私の神様(仮)
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「お」
いつもは熱血主従で騒がしい上田城だが、今日はコソコソと囁き声が充満している。
耳に微かに障るのは自分がいけ好かない相手への好奇の噂。あることないこと、それから好意や嫉妬。
忍びの耳ってのはこういう時不便だなァと心中こっそり溜息をついた。
私の神様(仮)
~ファンレターに胃薬を~
「この項目で、武田にも利益があるってのはわかるだろ」
「…うむ」
「どうだ、これでお互い損はないはずだぜ」
「……………」
着々と進められていく会合。
甲斐の大将は、突然現れた無礼極まりない客人にもかかわらず、真剣に話を聞いている。
そんなの相手にしなくてもいいのに、と内心思ったけれどうちらの大将はそんな、器の狭い男じゃない。
それに奥州の竜は普段の南蛮被れはどこへやら、持ってきた誓紙を広げて事細かに説明をしている。これだけ見れば誠実そうに見えるんだからなおのこと腹立たしい。
その竜の後ろ横で右目が、背筋をしゃんと伸ばし静かに両眼を閉じて話を聞いている。彼もまた義理と実直さを見せつけるように微動だにしない。
ただこちらの”あまり良くない様子”が気になるのか時折チラリとこちらを見てくる程度で。
で、そのあまり良くない様子が何かと言うと。
「………」
現在進行系で大将と話し合いをする竜の旦那を力強く見つめる(と、いうより睨んでるか威嚇してるみたいな)旦那が発してる警戒してるのか妙な覇気。
竜の旦那はさほど気にしてなさそうだし、大将は全く気にしてないし。気にしてるのは右目の旦那と俺様。
最初、旦那の位置には山本さんが居る予定だった。
だけれども、旦那の強い希望でわざわざ代わってもらったらしい(俺様もびっくりしたよ)
代わる山本さんもだけど旦那!
お館様のお側に!とか豪語したんなら頼むから喧嘩売らないでよね!?
竜の旦那だから多分ないだろうけど、これ結構重要な会議なんだからね!もし破棄されちゃったらどうするのさ!
それに竜の旦那も!時々チラリと見て嘲笑しないでよ!
ぁぁあホラまた!旦那の覇気が重くなってきたじゃん!
そりゃまあ「政宗殿ぉぉおッ!!」とか叫ばれるより五月蝿くないからマシだけど!
………あ、そういえば五月蝿いと言えばシズカちゃん。
なんかこの間ボソッと「政宗」って言ってたんだよねぇ。俺様は信じてないけど本人曰く未来から来た人?ってことらしいし、余計なこと知ってるのかもなあ。
そんなわけで、優秀な忍の俺様は、面倒なことになる前にお菓子と馬場さんをおいて部屋に押し込んできた。
とりあえず今の俺様に出来ることはやった。
後はこれが成功してくれることを願って……
ドダダダダッ
「幸村ぁぁぁあ!テメェェエ!どこ行きやがったゴルァァァア!」
…………どうやら無駄、だったみたいだ。
俺様は諦めて漬物石よりも重い溜息をついた。
き、今日という今日は許さねぇ!
私はそんな思いを胸に上田城を爆走兄弟レツゴしていた。
なんでかは知らないけど佐助にしばらく大人しくしてて、と言われて部屋に押し込められた代償としてお菓子を要求した所、城下で一番美味しい(幸村のお墨付き)甘味屋の良いニオイのするお団子とまんじゅうを置いていってくれた。
でもそのオマケで始終笑顔のノブさんも付いてきて、そのノブさんのオマケにマー君も付いてきた。
え、なんで?私ってそんなに信頼ない?
私だって団子頼んだらこんなに沢山セットで付いてくるハッピーセットいらないよ!
