私の神様(仮)
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「る」
「うう」
「…なんか最近姉ちゃん変じゃない?」
「悩み事かなぁ…」
「シズカが?」
「まさかぁ」
「でも、シズカお姉ちゃんの眉が凄い寄ってるよ」
「「……うーん」」
そんな滅茶苦茶失礼な会話がなされているとは1ミリもしらない私は、苦しんでいた。
なぜかというと、
(どうして!私のmyオクラカラースマホちゃんは!インターネットにつながってないの!?オタク成分が!供給が足りてない!!!助けて!!!!)
ちびちゃんたちに萌えても発散する先がなくて私は死にそうなくらい悶え苦しんでいた。
だって、だって!!全然マジで!!誰も共感してくれる人がいないんだよ?!この時代に!?
「あ、いや、この時代だからこそなんだけど…」
ここはインターネットのイの字もない戦国BASARAの時代だ。そりゃそうなんだけど!
「ぐぐぐぐぐ……苦しい…」
暴れちまうよ私の中の”モンスター”が…!!右手がうずく…!!
そんな今にもあふれ出してしまいそうな萌えを何とか抑え込んでいると、与一がやってきた。
「姉ちゃん、そろそろ薬草がきれちゃいそうだから一緒に来てほしいんだ」
「お?いいよ、せっかくならみんなで行こうか」
「うん!」
この家のあらゆるお薬は与一が煎じてくれているわけなのだけど(やだこの子天才…?!)梵ちゃんの目の薬を筆頭に切り傷擦り傷やけどその他諸々をお世話になってしまっていて、そりゃそろそろなくなるよな~~と考える。
よっし!じゃあ行こう!と立ち上がると与一は目を点にした後、ちょっと首を傾げた。
「何もっていったらいいの?」
「鎌と籠があれば大丈夫、あ、あと手ぬぐい!」
「おっけー!梵ちゃーん、やよっちゃーん!与一のお手伝い一緒に行こ~!」
本日の畑当番の二人を呼ぶと「「はーい!」」と元気な声が返ってきた。
よしよし、梵ちゃんも元気なお返事ができて偉い!戻ってきてちゃんと手を洗ったのを確認して私は梵ちゃんとやよっちゃんと与一の頭を撫でた。
与一の案内でやってきたのは町からちょいと離れた山の中。
や、山登りなんて小学校以来とかだけど?!こんなにキツイっけ…?!
ぜーはー!と息を切らしている私を振り返って与一が「あとちょっと!」と声を張った。
「シズカお姉ちゃんがんばって!」
「おせーぞシズカ!」
「くっ……この間といい…!体力の差が…!!おかしい私まだぴちぴちのギャルなんだけど…?!」
これが無限体力の子供powerってこと…?!
笑う膝を叱咤して顔を上げると梵ちゃんが呆れたような、でもちょっと楽しんでいるような顔を浮かべている。ちくしょー!笑うな!!
「筋トレ…っしようかな…!?」
「シズカ鍛えるのか?付き合うぞ」
「付き……付きあう…?!梵ちゃんと…?!!それは…ちょっ、ちょっと犯罪…!??」
「……なんかお前が想像しているのと違う気がする」
「シズカお姉ちゃん右足、左足、…あっそこ根っこ大きいのあるから気を付けてね」
「ううやよっちゃんも梵ちゃんも……なんか今日特段優しくない…?」
やよっちゃんはいつも優しいんだけどさ、と切れる息でつぶやくと前を行く小さな足がぴたりと止まった。ん?と思って顔を上げると視線が泳ぎまくっているやよっちゃんがいる。
やよっちゃんは「あ、ええと、その」と言いながらしどろもどろに何かを言おうとして最終的に梵ちゃんに助けを求めるように視線を投げた。
梵ちゃんはそんなやよっちゃんの視線に気づくと逡巡し「あー」と声を漏らす。
「俺たちはいつもこんなんだろ」
「そ、…そうかな……?」
「姉ちゃーん!ここ!あと少し頑張って!」
与一が手を振っている。ゴールあそこだと聞き、だいぶ底が見えてきた体力を振り絞って足を前に出す。おおおおふぁいとーーっ!いっぱーーーつ!!!
