私の神様(仮)
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「う」
「シズカ殿!今晩はシズカ殿の為の宴を開くと聞いたでござる!」
「へ?そうなの?」
「某に着いて来てくだされ!」
「………は?」
私の神様(仮)
~真田友人帳~
「な、な、どうしたの?幸村…!」
武田についてしばらく経ったころ、突然障子を突き破る勢いで爆音が轟いてきた。凄まじい勢いでなんかが突進してくる音がして、これまた凄まじい勢いで襖がスパコンと良い音を立てて開いた。
ぎょっとしてそっちを見ると幸村が満面の笑みで立っている。
びびびび、びっくりした!!
「うむ、シズカ殿はまだ上田城がどのようになっているか解らぬでござろう?」
「うん」
「ならば!某が案内役を仰せ付かった!」
ドン、と胸を叩いてご機嫌な幸村。なんでこんなに意気揚々としてるんだこのワンコ。べりーきゅーとなんですが!!
「…うんじゃあ行く!」
「承知!さぁさ参ろうぞ!」
「さてシズカ殿!まずはどこから参られるか!」
「いや、そう言われても良く解んないし……幸村に任せた。」
「うむっ!」
任された、と言ってまた意気揚々と胸を叩いて頷いた幸村。
だからなんでこんなに幸村はテンション上がってるんだね。
あれか、久しぶりにお館様に会ったそのテンションのままなのか?
「シズカ殿っ」
「んー?」
「シズカ殿は何が好きでござるか?」
幸村は肩腰に私を振り返りながら元気に問いかけてくる。風と勢いで長い襟足が揺れて、私は思わずそれを目で追いかけた。
「んーそうだねぇ、食べ物だったらおむすびかな。基本的にはなんでもいけるよ」
「シズカ殿はおむすびが好きでござるか!某もおなじだ!!!」
ふむふむ、と何に納得したのかしきりに頷く幸村。なんかやたら可愛いんだけど意味わかんないよ。なんでそんな嬉しそうなんだい?ユーは。
「ゆきむ「着いたでござるよシズカ殿ッ」
「………」
言葉を遮って幸村が指差した先には夜の食事作りに追われているのか、とても活気づいた台所があった。複数人の女中さんが忙しなく行き交っている。
「ここが勝手でござる!」
「真っ先に連れて来たのが台所っていうのが幸村らしいってゆーかなんてゆーか」
「うぅ…」
まぁいいさ!ここできっとオカンが幸村とお館様のご飯を作ってるんだろうな!
割烹着としゃもじを通常装備するオカン…ぷっ
「佐助ほど、割烹着が似合う忍びも珍しいよね」
「佐助のあれは割烹着なのか?」
「幸村が言ってるのはポンチョじゃね?」
ポンチョ?と首を傾げる幸村に「よだれかけだよ」と言ってもう一度勝手を覗き込むと、中に居る女中さんと目があった。
うほ!美人さん!
「こんにちは」
「こんにちはっ!」
ご丁寧に挨拶してくれた女中さんにすごく爽やかな笑顔を浮かべて元気よく挨拶した所、女中さんも笑顔で返してくれた。
「あら、幸村様ではございませぬか」
「あやめ殿!本日の夕餉はなんでござるか!?」
「ふふ、夕餉までお楽しみでございまする」
私と同じような体制で勝手を覗いた幸村をやんわりと止めてあやめさんは上品に笑った。
キャッ☆大人の気品!麗しす!
抑え切れないトキメキに悶えていると小さく首を傾げてあやめさんが言った。
「貴女様がお館様のお客様で?」
「あああ貴女様だなんてそんな!シズカって呼び捨てにしてやってください!マジでもう!お姉様と呼びたいぃぃ!」
「うふふ、」
その口元隠して笑うのステキング!
「考えておくわね、呼び捨てに関しては」
「はいっ!」
やったね!お姉様に名前よび考えてもらえるよ!
