私の神様(仮)
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「ら」
妙に張り詰めた空気の中、私は氏政おじいちゃんとお館様の説明により、どうにかこうにか本題を理解した。
「―――…じゃあつまり…」
「うむ、おぬしが何故この小田原に居るか…説明する為じゃ」
なんだ、情報の伝達に齟齬が発生するから私がここにいるんじゃないのね。
私の神様(仮)
君はオカン、僕は腐女子
「えっと、まず北条と武田が戦してた事は知ってる?」
「ついさっき知ったよママーっ」
「……」
一瞬、殺気的な何かが飛んできた気がするけど解らないヨー。
殺気慣れしてない一般市民に向かって情け容赦なく殺気を飛ばした佐助はふぅ、と息を吐いて言葉を続ける。
「そ。まあそんなわけで戦が始まったから、俺様達忍びは互いの戦の策とか調べるために潜入しようとした訳よ」
「ふむふむ」
「そしたら、偶然この風魔に遭遇しちゃったんだよねーいやー偶然って怖い!」
「たんに佐助の運が良いだけじゃん、ある意味」
そんな爽やかに笑いながら一つ手を打たれても。
まぁツッコミをいれてたら自分が自分じゃなくなる気がするので無視無視。
「んでね、まぁやっぱり互いに敵国の忍びだからなる訳よ。戦いに」
「佐助、コタと戦ったの?!」
「まぁ俺さま達が”惜しくも”負けかけた訳だけど」
「ですよねー」
相手は伝説の忍びですから!それが普通なんだわ!
ぷふふ、ドンマイ佐助☆
「アハハー。ムカつくから一回殴っていい?」
「やだー☆」
だってその手についてる鉄かなんかの坊具どうみても硬そうじゃないか!
「…え、あ。ごめんごめん。ちゃんと話すから睨まないでよ風魔…。えーっと…あぁそうだ。"惜しくも"負けそうになったからね、俺さま達禁術使ったわけ。こうバチバチーってね」
北条さん家の伝説君に睨まれたらしい佐助は(私にはいつものコタにしか見えない、睨んでるとか解るのか、…あぁ愛ですか!!うは萌え!)惜しくもを強調して適当な印を組んでバチバチーと暢気な声をだした。
バチバチーなんてまるでカミナリみたいな効果音じゃマイカ!
……って、ん?カミナリ?
「ちょいとお母さん」
「刺すよ?」
「すまん冗談。あのさ、その禁術って『禁術・雷塵』とか言ってかすがとある意味ファン泣かせなコヌビネーション披露しちゃうウフフアハハなアレかい?」
「所々言葉の意味が解んないけど…確かにそうだよ。
―――…なんで君が知ってんの?」
おっとまたやっちまった!イタイケな腐女子のちょっとしたミスぐらいスルーしてくれよ!
「まぁいいや、後で聞き出すからさ。………覚悟しといてね。」
ニヤリ、と腹黒い笑みを浮かべて佐助はそう言った。ギャン!シズカちゃんてば命の危機!
顔面を少し青くさせた私を爽やかに無視して、武田のオカンは続ける。
「禁術使ったのは良いんだけど、風魔に邪魔されちゃって印を間違っちゃったんだコレが。そしたらさ空に穴が開いて……君が降って来た」
「………what?」
え、え?それってつまりどういう事?!私が禁術失敗した時の穴から…え?
「つまり、ヌシを連れて来たのはそこの武田の忍び――…と言うわけじゃ」
今の今まで軽く空気と化していた氏政おじいちゃん(ごめん、おじいちゃん)がそう言って目を開けた。普段コタに前と後ろと左右を守るように言ってる氏政おじいちゃんを忘れるぐらい、真剣な目に思わず唾を飲む。
うは、カッコイイ!大人のカンロクってやつじゃん!とか思ったけど言わない。
氏政おじいちゃんの意外な威厳、つか空気に軽く戸惑っていたらお館様が胡座をかいたまま斜め45°に頭をさげた。
「えぇぇええええっ!!?」
「すまぬ…儂の部下が起こした不祥事に巻き込んでしまったの」
「いや、お館様頭下げないでください!てか正直、一国の大将がこんな小娘に頭下げちゃ駄目ですよ!後が怖いっ!」
一国の大将が頭を下げたって事は、国が頭を下げたって事でアレもしかしなくても一大事?!
