私の神様(仮)
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「よ」
「ただいまー!」
「シズカお姉ちゃんおかえりなさいっ」
「ずいぶん遅かったな」
「姉ちゃん迷子になってたんだって」
「……」
「ひーん!梵ちゃんの目が冷たい!!」
「…………」
「そしてしょーちゃんの顔にデカデカと『うるさい奴だな』って書いてある!」
「うるさい」
「口に出された!」
そんなこんなで与一に連れられて無事に帰宅した私は、とりあえず買ったばかりの布団の埃を叩いて落とす。
そして、夕飯の準備に取り掛かろうとしてふと話してなかったなと思いしょーちゃんを見遣った。
「あ、そうだしょーちゃん」
「……なんだ」
「うち、家事は全部当番制なんだけど」
「その話ならもう聞いている。」
「俺が話しといた!」
「さすが梵ちゃん!!」
手際のいい梵ちゃんを褒めたら梵ちゃんはへへん、と胸を張った。ドヤ顔の梵ちゃんも可愛いよ!
しょーちゃんはそんな梵ちゃんを横目で見て「ぬかりない」と肩をすくめた。さすが未来の知将!飲み込みも受け入れも適応も全てが早い!
「じゃあ今日は与一と一緒にご飯準備だね」
「うん、松は…今日は梵と一緒に湯浴みかな」
与一の言葉に梵ちゃんは「よっしゃ、行こうぜ松寿丸!」と腕を引いていった。それにしてもしょーちゃん信じられないくらい落ち着いてるけど幾つくらいなんだろう?
「与一、しょーちゃんの年齢って聞いた?」
「9って言ってたよ」
「じゃあ梵ちゃんとお揃いだ。与一からみたら……弟が増えたんだねぇ」
「このまま行ったらこの家に入りきらなくなっちゃうよ」
「確かに……」
本当に下手したらこのまま幸村やら半兵衛やら慶次やらトリップご定番武将たちが軒並み私の上に落ちてくる事になってしまう。……流石にこれ以上落ちてこられたら額とかただでさえ低い鼻がさらに低くなってしまう……!!
「秀吉さんとか受け止められる気がしない……」
「?」
「ナンデモナイヨー」
与一とそんな雑談をしながら夕ご飯の準備を進める。
今日は茄子が安かったから茄子の味噌炒めと、芋の味噌汁だ。手慣れた様子で与一が芋の皮を剥いていく。他のちびちゃんズ と比べて日頃から手伝いをしているからか、包丁を扱う与一の手元は安心できる手つきで、正直私より上手いと思うレベルだ。
もちろん先々日に華麗な刀裁きを見せた梵ちゃんですら包丁の持ち方から怪しかったものだから、与一が包丁とかの危険物扱い方を仕込んでいる(私も教えてもらった、洗濯とかね…板だからさ……)
「与一も偉いねぇ」
「……えっ、何急に」
「だってお家のこと一通りできるし、物知りだし。しっかりしてるなぁって思ってさ。私が与一の年齢の時なんてもっとフリーダム女児だったよ。キラキラのシールだの香り付きの文具だの踊ってみただの……」
親の目を盗んで親の隠してたチョコ食べたり、学校サボったり…本当に好き放題だったことを思い出し、そしてそのおかげで今もフリーダム女児女子腐女子として生きている。ありがとうママン、パパン。
そしてここでの生活の仕方を教えてくれてる与一にマジで感謝っ!
与一は照れくさそうな笑みを浮かべると、さっさと剥き終えたお芋をお湯に入れて「弥三郎の様子見てくる!」と庭の方へかけていった。
ふふふ…照れてる与一もぐぅかわいいね…げへげへ
「シズカ、与一、風呂準備できた……って」
そんなことを言いながらお風呂場から着物の裾を濡らした梵ちゃんと涼しい顔をしたしょーちゃんが戻ってきた。
「梵裾濡れてるよ」
「ん?大丈夫だ、そんなに濡れてないから!それより与一は?」
「与一は畑に行ったよ」
「ok!」
梵ちゃんはそれを聞くと同時に弾丸のような速さで飛び出して行ってしまった。だだだだ、という足音が庭に回り込んでいく。今日は一番風呂が与一と梵ちゃんの日なのだ。だから与一を呼びに行ったんだろうなと見当を付けて、私はその様子にまたニマニマして…それから物静かなしょーちゃんと目が合った。
「…まさか湯あみも当番制とは言うまいな」
「ん?もちろんそうだよ」
「……」
だってお湯冷めちゃうじゃん?!じゃかじゃか入ってかないと!
