マーガレットの火葬
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「……そういえば、結局先輩の言う特ダネ…って」
「あーあれ?もち 王子のこともある」
「ですよねー」
「でさ、今王子にちょーっとお願い事してんだよね 原石の」
「…は?!王子をパシったんですか?!」
「いやいや……まぁちょっとは脅したか」
「うっわぁ……この人ほんと危ない…刺されても文句言えないですよそれ…」
「あ、ついでにもう一個。
シャンディの作ってた記事も校閲しといた データ移してあるから後で確認しといて」
「いつの間に」
「ふて寝してる間に」
「ふて寝じゃないです!!」
……たぶん。
あなたの心音、聞こえてますよ
色々あった翌朝、先輩と民宿の朝食を食べながらそんな会話をして私たちは部屋にいる。
どうやらこのトンデモ上司、この国の次期国王ノクティス様を顎で使ったらしい。
何をさせるつもりなのか知らないが、なんたる冒涜だ。
そんなのレギス様や王の剣にでも知られたりしたら…弊社が粉々に消し去られかねないではないか。
何してんだこの人、と非難の目を向けたところでこの人はどこ吹く風だろう。
良い意味で無鉄砲というか向こう見ずというか……怖い人だ。
そんなこわ~いディーノ先輩に呼ばれて、先輩の部屋にある謎の機械の前で私は座り込んでいる。
大きさはA4ほどだろうか、ベッドサイドのテーブルに置いたらこれだけで他のものが置けなくなってしまいそうだ。
地面にボンと雑に放られたソレからは謎のアンテナとケーブルがにょきにょきと生えていて、そのケーブルの一つは盗聴器……ンンッ、通信傍受のための機械につながっている。
……なんか物凄い嫌な予感しかしないのだが。
「先輩、あの、これは」
「……」
返事することなくキリキリと傍受機器のダイヤルを弄る先輩。
やがて以前使っていた盗聴器からノイズが聞こえ始めた。
……【…レギス様…ザザッ…の……東館に…】
【王……剣………に…中央塔の……クリスタル………】
【…………地区…配置……ザザザッ………40名…】
……?!
「おっ、きた」
「いやいやいやいやいや『おっ、きた』じゃないですよコレほんっとにヤバいやつですって!!ノクティス様を顎で使うとかそういうレベルじゃないやつ!!!本当に弊社消されますよ?!」
「だいじょーぶ、直接傍受してるわけじゃないから」
「そ、そそそそ、そういう問題じゃないでしょう……?!」
ほんっっと何やってんですかこの人!?
どう考えたってコレはインソムニアの軍用通信だ、しかも絶賛内部事情を通信しているところのようで、先輩を怒っている矢先にも警備に関する情報が漏れてくる。
これは今日の午後からある調印式の警備の話だろうか。
どこに何名ほどの部隊が配置されているのか、とか、緊急時のルートとかが、それはもう……申し訳なくなるくらい…………漏れている…………。
あまりに申し訳なさすぎて耳を抑えたくなる私をよそにディーノ先輩は手書きの資料をかき集めて何やら書き込み始めた。
実際こうやって(あまり褒められない方法で)情報を集めている姿を見るのは初めてで、なんとも言えない気持ちになった。
複雑な気持ちになりながら先輩の書き込んでいる資料を覗き込めば、まぁ、予想はしていたけどレギス様たちの住まいの大雑把な見取り図のようなもの、だ。
【……ガガッ…90分後……調印……クレイラ…】
【てい……兵………民衆が……ガガッ…およそ……60分……】
「こんなの…どうやって作ったんですか……」
「知り合いのツテ てきな?」
「はぁ……ディーノ先輩の情報網ならこの世にわからないこと無いんじゃないですか?」
「いやぁ俺だっていつもこんなことしてるワケじゃないし」
「王都の重要回線にアクセスできる人に言われても…」
「だーから、コレ、直接回線傍受してんじゃない インソムニアまでどれだけあると思ってるの」
「う、正論で返された……じゃあなんなんですかコレ」
「…………」
先輩は私の問いかけに少し手を止めてダイヤルに目を向けた。
一瞬重たい空気が流れて、部屋の中に盗聴器からノイズ混じりの音声が響き渡る。
【帝国……ザザザッ………2万の軍…】
【……指輪……守り…】
「これ、帝国の無線」
「……は?」
「たまたまこの回線見つけたんだけど 多分?いやほぼ絶対?帝国が傍受してるインソムニアの回線っぽいつーか。帝国が盗聴してるのを 俺たちが盗聴してる、的な」
…つまり、それは帝国がインソムニアの内部事情を探っているということ…だ。
長い間ルシスとニフルハイムは交戦してきたから向こうがこちらの情報を集めているのは十分理解できる。
しかし。
今日は停戦合意を結ぶ日だ。
仮にも……一度手打ちにしようと合意する場。
そんな日に、敵の…配置に関する軍の通信を盗聴したりするだろうか?