ゼーハー、と喉を鳴らしながらちびちゃん達の応援を受けて、なんとか目的地に辿り着くと、与一が竹筒を出してくれた。
「おつかれさま」
「ぜひゅーっ、みず、おいしい………ッ」
なんとなく水が普段の300倍美味しくかんじるね…!どっと身体に汗がまとわりついていて、もうすでにめちゃくちゃお風呂に入りたい。心配そうな顔をしたやよっちゃんが手うちわで仰いでくれる。ちっちゃなおててでほとんど風こないけどその心遣いで十分癒えたよ!ちゅ!!
「与一、すごいね体力…」
「帰りは薬草背負って帰るからもっと大変だよ」
「ぴえ…」
絶望する私をよそに与一は辺りを見回して、生えている草を丁寧に切り取ると私たちの前に突き出した。
「姉ちゃんたちに集めてほしいのはこれ!特徴はこの真っ直ぐな葉っぱで、色が濃い緑のやつ。この時期だと、近くに白い小さな花が咲いてるかも。」
「ふむふむ。」
「みつけたら根元の細くなってる部分を鎌で切って……あっ全部採るんじゃなくて、半分は残して採るんだ」
じゃないと、来年採れなくなっちゃうから、と与一は言う。
きっとそうやってご両親に教わったんだろうなぁ。やよっちゃんは鎌を持つ手が震えていたので、私と一緒に組んで、3手に分かれて薬草の採取へ向かった。
「やよっちゃん、見つけたら教えてね」
「うん!」
「あんまり奥のほう行っちゃだめだよ!」
なんせここ現代日本とちがって原生林に近いからね!いくら町が近いとはいえ!
一応近くに商人さんたちが行き来するための登山道みたいなのはあったけど危ないからね!
やよっちゃんは同じ山を登ったとは思えないほど元気な声を上げてあたりをキョロキョロ見回している。
「あ!あったよシズカお姉ちゃん!」
「どれどれ…お、ほんとだ!」
私は与一に教わった通りに根元の細く茎になっている部分をゆっくりと鎌で切る。
日頃家の畑で雑草相手に猛威を振るっている鎌はここでも気持ちよく草を刈ってくれる。やよっちゃんは私の刈った薬草をかごに綺麗に入れて振り分けていく。
そうやって離れすぎないようにあちこち移動していき、籠が半分くらい埋まったところで、突然私の頭に何かが落ちてきた。
「いてっ!」
なんだ?!と思って顔を上げるとそこには緑色の鳥がチュンチュンと枝の上を飛び回っているではないか。そして私の足元には落ちたと思われるオレンジ色の実が。これは…
「枇杷の実だ」
「本当だ」
小学生の頃、よく近所のおばちゃんが「うちで採れたビワだよ、シズカちゃんたくさん食べてくれるから嬉しいわ」って持ってきてくれたっけ。
懐かしいなぁと見上げていると、おそらく私の頭上にビワを落としたであろう緑の鳥がチュチュ、と鳴いた。
なんだ?!笑ってんのか?!鳥に馬鹿にされる覚えはないぞ!!
「鳥のくせに!!」
「シズカお姉ちゃん、あれメジロだよ」
やよっちゃんを見ると、やよっちゃんは嬉しそうな顔でメジロを眺めている。
私から見ると緑の鳥だけしかわからない大きさなので、素直に感心してすごいねやよっちゃん、と言えばやよっちゃんはえへへ、と破顔した。
「僕、鳥が好きなんだぁ」
「鳥?」
「うん。鳥ってすごいんだよ、雨が降る前に絶対に雨宿りしてたりね、美味しい実とそうじゃないを食べてないのに見分けられるんだ!」
「そうなんだ、詳しいね」
「……あのね、僕本当はお外が怖いんだ」
「えっ」
ぽつりとやよっちゃんがこぼした言葉に私はギョッとした。
えっ、外が怖いって……じゃあ今も怖いってことなんじゃ?!