まぁ付いてきたものは有り難く頂戴しよう。
ノブさんとマー君と私の三人で写真を撮って(すっごい驚いてた)とりあえずトイレに行って、帰って来たときに事件は起きた。
「………あれ、お団子は?」
ニコニコと笑うノブさんとあわあわしてるマー君の背後の机の上にあったお団子とまんじゅうが消えていた。
まさか、とノブさんを見てみるとニッコリ笑いながら軽やかに、
「ついさっき幸村が来て食べて行きましたよ。」
「あー幸村がねー。
……って、んだとゴルァァァァッッ!幸村許すまじ!マー君幸村どこ行った!?」
「え?!あ…わ…解りませ……!」
わたわたするマー君を視界の隅に入れて私は部屋から飛び出す。
あ、あんな美味しそうだったまんじゅうと団子をよくもぉぉおおおおっ!
な、なにこの「まて、」「はい没収☆」なノリ!殴っていい!?あの桃色のまんじゅう食べたかったのに!
ぐぁぁあぁ!と口から火を吐きそうな勢いで上田城を駆け回る。
侵略すること火の如し!
食い物の恨みも一億年だぞ幸村ぁぁああ!!!
「幸村ぁぁぁあ!どこ行きやがったゴルァァァア!」
そうやっていくつ障子をあけ放ちながら走り続けただろうか。
スパコン!と凄まじい音を立てて開いた障子、そこに人影があった。
「……………」
とりあえずお館様がいた(きゃん苦笑した顔も素敵☆)顔面真っ青な幸村がいる(やはり貴様か幸村!!!!)
で、だ。
左からゾクゾクくる視線…てかもうここまで来ると殺気?
誰だ健気な一般人に殺気飛ばしてくるや…つは………
「……誰だテメェ…」
「ひっ」
ちらりと視線を向けると鋭い眼光と……893!!
この腰にクる素敵ボイスは間違いなくセフィ●ス!左利き左頬の傷がヤクザなオーラむんむんな恐面!
まさかのまさか、とニヤニヤする頬をなんとかストップさせてそっちに視線を送ると、案の定むちゃくちゃ私に睨みを効かせた小十郎さんの姿が。
ぎゃぁぁああリアルこじゅキタァァァア!!
「うわわわわわわわか、か、かっ!」
「は?」
かっっっっっこよすぎでWA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
興奮で口が上手く回らない私にハテナまみれのこじゅ。
う、うへへへへへかっこよすぎ!小十郎かっこよす!
お館様もダンディズムだけど小十郎もお館様とは違うダンディズムだよね!
お館様はパパンなダンディーで小十郎は夫っつーかさ!!へへへへげふん。
ぜ、是非とも触らせて貰わねば!と踏み出そうとした瞬間、小さく掠れた声が聞こえた。
「………シズカ……?」
なんだか「鬼斬り!」とか叫んでそうな声が聞こえてきた。
ゆっくりと殺気を放つ小十郎から視線をずらすと、茶髪、眼帯……てゆーか青ッ!?
「……………」
と、とりあえず踏み出そうとした足を戻して、一瞬何かを捉えたそのまま私は障子をゆっくり閉める。
な、何も見てないぞ…何も見てない!
例えば奥州筆頭とか独眼竜とかレッツパーリーとかはな!!
怒りで頭がいっぱいだった私はとっさに思考を切り替えるのに失敗した。
え?今いたのって、…え???
頭の上に疑問符以外を出せなくなって瞬きと呼吸を繰り返す。
いや、まって??
こじゅは…え?つかここ甲斐なんじゃないの?え?
今見たものをなんとか脳内処理しようとしていると、障子の向こうからガタガタッと立ち上がる音が聞こえてきた。
「ッおい!待てッ!」
「!!」
身体が勝手に回れ右!!!気づけば全速力でその場を離れようとしていた。
ななななんで忘れてた自分!小十郎が居るって事はっま、政宗も居るだろうが普通うううう!!
政宗も政宗っていうかさ?!!!ももも、もっとさ!!!!事前にさ!!!??準備ってものがあるじゃんよ!!!!!!
だってこんなん!こんなのってさ!!!
