私の神様(仮)
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「む」
「そろそろです」
「うむ」
「シズカちゃん、みんなと合流したら少しだけ休憩して、すぐまた出発するから」
「りょーかい!」
私の神様(仮)
~湯煙に消えた死体、超美男子殺害事件!オカンの涙に隠された秘密と開けた着物の真実は!?ポロリはあったりなかったり~
そう言われてとっさに返事をしてから「…みんな?」と首をかしげるのと、木々の向こうで人の話し声が聞こえてくるのはほぼ同時だった。
「待たせたのう」
「い、い、いえ」
「……無事に戻られて何よりです」
ほんのちょっと拓けたところに大きな馬と、人影があった。
お館様が声をかけると、なんだかアワワとした声が返ってくる。私が佐助の背中越しに顔を出すと、背が高い方のどちゃくそイケメンと目が合った。
「さ、シズカちゃん交代」
「え?」
「馬降りて。あの二人のどっちかに乗せてもらって」
「え、え、佐助は?」
「さっきも言ったけど、俺様馬要らないから降りるよ。」
「ええええ」
し、知らん人と相乗り?!
思わずあの二人、と言われた二人に目をやる。
二人もじっとこちらを見ていて目があってしまって慌てて目をそらした。
「さ、佐助…あ、暴れないから連れてってよ…」
「ええ…?何?急にめちゃくちゃしおらしいじゃん」
「い、いやだってさ!?」
なんだか背が小さくてくりんくりんな感じの人も、微妙に警戒してるっていうかさ!!なんかまだパーソナルスペース広めな感じだからさ!?さすがの私でもこの空気の中いつものテンションで乗せてもらうなんてできないわけ!
「良いではありませんか猿飛殿」
「え」
「ねえお館様」
「うむ!そのほうが長い旅、シズカも気が休まるだろう!」
ニコッ、となんだか有無を言わさない笑顔を浮かべた従者の人…だと思うんだけど家臣さん…?その笑顔とお館様の大きな頷きに逆らえなかったのか、佐助はガックリ、と効果音をつけて肩を落とした。
「わかりましたよ…じゃあシズカちゃん前につめて」
「あ、うん…」
「道中もずっとこうでいてくれたらいいんだけどね~」
目が届くようになのか私を前にずらして、佐助はもう一度馬に乗った。それを横目で見ていた従者さんたちはお館様の馬の後ろの荷物を手慣れた動作で外すと、自分たちの馬へと載せ替えた。
「いつでも」
「うむ。では早速」
「シズカちゃんはダイジョーブ?」
「うん!!!!」
「もうちょっとすでに怪しいじゃん!!」
そんな会話をしながら従者さんを連れて私たちは再び移動を始める。
戦闘に従者さん、その後ろにお館様、最後尾を私たち…という並びになって、私はお館様たちの背中を眺める形になった。
そうやってしばらく移動をしていたけれど、やっぱりどうしても気になって私は口を開いた。
「あのさ、あの前の二人の名前はなんて言うの?いつまで従者さんじゃ呼びにくいんですが」
なんて、ごく普通の質問のつもりだったのに佐助が「え」と声を漏らす。
「……知らないの?」
「うん」
「本当に…?」
「?うん。知らない。」
「ほら、よく見て。本当に知らないの?」
「ぁいだだだだぁぁッ首が首が!その角度は無理があるッッ!知らないってんだろがぁぁあぁ!」
たずなを片手に佐助に無理矢理顔を向けられる。
首がグギィッとめちゃくちゃ嫌な音をたてたけど佐助は知らん顔で私の首をひねる。いてぇなこにゃろーっ!
すると、私から見て左側に居た目がくりくりした従者さんと目があった。
目があった事でアワアワとしだした従者さんが、右側の従者さんに「自己紹介、でしょうか」と言われて、もっとアワアワしながら「あ、ああ、大変失礼をっ」と口を開いた。
「は、ははははは、はじめましてシズカ殿!わた、わ、わたくし山県昌景、と申します!以後すえ…末永くよ、よろしくお願いいたしますっっ!!」
マー君(まさかげ、だからマー君ね)は絶対150cmはないであろう体を丁寧に折ってお辞儀をしてきた。
うわ、めちゃくちゃキョドってる!末永くって結婚するカップルか!