そんな!佐助に×されるギャァァ!
「しかし……」
「しかしもカカシもカカイルもイノシカチョウもないんです!hey!顔を上げておくれ頼むから!!」
正面の忍びの笑顔が怖いんだよぉおぉぉお!!救いを求める意味で言えばお館様は、む…そうか?と言って顔をあげてくれた。
佐助はお館様に頭を下げさせたことにグッと唇を噛んでそれから頭を振った。
「で、本題はここからなんだけど、……きみはどこから来た?」
「え?」
「きみは誰で、どこから来たのかって聞いてんの。元の場所に返してあげる」
「あ、えーっと……」
なん…なんで言えばいいんだろう…
ここより何百年か未来の日本……なんだけど、ここは戦国BASARAの世界だ。私から見ると現代日本の、創作物。じゃあ"ココ"から見るとなんと表現するのが適切なのか。当たり前だけど「私は数百年後の未来から来ていてここはその中の創作物です☆」な~んて言えるわけないしな…。
ウンウンと頭をひねっていると、私をじっと見ていたお館様が口を開く。
「…おぬしが、遥か南蛮から来ているのはわかっておる」
「ちょ、お館様…」
「よい。おぬしが着たときの姿、所有していたもの、このわしですら見たことがないものばかりだった。ならば遥か南蛮からきたことくらい想像できる」
「あー…なる…ほど…?」
確かに、佐助たちが雷塵をミスって私が来たのなら、もちろんお館様たちも私の制服やカバン、スマホ(ろ、ロックかけててよかったぁぁ!!!!!)はたまた教科書電子辞書…諸々確認していて当たり前だ。
特に他人を疑ってかからないと死につながるかもしれない世界なのだからなおさら。そういう意味でも…お館様は、氏政おじいちゃんたちは気づいているのだろう。
だったら、私は変にごまかさなくてもいいのかもしれない。
(というか、こんな聡い人たちに嘘をつくことなんてできないだろう、って言うのも思ったわけで)
「……ちょっと、長い話になるんですが、いいですか?」
「もちろんじゃ」
「そのために我らは停戦しておるのじゃからのう…」
「そーそー。逆に嘘つくようだったらこの場で切り捨てちゃうからね」
「あはははは、や、や、やだなあそんな嘘をつくなんてガハハハそんなことするわけナイジャナイカー…はっはっは」
じゃあ、せっかくなので、学んだばかりの、やたら知識に偏りがありまくる、私の授業の成果を語らせていただこうかしらね!!
まじで!すっごい偏ってるけど!でもオタクってみんなこうでしょ?!でしょ?!