なんて考えていたのが悪かったのか、単純なコンパスの違いか、何度目かの角を曲がったところで、背後からガシッと手首を掴まれた。
「とまれって!!!」
ハァハァと肩で呼吸しながらゆっくり振り返ると、彼は眉間にシワを寄せて怒ったみたいな顔をしていた。
間違うわけがない。奥州筆頭、伊達政宗。
画面越しに何十、何百…何万と見た、端正な顔が眉を寄せて私を見ている。
唇をキュと縛って、すごい真剣な顔だ。
その顔が、表情が、梵ちゃんと重なってみえる。
(……ああ、この政宗は一緒に暮らした…あの)
「――……やっぱり、シズカ、か…っ!!」
「……梵ちゃん…?」
私が恐る恐る呼ぶと、途端に泣きそうな顔になって、あ、と思う間もなく景色が変わる。
茶色と、今しがた駆けてきた廊下ばかりになって、それからぐっ、と苦しくなる。
政宗の腕が私の背中と後頭部にあった。
「――…シズカ…っ……、…シズカっ…シズカ……!」
何回も震える声で名前を呼んで私を抱きしめる政宗。
声だけじゃない。私を抱きしめている手も小さく震えている。
私の知っている伊達政宗らしくない様子に、どうするべきか私も少し悩んでゆっくり私も背中に手を回した。
「……えと…ほんとに、私の知ってる梵ちゃん…で…合ってる…?」
私と、与一と。あの家で暮らした梵ちゃんで合ってる?と聞きたくてそう問いかけたけど、政宗は、その質問に答えることなく私の肩を掴んで離し、まっすぐに顔を見てくる。
「シズカ…っなんで、お前、いやそれよりどうして…」
「…どーどー。落ち着け梵ちゃん」
怒った顔になったり悲しそうな顔になったり笑顔になったり、忙しい顔の政宗を一度離してそれから笑いかける。
すると政宗の顔がくしゃりと歪んでもう一度強く抱きしめられた。
「……ずっと…探してたんだ……」
「、……うん」
やっと会えた、と弱々しく呟いた政宗の背中をゆっくり撫でていると不意に奴の声がした。
「あーりゃりゃ、昼間から堂々とイチャイチャしちゃって」
「…猿……」
チッと舌打ちをした政宗を離して、声がした方を見てみればうっすら目を細めた佐助がおどけて笑っている。
ただ、目は笑ってない。
「ほらー早く戻らないと右目の旦那も探してるよ?」
え、と耳をすませば確かに「政宗様ぁぁぁああ!どちらにおられるのですかぁぁ!」となんか悲痛そうなこじゅの声が聞こえてくる。
いまさらだけどお館様と政宗がいるってめっちゃ大事な話してたんじゃないのか。
なんてぼんやり考えてたらもう一度チッと舌打ちして政宗が離れた。
「いいかシズカ!後で来るから絶対そこに居ろよ!?」
振り返り様にそう早口に言い切ると政宗はたった今私達が走っていった方に向かって走っていく。
その広い背中を見送って私は未だに横でニコニコしている佐助に目をむけた。
「…………佐助、」
「…うん?」
ゆっくりと声を出せば、一瞬戸惑ったような佐助の声。
そんな佐助を特に気にもせず、私はとりあえず鬱憤を晴らさせてもらおう!と私は続けて口を開いた。
「ッ私のあのお菓子、全部幸村に食べられちゃったんだけど!」
「…………………は?」
まさにア然、そんな顔をして佐助は声を漏らす。
私そんなにポカーンとされるような事言ったかな!?
「私ほんとにほんとに楽しみにしてたんだけど!!トイレから戻ったらなくなってたんだよ!?ひどくない!??んでマー君たちが食べたのかなって聞いたら『幸村が食べていきましたよ』ってノブさんが言うの!!酷すぎでは?!!ちょっとおたくのワンコ躾がなってないんじゃないんですか?!」
人の物をとったらドロボー!っていうでしょう!!
ポカンと事の重大さが分かってなさそうな佐助をガン詰めしていると、佐助はしばらく「Loading...」をしたのち、小さく首を傾げると佐助は苦笑をして、ニヤリとあくどい笑みを浮かべた。
「そっかそっか、……でもさ、俺様それより竜の旦那との関係が気になるんだけど?」
佐助から笑みが消える。
「国の頭ともあろう人がそれを中断してまで追った、なんて凄い大変な事だよ?」
「………」
「なんで?」
言葉に刺、視線の暴力。
笑顔のない美形なんてただの腹黒攻めだ。
そんな定義をぼんやり思って、てゆーか私がなんで軽い尋問状態なんだコノヤロー。畜生泣くぞ!