か、カワユス!!犬みたいだよ犬!目とかクリクリしてるし、ちみっこいし、むはぁああ!
「マー君萌えぇええめっちゃきゃわたんじゃん!」
「…も…もえ…?」
誰だモモエって。
かわゆす忠犬マー君にニヤニヤしていると、ふぅ、と小さくため息をついてもう一人のイケメンの方の従者の人が口を開いた。
「私は馬場信春と申します。どうぞお見知り置きを」
マー君と違って丁重にお辞儀をした信春さん(さて、あだ名はどうしようか)は、にっこりと笑ってみせた。
爽やかスマイルがすっきりした顔立ちにぴったりで10人中9人は美形だと頷く顔だ。
…つまり
「you are 攻め!」
「……はい?」
出会い頭の攻め発言にもノブさんは笑顔を崩さず首を傾げる。
その笑顔はキープなんですか…!貴方は古泉ですか!?まっが~れ↓!
くそ!ンフッて笑って貰いたいいぃいぃ!!
内心机をバンバン叩いているとお館様が豪快に笑いながら腕を組んだ(手放し乗馬しちゃうお館様もステキ)
「おお、そうじゃったな。紹介がまだだったか!二人ともワシの信頼する部下なのだ、シズカよ」
「そそそ、そんなっ!ありがとうございますお館様っ」
「勿体なきお言葉、有り難き幸せです。」
マー君はまた、あたふたしながら、ノブさんは悠長に言葉を返す。
なんだこの可愛い凸凹コンビ!
「ノブマサ決定だなこりゃ、ゲヘ」
「シズカちゃん?」
「ごめんなさい。」
笑いながらよだれジュルリとかしてたら佐助に心底嫌そうな声をかけられた。サーセン!
「シズカちゃんってどこまで俺様達の事知ってるのか微妙だよね」
「え?」
嫌そうな顔を崩して佐助は軽く肩を竦めた。
佐助のことなら私より幸村の方が知ってるんじゃないか?どこが弱い、とかねグフ。
なんて妄想してるうちに佐助が声のトーンを下げて言う。
「だって馬場と山県って言ったら武田の名士だよ?俺の事を知ってて、二人を知らないなんて…」
「それほど、我々はまだまだ精進が足りない、という事ですよ猿飛殿」
佐助の言葉に軽い危機を感じたら、なんとノブさんが助け舟(?)を出してくれた。
つーか猿飛殿ってプフッ
「でも…」
「我々も認められる程に強くならねばなりませんね、昌景。」
「う、うんっ」
バッカバッカと馬に揺られながら、隣を行くマー君に笑いかけるノブさん。
ちょぉおぉ!!萌え!全力で萌えたぁあぁぁぁ!
なにこの破壊力!破壊魔か!デストロイヤーか!
「上田城につくまでに鼻血でたらごめん佐助……ッ。」
「そうなる前に気絶させるから気にしないでいいよー」
爽やかに佐助は笑って片手を首刀の形にしてにっこり笑った。
怖っ☆
「まぁまぁ猿飛殿、シズカ殿をからかうのはそのくらいにして…」
ノブさんの一言に佐助は「はいはい。」と言ってたずなを握り直した。お、オカンを制しただと…!ノブさん貴方何者ですか?!
目を丸くして佐助を見上げれば、佐助は「俺様、なんかあの人苦手なんだよねー」と耳元でぽつりと漏らした。
あーなるほど。佐助って確かにペース掴めないタイプの人間嫌いそうだよねー。佐助の苦手なタイプにノブさんを追加していると、ノブさんがいたって真顔でお館様に言う。
「…お館様、少し急いだ方がよろしいかと」
「の、信春…!それは…!」
「確かにシズカ殿に負担はかかってしまうかも知れません、しかし……此度の同盟、確実に世を乱します。密偵がすでに放たれていてもおかしくない」
「うむ」
「え、なんか危ない感じですか…?!」
「ええ危ないのですよ。ものすごく。」
「の、の、信春っ!そんなせ、せせ責めるようなくち…っ口調ではシズカ殿が可哀相だぞ…っ!」
ノブさんが頷く。
なんかわからんけど密偵がいるかもしれないから早い方がいいという事らしい。で、多分私を気遣ってゆっくり進んでくれている…ってことっぽい。
「お館様、だったら全然急いでもらって大丈夫です!」
「しかし…」
「だぁいじょうぶ!私のお尻は鋼鉄でできてますから!!」
お館様はむう、と唸ってそれから佐助の顔を見た。
「――…じゃあ走らすけど…疲れたらすぐに言うんだよシズカちゃん」
「アイアイサー!!」
バシッと音がして、景色の流れていく速さが変わる。
ひづめが地面の砂を蹴っていく。風が佐助の髪を揺らした。
ふぁああぁこれはやっぱり一発叫んでおかないといけないよね!
