私の神様(仮)
名前
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「た」
「――……『貴様!向こうへ行かぬか!』
『しかたないだろう、こっちだって沢山いるんだ。・・・って、あぁ、君は独りだったね。』
『ッ焼け焦げよ!!』
『ふふ…そうやってすぐ熱くなる…』
なんと、まさかの焼きナスフラグ?!魅惑の半ナリじゃん!!」
「何言ってるの」
「いやほらだってさ!!!」
みてくれよこのたわわわわわわに実った胡瓜とナスを!!
朝の陽ざしを受けて、きらきらと輝いているのは与一達が手塩にかけて育てたお野菜たち!!
特にめちゃくちゃナスが大量なんだぁ!
そんなわけで勝手に名付けてたナス(はんべ)が胡瓜(ナリちゃん)のエリアに侵食してたから妄想してたら与一から冷たい目を向けられた。ひぃん!今日も相変わらずツッコミが冴えてるね!
「シズカ!カゴ持ってきたぜ!」
「僕ね、僕ね!トマトやる!いっぱいお水あげてたんだ!」
「んじゃあ俺は胡瓜だ!漬け物にするんだ!」
「梵ちゃんの作る漬け物おいしそ~~」
「へへん」
「梵、ナスは漬けられるの?」
「ああ、ナスも美味い」
「じゃあ私としょーちゃんでニンジン収穫しようか!」
「む……」
しょーちゃんのしかめっ面に話しかけたら、しょーちゃんは益々しかめっ面になってしまった。ん?どうしたんだろう。
どったのしょーちゃん、と聞けば、しょーちゃんは首を振って「なんでもない!」と声をあげた。その後ろでニヤニヤとしている梵ちゃんが見えてさらに私は首を180°くらい曲げる。
「……まあいいや!ほらほら!しょーちゃん!記念すべき最初の一本を!さあ!この葉っぱのとこを掴んで、ひとおもいに!」
「くっ…」
しょーちゃんはめちゃくちゃ険しい顔をしたまま、人参をスッと引き抜いた。プチプチとヒゲ根っこが切れる音がして、それから濃い土の匂いが鼻をくすぐる。
土の中から出て来たオレンジ色は、現代のものに比べるとやや小ぶりではあるけれど、でもとても綺麗な色をしていた。
「わ!すごい本当にできてる!」
「当たり前であろう」
「いやでもほらさ、種からここまで大きくなって食べれるようになって……って考えると凄いことじゃん!」
「……」
「ほらほら、まだあるよ!」
「食べれる分だけにしとけよ」
「あっシズカお姉ちゃん今日のご飯なに?」
今日のご飯は野菜たっぷりお味噌汁と炊き込みご飯にしようかなぁ、なんて考えながら梵ちゃんを見遣る。
「梵ちゃん、ゴボウってもう食べれる?」
「ゴボウは……まだだな、もう少しかかる」
「おっけー。じゃあ今日はお魚も焼いちゃおうか!」
「おさかな!」
やったぁ!とやよっちゃんが両手をあげて飛び跳ねる。
着物の裾がふわっとゆれてやよっちゃんの白い二の腕がチラリと見えた。きゃーーっ!破廉恥!!かわいい!
「今日はひとまず食べる分だけとって、残りは明日以降だな」
「ん?そーなの?」
「採ればあとは傷むだけになるから、食べる分だけ取って、旬を逃す前に保存するんだぜ」
「なるほどねー、じゃあにんじんはあと2、3本とろうか」
「……」
顔を見ながらそう言うと、しょーちゃんは渋い顔をしながら頷いた。
うむむ、いくらしょーちゃんがプリチーキューティ美少年だとはいえ後の天下の知将に土いじりはノーセンキュだったかな?
じぃっと顔を見たけど、フイ、と逸らされてしまったので私はちょびっと肩をすくめて気にしないことにするのだった。
「ふはー!美味しかった〜!」
「ごちそうさまでした」
今日の夕飯は、家庭菜園にんじんと茄子大根、それから端数のキジ肉のなんちゃって筑前煮!雰囲気で作ってみた創作料理だけど案外美味しくできたのではないでしょうか!
「松、にんじんくらい食べなよ」
「む……」
二度と作れる気がしないけれどレシピをなんとなく思い返しているとそんな声がしてきた。そちらを見ると渋い顔をしたままのしょーちゃんと、呆れた顔の与一、それからぽつんと取り残された人参たち。
他のご飯は品よくきれいに食べ終えてるのに、人参だけ…これは、もしてかして。
「…しょーちゃんもしかして、人参…苦手?」
「っ!!」
私の発言にしょーちゃんはバッ!と顔を上げたのちブンブンと左右に首を振った。
そんな私がやったら歌舞伎の演目かな?みたいな動きをしているのにしょーちゃんのさらさらヘアは乱れもしない。
「…っ、あ、あのような…品のない味が嫌いなだけだ!」
「ぐふっ」
き、きゃわ!!!!!!
苦手なものがあるのが恥ずかしいのかほほを赤く染めたしょーちゃんはムスっとした表情のまま目をそらす。
あまりのかわいさに私が悶え苦しんでいると、それを聞いたやよっちゃんが身を乗り出した。
「ダメだよ松ちゃん!お野菜残したら結婚に失敗しちゃうんだよ!!」
「…なんだそれは」
「シズカお姉ちゃんがそう言ってたよ!ねっ!」
だっていつきちゃんのところの農民さんがそう言ってたんだもんっ
とはいえしょーちゃんはあのOKURA様なんだからどうあがいても婚活失敗なんてことはないと思うけどね!
「兎にも角にも、しょーちゃん食べてみなって!大丈夫人参の味しないからさ!」
「……」
「野菜食べないと大きくなれないぞ」
「?!」
ぼそっと梵ちゃんが言ったセリフにしょーちゃんの目が見開かれた。
梵ちゃんもよく言われた言葉なのか「それは…誠か……?」と声を震わせるしょーちゃんに「だから俺は頑張って食べるようにした!」と胸を張っている。
ドヤ顔の梵ちゃんも最高にきゅ~~とです!
もちろん身長を気にしてるっぽいしょーちゃんもきゃわだよ☆
与一はちらりと梵ちゃんを見て「ああ」と声を上げる。
「おいらもそう教わったよ、好き嫌いすると背が伸びないって」
「!!」
しょーちゃんは与一の言葉を聞くと、何かを決意したような表情になって、それから勢いよく人参を口に入れた。
ぎゅっと目を閉じたままひとしきり噛むと、飲み込み、そしてそれを一気に味噌汁で流し込んだ。
おお、なんと潔い食べっぷり!
その潔さにやよっちゃんは拍手をしている。うんいや気持ちわかる。
若干涙目になっているしょーちゃんはふう、と一息つくと「造作もない」とやよっちゃんを見ている。
「しょーちゃんすごーい!」
…やよっちゃん、たしかにちびちゃんズの中だったら一番大きいもんね…。
多分ひそかな目標なんだろうな、とやよっちゃん…改め、やよっちゃんの頭のてっぺんをみているしょーちゃんを見ながら私はそんなことを思った。
実は人参はまだまだあるし明日以降も続くんだけど、私は余計なことを言わないようにお口をチャックするのだった。