もちろん、インソムニアには帝国の重鎮たちが会するから、何かあってはならないだろう、と言われたらそれまでなのだけれど。
……けど…なんだろうか、この違和感は。
ふと思い出したのはあの恐ろしい深淵のような目だった。
帝国の上層部だろうと思われる、影のような男。テンガロンハットの中で黒く光る漆黒の目。
『ねぇ……いったい何が…あったんだろうね?』
「…………」
「実は帝国に関する特ダネってのが、これ。……率直に聞くけど。シャンディはコレどう思う?」
顔を上げて問うてくる先輩の顔は真剣そのものだ。
これだけ鮮明に音を拾えると言うことは、傍受している帝国の艦隊だか兵隊もこの辺りに潜んでいると言うこと。
インソムニアの近くならまだしもここから王都まではそれなりの距離がある。
それなのに兵を潜ませて…この無線を聞かせている理由は?
……これから平和調停を結ぶと言うのに、少し厳重すぎやしないだろうか。
(何をするつもり…ニフルハイム……)
あの男と同じ、じっとりとした違和感が胸中にくすぶる。
この得体の知れない不快感は、違和感の正体は何か。
わたしは窓の外を見た。
心地の良い快晴、広がる青い空と海は平和そのものだ。ルナフレーナ様のご結婚と平和調停を控えて世界はゆっくりと穏やかになっていくはず、なのだけど。
「……私、確かめに行くべき、だと思います」
「……」
「ニフルハイムが何をしようとしているのか。……もしかしたら記者をしてることで懐疑的になってるのかもしれません。そう言われたら否定できないのも事実です。……でも。」
「でも?」
「……私昨日先輩に言いそびれたことがあるんです。昨日波止場にきた変な男のこと。」
昨日はそんなバカなこと言って信じてもらえるか不安に思っていたけど、先輩なら信じてくれる、と思える。
まぶたの裏に残り続ける深淵について。
あの男が帝国の上層部だろうと仮定しているこの人にコレを伝えるのが正解かはわからないけれど、それでも私は……ディーノ・グランスを、信じようと思う。
「……あの男、私はシガイによく似ていると感じたんです。
ねっとりとしていて、でも虚空で、…憎悪のある…嫌な気配」
「シャンディ、それ」
「ええ、馬鹿なことを言ってるのは分かってます。だって人間の形をしたシガイなんているはず無い。けど……私はあの男を表現するのなら『闇に住む男』にします。そのくらい……あの男普通じゃないように思えるんです。そんな男が来ていることと、この無線と…無関係には思えなくて」
「…………」
「……行っても、いいですか。先輩」
「……」
先輩は信じてくれるだろうか。
じっとディーノの双眼が私を見ている。グレーの目は私を見て、それからフ、と細められた。
「シャンディ、いい顔してる」
「え?」
「いいよ いっといで。…あ でも 無茶はナシ。
シャンディならその辺大丈夫だろうけど これがどんだけヤバい案件か わかってるだろーし」
「…はい!」
本当に軍事機密だ。
政治にまで首を突っ込むことになる。
あの男が釘を刺してきたのもディーノ先輩が傍聴してることに気づいたからかもしれない。
けど、私はメテオ・パブリッシングの記者だ。私たちの記事は、情報は、誰かを救うためにある。そして、正しい刃を手に入れて理不尽に立ち向かうためにあるのだ。
私は立ち上がった。
「ありがとうございます。調停式、ばっちり見てきます。」
「…………あ、ちょーっとまって。ん…あ、あった」
「?」
ディーノはガサゴソとベットの上に放られたカバンの中を漁り、小さな紙袋を出した。
その中には細長いケースが入っていて、ディーノはその箱を開けて中身を取り出した。
差し出されたソレを受け取ると小さく光る緑色が手のひらに転がった。
鮮やかな青緑の石がついたピアスだ。シンプルなデザインだけど、石の上に付けられた白の宝石がアクセントになっていて華やかに目を引く。
「わぁ可愛いですねコレ」
「それ、この間シャンディが持ってきた原石加工したやつ」
「………えっ、じゃあこれ先輩が?」
「そ。なかなかだろ?世界に一つしかない、シャンディをイメージして作ったアクセサリーってワケ」
「へぇ…なんか……意外です…」
光にかざせば太陽の光を浴びて一際鮮やかに輝いている。
あんな石くれだったのに磨くとこんなに綺麗になるのか、と私は石を撫でた。ガーディナの晴れ渡る空のような色だ。
世界に一つしかない、私のためのアクセサリーなんて随分と嬉しいことを言ってくれるなぁと私は笑みを返した。
