私の神様(仮)
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「つ」
「戦だぁーーーーーっっ!」
私は両手を天(井)に突き出して某海賊船長の如く高々と宣言した。
すると案の定
「は?」
と声を漏らすちびちゃんズ。ふむ、今回はしょーちゃんだったか。
「実はね!私達愛用の八百屋さんと魚屋さんが同時に安売り始めるみたいなのさ!」
裏話だけれどこの八百屋と魚屋はライバル店で、しかも店主は兄弟で、嫁は双子っつー昼ドラ真っ青の泥沼夫婦なのだそうで。そしてお互い切磋琢磨してどちらがより売上を出したかで毎月にらみ合っているってもっぱらの噂だ。
そんな2店が同時に安売りするんだそうで、客にとっても安く手に入り、店にとっても決着がつく、って訳よ!
「というわけで、食品を稼ぐために私は戦にでます!」
「…だが姉上、」
「はい、しょーちゃん!」
手を挙げて発言したしょーちゃんに私はズビシィッと人差し指を突き付けた。
「生魚などこれから暑くなるのだ、腐ってしまうのでは?」
「そうなんです!確かに生魚は危険!でもね、塩漬にして干せば長持ちするのです!」
先人の生きる知恵です!ねっ隣のおばさんっ!
すると、ブーと口を尖らせてやよっちゃんが言った。
「えー…僕干し魚好きじゃない…」
「まァ確かに魚は生が美味いからな」
コクコク頷きながら腕を組んだ梵ちゃんがやよっちゃんに同意する。
「仕方ないじゃん!今回を逃したらこんなウマウマな企画もうこないよ!」
「…姉ちゃん質問」
「はい!与一君!」
「安売りって両方同時に始めるんでしょ?片方行ってたらもう片方行けないんじゃない?」
その発言に「おぉ、」と感嘆の声をあげたちびちゃんズ。なるほど、確かにそれは一理あるね!しかぁし!それは私も対策済みよ!!
「そこで!シズカちゃんは考えました!必勝の策を!」
「必勝の…?」
なんだそれ、と梵ちゃんは目をしばたかせて組んでいた腕を組み替えた。私はあくどい笑みを浮かべる。
「この5人を二つに分割してそれぞれ八百屋と魚屋に行ってもらいます!」
「…分割…?」
「個人的主観で梵ちゃん、しょーちゃん、与一の八百屋組と私、やよっちゃんの魚屋に分けました!」
梵ちゃんはこじゅの野菜教育があって野菜を見る目があるし(既に実証済み)
与一は梵ちゃん大好きでサラッと力あるし(ちびちゃんズじゃ1番力持ち)
しょーちゃんはそろうと暴走がちな二人を(実力行使で)落ち着けてくれるだろう!
「っつーわけで頼んます!何が欲しいかは紙に書いてもらったから☆」
「―――…書いてもらった?」
怪訝そうに首を傾げたのはしょーちゃん。
梵ちゃんも一緒になって眉間にシワを寄せてしょーちゃんと同じ方向に首を傾げている。
え、ちょ、萌えるしかないんですけどーッ!!
「げへげへ」
「気持ち悪いよ、姉ちゃん」
「ぎゃふん酷す!」
与一にツッコまれて凹んでいると、しょーちゃんが口を開いた。
「姉上は…字が書けないのか?」
「書けない所か読めませんが、何か」
「………」
そう言うとなにやら哀れんだ視線を送られてしまった。
アイタタタ!何この視線痛い!
「まぁ…人には色々事情があるから…な」
そして更に言葉を濁して視線を逸らした梵ちゃん。
え、何この空気!視線に引き続き痛い!HP削られてくんですけど!やどりぎのたねか!
「眠り+やどりぎのプレイ、萌え!」
「……姉ちゃんが字を書けないってのは置いといて」
「華麗にスルー!?」
「大安売りは半刻後に始まるみたいだから、準備しないと」
「うう…スルーされても気にしないから……」
すると、見兼ねたやよっちゃんがぽんぽん、背中を叩いてくれた。
ちっちゃい手がぺちぺち言っててカワユシス!!