「ひゃっほぉおぉおぉおおぉ「シズカちゃん五月蝿いんだけど。」おおぉぐふっ痛ッ!」
佐助からグーで鉄拳制裁喰らって危うく舌を噛みそうになった。
噛み切ったらどうするんだよもう!
「ははははは」
「はははじゃねぇよっ!!」
軽やかに笑う佐助がなんだか無性に腹立ったから、胸板にむかって頭突きしてやった(つーか後ろに倒れ込んだ)ら、なんか固い何かに勢いよくぶつかって(すっごい痛いんだけど、なにこれ)ちょっぴり涙が出たのは秘密。
「ねぇ佐助、」
「んー?」
小田原を出発して早2日。
いい加減馬の上下運動にも馴れてきて、まぁ相変わらずケツは痛いけどどうにか耐えて、私達は山を駆けていた。
今はどの辺りなんだろ、と周りを見回してみたけれど木ばっかりでわからないから止めた。
「なんで幸村は来てないの?たしか氏政おじいちゃんと同盟結ぶ為に来てたんだよね?」
「あー…それ?」
今度こそ素朴な質問だろと思って聞いてみれば、佐助は一回空を仰ぎ見て目を細める。
「…じゃあ秘密、って事で。」
「えぇーッ?!」
秘密って…秘密って…!禁則事項って事ですか!……あ。
「さ、佐助……」
「うん?」
「人差し指口元に当てつつ、微笑んで『禁則事項です☆』って言ってください!」
「やだ」
「がぁんっ!」
是非ともK安ボイスで可愛く言って貰いたかったぁあぁぁ!
てゆーか佐助ってばオカンのくせにサービス精神悪くね?!腐女子ズドリームをいっそ清々しいまでに蹴り飛ばしやがってっ!
「くらえメガトンアタック!!」
「はいはい」
「くそっ!防御かてぇッ!絶対防御かオマ!」
「なんたって俺様ちょー優秀な忍びですから」
「へいへい。」
肩を竦めて宣う佐助を蹴り飛ばそうとして防御された。
危うく馬を蹴る所だったよ!まったく、また爆走されたらどうするんだもう!(すでに体験済みとか言っちゃ駄・目☆)
「あぁああ、あのっシズカ殿ッ!そ、そろそろ上田城につきます!」
「え?!マジで!?」
やっと馬の上下運動から解放される!
期待を胸に顔をあげると、相変わらずの坂が目についてテンションが下がった。
パカッパカッ、なんて本当にそんな音を立てながら馬は坂を上って行く。
「―――…シズカ殿、」
「うん?」
ノブさんが声をあげたから振り返ってそっちを見ればにこやかな笑みを浮かべたまま正面を指差した。
ぐりんと正面に視線を移してみればやっぱり相変わらずの坂………
「あ…」
「この山を越えればもうじきです。」
見えた坂の終わりにたどり着く。
すると一気に広がる視界に町が映った。
「………あれが、上田城ですよ」
町の中の少し小高い場所、そこには大きな城が堂々とそびえ立っているのが嫌でも目につく。
ほほぅ、あれが上田城……。
「――……うふ、うふふふふ…!あそこが二人の愛の巣な訳ね!めくるめくカヲスワールドが私を待っているわぁあぁぁああははははは!」
「ちょ…!落ち着いてシズカちゃんッ!」
パカパカと馬が城下町を過ぎていく。
その際に町の人達と何回も遭遇したけど、みんな笑って楽しそうに手を振ってくれた。
なんだか活気っていうか生命エネルギーに溢れてる感じがする。
いいねぇこういう所って!