ニヤニヤしながらふと、一緒に勝手を覗いていた幸村を見れば、
「………」
目をキラキラと輝かせてフサフサした尻尾を…ってあ、これは幻か。とにかく我ここにあらず、って感じで勝手の奥を見つめている幸村犬。
「幸村、幸村」
「な…なんでござるか…?」
「よだれ。口が半開きだよ」
「はっ!」
しまった!とでも言わんばかりに慌てて口元を拭う幸村にキュンキュンしながら何を見てたんだろう、と視線をたどってみれば皿の上に乗っている一口サイズの白い塊。
…私のカンが正しければ大福じゃね?あれ。
「……大福?」
「うむ!」
「……好きなの?」
「大好物でござる!…ハッ!」
私の質問に勢いよく頷いてから幸村は顔を赤くさせて、唇を尖らせた。
恨めしげな茶色い目が私を見てる。
いやっはっは、墓穴を掘ったな真田幸村!大好物だなんて全力肯定してるよ可愛いなもう。
えへへ、私の作戦から逃れる事は出来な
「――……っシズカ殿はずるいでござる…」
とぅえぇぇええっ!!こここっこれは反則ぅぅぅう!!!
かっかかかか顔赤くさせて拗ねたひょ、表情ォォオォォッ!
「幸村受け顔ォォォ!ギャァァァアッ!」
「う、うけ……?」
「ひゃっほい!良いもの見たよありがと幸村ごっつぁんです!むふ、ムフフ!佐幸!佐幸ッ!げっこくじょう!げっこくじょうッ!」
私の下剋上コールに、眉間にシワを寄せてドン引いた表情をする幸村。
あぁぁあの激萌え受けフェイスが一瞬にして私のハートをぐさりとやってしまう引き攣った顔に!
「イヤンっ引かんといて!」
「……ようやく元気が出たようで何よりでござる!」
「はい?」
急に真剣な声になった幸村を見てみれば、力強い、っていうか…なんかまたちょっとさっきまでの笑顔とは違うニュアンスの……
一瞬その笑顔の意味を考えて、それから幸村が口にした言葉を飲み込む。
「私ずっと元気だったけど?」
「佐助や馬場殿、山県殿とおられる時だけだったでござる」
「え、嘘」
「真だ」
あれ、私十分ニヤニヤしてた気がするんだけどなぁ。
そう思って首を傾げると、幸村はニッコリとまたワンコな笑みを浮かべて言った。
「某は嬉しいでござるよ!」
真田幸村さん、尻尾、尻尾がブンブン揺れてますよ。
幸村は私に笑いかけて腕を掴みズンズン歩き始めた。ちょ、腕痛いんですけど!
ルンルンと歩く背中を眺めて私は幸村に言われたことを反芻する。
そんなまだ出会って数日の幸村に気にされるほど元気なかったのかな……ってぇ!イカンイカン!!!元気のないオタクはただの萎れオタク!!私は今日も健やかにヲタクで腐女子なキャピルンJK!
ほらだから幸村の背って案外デカいんだなって分かって身長差爆萌えデュフフフじゃん?!!?
背後で私がニヤニヤしているとも知らない幸村はまた何回か曲がり角を曲がって(ここはどこですか)ふと足を止めた。
「おお!勘助殿!」
「……はい?」
どちら様?と顔をあげると、えっと、そこに立っていたのは。
「…ぜっ……!」
「ぜ?」
「ゼムさんッ?!」
「……是務三?」
幸村の発音の違いに少し笑いそうになったけど、目の前でずんと私及び幸村を見下ろしている彼は間違いなくゼムさんだ。
あ、あのキンハ2に出て来る穴子ボイスの彼!!
色黒で、銀髪で、左目のちょい上から右の頬に傷がある(カッコイイんですが)眼光が鋭くて(あ、瞳孔開いてる。ひじーみたいだ)前髪オールバックでさ!!
なななななんでこんな所にラスボスが?!