「ありがとうやよっちゃん……!」
「シズカお姉ちゃん頑張ろうねッ!」
***
「ちょっと!どきなさいよ!!」
「邪魔!選んでんならさっさとどいて!」
「どいて!兄ちゃん、これ15匹ね!」
「誰よ足踏んだのはッ!」
むぅわぁぁあぁぁ
大安売りを始めてどのくらいだろう、店は文字通り混雑を極めていた。
妻ときりきり舞いしながら魚と代金を引き換えていく。詳細はわからないがかなりの売り上げになっていることは想像がつく。
―――…これなら兄さんにも負けないな。
内心ニヤリとしていると不意に着物の下を引っ張られた。
「ん?」
「……お兄ちゃん…」
見てみると薄い黄色の着物を着た女の子が立っていた。
銀色の髪が目を引く、か弱げな雰囲気を持った子だ。消え入りそうな声でおずおずと見上げてくるものだから、思わず腰を曲げて目線を合わせる。
「どうした?お母ちゃんとはぐれたのか?」
問いかけに、少女はフルフルと首を左右に振る。
それに合わせて白銀色の髪が揺れて、思わずそのキラキラと反射する髪に目を奪われた。
「あのね、あそこのお魚、5つ欲しいの」
女の子が指差した先にはサバがある。
はっはぁん…お使いって訳か…こんな女の戦場みたいな所によくきたなぁ……
「ん、ちょっと待ってろ」
子供が好きな自分はその雰囲気に顔が緩むのを感じた。こんな戦場にやってきてお使い、なんて可愛らしいじゃないか。
この子に限らず、子供ってなんでこんなに可愛らしいんだろうか。遊んでいる時の無邪気な笑顔とか…そういった所に自分は癒されていて……
だから妻との間にも早く子供が欲し―――
…じゃなくって!
思考をそこで振り切るように首を振って追い払うと手早くサバを布袋に入れた。それを女の子に手渡してやると彼女は数回目をしばたかせてにっこり笑う。
「…、ありがと、お兄ちゃんっ!」
「ッ!」
か、かわいい……!
花が咲いたような笑みに、気付けばもう一匹サバと大きめの魚数匹いれてあげていた。
首を傾げる女の子。
「これ……」
「いいんだ、これからもごひいきよろしく頼むよ」
そういうと女の子は少し思考に沈んでから「ありがとう、」とお金を手渡して、女の戦場へ隙間を縫いながら帰っていく。
「………」
可愛い子だったなぁ…。自分もいずれあんな子を抱きしめられると良いのだけれど………。
そんな事をぼんやり考えながら女の子が消えていった方向をぼんやり眺めていたら「なにぼんやりしてんの!!」と妻に怒られた。
***
「シズカお姉ちゃん!」
「やよっちゃん!」
女の醜さ丸出しな魚屋から少し離れた所に居たらやよっちゃんが布袋片手にパタパタ走ってくる姿が目に映った。
どうやら無事に買えたらしい。
「やよっちゃん大丈夫だった?!」
「うんっ!あのね魚屋のお兄ちゃんが、お魚いっぱいくれたんだよ!」
ででん、と開かれた布袋の中には10匹を越える魚が横たわっている。頼んだのは5匹だったけど、もしかしてオマケしてくれた、ってやつだろうか?!
「えへへ、凄いでしょ!」
…やよっちゃん、年上キラーなタイプか!?
ハナマル笑顔でピースする姿が可愛いぞやよっちゃん!!
でも10匹は流石に白く濁った目がめっちゃ並んでてちょっとゾゾっとしちゃったよやよっちゃん!!!!
「うんうんっ!流石やよっちゃん!ありがとう!凄い助かったよ!!」
ぎゅーっと抱き着けば、やよっちゃんは「シズカお姉ちゃんっ」て抱き返してくれた。
ふわふわした髪の毛からはお日様の香りがして某柔軟剤のCMを思いだした。
「あ゛~…幸せ……」
「シズカお姉ちゃん、僕も本当に幸せだよっ」
男の子にしては少し狭い肩から顔を上げた。
すると、しょーちゃんはにぱ~☆とでも言わん限りの笑顔を浮かべて言う。
「僕、シズカお姉ちゃんが大好きだから!」
「やよっちゃん……」
じーん…と涙腺が開いてくるのがわかる。
おぉおお……この子、本当にいい子…!
「あ、ちゃんと梵ちゃんもよーちゃんも松ちゃんも大好きだよっ」
慌ててつけ足したやよっちゃんにニヤリ、と笑み(にやけ、とも言う)がもれた。
お姉ちゃんこんないい子を育てる事が出来て嬉しいよ……!