「いくらシズカちゃんが大将の客人だからって言っても、危険なら排除しないといけないの、コレ解る?」
「はぁ、」
「だから、シズカちゃんが全部喋ってくれないと俺様も大変なの。」
ね、だから早く教えなよ、と佐助がわざとらしく口を尖らせる。その顔がマジでめちゃくちゃ受顔だったから思わず「まじで佐助超受け顔すぎてやばい」と口走った。「シズカちゃん、誤魔化さないで」と佐助はさらに間合いを詰めてくる。いや、誤魔化してないんだって!!どっちかというと何でいえば伝わるか考えてたというか、よくよく考えたらアレも佐助のミスのせいなんじゃない?って気もしてきたし?!
どうやったら説明できるかなぁと考えていたら廊下の向こうから足音がして、見慣れた2人がやってきた。
「……ずいぶん楽しそうですが、一体何を?」
「マー君!ノブさん!」
佐助は露骨に頬を引き攣らせて私との距離を少し空けた。それからニコニコとするノブさんから目を逸らす。何となく思ってたけど佐助ってやっぱノブさんのことちょい苦手でしょ?!
「佐助撒きたくなったらノブさんに助けてもらお」
「ハァ?ちょっと!」
「仲が良さそうですね」
「とっ、とととと、とても良いことで、です…ねっ!!!」
「ええ本当に。是非混ぜて欲しいところです。」
ねぇ、と佐助に向かって笑顔を浮かべたノブさん。佐助は「うーわ最悪」とこぼして目を逸らした。
「あ、あ、あのっ!シズカ殿、ゆゆゆ幸村とはっ!!会えましたか…?!」
「……あ!そうだ幸村!!会えたけどお館様と政宗たちがいて問い詰められてないんだった!!」
「そ、それは…」
「あの甘味処はいつも並んでますからね。次はいつお目にかかれるか」
「ぐぐぐぐ幸村めェ…!!」
許さん!!とこぶしを握り締めて顔を青ざめさせていた幸村を思い出していると、ノブさんがそういえば、と口を開く。
「伊達との同盟はどうなりましたか?」
「まぁこのまま決まるでしょうね、あの条件で武田が断る理由がないですし」
「……そうですか」
ノブさんはぽつりとそう呟いて髪を耳にかけた。
その顔は何となく哀愁を帯びているように見えて、思わず目を見張る。あれ、なんかノブさん的には気に入らないこととかあるのかな?
マー君もなんだか心配そうな顔でノブさんのことを見ているし、思うとこがあるのかもしれない。聞いていいことかめちゃくちゃ悩んでいたら、遠くから声が聞こえてきた。
「シズカどこでござるかぁぁぁあぁあぁ!!?」
先程どこぞの右目さんが叫んでいたのと似たような言葉が轟いてきて、すさまじい足音と共に真っ赤な彼が現れた。
幸村の目は爛々と輝いていて、なんかフリスビーをとってきた犬みたいな顔をしている。…はっ!!幻覚!
「やっと見つけたでござる!馬場殿と山県殿もこちらでござったか!本日はよく顔合わせる日でござる」
「旦那?どうしてここに?」
「お館様から直々にシズカの傍にいるように命じられたのだ!」
「………」
それって遠回しに邪魔だって言ってるんじゃないか、と多分ここにいる全員が思ったとおもうんだけど、あまりに幸村が嬉しそうだったから黙っておいた。
日本人は言わないで花っていうし。
「おや幸村、また随分なタイミングですね」
「?」
「先ほどあなたが口にいれていったもの、シズカ殿のものですよ」
「!!!」
では、また後ほど、と打って変わって軽やかな笑みを浮かべたノブさんはマー君と一緒に歩いて行ってしまう。
幸村はその言葉しばし考え、そして顔をザァ、と青くさせた。
「幸村ぁぁぁ…っ!テメェ私のおやつ食いやがっただろ!」
「たっ…食べてないでござる!」
「嘘付けコノヤローッ!幸村からあのまんじゅうの匂いがするんだよ!」
「気のせいだ!」
「気のせいじゃねぇぇぇ!」
ノリに任せてアッパーカットを繰り出してみれば武将特有バックステップで軽々と避けられてしまった。
チッと舌打ちを送れば再び顔を青くさせる幸村。
「旦那…つまみ食いは良くないって何回も言ったでしょ。」
「う…うむ……」
どうやら幸村の顔が青くなった理由は佐助だったらしい。
スキル:オカンを発動させた佐助に幸村の目が泳ぐ。
「明日はもうおやつ抜きだからね!」
「っ!」
佐助の物言いに何か不満そうだったが、ギロリと睨まれた幸村は寸でのところで言い止まった。
ナイスプレイだ幸村!