「ぁわわ…!ついにこの世界にもハートレス出て来たのっ!?」
「……?」
「てかノーバディも居るんじゃね?!機関は?!機関!!悪6ゥゥゥウゥッ!!ひゃっふい!え、ちょ、トリップかと思ってたけどまさかのクロスオーバーですか?!?マジでどうしよう!ね、幸村!なんでこんなある意味大物な人が甲斐にいるんでっすかー!」
「どうしたでござるかシズカ殿?」
興奮と緊張とやべぇリアル機関だよこれテラヤバスげへげへ、と幸村の肩掴んでガタガタ揺らしていると、ずっと黙っていたゼムさんが口を開いた。
「…貴殿が誰と勘違いしてるかは知らないが…俺はゼム参などと言う名前ではない」
「はへ?」
いやいや貴方どっから見てもゼムさんでっせ。
くそぅ、私を騙そうとしてるんだろっ!機関という名の子供達に私を会わせないつもりかっ!
「シズカ殿、この方は山本勘助殿でござる」
「え、」
「…さっきぶりだなシズカ殿。俺は山本勘助、という者だ。」
「え、え」
「…つまり俺はゼム参ではない」
「うっそぉぉぉお!」
ナンバー9風に言ってみれば山本さんにフゥ、と小さくため息を疲れた。
人違いとか、めちゃくちゃ恥ずかしい!と一人悶々としていると幸村が声をあげる。
「勘助殿はお館様にお仕えしておられるとても優秀な軍師なのだ」
「へー」
「ははは、武田きっての知将真田幸村にそういってもらえるなんて光栄だ」
「???、…ちしょう」
幸村が?
思わず間の抜けたオウム返しで尋ねると山本さんはゆっくりと頷いた。
「そうだぞ、こんな感じだが」
「こんなかんじ」
それはこの尻尾ぶんぶん大型犬のことを言ってらっしゃる?チラリと幸村に視線を向けると、幸村とばっちし目があった。
幸村はドヤァ!と効果音がつきそうな勢いで胸を張ると「某などまだまだ!精進あるのみでござる!!」と鼻を鳴らした。
ゼムさ、いや勘助さんはそんな真田ドヤ村を見て楽しそうに笑みをこぼすと私を真っ直ぐ見る。
綺麗すぎる黄色の目が私を見て、それからまたフッと笑みを浮かべた。
「幸村と仲良さそうで安心した。滞在期間は短いと聞いたが、どうかゆっくりくつろいで行ってくれ」
「あ、ありがとうございます!!んで、めちゃくちゃ急なんですけど勘助兄ちゃんって呼んでいいですか!?」
「兄?」
「そう!なんかだってお兄さんって感じだし!!代わりに私のこと呼び捨てにしてください!!」
そんであわよくば仲良くなって勘助兄ちゃんが右なのか左なのかそれともノンケなのかじっくりびっくり観察させてもらいたくてですね?!?
私の予想だと攻め寄りのリバなんですけどどうですかね?!!
「ハハハ、わかったわかった。じゃあ遠慮なく。シズカ、これからよろしく頼むな」
「うん!!!!」
勘助兄ちゃんと熱い熱い握手を交わしていると、ふと幸村が口を開く。
「……そういえば勘助殿はどちらへ?」
「…あぁ、お館様に報告書を提出しにな。……幸村、お前もちゃんと報告しろよ?」
「う、」
「ではまた後でな、シズカ、幸村」
幸村をからかった後、若干爽やかな笑みを浮かべた勘助兄ちゃんはたった今私たちが来た方向へ歩いて行ってしまった。
銀色の髪が廊下の角に消えていく。その後ろ姿はやっぱり私にはどう頑張ってもゼムナスにしかみえない。
うーん絶対いつか黒のエナメル質のロングコート着てもらうんだ……!
人影の無くなった廊下にそんなことを決意して、私は幸村の後を追いかけた。
「―――…上田城で案内すべきはこのぐらいであろうか!」
「あ、ありがと…」
あの後色々とめぐりめぐって、何処をどう歩いたのか私が始めに通された客室の前に立っていた。
普通に湯浴みとか大広間とか、後は厠とかまぁ色々巡った(厠とか案内してるときの幸村の顔超真っ赤だった、萌!)