私の反応にやよっちゃんは慌てて手を振ると「今はシズカお姉ちゃんも、よーちゃんも、梵ちゃんもいるからそんなに怖くないよ」と笑みを浮かべる。
「父様がね、お外では毎日沢山の人が喧嘩して、戦を起こして死んでるってお話ししてたの。僕のお世話をしてくれてた人も、それで死んじゃったんだって」
「……」
「それだけじゃなくて、他にもお外には怖いことが沢山あるんだって……だから」
お外が怖いから、ずっとお部屋にいたの、とやよっちゃんは言う。だからそれで鳥に詳しくなったのだ、とポツポツと溢れる言葉を静かに聞いていた。
梵ちゃんがやよっちゃんのことを箱入り、と評していたのを思い出して、それは正解だったんだなぁって思う。
「畑のお世話をしたり、お買い物をしたり…お家の中にいたら分からなかったって思うんだ。僕シズカお姉ちゃん達に会えてよかった!」
「やよっちゃん……!」
やよっちゃんをぎゅっとハグしたらやよっちゃんも笑って抱きしめ返してくれる。与一や梵ちゃんと比べて背は大きいけど華奢な身体つきで、頼りなさげな印象を受ける。
うっうっ、やよっちゃんは私が守る……!!
「やよっちゃんがお外大好きになれるよう頑張るからね……!」
そして与一と梵ちゃんとやよっちゃんで遊んでる尊いお姿を見せてください……!!
加護欲と欲望の狭間でやよっちゃんをぎゅうぎゅうと抱きしめてると、やよっちゃんも抱きしめ返してくれながら「シズカお姉ちゃんちょっと苦しいよ」と笑い声を上げた。
さて、それからもやよっちゃんと色んな話をしながら籠いっぱいに薬草をとって集合場所に戻ると、すでに与一も梵ちゃんもそこにいて何かを話していた。
私たちが戻ってきたのを見て、与一が「おかえり」と手を上げてくれた。
流石与一のかごの中はいろんな種類の草(……と草となんかの根っこ)が入っていて、梵ちゃんも山盛り持って帰ってきたようだった。
「これ、食えるやつ生えてたんだ」
「え、これ食べれるの?」
「ああ、お浸しにできるって景綱が言ってた」
「へー」
誰か知らないけど、たぶん梵ちゃんのおうちの人だろう。ずいぶん物知りなんだなぁとドヤ顔の梵ちゃんの頭を撫でようとしたら、梵ちゃんはサッと避けてしまった。ひどい!!
「もうすぐ陽が落ちてくる頃合いだし、暗くなる前に帰ろ。」
「りょうかーい!」
私と与一が籠を、梵ちゃんとやよっちゃんは竹筒や他の荷物を持って、頑張って登ってきた山道を下る。
あちこちから聞いたこともない鳥の声が響いて、涼しい風が吹きおろしてくる。木々の隙間から見える空はほんのり赤みを帯びてきていて、時計を見なくてももうすぐ夕餉の時間が近いのだと分かる。
前を行く小さな背中たちをみて、それから私は顔を上げて「あ」と声を出した。
「?どうしたシズカ」
「みてみて!前!」
そこは私たちの住む町が一望できるように木々が広がっていて、ちょうど町全部が見えるようになっていた。行きは背中向きだったから気付かなかったけど随分と登ってきていたらしい。
「わあ!すごい!」
「俺たちの家見えるんじゃないか?!」
「あ、あそこほら!家の前の通りだよ」
「本当だ!じゃああそこらへんかな?」
「ええ…?!みんな目がいいね!??!」
与一が指さしたり上田城(仮)をベースに懸命に教えてくれているけれど、私の視力じゃまったくわからん!!?みんなマサイ族ばりの視力だね?!!一生眼鏡要らずじゃん!!