……に、しても。
「なんか甘味屋多くね?」
右を見ても、左を見ても、10件に1件は甘味屋ってどういうこったね。
「あぁそれは旦那が……――。――…うんまぁ、色々あるんだよ、うん。」
佐助はどこか遠くを見つめてうんうんと頷きながら勝手に自己完結した。なんだか追求しない方が良い感じがしたからあえて追求しないよ、佐助。
町の中を突っ切って行くと遠くに門が見えて来た。
あれがあの、佐助が守ってた門ですようふうふふふうへ。
「ぐふはぁひぇへ」
「…………なんかにとり憑かれてるのシズカちゃん?」
「むふうふふ違うかr「…――ざばぁあぁああッ!!」…はい?」
主従愛に萌えていると、聞いてるだけで喉が痛くなるような声が響いた。
うはぁあぁあ!こここここの声はぁあぁぁっ!!
「ゆきむ「幸村ぁぁあぁッ!!」
お館様が私の声を遮って、馬のスピードを上げる。
そして馬に負けないぐらいの土煙を上げる何かがこっちに向かって爆走してきた、
「ぅぉおやかたずぁ ぶはぁっ」
と、思ったら馬に蹴られて地獄に堕ちた。
真っ赤な彼を見事に蹴り飛ばしたお館様の馬は満足そうに一声鳴くとその場に止まる。
ぇえぇぇ?!なんか今メゴッていったよ!?
「――はっ!ちょ旦那大丈夫?!」
誰もがポカンと口を開いて呆然とする中、いち早く我に帰った佐助が馬から降りて、森の低い植え込みに沈んだ真っ赤な彼に駆け寄った。
「…う、ぅう……!はっお館様!!」
ガバァッと起き上がって真っ赤な…あぁもうめんどくさい、幸村(らしい人物)は丸い目をキラキラと輝かせて、馬のひづめの痕がくっきり残っている頭を勢いよく下げた。(むろん土下座death☆)
「お、お待ちしておりましたお館様ッ!この幸村…!お館様から仰せつかった任…無事果たして見せましたぞぉぉおおぉッ!」
「うむ!よく果たしたゆきむるぅあぁあぁぁぁあ!」
「ぅおやくぁたずぁぶぁあぁぁぁあ!!」
「くふぁあぁあ!!リアル殴りあ ぎゃぁぁああ!!」
幸村のあの燃え上がりっぷりから期待してたけれどやっぱり殴り愛キタァアァァッ!!
ミヨミヨしながら観察してやろうと目ン玉ひんむいてよーく見た所、お館様のボディアタックを喰らった幸村がぶっ飛んで来た。
いや~もう清々しいくらい、いい音がしましたね。
私の頭から。
幸村と一緒に馬から転げ落ちた私は背中から地面にダイブしてくぐもった声をあげてしまった。
…ほらさ、よく夢であるじゃん。
ぶつかったキャラと気付いたらイヤン☆みたいな体制になってるっていうアレ。前々からなんであんな体制になるんだろうって不思議だったんだけどさぁ、うん。やっぱり無い。
現に私と幸村の体制ってば二人して仰向けで空見上げてるよコレ。
私からしたら幸村の茶色がかった髪の毛と赤い鉢巻きしか見えないし!
げふ、幸村良いニオイハァハァ…じゃなくって!
何さこの某双子芸人の『幽●離脱~』的な体制は!
「あわわわわシズカ殿!」
「…大丈夫ですか?」
ノブさん、心配するならもうちょっと真面目に聞いてくれよ、顔が笑ってるからね?!
「幸村もいい加減どいて…ッ」
「は…ッ!」
「おぅ?!」
私の声に覚醒したのか我に帰ったのか、幸村が私の体の上でビクンと体を揺らした。
どうでもいいけど、何気なしにに動かれると筋肉潰しみたいになってて痛いから止めてほしい。
あの、と声をかけた瞬間幸村は私の上から跳びはねて(グエッ)私をガン見してくる。
そして、みるみる顔を真っ赤にさせて、
「はっははは…ッ」
「…あ、嫌なヨカーン☆」
「は、破廉恥でござるぅぁあぁああぁあぁああぁぁぁあッッ!!!!」
「ぬほぉおっっ!!」
人に一度ズビシと人差し指を突き付けた幸村は酔っ払ったみたいに真っ赤になって、今本人が来たばっかりの道を爆走して行ってしまった。
…にしても今日はリアル殴り愛(キャッチアンドリリースだけだったけど)が見れて、更に生破廉恥も聞けてよかったんだけど、でもまさか本気で鼓膜の危機に陥るなんて…!
