ルンルンしながらお馬さんに括り付けていた佐助からのお弁当を取り出す。政宗達にも別の物があるらしい、小十郎も馬から荷物を下ろしていた。
「あへえへ佐助のお弁当佐助のお弁当!やばいこれは記念物だよ!絶対美味いに違いないようはぁぁー!」
ニマニマしながら佐助から貰った笹包の紐を解くと中からはおにぎりが3つ入っている。
「…………?」
佐助が作った、わりには何と言うか。
私は首を傾げる。
そう、例えるならいびつ、というか。
佐助はとても形が綺麗でご飯粒が潰れていないそんなおにぎりを作るイメージあるんだけど。
でも今自分の手元にあるおにぎりはお世辞にも綺麗とは言えない。なんつーか男の料理?
「おりょ?」
笹包から落ちた何かを目で追うとどうやらそれは手紙らしい。荒目の和紙に何やら達筆な文字で書いてある。
…でも、いつも言ってるけれど私は字の読み書きが出来ません!
「はい!政宗先生っ!」
「ah?」
「これ声に出して読んでいただけますか!」
ずびしと手を挙げて言えば少しポカンとした後、政宗は苦笑して手紙を受け取った。
「シズカ、まだ字が読めねェのか」
「うっさいわ!いいから早く読んでけれ!」
口を尖らせた私に政宗はため息に似た息を吐いて手紙に目を落とす。
「『シズカ、奥州は大変寒い故風邪などひかぬよう気をつけてくだされ、某はシズカに会えてよかったでござる。先日シズカは握り飯が好きと聞いた故、某がつくってみた、佐助程美味くはないやも知れぬが食べてくれれば、と思う。達者で。
……真田幸村』っと、真田からじゃねェか」
真田の作った握り飯なんてrareだな、と政宗はちらりと興味なさ気に不恰好なおにぎりを見て口端を持ち上げる。
私は思わず涙腺が緩みそうになるのをおにぎりを食べることでごまかした。
そうしたら思ったより美味しいおにぎりに目がうるっと………なんか某ジ●リの千尋を思い出した。
軽くシリアスシーンに突入してるのにすぐ2次元に脳みそが走る自分はそろそろ自重すべきだと思います。
「でも今はせめて幸佐に萌えさせてくれ!!!」
幸村がこのおにぎりを作った、佐助はたしかちょっとだけ手伝ったって言ってた、つまりは佐助と幸村が同じ台所に立ってたって訳でなにそのナイスシチュエーションンンン!
せ、狭い台所で体が時々ぶつかりながら料理を作る二人…ッ!
『あー!ちょっと旦那ってばソレ使っちゃ駄目だって!』
『む…すまん。』
『だからやっぱり旦那には俺様がいないとダメなんだって。旦那が料理するって聞いたとき俺が来て正解だよー』
『訂正せぬぞ、たしかに俺には佐助がいないと駄目だ。……佐助、』
『だ、だめだよ旦那…鍋…噴いちゃう』
『……佐助…』
『だん、な………』
「ウハァァァア!萌えぇぇええええ!!」
なんだよイチャイチャしちゃって!もういっそ結婚しちゃえよ!この新婚さんめっ!
キャー☆と一人で勝手に盛り上がっているとクネクネ動いていた私をちらり見て小十郎は口を開いた。
「それにしても流石、武田の馬ですな。」
「だな、その辺りの馬じゃこんな所までこれなかった。」
そういって政宗が馬の体を一撫ですると馬が鼻を鳴らす。
「こんな所まで?今どの辺なの?」
地名で答えられてもわからないけど、と思いながら問えば小十郎が一度辺りを見回して言った。
「そろそろ甲斐を越えてるだろうな」
「まじでか!」
それってめちゃくちゃ速くないか!?ぽかーんとしていると、政宗が苦笑する。
「だから北端にもquickでつくぜ、」
早いとこ鎮圧に行ける、と言うわけですか。それは万々歳ですね!この馬、実は凄かったんか、と馬を見たらつぶらな瞳と目があった。
小田原出たときも思ったけれど馬の目ってまじまじ見れば可愛いよね!ウマ●ンも可愛いかったけどもさメルメルメー!
「ザ●ル!」
「は?」
「なんでもないアルよ!」
幸村から貰ったおにぎりを2つ食べて元気100倍になった私達はまた馬に跨がる。ひひん、と馬が鳴いてグンと加速した。
「どひゃぁぁああ!」
風やべぇぇえ!と叫ぼうと開けた口の中にダイレクトで入ってきた空気を吸ったら、その口を政宗に押さえられた。
「ふがっ!」
「しっ、Don't speak」
「?」
耳打ちで喋るなと言われる。
え、何?一人ジェットコースターは自重ですか!
政宗を見上げると政宗は右後方に視線をやっていた。チッと一つ舌打ちをかまして政宗は叫んだ。
「小十郎!」
「承知!」
返事と同時に馬鞭が鳴る。
耳元で風が唸るほどの速度で馬公は走り出した。
ひぎぎぎ!耳と鼻が痛い!風がつべたいいいい!!
姿勢を低くしろと風で掻き消えそうな声で言われ私はぐっと前屈みになる。
その上から半ば覆い被さるようにして政宗が馬鞭を鳴らす音だけが聞こえて視界はほぼ馬の背中だけになる。
って後ろから金属音が響いてきたんだけど!小十郎無事!?
そんな状態でどのくらい走ったんだろう、耳が冷えて痛くなってきたころ政宗が上半身を起こして後ろを振り返って馬の速度を下げた。
「……振り切れたか?」
「おそらく。」
後ろから小十郎の声が聞こえてきて少し安心する。
スピードが落ちた、と言ってもまだ結構な速度は出てるからまだ耳元で風の音、私も少しだけ上半身を起こす。
「シズカ、大丈夫か?」
「私は平気だけど…二人は?特に小十郎…」
なんか金属音がしたんですが、と聞けば政宗がIt's safe、と流暢な英語でそう言った。
「俺も無事だぜ」
とはいえ政宗で完全に見えないので政宗を目だけだ見上げると「本当だから安心しろ、」と頭を撫でてくる。
「ならいいんだけど…何だったの…さっきの…」
や、やっぱり金属音が聞こえたのが気になるんですが…。
でも小十郎が無事っていうんだから無事なんだろう。
「政宗様、振り切れたとはいえまだ安心できませぬ」
「分かってる!このspeedで行けるところまで行くぜ小十郎!」
「御意!!」
政宗に再び頭を下げるよう言われ私は頭を下げた。
……家に残して来た与一さん、お姉ちゃんはとっても行き先が不安です。