「先輩、こっちの道もアリなんじゃないですか?」
「マジで?シャンディもそう思う?それタダのアクセサリーじゃないから ま、付けてってよ。絶対役に立つからさ」
「はい、それではありがたく」
もともと付けていたピアスを外して、私はピアスホールに金具を通した。
窓ガラスに映った自分の左耳に小さな青緑が揺れている。
先輩のネクタイと同じ色だな、なんて少し考えて笑ってしまう。
いやいやいつからそんなオトメになったんだ私は。
ディーノを振り返ると、彼もまたハニかんでいる。なかなかの自信作だったんだろうか。いかんせん他の作品を見たことがないからなんとも言えないのだけど、その笑みにつられて私まで少し恥ずかしくなってきた。
「あ、の、…それじゃあ荷物まとめたらそのまま向かいます」
「了解。向こうついたらとりあえず電話ちょうだい こっちもなんか分かったら連絡する」
「わかりました。それじゃあ行ってきます」
一つ深く頷いて、私は先輩の部屋を後にした。
左耳で揺れる感覚が少しだけ、くすぐったい。
ガーディナで車を借りて、私は荒野を進んでいく。
ガーディナからインソムニアまでは車で3時間ほどになるだろうか。そろそろ王都では調停式が始まる頃合いだ。
調停式があることも関係しているのか、少しだけ交通量も多いような気がする。前を行く鮮やかな色をした車を一定間隔をあけて追いかけて行く。
なんとなく前の車もインソムニアに向かっているんだろうなと思った。
私は車の窓を開けて外の空気を入れた。
土の香りと風の香りがする、乾いた風だ。ガーディナの潮の香りとは全く違う。
フロントガラスに映り込む空は青々と広がっていて、平和そのものの景色だ。
車のエンジンと風が吹き荒ぶ音、地面の砂が巻き上げられる音、どこかで鳥が鳴く声。
ガラス越しに射し込んでくる陽射しは暖かくて心地が良い。
(あー、この日差しは…眠くなって来る……)
前の車のと車間を確認して私はカーステレオに手を伸ばした。
カチカチとダイヤルを回してラジオのチャンネルに合わせる。
『――――…よいよ、ルシスとニフルハイムの長きに渡る戦いの歴史に幕が降ろされようとしています』
『ええ、停戦ではありますが、これまでの歴史を踏まえると本当に大きな一歩です。』
ちょうど調停式が始まるのだろう、インソムニアのラジオ電波が拾えた。
眠気を覚ますにはちょうどいいな、なんて思って私は少しボリュームを上げた。古いカーステレオのこもった音が聞こえてくる。
『インソムニアも今日はあちこちでお祝いムードとなっていますね』
『大手デパートでは特売も始まるようですよ、街を歩くだけで国民の関心が高いのがわかりますね』
――…インソムニアか。思い出すのは通勤路だ。
見上げても見上げきれないビル群と、足早に過ぎ去る人たち。
少し裏道に入れば途端に光が遮られて、猫が居座る呑み通りがあったっけ。
『王城に続く道には花も多く植えられていて、見てるだけで心躍ります。』
『そういえば、この放送局もお祝いムードなんですよ。今回の停戦協定を記念して、番組のスペシャルステッカーを抽選で10名様にプレゼントです!すごいですよ、なんと番組名が箔押しです』
『えー、なんかちょっと高そう(笑)!このうえに我々のサイン入れるのちょっと勇気要りますね』
『私昨晩すっごいサインの練習したんですよ』
『気合い入れすぎでしょう!』
『いやだってこれ停戦記念ですよ、そんな日に汚い字を残せないじゃないですか』
ふふ、ラジオにつられて笑った。本当にルシスとニフルハイムの停戦が正式に決まった時の各所メディアのテンパりっぷりはすごかったなぁ。
私と先輩はそれぞれ別のネタを追いかけていたけど、ビブさんから「ちょっとちょっとビックもビック、超ビックニュース!」なんて慌てふためいた電話が深夜にかかってきて何事かと思ったんだったっけ。
先輩はどんな感じだったのか聞けばよかったな、もしかしたら先輩も慌てたのかもしれな……
「いや想像できない、今のなし」
想像したらちょっと気持ち悪かったし
ランガウィータを通り過ぎる。
一瞬だけ空気に香ばしい香りが混ざって鼻をくすぐっていった。
『テレビ局によると、今王座の間に停戦に関する協定文書が運ばれたようです』
『いやぁ、いよいよですね…』
空は青く澄んでいて、雲も遠い。
太陽を浴びて赤くすら見える大地はどこまでも続いている。
ああ、やっぱり世界は、広い。
『なっ…キャア!!』
ザザザザ!