と、佐助の生温い視線から逃げるようにして幸村がこっちに視線を向けた。
「…そ、そういえば、シズカは政宗殿と知り合いなのか?」
「へ?」
幸村が佐助の追及を逃れるためになんとか声を絞り出したのは今し方ようやく話題のすり替えに成功しかけていた話。
タイミング悪っ…!と肩を落とすと右で佐助がニヤリと笑うのが見えた。
「そーいえば、そーだよねぇ?」
「棒読みウザッ」
なんだかんだでタイミング最悪だった幸村に視線を戻せば、とっさに聞いたが実は自分もかなり気になっているらしい。
少し不安そうな顔をして、幸村もこっちを見ている。
さっきまでのフリスビーわんこ顔はどこへやら、打って変わって今度はなんか捨てられた犬みたいに見えた。
畜生、その顔萌えるじゃないか!
で、無害なフリして実は1番鬼畜なんだよね!エヘエヘ、鬼畜攻め萌…ッ!
「も、もももも、もしやその…政宗殿の事をすすすすすすすっ……!!!」
「…好いてるのかって?」
「う、うむ」
顔を真っ赤にしてマー君くらい吃る幸村が何となくどんな事を言いたいのか察する力が養われてきたっぽくて、幸村はこくこくと数度頷いた。
や、そんなのさぁ
「もちろん好きだよ」
「!!!!」
「あ、でもキャラクターとしてっていうか…ライク……だと伝わらないか…」
そりゃ戦国BASARAオタクなのでもちろん"伊達政宗"が好きだ。もちろん幸村も佐助もお館様も好きだし。
まだ会った事ないけど、是非とも武将の皆々様にはお会いしたいですよねえええ!!
ふふふ濃姫様に踏んでもらえないかな?!!と顔をあげたら幸村が顔を真っ赤にし……てるけどなんか泣きそうな顔になっているのが見えた。
え?何その顔!
「も、もしかして幸村ってば政宗取られるかもって考えてる?!」
まさか夢にまで見た、突然現れた謎の美少女→心揺れる政宗→嫉妬嫉妬の幸村→政宗を呼び出す→アーッ!
なノリ!?うっわ後一歩だよ一歩!
「幸村!」
「なっ、なんでござるか…?」
「政宗を押し倒せ!私が許可する!」(親指グッ
「俺様が許可しないよ!そんなの!」
「なんで!サナダテだよ!?魅力的っつーか王道じゃまいか!死ぬ前に生を一度といわず何回でも見たいんだ!」
「俺の主人がそんなのは嫌だ!」
「え、まさかの佐助→サナダテですか!うわうわわわ!佐助がヤンデレだぁぁああぁ」
「や?よく解んないけど変な誤解してるね?!」
え、誤解なわけないじゃん☆
だって佐助は幸村を大好きで、でも幸村は政宗が好きで、だから佐助は幸村が嫌いで、どうにかして幸村を諦めさせたいから、政宗を再起不能なまでに犯…ッ!
うふ、うふふふふふ腐腐腐!!