「そうだよねそうさ幸村とダテムネってば戦場の隅と隅で会話できちゃうんだもんねあれは声でかいからつか軽い以心伝心ってあらやだ幸政!?きゃっほい幸政萌え!ぼかぁらはいつも以心伝心!むしろ相思相愛、いやあそこまでいくともう近親相姦じゃないですかい!むふぁふぁあ!」
「シズカ殿落ち着いてください、」
「イエスサ!」
ズダンと敬礼を決めて私はたった今、朱い彗星にたたき落とされた馬を見た。
ほら、まだ乗馬歴2日半だからさ、ひとりじゃ上れないんだよ馬に。
「さーすけ、のーせーて☆」
「……はいはい。」
苦笑を浮かべて、佐助は伸ばした私の手を思いきり引っ張り上げた。
勢いよく引っ張られた私はマグロの一本釣りよろしくに馬の上に乗っていた。
「…………」
「……よし、行きましょうかお館様」
「うむ!」
「いやいやいや!私のこの体制でいくんか!嫌だよ正面に背中向けてんじゃん!」
今の私の体制カオスだよこれ、佐助と向かい合ってるよなんか。
このまま馬が進むと私、背中から進行する事になる!
嫌だ枝とか避けれないってばよ!
「そーれ突撃ー」
「ぎゃあぁぁぁあ!突撃ーじゃねぇぇえっ!」
お館様の馬より少し後ろを私達の乗っている馬公が行く。
く、くそぅ、少し体制が違うだけで揺れが変な所にクる…ッ!
「つか酔う!酔うってコレ!吐く!吐くぅう!」
「シズカちゃん顔やばいよ」
「知ってますー!ぎゃんっ!うわケツ痛い!あもマジで死ぬ!」
せめてもの抵抗として佐助の無駄にほっそい腰にしがみついてやった。
んふふ!幸せっ!
なんとかコレで気にせず上田城までやり過ごせますように…ッ!
「おぅええぇぇっ……」
「だ、大丈夫ですかシズカ殿…!」
「…うん、なんとか無事…ありがと、」
上田城に着くなり地面に足が着くことへの幸せを、そりゃもうしみじみ感じながら私は吐き気とタイマンはっていた。
心配そうに背中を撫で続けてくれているマー君ってば優しいね!
ちゃんと心配してくれたお館様は鬼畜オカン佐助に連れていかれてしまい(オカンコノヤロウ)ノブさんは気付いたら居なくなってた(放置プレイてか)で、なんか客間らしい所に通されて、私の面倒を見てくれてるマー君(あんたは神か!)
「あー…本当ありがとうマー君…大好き愛してる…ぅへ」
「ああああ愛…っ?!」
「まふー、マー君可愛いよマー君…。ノブさんは鬼畜だ、なにしとるんだアイツァ」
「誰が鬼畜ですか」
「うへ!?」
ブツブツとマー君の反応を楽しみつつ愚痴を零していると、音もなく襖が開いて、ノブさんが現れた。
ノブさんは両手に桶を持って部屋に侵入してくる。
おいおい襖を足で閉めていいんか。
「両手が塞がっているのですから仕方ないでしょう?」
「…そっすね」
もういいさ、その笑顔にツッコミを入れたところで返されるだけだし。
私はノブさんと桶を交互に見つめる。
「あぁ、これですか?」
そう言いながらノブさんは畳に座って桶を置いた。
中を覗きこめば、水面が揺らいで波紋ができている。んでその真ん中辺りに手ぬぐいが沈澱してる。
「…信春、これは?」
「酔ったときは目頭に冷たいものを置くと良いそうです。ほら、横になって。」
ノブさんに促されて私は畳に仰向けになった。
うーん、ノブさんとマー君に覗き込まれてるから変な感じだ。
木目の天井を仰いでいると、不意に視界が遮られてひんやりとした感覚。
置かれた手ぬぐいからすっきりした物がベロの奥あたりを刺激してくれて気持ちいい。
「どうですか?」
「むふー……気持ちいー…ありがとー…ノブすゎん…」
いやはや、これ良いよ。車酔いとかにもイケるよ。
『あ』に濁音つけて唸りたい感じ。
「シズカ殿、もう少ししたら猿飛殿が迎えに来ると思います」
「へ?なんで?」
「シズカ殿を正式な客人として迎える為です」
「?」
「みなに伝えておかねば切り捨てごめんになりかねませんからね」
「嫌すぐる!」
ですから、と言葉を区切ってノブさんが言う。
「猿飛殿が来る前に準備しておいてください、仮にも武田の重臣達が集まる場ですから」
「うぅ…プレッシャーだよ……」
私ちゃんと自重できるかな!?だって幸村にお館様だよ!?