「何か用があれば呼んでくだされ、佐助がすぐ参る故」
「あ、佐助が来るのね」
てっきり幸村が来るのかと思ったよ。そこはオカン参上な訳ね。まぁ流石に壁に耳あり障子に目あり天井裏に佐助ありって感じなのかもなぁ。
そんなことを考えながら障子を開ける。
「シズカ殿」
「うん?」
幸村に声をかけられてそっちを振り返った。
幸村の顔は何故だか赤くて(え、なんで?私なんかした?)しかもちょっと俯き気味で。何この受け顔やばいんですが。
なんてモヤモヤしてたら幸村がしどろもどろ、口を開いた。
「某も」
「?」
「某も、そ、そのっ…勘助殿のように……よ、呼び捨てに、しても良いでござろうか……?」
なんか髪に芋けんぴついてるよとかそう言うめちゃくちゃ恥ずかしくなることしてたかな?!と思って身構えたけど、幸村はそんなことを消え入りそうな声で言った。顔が赤くなる要素が見当たらない気がするんだけど、恋=破廉恥の幸村からしたら女を呼び捨てって言うのは、ちょっぴり破廉恥なのかもしれない。
「当たり前じゃん。私達友達でしょ?」
「う、うむ…っ!」
真っ赤になりながらも嬉しそうに私を見る幸村犬。
畜生萌えるなコレ!
「あ、う、シズカ………どの…」
「殿ってついてますよ真田どの」
「う"っ。…………シズカ……」
「なぁに幸村」
「はっ…、…破廉恥でござる」
「おぉ……叫ばなかったね幸村珍しく。」
「…お館様方が会合中やもしれゆ。だから静かにするように言われたのだ……」
口を尖らせて拗ねたような声で幸村は言った。
それはお館様と一緒に師弟で愛の鉄拳できないからか?
もうそこに佐助交えちゃえば良いじゃないか!
『ぅおやかたずぁぶぁぁぁあぁあぁぁあぁあぁッ』
バグァッ
『ゆっきむるぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁッ』
ゴスゥッ
『どぅあんぬぁあぁあぁぁぁぁぁあぁッ』
メガァッ
「―――………」
駄目だ、佐助までもがやってしまったらストッパーと傍観役が居なくなって哀れな事になる。
てゆーかそんな軍居たくない。国務成り立ってなさそうだ。
「どうなされた?」
「あ、いや別に。」
ちょっと意識が飛んでただけだよ、うん。
幸村は何度か私の名前を口の中で転がした。そうしてやがて納得したように大きく頷いた。
「うむ、習得した!シズカ!!」
「わ?!」
「某と友になってくださり、礼を申し上げる!!」
礼?なんで?そう思って首を傾げると、幸村は口元に深く笑みを作った。
「某にとってシズカ…は初めてできた友ゆえ!誠に楽しかったでござる!!」
「幸村……」
そうか、あまりに犬で天然で甘味だったから忘れてたけど、幸村は武家の子だったな。昔から家を継ぐために、遊ぶ時間とか無かったんだろう。友達なんてのも割と無縁な生活だったのかも。
だから私が幸村の、初めて……
「なんかちょっとドキドキする響きだね、幸村のハヂメテって」
「?」
「あ、ごめん気にしないで。」
一瞬頭を過ぎったイメージにニヤリとして、それから私は幸村を見た。
「じゃあ私は幸村の友達第一号なんだね」
「うむ!」
「よろしく、幸村。」
「よろしく頼み申す!シズカっ」
幸村は顔を多少赤くさせて、大きく頷いて口端を吊り上げさせる。
「それではまた後ほど!」
「うん、うん、じゃあまた後でね」
「失礼致す!」
よほど嬉しかったのかルンルンしながら幸村は客室を出ていく。
いやー可愛いな幸村。
声の大きい犬が居なくなって静かになった部屋の真ん中にぼーっとしながらねっころがってみた。
ほんのり香る井草の匂いを感じながら木目の天井を見上げて………ふと思った。
そういえばオカンって呼んだら来るとか幸村が言ってたような気がする。
「―――……オカン?」
少し間を開けてみた。
誰も来ない。
「オカーン?」
誰も来ない。
何で来ないんだろう。ほぼ確実に聞こえてるハズなのに。
もしかしてオカンって呼んでるから?