絶句するしょーちゃん。もとのお家だと一人で入ってたのかな。やーまあでもこの家に来たからには郷に入ってはなんとやらですよ!
……べっべつにしょーちゃんの白いお肌を拝みたいとかそういうやましい気持ちは一切ないんだからねっ!!
バタバタとまた走る音が聞こえてきて、与一を迎えに行った梵ちゃんが飛び込んできた。「俺の勝ちだ!!」「ずるいよ梵!」「二人とも足早いよぉ」声のした順に梵ちゃんたちが飛び込んできて、そのままお互いの肩を引っ張り合う。
きゃっきゃと遊ぶ3人に私は「与一もあとは任せて入ってきちゃっていいよ」と声を掛けた。駆けていく与一たちをしょーちゃんが渋い顔で見ていたのには気づかないふりをした。
「しょーちゃーん、いいよー」
「…………」
「……しょーちゃんってばぁー何恥ずかしがってんのさー。……襲うよ~?」
「………ッ!」
前回の梵ちゃんの件で学んだけど、なんか年頃ボーイ的にはやっぱり一緒に入るってなんか気になっちゃうらしい(やよっちゃんとは楽しく入れた)
多分しょーちゃんもそんな所だろうなーとおもいつつもお湯が冷めちゃうのがもったいないので、
襲う発言をしたらしょーちゃんは少し間を空けて渋々入ってきた。
はぁぁぁ!色白い!ちょ、姫若子2号!!
私の目を見ないように露骨に頭を下げたしょーちゃんはそのまま私に背を向けてお湯に入ってきた。ちゃぽん、と水が音を立てるのが聞こえるほど静かな所作に私は感心しながら、いやでもさぁ……と自分の体を見下ろす。
「なぁにをそんなに恥ずかしがるのかなぁ。私の体なんてみたところで何も減らんのに」
減るとしてもSAN値とかMPとかそんなモンばかりだと思うんだけどなぁ、などと思考をしていたら突然顔にお湯がかけられる。
「まそっッップ?!お湯が口に入った!!」
「お前が変なことを言うからだろう!」
「別に変じゃないよ!本当に減るモンないよ。恥ずかしくもないし」
「…………」
私の言葉にしょーちゃんはチラリとこちらをみるとそのまま静々と私に向き直って、お湯に肩まで浸かった。ふぅ、とため息を吐く姿を眺めて私はふと浮かんだ疑問を口にした。
「しょーちゃん、この家はどう?」
「……騒がしい。それに疲れる」
「んふふ、まぁそうだね」
いつも大抵どこからか走り回る音が聞こえるし、話す声も聞こえる。未来のオクラ様にはちょっと騒がしいと感じるかもしれない。
「でもさ、そんなに悪くないでしょ」
「…………ああ」
間を開けて返ってきた返事が案外素直で、私は少し驚いた。流石に未来のオクラ様といえど、まだ9歳。そこまでまだ擦れてもいないしツンツンでもないし、なんならまだ日輪の使徒でもないかもしれない(知将は片鱗があるけど)
「ね、ね、よかったらしょーちゃんのこと教えてよ」
「なぜわざわざ?」
「だって一緒に暮らすんだもん、好き嫌いくらいは知っておきたいじゃん」
「……」
「あっ、私?!私はシズカで、夢小説もBLGLその他諸々なんでもばっちこい、狂ったオタクを眺めるのがすごい好き!趣味はネットサーフィン、嫌いなものは痛そうなのと苦しそうなの!!ここには色々あって住んでるんだけど与一も梵ちゃんもやよっちゃんもなんかみんな色々あってここにいるよ!!」
「シズカの言っていることが何一つわからぬのだが」
「心で感じるんだよベイビー」
「……」
「ひん!!そんな目で見ないで!!」
しょーちゃん、結構切れ目だから半眼になられるとめちゃくちゃ圧があるんだよぉ!!
ンギギ、と首を引っ込めた私を見て、しょーちゃんは視線を落とす。そうして少しの間水面を眺めて、それからポツリと、口を開いた。
「シズカは……母上に、似ている」
「えっ!?」
「黙っていればだ!」
勘違いするなよと言わんばかりに私をにらんで語気を強くしたしょーちゃんに私の「しょーちゃんのお母様と似てるって何?!」という言葉は呑み込まれてしまった。
ンギギ、と引っ込んでいた首がさらに引っ込んで、もう気持ちは亀だ。
飛び出しそうになった言葉を口の中でもごもごしている私を見てしょーちゃんはため息をつくと「本当に黙って背を向けて動かなければ似ているのだが」ととんでもない一言を吐き出した。それもうなんか雰囲気すらも似てるか怪しくない?!