そんなわけで、途中でコタにお茶をいただきながら(キャッ、気が利く!どっかのオカンより!)私は話した。
「…私がいたのは今よりはるか先…数百年後の未来の日本です」
「氏政おじいちゃんやお館様…のいる甲斐や小田原は、地名や歴史資料などで残ってはいますし、子孫の方もいらっしゃる…と思うんですが、私たちはそれを国とは表現していません」
私のいた時代ではこの【戦国】というのは歴史上の出来事であることを。
「海の向こう…皆さんが南蛮とよぶさらにその先には多くの国、多くの人々が独自の文明を作り、海に繰り出しています」
「この時代もあと何十年とすると、世界と争う時代が来ます」
海の向こうには多くの国々があり、多くの人があること。世界はもっともっと広い事。
「数百年後の未来では、鉄の馬が舗装された道を行き交い、街に出れば多くの国の人々と当たり前のようにすれ違います。違う言語でも、通訳してくれるからくりがあるのでそれで会話もできます」
文化と文明が大きく進歩し、空を飛んで世界中に行けること。
食べ物にあふれ、飢える人は少ないこと。日本全国の出来事がその日のうちに知れること。
いつかの梵ちゃんに話したように、思いつくことをペラペラと話した。
途中、質問とか来るかなと思ったけど、不思議と誰も口を挟まなかった。だから私は、本当に私が知っていること全てを話した。
「私がみんなを知っているのは…伝記として後世に残っていたからです」
ただ、唯一。
お館様たちが「戦国BASARAの創作物である」ということだけは言えなかった。
ややこしくなるのもそうだし、……私が説明できなかったのもある。上手く伝えられる自信はない。あなたたちは私からすると創作物です、なんて。
一通り話し終えると、広間にはそのまま静寂が残った。
誰も何も言わず、じっと思い思いの姿で私の話をかみ砕いているようだった。
私の話し終えた後の吐息だけが宙に揺らいで、それも溶けて消えた。
そうやってどのくらいの時間を消費したのか、チチチ、と綺麗な庭で鳥が鳴いたのが聞こえたな、と思った頃に氏政おじいちゃんが口を開いた。
「一つ…聞かせてくれぬか」
「なんでしょう…」
「おぬしが未来から来たというのなら、この戦国の世が、どう終わるかも知っておる…という事でよいのじゃな」
確信がある声音。疑問形ですらなかった。
私は少し悩んで「まあ」と曖昧な返事を返す。それに佐助が鋭い視線を送ってきたけど、私はうつむいて無視することにした。
(だだだ、だってそんなの言えなくない?!歴史通りなら徳川家康が天下をとるんです☆とかさ!織田信長は暗殺されます!とかさ私が佐助だったら「じゃあまずはいっちょ徳川殺してくるか★★」てなるもんよ!!!それにそもそも!BASARAってEDいっぱいあるわけだしさ!!)
「ふぅ……」
「あ、あの…すいません…ちょっとあんまり言わない方がいいかなって…思うのでその辺答えなくてもいいですかね…?!」
「よい。ワシも知りたいとは思わぬよ」
「う…」
氏政おじいちゃんはそう呟いて天を仰ぐ。
その声音は私の返答とかそんなことよりはもっと遠くにあるような気がして、私はおじいちゃんから目を逸らさない。
「北条の威光はそんなに長く続くのじゃな」
「……」
「そうかそうか……」
「……」
「氏政公…」
「なあ信玄公、甲斐の虎よ…おぬしなら、わかるであろう」
「……」
静かな声に、お館様は小さく目を開けて氏政おじいちゃんを見た。
そして、そのまま視線を落として、特に反応を返さない。そんなお館様を気にとめず、氏政おじいちゃんは「フゥ、」と大きく息を吐き出した。
「ようやっと…つっかえが取れたような気分じゃ」
「氏政おじいちゃん…」
「お主、名をなんという?」
「……あれ、」
名乗ってなかったっけ?
「シズカです!歳は花も色めく17歳キャピ♡で好きなものはブラインド販売じゃない限定グッズ!!あと手作りの甘味をおいしく食べてる受けピを微笑みながら見つめる攻めピ達を壁になって見守ること!!薔薇も百合も夢もバチコイな雑食性腐女子です!!!」
「急に声でかッッ」
「挨拶は元気な方がいいでしょーが!!」
心底ウザそうな佐助に正論パンチを返して氏政おじいちゃんとお館様に頭を下げると氏政おじいちゃんは「近頃耳が遠くてのぅ、このくらいの方がよう聞こえるわい」と笑ってくれた。お、おじいちゃん!!!!