絶対自重しきれない!つーか無理!
「…では、私達はこれで。行きましょう昌景」
「あ、うん…で、ではシズカ殿…ままままた後ほど…っ!」
「マー君、ノブさんありがとねー」
今度こそ丁寧に襖を閉めたノブさんはマー君を引き連れて客間から出ていく。
「……………」
一気に静寂が訪れた客間。
よし、観察だ。もしかしたらここが殺人現場になって、犯人が証拠隠滅の為に部屋を少し変えるかもしれないし!
そうしたらその時私のすんばらすぃ~記憶力のおかげで犯人を導き出せるわ!
「シズカ少女の事件簿!私が必ず犯人を暴き出してやる!じっちゃんの名に賭けて!」
しん……っ
「……そして誰もいなくなった……」
私はおとなしく置いてもらった冷タオルを額に乗せて天井を仰ぎ見た。
ここまで怒涛の勢いで来てしまったけど、よくよく考えたら本当に久しぶりにガチ目なひとりぼっちだ。
障子の向こうではチチチ、と鳥が鳴いてほんのり風で葉っぱが揺れる音がする。なんとなくどこかに人の話し声?気配はするけど、気のせいな気もする。
(いつもなら、ちびちゃんズが騒いでるのになー)
ぼんやりと思う。
この時間だとそろそろ夕餉の支度のために重い腰を上げるくらいだろうか。
庭か、家の中でかちびちゃんズが騒いでいるのが常だったし、そもそも小田原はとても賑やかな街だ。すごく多くのお店が軒を連ねていたし、住んでる人たちも快活で明るい人たちばかり。
だからこう、静かな場所も本当に久しぶりかもしれない。
(…いやちょっと待ってよ?)
ふと気づく。
幸村が私の知ってる幸村サイズなら、梵ちゃんはもう梵ちゃんじゃなくて
「…………政宗…?」
そうだ。もう梵天丸じゃなくて政宗なのでは?
そうじゃないとこの世界の幸村と政宗の年齢差がすごいことになるはずだ
ってことは、私が次に行くべきはもうわかっているはずで。
(そうだよ、私の知ってる梵ちゃん……じゃないかもしれないけど奥州に行く価値はあるんじゃない?)
もしかしたら梵ちゃん違いかもしれないけど。
そうしたら与一への約束だって果たせるかもしれない。
私は小田原に残してきた与一のことをちょっと考えて、それからゆっくりとため息をつく。
その揺れで、さっき幸村と衝突した頭が悲鳴をあげた。
「マジで幸村がえぐい石頭なのが分かったのは大きな収穫だよね」
本当に鉄板に頭打ちつけた方がまだ柔らかいかもしれない。確かな質量と勢いからでてくる頭突き、できれば2度と味わいたくない!