そんな意味も込めてもう一度、ギュッと抱き着いておく。
「やよっちゃん私も大好きだからね!」
「テメェ………」
「うん?」
なんだか突然聞いた事あるような無いような野太い声がして、首を傾げた。
やよっちゃんを離して見れば、相変わらずカワユスなやよっちゃんが居る。
口をぱくぱくさせてるやよっちゃんも萌えっ!
「無視してんじゃねぇぞ…!」
「――ぁ、……シズカ…お、姉ちゃん……っ!」
再度聞こえた声はどうやら頭上から降って来たらしい。
なんとなく嫌な予感に顔を引き攣らせながら声のした方向を見上げる。
「この間は世話になったなァ…!」
「……あ」
まず茶色が目について、茶色が目についた。
そして茶色が目について、最後に茶色が目を焼いた。
「……………」
「また『誰?』なんて言い出すんじゃねぇだろうな…?」
いや、流石に三回目ともなると覚えてますよ。
斬鉄剣で梵ちゃんにやられ、その後マウンテン藤五郎にのれんでやられたポーチのおっちゃんですよね。わかります。
「何かご用ですか…」
もう定番のパターンになりかけてるから定番のセリフを言ってあげたらニヤリと意地汚い笑みを浮かべたオッサン。
「分かってんだろ…!金だよ、金…
…ってオイ!」
オッサンには悪いが、逃げるが勝ちという素晴らしい教えに従おう。
グッバイ!オッサン!!
私はやよっちゃんの白くて細い腕を右手に引いて走り出した。
すれ違う人たちが悲鳴を上げながら道を開けてくれる。死ぬほど目立ってるし、だ、だれかなんかあのオッサンなんとかしてくれないかな?!
そんなことを思いながら私はとにかく走る、走る、走る。
与一がいたら道を教えてもらえたんだろうけど、あいにく私もやよっちゃんもまだ知らない道だらけだ。
私達は走り走って気付けば訳のわかんない所に出ていた。
典型的フラグなのに本当にどんどん入り組んできたんだよ!!
「やよっ、ちゃん、大丈夫……っ?!」
「シズカお、姉ちゃ…ん……!人が……!」
切れる息で会話が途切れるが、言いたい事はわかるので、私は後ろを振り返った。
そこにはあのオッサンがニヤリ笑みを浮かべたまま追いかけてくる姿が見え…………
「増えてる?!」
茶色いオッサンだけでなく緑の着物を着たオッサンだとか、めちゃくちゃ人相が悪いオッチャンだとか…とりあえず盗賊のバリエーションに富んだ人達がそれぞれ武器を手に追いかけてくるではないか!
「やばい!やばい人みっちり!みんなやよっちゃんを輪姦するつもり!?」
そ、それだけは阻止せねば!と意気込むとほぼ同時にパン、と乾いた音とぐちゃ、と湿った音がして右腕が一気に重くなった。
「ッあ!!」
「やよっちゃんッ!!」
振り返って見れば、やよっちゃんが地面に崩れていて、着物の裾が真っ赤に染まっている。
「やよっちゃんどうしたの?!大丈夫ッ!?」
「だい、じょうぶ…それより…!」
走ってくるオッサン達を見れば一人、手に不釣り合いなぐらいでかい銃の先端から灰色の煙を昇らせて、笑っている人物が見えた。
あいつが……!
私達に追い付くと、オッサン達は気味悪く口端を持ち上げた。
やよっちゃんが小さく言う。
「シズカお姉ちゃん…っ、にげ、て…!」
「何言ってんの?!やよっちゃん置いてくわけないじゃん!」
と、急に地面に影が落ちて私はハッと息を飲んだ。
「ククク…今までよくもおちょくってくれたな餓鬼……!」
見上げればオッサンが太陽の光を遮り立っていて、オッサン達が私達を取り囲んでいる。
「ッ」
「お姉ちゃ……」
とにかく何とかしなくちゃ、と思って私はとにかくやよっちゃんを背中に庇った。
与一みたいに技術があれば、しょーちゃんみたいに知識があればやよっちゃんを止血することが出来たかもしれないけど、私にはそれがない。梵ちゃんみたいに強ければ、このオッサンたちをどうにかすることだってできたかもしれない。
何も出来ない自分が歯痒く感じる。
「なんで私達ばっかり狙うのさ!」
「テメェ等にバカにされっぱなしじゃ俺の気が済まねぇんだよ!」
あぁ、そういう事!って完全な八つ当たりではないですか!