ほっほっほ、と笑ったのち氏政おじいちゃんは打って変わって真剣な顔になってお館様をみた。
「……信玄公よ、お主を見込んで頼みがある」
「……」
「儂はもう戦などしたくない。じゃが、だからと言ってご先祖様の守ってこられた土地を失うわけにも行かぬ。…此度の戦、北条軍は撤退しようと思う」
「え?!」
「……」
「どうせ、ヌシらの狙いはこの港……そして米じゃろうて。……今年は荒れた天気も続いたからの」
「……フム。」
氏政おじいちゃんの目が光り、お館様は一つ大きく唸った。一方逆に驚いて声を上げたのは佐助。
声が広間にワンっと響いたけれど氏政おじいちゃんとお館様は気にも止めず、お互いをしかと見つめあっている。
とてもじゃないが口を出せるはずもないのでキュ、と唇を噛み締めた。
「……氏政公の読み通り、今年は甲斐の民は飢えるであろう。貴殿が囲うこの港も欲しい。関東随一の水軍を持つ北条軍が引くというのなら、我らとしては願ったり叶ったりよ。…だがまさか無条件というわけでもあるまい」
「話が早くて助かるわい。近頃、俄かに周囲の国々がざわめき立っておる。どうにも機運が悪い……そこで、ヌシの騎兵と、硝石。これを双方開放するのはどうじゃ」
「……」
「港も一部を開放しよう。どうじゃ、無血で欲しいものは手に入る。もちろん儂らも益がある。」
「……ふぅうむ」
なんだかよくわからない難しい話をしてるなぁと思ってお館様のムキムキをこれでもかってくらい眺め倒していたら不意にお館様と目があった。
しっかりとした髭を撫で付けて眉を寄せていたけど、私の目を見て一瞬「そう言えばまだおったのう」という顔をしてニカッと笑みを浮かべる。
「詳しい話は、シズカ…を返したのちに。」
「おお、そうじゃった。風魔よ嬢ちゃんを家へ送るのぢゃ」
「……」(コクリ
「佐助よ、お主も行け」
「…………御意」
「えっえっそんな贅沢な忍サンドしていただいちゃってええんですか?!!?……いやごめんサンドじゃダメだ私は壁!!!!間に挟まるなんてそんな市井引き摺りの刑にされても文句は言えない邪悪を!!ずびばぜ べふっ」
「はいはーい行くよー」
「ひぃぃい頼む私抜きで行ってくれぇぇえええ」
「それじゃ意味ないでしょ!!」
「お館様ーーっ!!氏政おじいちゃん会えて嬉しかったですー!!!またー!!!!!」
ズルズルと私の体を引きずって佐助が部屋を退出する。
そして大きく手を振りながら叫んだ私に苦笑して氏政おじいちゃんは手を小さく振り返し、お館様は大きく頷いてくれた。キャーーーッッファンサやばすぎる!!!!
デレデレとしていてよだれを啜ったと同時にコタがピシャリと襖を閉めてしまった。
容赦ないけどそんなところも素敵だコタ!!!!
「………」
「………………」
「えっ、無言なの怖?!!」
「ただいま与一ぃ~っ!」
「お帰りー。……あ」
「……………」
始終無言でなんだか仲が物凄く悪そうな空気の間に挟まれて疲労感バリバリで家に着くと、釜戸の前で何かを作っていた与一が振り返って…固まった。
「…えっと…あの……こんばんわ…」
「………」(ぺこっ
「はーいこんばんわ」
えー?!何このほのぼの空間ッ!今、目の前で伝説の忍びがお辞儀しましたよ!?しかもめちゃくちゃ丁寧に!
なんかお隣りさんに挨拶にでた奥様みたいな!
佐助もさっきまでの激ヤバ反抗期少年みたいな無表情はどこへやらにこやかな胡散草スマイル全開だし!
「くはーっ!」
「?」
「あぁ無視してて下さい。いつもこうなんで」
「ヒデブ!」
与一にそう言われたコタは頷いて、クルリと私に背を向けた。な、なんだその存在自体を無視みたいな態度っ!
「コタ無視せんといて!」
「………」
どさくさに紛れて腰に抱き着きながら(予想以上に腰細いんすけど)言えば、コタはくるりと向きを変えて私を見下げてくる。
佐助の髪より濃い橙?の髪に隠れてフェイスペイントと兜しか見えないから表情はよくわかんない。
まじまじ見上げていると、不意に頭を撫でられた。
「……あの、小太郎、さん?」
「……………」
名前を呼んでみても撫でる手は止まらない。いや、幸せなんだけどね?コタのなでなで気持ち良いぞ!