「………佐助?」
「はいはーい」
「のわっ!」
上半身を起こして改めて名前を呼んでみればスチャリと効果音が付く勢いで佐助が現れた。
なんだよお前。
一回で出てこいよオカン。
「いや俺様オカンじゃないし?」
ジト目で見れば佐助は胡散臭い笑みを深くして言う。
「いや~シズカちゃんてば恐れ多いよ」
「何が?」
「早速旦那を手なずけちゃったじゃん」
「手なずける…って犬…だね。」
私の言葉に佐助は肩を竦めて溜息を一つついた。
KYかもだけどオカンの溜息エロいっす…っ!
「俺様が旦那と解り合うまでにどれだけ時間がかかった事か……」
「それって佐助が無駄に意地っ張りだっただけじゃないの?」
「そうとも言う」
「おい」
あはーと佐助は笑って頭を数回掻く。オレンジの髪がするりと流れた。
や、やっぱり幼少佐助は意地っ張りだったのね!ぐふぐふ!幸村の事受け入れられなくてツンツンしていたに違いない!はぁぁぁ!お幸せに!!
「あぁそうだ、それでシズカちゃんてば何の用?」
「んー?呼んでみたくて呼んだだけ」
「…………」
オカンのジト目を華麗にスルーして私は座るよう言った。
納得いかなさそうな表情をしながらもしぶしぶ座る佐助。
座った後もずっとこっちをガン見してくる。
「……そんなに用件なきゃ駄目?」
「当たり前でしょ」
「うーん…あ、じゃあさ」
そこで私は一気に声を潜めさせた。
何やら神妙な雰囲気を纏った佐助に私は小さな声で。
「――………正直、コタを押し倒してニャンニャンさせたいっt「ちょっと待ったァァ!」ぬはぁ!」
言葉を言い終わるより速く佐助から言葉のツッコミと、素手の突きという名のツッコミが入った。…腹に。
ぐ、ぐぬふ…!なんか謎の汁出てくるようなポイントに佐助の中指突き刺さって痛い!
「お、おま…!突きはアカンって…!」
「シズカちゃん恥ずかしくないの?!女の子として!」
「いや別に?」
「………」
私は萌えられれば例え火の中水の中あの子の褌の中なのだよ、佐助君。
エヘンと胸を張れば佐助はガックシと肩を落とした。
「俺、シズカちゃんみたいな人に会うの初めてだよ」
「そう?私の世界に来たら私みたいな人いっぱい居るよ?」
「絶対行きたくないんだけど」
あれ、現代を全力否定されてしまったよ!まだまだ捨てたもんじゃないよ現代も!
「住めば都っていうじゃん」
「ようは馴れでしょ」
「身も蓋も無いな」
そこまで言って佐助が小さくあ、と声を漏らした。
「今日の夜、歓迎の宴だよって伝えたっけ?」
「あーさっき幸村から聞いたよ」
「さっすが旦那」
「歓迎会とかありがたいやら恐れ多いやら…」
佐助が間違えて私を呼び出したからそのお詫びも兼ねてるのかもしれないけど、だからってそんなことをしてもらうのもなんかちょっと違う気もすんだよなぁー私は見ての通りBASARAライフ(略してバサライフ)を超絶満喫してるわけだし……
佐助はしばらく私の顔をみて、それから瞬きを一つして、肩をすくめた。
「シズカちゃんっていつもそんな感じなわけ?」
「え?」
「緊張感がないというか、深く考えてなさそうと言うか」
「シンプルな悪口」
「それとも未来の人間って全員こう?」
だとしたらよっぽど平和なんだろうねぇ、と佐助は呟く。呆れたような、馬鹿にしたような、憐れむような……どっちにしたってあんまりいい顔じゃないのはわかる。
くそっ、佐助お前またそういう同人誌にされそうな顔しやがってこのーーーッ!!