「次また頭突きされそうになったら佐助に押し付けよ……」
「独り言が多いね、シズカちゃんは」
「ほっとけ!って佐助!」
名前を呼んだからなのかそれともずっとどっかに潜んでいたのか、佐助が襖の隙間(あ、なんか似てる。ふすまの、すきま)からひょっこり顔を覗かせて現れた。
相変わらずの忍び服がふわっと揺れる。
「シズカちゃん準備できた?」
「いや…準備、と言われましても。」
何を持って行けばよろしいのでござりましょうか猿飛殿。
そういう意味で言葉を止めて体を起こした。
おおっと、一瞬くらっときたぞ。
佐助は私の言いたいことが解ったのか、ニッコリ笑う。
「持ち物は要らないよ。心の準備だけだって。ちゃんと自重してね」
「佐助までそれを言うか」
え、何?確かに私前科はあるけど、てか心当たりがありすぎる。
一応場の空気は読んで来たつもりだよ私。
「まぁシズカちゃんなら大丈夫だろうと思うけどさ。頭の固い、てか礼儀重視の人もいるし」
「ストレス社会め…」
「すっごい堅物だよ。ははは」
「佐助、目が笑ってない。何かあったの?」
佐助は表情をいつものニヘラ笑いに戻して、んーと言って少し悩んで見せた後。
「…禁則事項です♪」
「……………」
人差し指を口元に当てて、片目を閉じて、妙に腰を屈めて。
そりゃもう完璧なまでに朝比奈さんを演じてくれましたよえぇ。
「……あれ、俺様なんか違ってた?」
「…いや、想像してたのと何か違った。怖い。めちゃめちゃ怖い」
想像してたのは、なんつーかこう、可愛くおねだり、みたいなアレだったのに…今のはおちゃめな三十路、某鬼畜メガネなネクロマンサー大佐みたいだった。
「腹黒さみたいなものがはみ出てたよ今の。」
「はみ出てるって嫌な表現だよね、
…で、準備できた?」
「まぁ一応。する事とくにないんだけどね」
じゃあ行こうか、と佐助に促されて私は後をぼちぼちと着いていく。
…あ、これ絶対どこが部屋か解らなくなる。
何回目かの曲がり角を曲がったところで佐助が止まった。
「お館様、連れて参りました」
「うむ、入れ」
佐助がすごい真剣な声音で、かしづくもんだから私もピンと背筋を伸ばした。
うーん、佐助が開けてくれた襖の向こうから真面目オーラがぴんぴんしてるよ、これこの空気は小学校で窓ガラス割った犯人探してる時の妙に重たい空気以来だ。
「シズカちゃん、」
「?」
「早く入ってよ」
佐助に小さな声で言われて私は我にかえる。
おおっと、意識が吹っ飛んでた。
ずっとその片膝状態は辛いよね、ごめん佐助。
佐助を早く主従体制から解放してやるべく、襖の向こうにずんずん進む。
中にいたお館様と目が合って力強く微笑まれた。
相変わらずお館様ダディ!
お館様の隣に立って、一度部屋を見回す。
う、うぇぇえ!沢山の目がこっち見てる!超怖い!
…うは!幸村発見!
え、ちょ、なんでそこで目を反らすわけ?!
いくら私でも傷つく…あノブさんとマー君だ、ヤッホー☆
いやんマー君顔が赤いよ可愛いなもうっ!
「この者がシズカだ」
長方形の部屋の真ん中にずんぐりと構えたお館様の言った言葉に空気が一瞬ざわついた。
でもそれは本当に一瞬だった。
「シズカは小田原の氏政公の元から客人として招いたのだ。」
そこまで言ってお館様は私を見る。
えっと、これは何か言えって事ですか。もう一度室内を見回せば相変わらず沢山の目。
サーセン、空気読みます
「…ボーンジョルノー☆私はシズカって言うこれでも一応人間やってます!この甲斐にはお館様のお誘いを受けてやって参りました!お館様の素敵な声が大好きです!妄想だけで生きてるような童ですがどーぞよろしくお願いします!」
『………………』
…………間が痛い!
お願いノブさん頭痛してますみたいな感じで頭押さえないで!
マー君はマー君で苦笑やめて!
私なりに空気読んでブッ壊ししようとしたんだからね!?
戦った!私は戦った!戦死したけどな!
「……僅かな時間しか甲斐には居らぬが良くしてやってくれの。…以上じゃ!」
お館様はそう言って豪快に笑うと立ち上がった。
後に続いて重臣さん達が立ち上がり、お館様の頷きで一気に張り詰めていた空気が無くなる。
「ぶはぁぁあ」
つ、疲れた…駄目!私にはあの空気は無理だ!