「うわっ?!」
急にパーソナリティの短い悲鳴が上がって、耳をつんざくようなノイズが流れてきた。
驚いて急ブレーキを踏んで車を止める。
ザザザザ、耳に触る雑音を流すスピーカーのダイヤルを回してもう一度チャンネルを合わせる。さっきまで聞こえていたのに途端にノイズだらけになったラジオ。
障害物があるわけでもないのに…それに今の悲鳴は……?!
ドクドクと心臓がうるさい。いやな予感はさっきよりも顕著に喉元までせり上がってきている。
『……緊急速報です!』
「!」
『王都城で…ええと原因不明の爆発が起きたもようです!原因・被害状況は明らかになっていません。また、街中でも………うわっ!!』
ざーざー……
「ッ行かなきゃ……っ!」
ノイズばかりになったラジオを切って、私は再びアクセルを踏んだ。
さっきよりも深く踏んで前を走っていた車を追い越す。
インソムニアの方向から一筋の閃光が走ったが、正面を睨みつけて運転していた私には気付く余裕などなかった。
王都へ続く橋は人と物と、それから悲鳴で溢れかえっていた。
橋はインソムニアから逃げてきた人たち、車、荷物、追いかけてくる魔導兵たちでごった返している。
私は早々に車を乗り捨てて、人の波に逆らうように王都へ向けて足を進めた。
門を抜けて王都がよく見える道の隅まで移動して、
「――――」
ことばを、失った。
四年ぶりの帰郷がこんな形になるなんて、誰が思っただろうか。
空を鉄の塊が飛んでいき、王都の中へ消えて行く。
インソムニアの象徴でもあった城からは濛々と黒煙が昇っていて、建物はほぼ見えない。
爆発音が響き渡る。黒い煙が天高く昇っていく。
人々が脇目も振らず逃げて行く。
鳴き声をあげる赤ちゃんがいる、待って、待ってよ!女の人の声がする、何チンタラしてんだ早く行けよ!男性が怒鳴り散らす声がする、ママ、どこにいるの!子供の悲痛な声がする。
誰かが私の肩に思い切りぶつかっていった。よろめいて、顔を上げる。
朝日を浴びて輝いていた私の故郷は、もはや見る影もない。
「っ……ニフルハイムッ!!」
どこまで人を愚弄すれば気がすむのか!停戦なんて最初から嘘だったんじゃないか!
あの場所に、どれだけの人が生きていたと思っているの!
すぐ上を帝国の船が飛んで行く。あの中にどれだけの魔導兵がいるのか、考えただけで吐き気がする。
王都の人たちが襲われる姿が記憶の中のナターリヤと被って、混ざる。
ごうごう、ニフル軍が飛んで行く音が耳の奥で鳴り響く。
いかなきゃ、いかなきゃ、あそこにはたくさんの人がいる。
今度こそ、助ける、助けなきゃ、
たすけ、なきゃ
こんどこそ
私は拳を握りしめて歯をくいしばると、人波に逆らって一歩踏み出した。
「おいばか!王都にはもう戻れないぞ!」
急に腕を強く引かれてたたらを踏んだ。
視界がクリアになって、相変わらずの人波と黒煙が目に焼け付く。
振り返るのとほぼ同時に懐かしさが胸を締め付けた。
「っシャンディ…?!」
目を見開いて、信じられないものでも見るような顔で立っていたのはかつての同僚、ロジェだった。
非番なのか私服だったから一瞬分からなかったけれど、間違いない。
「ロジェ…?!」
名前を呼べば彼はぐしゃりと眉を寄せて唇を噛んで私の体を引き寄せた。
完全にバランスを崩した私は彼の腕の中に飛び込む形になって、肩が跳ねた。
これだけ沢山の人がいるのに、皆一目散に逃げることに必死で誰も私たちのことを気に留めていない。
「……」
「ろ、ロジェ?だよね?」
私を抱き寄せたきり何も話さないロジェの背中を叩いて確認すると、返事の代わりに背中に腕が回されて、強い力で抱きしめられた。
少しだけ苦しくなって、もう一度背中を叩くと震えた声が耳に届いた。
「シャンディ……ッいき、てたのかよ、なんでここに…ていうか、これまで何して…たんだよ…!」
「……」
回された腕も震えている。
叩いてた手を止めて背中を撫でてやれば、彼はまた少し腕の力を強くした。
「ごめんなさい」
「……あとで、ちゃんと話せよな…」
震える声でそういうと、ロジェは私から離れて手を取った。
「ひとまずここを離れなきゃ。帝都から出てくる魔導兵たちをベリア達が止めてくれてるんだ。」
引かれるままに人波に攫われる。
ベリアたちもいるのか、私はその言葉につられるように王都をもう一度振り返る。
爆発音が響いて、また一つ大きな黒煙が立ち上った。
私は唇を噛み締めると、もう一度ごめんなさい、と呟いてロジェの背中を追いかけた。
この日、ルシス王国の首都インソムニアはニフルハイム軍の侵攻により陥落したのであった。