「ほらほら!腐女子的には最強に美味しいよその設定!イってまえ幸村ァァァッ!」
「む?よ、よく解らぬが頑張るでござるぁぁあああぁぁぁあ!!」
「旦那頑張っちゃ駄目ぇぇええぇぇ!!」
「止めるな佐助!幸村は今、全国の腐女子の為に文字通り精をだして頑張るって言ってるんだぁぁあ!」
「ぎゃぁぁああ!」
みなぎる幸村を羽交い締めにする佐助を羽交い締めにする私。
ハタから見ればかなり不可思議な光景だと思う。
で、でもっ…!私は戦うわァァ!見てて!元の世界の心の友達よ!目の保養の為にぃぃぃ!
そう思って佐助を引き剥がそうとしていたら、逆に佐助は身を捩って私を振り解いてしまった。
くそ!!これが真田の忍び隊の長か!!
「って、そうじゃなくって!!シズカちゃん竜の旦那が好きなの!?」
「そうだよ!あ、でも幸村も佐助も好きだし、お館様も好きだからね!!」
「……………はぁ」
てゆーか私の中では永遠にサナダテですから?二人の恋路を邪魔する奴は月に代わってお仕置きされちゃうんだよね!
私の返答に佐助はキュと唇を噛んで顎を引いた。
そんでもって苦々しい顔をしたのち「やれやれお気楽なこって」と肩をすくめた。
「そ、某も…?」
「もちろん!それに幸村は友達でしょ?」
「……!」
ぱぁ、と顔を明るくさせて幸村は息を呑んだ。
どうでもいいけどそんな頻繁にコロコロ表情を変えれるって幸村の表情筋どうなってんだこれ
幸村は目をキラキラさせながら「我らは友でござるゆえ!!」と反復した。
「政宗は、あー、なんていうか家族っていうか」
「ん?」
「実はちょっと小さいころの政宗と一緒に暮らしてたことがあって」
「え"」
そう言ったのは佐助。
はっはっは何でだろうねー?!不思議だねェ!!
「最近まで一緒にいたんだけど、なんか急におっきくなっててびっくりしたな~的な感じ?」
「…………」
珍しく冷や汗ダラダラな佐助。
うっわめっちゃその顔レア!!写真撮らなきゃ!!!って思ったけど携帯今持ってない!!部屋に置いてきちゃった!!
くそっこうなったらしかと頭のアルバムに保存せねば……!!
目を逸らしまくる佐助をガン見していると、幸村は小さな声で「家族…」と呟いた。
大きな茶色の目がフッ、と微笑んだ。
「…そうか、ならば政宗殿は幸せだったのだな」
「…んん?」
「先ほどの表情をみればわかる。…政宗殿がどれほどその時間を大切にしているのか。」
よかった、と幸村は大きくて丸い茶色い目を細めて笑みを浮かべた。くっと持ち上げられた口角に嘘はない。
本当に心の底から良かったと言ってるんだとわかるような、そんな顔。
……旦那、と佐助が言う。
好敵手のことを素直に喜べるのは、幸村が真っ直ぐだからだろう。あるいは、これが真田幸村の器なのか。
私にはよくわからないけど、すごく幸村らしいなって思った。
「シズカッ!」
「あ、」
柔らかい空気を蹴散らすようにパタパタ走ってきた茶色。
むろんフルスピードで爆速アタックだったから、勢いよく私は後ろへ吹き飛んだ。
ぐぇっ、カエルが潰れたみたいな声が出る。
「っシズカ!!」
「ぐえっ!ッ今と昔じゃ大きさ違うんだから飛び付かないでよ!」
死んでまうわ!内臓とかでてくるっつーの!
首に抱き着いたままゴロゴロとじゃれる政宗にそう言えば、政宗はこれ以上ないってくらい満面の笑みを浮かべて一度顔をあげた。
そして笑顔のまま何も言わずもう一度、左肩口に顔を埋めてじゃれてくる。
ちょ、可愛いから!!鼻血噴くよ!?本気で!!てかもう穴という穴から血を吹き出しそうだ!