「シズカよ、やってくれたのぅ」
「え?」
お館様を見上げればやっぱりダンディズムな笑顔を浮かべて私を見ている。
「やはりお主で正解じゃの!楽しませてくれるわ」
「はぁ…」
何が正解なのか良くわかんないけど、とりあえずお館様にはウケたらしい。
うんよかった。
みんなシラけてたから本気で焦ったよ、マヂ。
「お館様、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「うむ、ではまた後でのシズカよ」
重臣の人となにやら大事そうな話を始めたお館様から視線をずらして見るとマー君とノブさんが歩いて来ているのが見てる。
「お疲れ様でしたシズカ殿」
「あああう、とてもよ、よかったですよっ!」
「そーかいそーかい。空気読めなくてごめんなさいね!」
そんな気休めみたいな言葉要らないわよっ!ふい、と顔を反らせば調度、視線の先に鎮座してる真っ赤な…
「あ、」
私と目が合った彼、幸村は一瞬にして顔を真っ赤にさせて、それからすぐ顔を青くさせてしまう。
「どっ…どうかなされましたか…っ?」
「先程私を馬から突き飛ばして謝りもせず破廉恥発言かました揚げ句私から目を反らし続けてるあそこの真っ赤な人が気になっただけだよ、マー君」
私の言葉に幸村はビクッと肩を跳ねさせて恐る恐る私と目を合わせて来た。
「ハロー、ボーイ☆」
「う……っ!」
手をヒラヒラ振れば幸村は言葉を詰まらせる。
…まぁこのまま幸村で遊んでもいいんだけど、私としては幸村は腹黒か天然か、それともただのワンコなのかを確認せねばなるまいさ!
幸村をガン見していた所、見るに見兼ねたのか突然天井からしゅたりとオカンが降って来た。
「…あのねぇ旦那、」
「さ、佐助!」
「言いたい事はちゃんと言わなきゃ駄目だよ?ほらちゃんとシズカちゃん見て、」
「う、うむ…」
クルリと佐助から私にまっすぐ向き直って幸村は膝に拳を乗せた。
「…っ先方は大変失礼申し上げた!ま、まさかお館様が女子を連れて来られている等予期できず咄嗟に逃げてしまったのだ…!この真田幸村、お館様に仕える者として逃げるなど言語道断ッ!ぅぉおぉぉ!叱ってくだされお館ざばぁぁあぁ」
「…ってな具合でごめんねシズカちゃん。一応旦那これでも責任感じてるから。」
…謝ってるのは解るんだけど、この叫び声はどうにかならないのか。
佐助の声が聞き取りにくすぎる!
「ぅおやかたずぁぶぁぁ「黙らっしゃい!!」ぁあぐっ!」
叫び続ける幸村の脇腹辺りにズビシとツッコミを裏拳で入れてやったらくぐもった声が聞こえる。
「いい?確かに馬から突き落とされて幸村とまさかのザ☆●っちをするなんて予想外だったよ、つかビックリ?本日1番の驚き?」
「うぅ…申し訳ないでござる……」
しゅん、と尻尾を垂らしてうなだれる幸村に笑みを浮かべる、あぁぁニヤニヤすりゅ!
いつまでも眺めておきたい気持ちは山々だけれどシュンとさせておくのも、可哀想なのでそろそろ手打ち…としたいのだけど、さてどうするか。
「じゃあ提案なんだけど」
「?」
「私、実は上田に友達がいないんだよね。‥んでちょっと寂しいからさ友達になってくれたら許すよ。真田さん」
「友…でござるか?」
ビックリしたように目を丸くする幸村と佐助、多分後ろのノブさん達の目も丸い。
「どうかな?」
「………」
「シズカ殿…それは……」
「わかったでござるっ!」
「幸村?!」
ノブさんの焦ったような声がする。なんだか思ってたのと違う反応だったのかもしれないけど、幸村は満面の笑みで鼻を鳴らして嬉しそうに拳を突き上げた。
「某、全力でシズカ殿の友人となりましょうぞ!」
「え?!まぢで!?」
「男に二言はござらん!」
「やたぁぁあぁぁッッ!!」
これで友人って名目で佐助とどんなプレイしてるのか聞き出せる!
そう考えてニヤニヤしてたら佐助の顔が引き攣ってた(酷い!)