「我の母上はとても美しく、優しく……そしてとても賢い人だった。我の自慢の母上だった。」
「……だった、って」
「もう居らぬ。随分と前に死に別れた」
「…………」
「だが、別に寂しくなどない。父上はいるし、離れてはいるが兄上もいる。……口煩い義母もいる。」
「そうなんだ……」
「ああ」
「大変だったね」
「…こんなの、よくあることだ」
「そうかもしんないけど、……それでもしょーちゃんが大変だったのは間違いないでしょ」
「……………」
ちゃぽ、と湯が揺れてしょーちゃんの視線がこちらを向いた。歳の割に大人びた表情を浮かべたしょーちゃんは眉を寄せて私を眺めている。
どんな時代だって、大事な人を亡くすというのは大変なことで、そこから立ち直るのだって、平気なふりをするのだって頑張らなきゃいけないことだ。
ましてやしょーちゃんは9歳で、私の肌感覚で言ったらまだ子供も子供。この時代じゃよくあることなのかもしれないけど、だからってその大変さが軽くなるわけでも、楽になるわけでもない、と思う。
少なくとも私は幾つになったって家族が死んじゃったら悲しいなと思うし、辛いし立ち直るのに物凄く時間がかかると思うから。
しょーちゃんは「……ぁ」と小さく声を漏らすと、急いで首を左右に振る。私の目を見ないようにしてるのか顔をまた下げてしまった。
うーん。しょーちゃん、しっかりしてるし未来のオクラ様とはいえもう少し素直になればいいのにな……って思うけれど、義母さんとお父さんと暮らしてるって言ってたし…なんか頼り難いのかもしれない。
そうだよなあ、私もお父さんが新しい奥さんだっていって知らん人連れてきたら絶対めちゃくちゃ気まずいもんな…そんな人に学校の相談とか絶対できないもん…
「ね、しょーちゃん。こうやって一緒にお風呂入ってるのも何かの縁だしさ、家族にな ら な い か ?」
「んな……何を言っている?」
「いやほらだってさ、もう一緒に家のことやってるわけだし、それってもう家族みたいなもんじゃん?」
私と与一だってまだ出会ってそんなに経ってないけれど、なんかいい感じにやれてるとおもうし梵ちゃんとやよっちゃんとだってだいぶ打ち解けられてると思う!
だからしょーちゃんも一緒に楽しいこといっぱいできたらいいなあ、なんて思うわけですよ!
しょーちゃんは私を怪訝そうに見たのち、何か口を開こうとして言葉を飲み込んだ。気まずそうな表情を浮かべているしょーちゃんは居心地悪そうに湯面を手で払う。
「ほら私年上だし!お姉ちゃんって呼んでもいいよ☆」
「……」
「あっいやまあ無理強いはしないけどさ!」
「……あ」
「?」
「…あね、うえ……」
「!!え、えへへ…なあにしょーちゃん」
「よっ、呼べというから呼んだだけだ!!」
「ぶへっ!!」
お、お湯が鼻に!!
突然のお湯攻撃にもだえ苦しむ私を鼻で笑うと、しょーちゃんはそそくさと湯船から出てしまう。あっもうちょい一緒に入ってくれてもいいじゃん!!早湯だね?!!
涙目で小さな背中を見ると、しょーちゃんは顔を真っ赤にしてこちらを振り返り、そしてフン!と未来を思わせる姿で鼻を鳴らすのであった。
「そういえば、畑に植えた野菜、そろそろ収穫できそうだよ」
「お、いよいよなんだね!私と与一の愛の結晶……」
「言い方気持ち悪っ」
「ひど」
「おいシズカ、与一だけじゃねぇぞ」
「そうだよ、僕も、梵ちゃんもお世話したもん!」
「うんうんそうだよねそうだよね、梵ちゃんもやよっちゃんも偉いぞ~~!!」
「きゃ~っ!」
「姉上、我は」
「うんうんうん!しょーちゃんも偉い偉い偉いだねえええええ明日一緒に収穫するの手伝ってねえぇぇえ」
「あっ?!」
「姉上ぇ?!」
「フン」