思わすにやけ顔になった私を一瞥してコタはなでなでを止めた。
え!?なんで?!
「あらま北条の忍さんてばお優しいこって」
「……」
「やだなぁほんとのことだろ。そう睨むなよ」
「姉ちゃん、この忍びさん…たち?ご飯食べて行く?」
「あ、佐助にコタは夕飯食べてく?」
「…………」(フルフル
「いーや、俺様も戻るよ」
顔を横に振られた。食べて行かないらしい。
なんだ…兜外すの少し期待してたのに…!
「えっと…今日はありがとう。氏政おじいちゃん達によろしく。」
「……」
コタは一つ頷いて、シュバッ!と羽を残して消えていった。おぉお忍びっぽい!てかこの羽記念に貰っておこう。
そして、佐助はそれを見て肩をすくめると同じように音もなく姿を消した。
「……結局、姉ちゃんはなんで呼ばれたの?」
「あーー……」
与一の美味しい美味しいご飯を食べ終えて2人で髪の毛を乾かしていたら、恐る恐る、といった様相で聞いてきた。
もしかして何か悪いことしたんじゃ、と引き攣った顔で聞いてくるもんだから私は首を思い切り左右に振った。
「なんかさぁ」
「う、うん」
「手違いだって」
「え?」
なんか、お館様も氏政おじいちゃんもすごい真面目な顔してたけど、話半分も聞いてなかったっつーかお館様の二の腕まじでリアルで見るとものすんごいデカくてスイカくらいありそうって思ってたら突然話振られたから…って言ったら与一はなにそれ…と眉を寄せた。
「私未来から来たって言ったじゃんさ」
「うん」
「なんかその原因?かもしれないことを教えてもらったって感じだったんだよね。事故ってやつ」
「ぇえ…?」
「そ、だからまぁ事故は起きるよ♪って感じで仕方ないよねって終わり」
「……じゃあ姉ちゃん帰り方わかったってこと?」
「いや全然!!」
「…………」
与一は、じぃ、と私の顔を見て、それからふぅん、と興味ないふりして顔を背けた。
……んもーーーツンデレさんめっっっ
「だぁいじょうぶだって!すぐに帰ったりしないよぉぉぉぉぉ」
「わっっ!姉ちゃん痛い!」
「んもぉぉぉ与一ってばかわゆいんだから!!!」
* * *
「大将…」
「わかっておるわい。アレはかなり……危険じゃのう」
「はい。今は普通に市井で暮らしているようですし、早々に手を打ったほうが良いかと」
「此度の同盟…我らからすれば天からの授かりものだが、シズカからすると波乱の幕開けになるかもしれぬな」
「……対処しますか?」
「必要ない。だが…………」
「………。御意」
* * *
「え?」
「どうじゃ?悪い話ではないと思うがの」
「せっかくだからおいでよシズカちゃん」
ええええええええええ?!いやいやまてまてぃ!甲斐に行くって事はお館様と幸村と佐助の武田一家が見れるかもしれない!?つか幸佐幸!
『ふ…っ…だ、ん…なぁ……ッ!』
『佐助…今はそう呼ぶな…』
『―…ぁ…ゆ、きむ…ら…っあ!』
げへげへ!ウマウマ!!上田城の二人の愛の巣☆に潜入して心のアルバムにしっかり焼き付け永久保存させていただいていいんですか?!
翌朝。
与一と朝ごはんを食べてまったりしていたら、急に佐助が「大将やってる?」みたいなノリで「おはよー」と入ってきてひっくり返ったのは5分前、与一と顔を見合わせて外に出たらお館様がいて壁に後頭部を打ち付けたのは3分前。
いつものイカつい兜を外して、身軽な姿のお館様見慣れねぇ!!!!!かっけぇ!!!!!!