「まぁいいけどサ。あんまり他人を信用しすぎないほうがいいんじゃなーい?ってこと」
「やだなぁ佐助ってば。言ったじゃん。みんなのこと伝記で知ってるって。知ってるから、みんなのこと信用してるんだってば」
「はぁ?なにそれ」
「だ・か・ら!みんなのことがめっちゃ好きなんだってば。夢に見るくらい!!だから、最初から信用10000%しかないっちゅーねん」
だって、佐助がヤバすぎるくらい幸村至上主義なのも知ってるし、幸村がわんこ可愛いのも、お館様がめちゃイケダンディなのも全部そのままじゃん?疑う必要がどこにあるって言うんだって言うさ。
私がそう言うと、佐助は隠すことなく苦々しい顔をして、それからふぅん。とため息をついた。
「……あ、旦那に呼ばれたから行かないと。じゃあねシズカちゃん。」
そう言い切るや否や佐助はあの素晴らしいジャンプをして(あれってジャンプ?)開けっ放しの天井板から天井裏へ帰って行った。ふ、完全に私の勝ちだったわね!!
「っていうかその板閉めてけよ!!」
嫌がらせかこの野郎!ひぇぇ!リアルに天井裏見える!蜘蛛の巣…つーか蜘蛛でっか!
「佐助なんか蜘蛛の巣に顔面引っ掛かっちゃえ!」
ホー、ホーなんて梟が鳴いてるそんな夜。
上田城の大広間はそりゃもう半端なく酒の臭いが立ち込めて、……てゆーか五月蝿い。
例えば、
「お館ずぁぶぁぁぁあぁ!」
バキッ
「ゆっきむるぁぁあ!!」
メゴッ
「ぅぅおゅぁかたずぁぶぁぁあぁぁ」
ドガン
「ゆきむるぁあぁあぁぁぁ」
ガシャーンッ
「…………」
真っ赤な主従は真っ赤な誓いよろしくで叫んでるし、
「ほら昌景、飲んでください」
「い…いやもうじ、十分飲んだから…!!」
「まだたったの6杯ではないですか」
「うぅ…信春は酒苦手なのしっ…知ってるくせに…」
「さぁ?なんの事だか」
こっちはこっちでイチャコラしてるし(ノブマサ萌)
「………」
「……………」
ここは勘助兄ちゃんが黙々ととっくりの数を重ねていってるし(お酒強いんですね!!?とても良き)
隣にいる私が(主従殴り愛から非難してきた)ちまちまと御膳を食べているから話すことも無いのか、それともお酒で既にぼうっとしているのかはわかんない。
ただここだけ凄い静かだ。ラスボスの風格すらある。
「…シズカは卵焼きが好きなのか?」
「え?」
「ずいぶん美味そうに食ってるからな。そう思っただけだ。」
そう言って酒を飲み干した勘助兄ちゃんは箸を掴むとまだ残っていた卵焼きを私のお皿に乗せてくれる。
「いやいや!大丈夫ッス!本当気にしないでください!」
「良いんだ、俺がやりたいだけだから」
おちょこを置いて私の頭を乱暴に撫でた勘助兄ちゃんは笑みを深くして笑った。
くほぉぉおい!素敵スマイルktkr!
これはゼムナスじゃないかも!!!!
「勘助兄ちゃんバチイケ兄貴すぎてしんどい!!天使!!」
「ば、…ばち…?」
「バチイケ!!ばっちりイケメン……あー、かっこいいって意味です!!」
イケメンって言葉通じないんだった、と思い直して言い換えると勘助兄ちゃんは目を瞬かせて、それから首を小さく振る。
「冗談はよせ、こんな醜顔に向かっていう言葉じゃない」
「えぇ?!どこが!??」
この、この、版権ディ●ニーのイケメン顔が何を言うか!??