私が興奮と恥ずかしさと重さで顔を真っ赤にしてると、息を呑むような声が聞こえて来た。
「…は…」
「………おっとやな予感パート2!」
「破廉恥でござるぁぁぁぁぁあああああッ!!!!」
「うはぁっ!」
真っ赤になった幸村が燃えたぎる紅蓮の焔で叫んだ。
いつだかの幽体離脱状態だった私は二度目の鼓膜の危機を感じました。
お母様、私そろそろ鼓膜破けるかもしれないです。
「…noisey……」
「政宗殿!破廉恥でござるっ!シズカからはな…ッ離れてくだされ!」
「あぁ?テメェには関係ねぇだろ」
うざそうに眉を寄せて幸村を見る政宗。
うご…っ動かれると筋肉潰しみたいになって痛い!くそぅ、結局はそっくりだなお前らWA!
「竜の旦那、」
「ah?」
「どうでもいいけどシズカちゃんの顔色が大変だよ」
「what?!」
「アハ、嘘☆」
「……………」
佐助の一言に慌てて飛びのいた政宗から緊急脱出して、私は佐助に視線だけで礼を言う。
政宗の苛々した視線をしっかり受け流して佐助は小さく肩を竦めた。
「話し込むようだったら客間へどーぞ。こんな廊下なんかで話してて体調不良になられても困るし?」
「Ha!そりゃぁ有り難いな!わざわざ忠告ありがとよ、猿」
「イエイエ、ソレホドデモー」
かつて無いほどの棒読みを気にもとめず(なんかこの二人腹の探り合いしてね?)政宗は無理矢理に私の手を引いて歩き出す。
引っ張られながら肩越しに振り返ると、幸村と佐助が何かを話している姿が見えた。
『佐助、何故政宗殿を邪険に扱うのだ!それにシズカと共になど…!』
『……確かにさ、旦那は竜の旦那を好いてるかもしれないけど、けど……』
『…………』
『俺も…俺の気持ちにも…気付いてよ…』
『さ…すけ…?』
『そうさ、何時だって旦那は俺を見てない…俺は旦那だけを……みて、きたのに……』
ぐへへへへへへ…
なんてムフフと妄想をしていると、いつの間にやら客間のあるエリアに着いたらしい。
私の手首を掴んでいた政宗が止まった。
「シズカの部屋は何処だ?」
「え?あ、2つ向こうの部屋だよ」
「そうか、」
笑って私の腕を引く政宗。
え、え、なんか今気付いたけど政宗がやたら笑いかけてくるんだけど!萌えていいかな!?
私に割り当てられた部屋の襖を開くと、さっき通り空になったお皿が置いてあってマー君達の為に敷いた座布団は隅に寄せられていた。
それをもう一度引っ張って来て真ん中に並べる。
そこに私たちは腰を下ろした。私は正座、政宗はあぐらだ。
「…………」
「………………」
しん、と空気が停止する。
互いに何も言わないから必然的に空気が止まる訳で。
うーん何か言わないと!気まず過ぎる。
これは良くない。主に私のスピリッツが破壊される。何か…何か……!!
「ッやっぱり本命は小十郎?!」
「…………………は?」
たっぷりの間を開けて政宗は声を発した。
いたって真面目かつ本気な私は妙に力んだポーズで動きを止めている。少ししてプッと政宗が噴き出した。
「ハハハッ!やっぱりシズカだな!」
「は…?」
「その突拍子のなさ、変わってねぇ」
え、それってつまり突拍子がない=私って事?!
私これでも一応タイミングはかってるんだよ!?自分の中でだけど!