こ、こ、こんな朝っぱらからなんですか?!?私何かやらかしました?!??!?
と身構えたら、なぜか一緒に領地へ行かないかと誘いを受けました。そして冒頭に戻る。
「お主をここに呼んでしもうたのは佐助の過ち、その詫びをさせて欲しい。」
「上田に俺様の主人がいるんだよね、だからそこにどうかなーって」
「うううううううう上田?!??」
上、上田って言ったら奥さん!
真田源次郎幸村さんのお城じゃないですか!!!
そっそんな急に困りますーっっ!!
「そんなんだって一瞬たりとも逃したくないに決まってんじゃん!?…っあ!携帯の容量空いてたかな?!こんなのいくらあっても足りないけど!」
「?」
「へっへっへこちらの話ですウェッヘッヘ」
きょとんと首を傾げたお館様に笑顔を返していると、急に服の裾を軽く引っ張られた。
視線を落とすと与一の頭頂部が見える。私の着物の裾を掴んだままお館様をじっと見上げているようで、私の視線に気づいたお館様は与一にニッカリと特大の笑顔を向けた。
「おお、この子か」
「!!」
「そうだよシズカちゃん、よかったら与一くんも一緒にどう?」
お館様と佐助の思ってもない誘いに与一は少し身じろいだ。そして私を見上げてくる。
「一緒に行こうよ与一、せっかくだし」
「……いやおいらは…いかない」
首を左右に振って与一ははっきりと口にした。
「もしかしたら、みんな帰ってくるかもしれないしさ、おいらはここに残ってるよ」
無理してるのかと思って顔を覗き込んだけれど、与一はそれを見透かしていたみたいに私の目をまっすぐ見てきた。
私は与一の目をじっと、怯むことなく見つめてくる。びっくりするぐらいに強い目で、私は咄嗟に(あ、これ与一折れないやつだ)と思ってしまった。
だっ、だけど…だけどさ!
「そっ、そんな与一1人残して行くなんてそんな…」
12歳の子を1人放置なんてそんなん良くないよ?!安全としてもだし心身ともに!!それにおかね!!生活費とかだってあるじゃん?!
頭の中でぐるぐるとあれこれ考えていると、突然ブワッと強い風が頬を打った。びっくりして一瞬目を閉じると次の瞬間にはそこに影が一つ増える。
「…………」
「風魔」
「………、………」
「え、あっ、あー…」
相変わらずめっちゃカッコいい登場をしたコタは佐助を見て口をパクパクと動かした。
佐助はそれをみて当たり前のように理解したような声をあげて(うはーーーっ!!!コタ佐!!!!僕らはいつも以心伝心っっってか?!)それから、視線を与一に落とした。
「なんか、床下?にあるらしいんだけど知ってる?」
「床下………」
「アッ」
私と与一で顔を見合わせる。
私たちが思い出したのはあのナメック文字のような手紙だった。私が目を覚ましたあの日、《小判は床下に》とだけ書かれた紙が置いてあったんだった。
「確かに文があったけど…」
「………」
「使ってないのか?ってさ」
「いやー…この家が誰の家かもわからないし、なんか怒られたらヤダなって…畳の捲り方もわかんないし……」
「……」
ハァ、とコタはため息をつくと、与一を見て、私を見て、それから佐助を見た。
「…………、」
「面倒は北条で見る……ってなんで俺様が通訳させられてるわけ?!」
「……」
佐助のノリノリなノリツッコミを無視したコタは(めちゃキャワ)瞬きをする与一の頭をするりと撫でた。一瞬ピクリとした与一だったけど、コタの撫でる手つきが気持ちよかったのか、キュッと目を閉じた。
その姿を見てお館様は腕を組み大きく頷いた。
「どうやら話はまとまったようじゃの」
「与一……ほんとにいいの?」
「うん。せっかくだし、楽しんできてよ。おいらは大丈夫だからさ」
「……」
「風魔もまかせろ、ってさ」
「与一……」
任せて、と胸を張る与一。
そうして、相変わらずまっすぐな目でにっこりと笑って見せた。
私はコタをみて、それから佐助、お館様の顔を見て、もう一度与一を見る。与一の小さくまとめた髪が揺れている。しっかりとした笑顔、私は迷ったままだけどその笑顔にちょっと背中を押された。
強く口を引き結んで笑顔を浮かべているお館様に、私は言う。
「お館様ッ!逝き…げふん、行きます!私…上田に!」
「うむ!よくぞ決めた!!」
「お館様ァ!」
「シズカ!」
「お館様ァッ!!」
「シズカーッ!」
「ぅおやくぁたずぁぶぁぁぁああぁぎゃぁぁぁぁあああ」(デクレッシェンド)
「シズカーーっっ!」
さすがに一応女な私を気遣ってくれたのか殴り愛ではなく腕を掴んでぐりぐり回してくれた(なんかの技思い出した)
お館様貴方様はなんてダンディーでジェントルマンなんだ!でもちょっぴり殴り愛したかったぞ!