浅黒い肌に、それからちょっと瞼の上に大きな傷があるけど、逆にそれが勘助兄ちゃんの優しい雰囲気とのギャップ萌えにつながってるっていうか!!!良く日に焼けた肌がとっても着物と似合っていて素敵というか!!!?そんな醜顔なんていったら世の中の人間からどれだけ恨みを買ってしまうんですか!!!!
「ぜぜぜぜ絶対そんなことないって!だって勘助兄ちゃんタイトなジーンズもユニクロのシャツとかそういうの滅茶苦茶似合うよ??!そんなの着てて許されるのイケメンだけだよ!!!」
「……」
「あ、いや、ほん、ほんとだってば嘘ついてないって!」
いぶかしげな顔をして私を見てくる勘助兄ちゃん。
両手をぶんぶん振って全力で嘘じゃないアピールをするけど勘助兄ちゃんの眉間のしわはそのままだ。
うおおお待って待ってなんか逆に嫌味みたいになっちゃってるって!私は本当に勘助兄ちゃんのことラスボス顔の美…お兄さんだって思ってるんだってば!
必死の形相が伝わったのか私をしげしげと見ていた勘助兄ちゃんは「わかった、わかったよ」と首を振った。
「奇特なやつだな。……そう思わないか?」
「まあ変なのは見ての通り、という所ですね」
そういって勘助兄ちゃんの視線の先にはうっすらと笑みを浮かべたノブさんが立っていて、片手に持った徳利を揺らしていた。
あれさっきまでマー君にめっちゃお酒勧めてなかったっけ、と思ってそっちを見たらマー君はぐったりとして、天を仰いだままフリーズしている。だ、大丈夫なのあれ…
心配になってノブさんを見ると、いつものことですから、とノブさんはそのまま勘助兄ちゃんの隣に腰を下ろした。
「……ほどほどにしておけ信春」
「おや、心配して様子を見に来たのに酷い言い草ですね」
「心配って!」
「ふふふ」
ノブさんは笑いながら、勘助兄ちゃんにお酒を注いで、それから自分のおちょこに注ぐ。
お酒の強い香りに一瞬くらっとして、私は視線を別の場所へ移した。
そしてさっきまで殴り愛をしていたお館様とばっちり目があう。
「シズカよ、お主、なにやら大道芸ができるとか?」
「え?!」
「大道芸?」
勘助兄ちゃんが首を傾げる。
「あーー…まあ…歌…ってました…けど!」
「それで生活を?」
「はい!まあなんとかギリギリ」
「それはすごいな」
「聞いてみたいのう!お主の歌!」
にっこり!!!!!!満開の笑顔でお館様は頷く。
私はその笑顔に思わず
「了解ですよ!!!!!!!!!」
めっちゃでっかい声で返事をしてしまった。
あ、と思ったけど時すでに遅し。
勘助兄ちゃんやらノブさんやらマー君、幸村の視線を受けつつ私は立ち上がって辺りを見回す。
昼間のあの重苦しい雰囲気では無いにしても沢山の目がこっちを見てる。
「……よし、行きますよィ!」
歌ってやろうじゃないか!バタフライ!
熱く萌え上がれ武田軍ンンンン!!!
宴会の席は夜遅くまで続いた。
「ふぃー!勘助兄ちゃんどうだった?!今の歌ッ」
「…所々意味がわからない言葉があったがよかったんじゃないか?」
「やったよマー君褒められた!」
「昌景は潰れましたよ、シズカ殿」
「ありゃ、本当。」
「少々やり過ぎましたかね」
「シズカ!今の歌…よ、よかったでござる!」
「ありがと幸村!!」
「時にシズカ殿は異国語が話せるでござるか?」
「え?」
「れでーごー、とは異国語でござろう?」
「う、」
やっちゃった……☆