「今日はでもあの生意気なクソガキも、男も居ないみたいじゃねぇか?」
絶対絶命だなぁとゲラゲラ笑う男達。
私は眉間に皺を寄せて軽く舌打ちをする。
くだらない復讐に萌え…いや燃えてるヒマがあるならさっさと就職しろよ、とかなんとか脳内で文句を言ってみるが実際にツッコミをいれたらやよっちゃんが危ない気がしたのでお口チャック!
「なんだ?怖くて声も出ねぇか?そのガキと金置いてきゃ助かるかもしれねぇぜ!」
「………は?」
お金はともかくやよっちゃんも?
本当にやよっちゃんに手を出そうってつもり?!
「ふざけんなーーっ!」
「あ?」
「テメェ等なんかに合わせてるヒマねぇんだよ!バーローッ!!」
睨み付けるように怒鳴ってやればその男達は一瞬怯んで、それから目を吊り上げた。
「状況が分かってねえようだなガキ…!」
「………」
「ならそのままガキ共々死んじまいなァアアッ!」
ぎらつく刃が下りてくる。
ダメ、このままやられてたまるか!
燃えろ僕の何か!!
私はとっさに懐に潜り込んで男のみぞおちめがけて頭突きしてやった。
某サッカー選手ジ●ンみたいに。そして全力で。
「グゥッ?!!」
部位破壊されたイ●ンクックみたいな声をあげてオッサンは数歩後ろへ後退した、じ、上手に焼けました~♪
「ヘイ!こんがり肉G一丁ッ!!」
「ガキィ……!」
「そこまでだ!!」
何やらナイスタイミングで声がかかった。
オッサンと人込みの向こうをみれば、なんか背中に旗を背負ったいかにも役人なオヂサマ達が立っている。
あれ、あの旗印どっかでみたような―――………
「吾左衛門!お前の悪事しかと見届けた!おとなしくしろ!」
「く、そ……ッ!」
次々と仲間が捕まっていく様子に観念したのかオッサン(吾左衛門言うんだ、このオッサン)は血の付いた太刀を地面に放り投げた。
そしていかにも役人なオヂサマ達に連れていかれていく。
リアル捕縛を見て呆然としていると私達に気付いたのか、一人若い兄ちゃんがこちらに慌てて走り寄って来た。
「大丈夫でしたか!?」
「っ!そうだやよっちゃんの足……!!」
早く止血しないと、と勢いよく振り返るとやよっちゃんが顔を青ざめさせてカタカタと何かを指さしている。何?
「お、姉ちゃ…背中ぁ…ッ!!」
「え?」
言われて背中を触ってみれば何やらじっとり濡れている。
なんだ、そんなに汗かいててビビったってか!
ごめんね私汗っかきなんだわ!
「ち、ちが…っ!」
「やよっちゃん?どうし…………た……の………」
アハハ、と笑いながらふと手を見てみた。
なんか、赤かった。
「……?」
もう一度触る、濡れていた。
……ここまで来てやっと頭も状況を理解したらしく、ドバァッと嫌な汗をかいて、全身をジクジクとした痛みが駆け抜ける。
「いっ!いだっ!痛い痛い痛い!!あだだだだぁぁぁぁッ!!」
「貴女も重傷じやないですか!!」
「全然気付かなかった!いたたたたたッ!!」
自覚した瞬間から痛みって来るらしいけど、なんて今の私に当て嵌まるのかしらね!!
焼けるような痛みが肩甲骨から少し下辺りまでがジクジクとなんとも言い難い!てか死ぬ!!
「シズカお姉ちゃん…ッ!」
「やよっちゃ、」
「ごめん、ごめんなさい…!僕、男の子なの、に…!シズカお姉ちゃん守れなく、って……!」
宝石みたいな目に涙が溜まっているにも関わらず、やよっちゃんは私に縋って謝る。
私は苦笑して(汗が染みて顔引き攣った)やよっちゃんの頭を撫でた。
「やよっちゃんは何も悪くなーい」
「でも、……!」
「やよっちゃんは頑張って痛みに耐えたし、私を守るために、自分を置いて逃げるように言ってくれた。それだけで十分だよ、」
「っ……」
唇をぎゅっと噛み締めてやよっちゃんはついに涙を溢れさせた。
ワンワン泣くやよっちゃんをあやしながら、私もやよっちゃんも措置を受けるのだった。
「ね、姉ちゃん?!」
「どうしたんだよこの傷!!弥三郎まで!」
「あは、おばさんに負けて大ダメージ受けただけだよー」
「……姉上」
「うん?」
「む……無理をするな…」
「しょーちゃん……」(ジーン