心持ちショックを受けていると、政宗の腕が伸びてきて私を引き寄せた。
本日何回目か政宗へダイブするとゆっくり抱きしめられる。
さっきまでは混乱してたからあんまりわからなかったけど、政宗の腕はしっかりとしていて、そして相変わらず子供体温だ。
「……本当、変わんないな。」
「梵ちゃ「stop」
少し腕に力を込めて、政宗は呟く。
「俺はもう梵天丸じゃねぇ、伊達政宗、だ。シズカが1番解ってるだろ」
「……うん、」
「じゃあこれから俺は政宗だ、…ok?」
「…分かった、…政宗。」
「what?」
「久しぶり。元気だった?」
「……………ああ、」
そしてまた少し力が強くなる。
今更な話なんだけど、政宗って改めて呼び辛すぎるだろ…気恥ずかしいなもう。
私からしたら梵ちゃんと別れてまだ日が浅いから梵ちゃん、って感じなんだよなぁ。
まさか私もこんな早く遭遇するとは思わなかったし。
「……政宗はなんで甲斐に?」
「ah?あぁ、甲斐と同盟を結びにな。」
「こじゅだけ連れて?」
「…シズカは何で甲斐なんかに居やがる」
「ちょっとしたバカンス?萌捜しの旅?」
「…………」
呆れたような間が空いて、苦笑が聞こえた。
そうしてまた、政宗が離れてようやくゆっくり顔を見ることができるようになった。
政宗は力無く笑いながら肩を揺らす。
「あの家、小田原なんだろ」
「うん。私も最近知ったんだけどさ」
「何度偵察に行ってもあの家もシズカも、与一もいないから、幻かと思ってたぜ」
「あー…?え?偵察」
「……与一は元気か?」
「ん?うん、とっても元気だよ」
「そうか。アイツの顔も早く見たいな」
そういって政宗は少し天井を仰ぎ見た。
あの場所のことを思い出しているんだろうか。それで小田原だってわかってたから私と与一のことを探しにきてくれていた、ってことだろうか。
「政宗はさ、度々探しにきてくれてたってこと?」
「Damn right!!」
大きな頷きと、はっきりとした答え。
「当たり前だろ、だって俺たちは『家族』なんだから」
「…………!」
私はその言葉を喉に詰まらせる。
なんで返すのが正解なのか、私がなし崩し的に始めた話だったけど、政宗はこんなにも堂々と私たちのことを家族と呼んでくれるんだ。そう思ったらとても胸が締め付けられる気持ちになって、私は一つ口を開いて閉じた。
「あの時は…シズカや与一…アイツ等と過ごす毎日が楽しくて…1日があっという間で、今でもあの時間が1番enjoyしてたって言える。だからずっと、礼を言いたかったんだ。…シズカ、thank youな」
「……政宗…」
政宗は私の目をまっすぐ見て、迷うことなく礼を口にする。何かを言いかけて辞める私を見て、照れ臭い、と照れ笑いを浮かべた。
その顔は確かに、はにかむ梵ちゃんに酷似していて、やはり目の前の彼が梵ちゃんだ、と実感してしまう。
なんだか猛烈に寂しくなって私は政宗の胸にドスンと頭突きしてやる。
ぐ、とくぐもった声がした。
「シズカ…」
「政宗の眼帯めー…どうせその右目、もうないんでしょ?」
「う、yes…。」
「痛かった?」
「…少し。」
「、そっか。」
私は政宗の顔に手を伸ばす。すっかり馴染んだ眼帯と、端正な顔。梵ちゃんにやってたみたいに、ほっぺを少し触って、それから前髪を撫でる。
「政宗、」
「………ん?」
「よく頑張ったね、やっぱりすごく偉いよ」
「っ……」
政宗の腕が腰に回る。
少し震えたその腕がなんだか可愛く感じて私は政宗の茶色がかった髪を数回撫でた。
しばらくして政宗から寝息が聞こえてきたのは、間違いではない、はず。
「……うーん…そろそろ本格的に膝から肩甲骨にかけてのあたりが痛い通り越して感覚無くなってきたぞ…」
「…すー……」
「政宗も寝ちゃってるし…どうしたものか……」
「シズカちゃーん竜の旦那知らないー?ってあ、居た。」
「佐助!」
「…何、人前でイチャイチャしてんのさ。俺に喧嘩売ってる?買うよ?」
「違うから!実はさ、かくかくしかじか」
「かくかくうまうま…なるほどねぇ」
「そ、だから政宗を運んでやってほしいんだけど、」
「高く付くよ?てゆーか、俺様投げ飛ばしちゃうよ?」
「ひっど!」
「だって俺様竜の旦那、大ッ嫌いだもん」
「……………」
「そんなキラキラした目で見ないでよ…!だいたい何考えてるか解っちゃう俺様がやだ…!」
「えへえへ☆佐助もこっちくる?楽しいよォ」
「絶っっっっっっ対やだ」