ひとしきりイチャイチャすると、お館様がふいに聞いてきた。
「…そういえばシズカ、馬に乗った事はあるか?」
「ないですね…」
そう答えるとお館様の指示で私の後ろに佐助が乗ることになってしまったみたいだ。(すっげぇイヤそうな顔された)私はそれをあえて無視して佐助に引っ張り上げてもらった。
「えへへーシクヨロさ・す・けっ」
「忍びが堂々と大将の横で馬に乗ってるなんて本当はありえないんだからね?」
「解ってるってばー!!デカルチャー!デカルチャー!!」
私の掛け声の意味を知ってか知らずか(知らないでいてもらいたい)お館様が馬に合図を出す。ヒヒヒン、と馬が鳴いて体が勝手に前に進む。くッと体が引かれて景色が流れる。
「あ、よ、与一!!」
私はあわてて振り返る。
「絶対おみやげと…みんな探してくるからね!!!」
「!! うん!!」
私は大きく頷いて与一に、これまた大きく手を振った。
何度も振り返って、私と与一は手を大きく振り続ける。そうして、道を曲がった所で完全に与一とコタは見えなくなった。
人の居ない、まだ少し薄暗い町を2頭の馬の蹄が鳴り響く。
「……」
なんだか少しだけ寂しい気持ちになって後ろを見ていると、不意に頭に大きなものが被さってきた。
「わ」
「ダイジョーブだって、ああみえて、風魔もかなり強いからさ。バッチリ与一くんのこと面倒見てくれるって」
「うううざずげ~~~~~っっ」
「う”っ」
「おかあさ”ん~~~~ズビビビッビ」
「げぇ!鼻水つけてないよね?!」
半分振り返った佐助が私の頭に手を置いて優しく言うもんだから思わず背中に顔面を突っ込んだら、悲鳴を上げる。
おいおいおいやめてくれよイケボめ!!!
「う”わーーーん!佐助ってばそうやっていつもその気にさせて思わせぶりな態度でみんなを惑わしてるんだぁ~!」
どうせっどうせ私は遊ばれてるだけで本命は幸村なの知ってるんだから!!!
『さすけっさすけ!見てみろ!』
『夕日、ですか……』
『うむっ!まるでさすけの様だろう?!』
『俺、に?』
『うむ!大きくて全て包んでしまうなど、まるでオカn
「妄想するのは勝手だけど暴れないでくんない?!」
「わっはっは!!良い良い!元気が一番じゃ!」
俺!この子安全に送れる自信ない!
そう悲鳴を上げた佐助に再びお館様がわっはっはと声を上げた。
「合流するまで落とすでないぞ!シズカは儂の大事な客人じゃからの!」
「わ、わかってますって!」
私はもう一度だけ振り返る。
みんなと買い物によく来ていた通りを抜けた馬は、すでに私が来たことないような市外に差し掛かろうとしている。やっぱり残った方が良かったかな、とちょっと心に罪悪感を残しつつ、これから向かう先で見れるかもしれないものにドキドキを隠せなかった。