ひゅう、とひと際強い風が吹いて私たちの髪と、木々を揺らす。
そして、その風を追い風にして、鳥が飛び立っていく。
「あ、メジロだ」
「姉ちゃんくわしいの?」
「やよっちゃんが教えてくれたんだよ」
また一つ賢くなったね!!ふんぞり返る私に梵ちゃんが「そーだな」と適当すぎる返事を返して、それにまた与一が笑って、やよっちゃんが笑う。なんか今日はいい日だったなぁ、そんなことを思って私たちは普段よりも口数多く家に帰った。
「姉ちゃん湯浴み空いたよー」
「ハイホー!よし、じゃあ入ろうか!」
「うんっ!」
髪から水を滴らせて、水も滴る美少年な与一と入れ代わるようにして私とやよっちゃんは湯浴みに向かう。
んふ、真っ赤でやたらかわゆすなぁ!!
実は今回やよっちゃんが一緒に入りたいと申し出てくれたのだ。
え、これはもしかしてイチャイチャフラグが立ってるよ!!?
「いーいー?」
「うん、大丈夫だよーっ」
後から入ってきたやよっちゃんによって、いつぞやのようにお湯がザバーッと抜けた。
「きゃーっ」
楽しそうな声を上げてじゃっぼんじゃっぼん上下に跳ねるやよっちゃん。
うんうん、楽しそうだねー。
でもだんだんお湯が減っててるんだよー。
この後梵ちゃんも入るんだよ、やよっちゃーん。
「えいっ!」
「のわぁっ!」
突然やよっちゃんがお風呂のお湯を水鉄砲みたいにして顔にかけてきた。
ぎゃぁぁぁ!目がぁぁ!目がぁあぁぁぁああっ!!(ム●カ風
「このっ!」
「あははははっ!!!」
やよっちゃんの体をくすぐってやればバタバタと暴れて身をよじる。
またお湯が流れていく。
しばらく暴れて私達は少し落ち着いた。
「はぁーっ、笑いすぎてお腹痛い…!」
「ふう、シズカお姉ちゃん元気出たみたいでよかったっ!」
「へ?」
首を傾げてみればやよっちゃんは数回目をしばたかせてから口を開いた。
「シズカお姉ちゃん、なんか悩んでるみたいだったから…」
「あ……」
萌が爆発仕掛けてて妄想の暴走になる寸前だっただなんて言えません。
因みにスマホに下書きで吐き出すことでなんとかなりました。南無。無縁萌仏よ成仏してたもれ。
「…心配かけちゃったね、やよっちゃん」
「ううん、僕だけじゃないよ。よーちゃんも梵ちゃんも心配してた。」
「…そっか、二人にも謝らなくっちゃね…。」
なんだか少し泣きそうになった。
まさかそんなに心配してくれてたなんて…理由が理由だから余計に悪いことをしてしまったよ。
「よっしゃー!さっさと謝って二人を安心させてやらねばなるまいよ!」
「うんっ」
二人して立ち上がった。
勢い良すぎて、軽くぐらついたが気にしない!
私達は手早く体を拭いてやよっちゃんは着流し、私はジャージと短パンに着替えて異例の速さで二人に抱き着いた。
「わ!」
「ぐえっ!」
「ごめんねぇえええ!二人共ぉぉおっ!大丈夫、姉ちゃんピンピンしてるからぁあ!」
与一が小さく「弥三郎…バラしたな…」と呟いていたのは知らないフリをしておく。
「ってシズカッ!」
「うん?」
急に梵ちゃんが血相を変えて、いやと言うか顔を真っ赤にさせて喚いた。なんぞ。
「お前なんて格好してんだよっ!」
「…ジャージと短パンだけど…なにか?」
「あああ足なんか出してんじゃねぇよっ!」
真っ赤になって私の拘束から逃げようとしている梵ちゃんを一通り満喫してから私は一度離れた。
「何?!もしかして私なんかの生足で興奮してくれてるのっ?!」
「姉ちゃん鼻息荒いッ!!てか暑いから離れてッ」
「あぁぁもしかして与一も?!私、初めて女の子として見られた?!」
――――……この時代の人は足を露出する、って事が今で言う、胸元オープンってのと変わらないと私が知ったのは数分後の与一による必死の抗議と梵ちゃんの怒涛のパンチを受けた10分後だった。