デフォルトネームは『花澄』
シン夢短編
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とある日の昼下がり。シンはいつものように本日の業務をこなしていた。今は配達に行く準備中で、空っぽのダンボール箱に次々と商品を詰めていく。最後に全て入っているか確認し、しっかり封をすると箱を持ち上げ外へと出た。
「あっつ……」
坂本商店から一歩外へ出るだけで、汗が噴き出してしまうのではないかと思うぐらいの暑さがシンを襲う。このぐらいの暑さ、今まで繰り広げた数々の死闘と比べればなんてことはない。そうは思うが、最近暑すぎではないだろうか。これは配達に行くのも一苦労だなと頭の片隅で考えながら、箱を持つ手に力を入れ直した。
バイクの荷台に箱を置き、落ちないように紐で縛っていると、何やら人の気配を感じたので顔を上げた。
「お疲れさま、シンくん」
そこには坂本商店常連客の花澄の姿があった。
「おー、買い物?」
「ううん。花ちゃんに勉強を教えに来たの」
そういえば、朝から花がしきりに花澄が来ることを言っていたような気がする。
「シンくんは配達?」
「そう」
「今一番暑いから大変だね」
花澄が空を見上げるのに釣られて、シンも顔を上に向けた。雲一つない澄んだ青空に、燦々と光り輝く太陽が浮かんでいる。それを見つめていると、じわりとまた額に汗が滲んだような気がした。まるで、体力もやる気も削がれていくようだ。でも、坂本に頼まれた仕事だ。行かなければならない。
紐をキツくギュッと結び、ヘルメットをしっかりと被る。
「気をつけてね。いってらっしゃーい!」
花澄に手を振られ、軽く振り返しながらシンは配達へと向かった。
***
配達を無事に終え、坂本商店に戻ってくると、シンの全身は汗だくになっていた。いくら拭っても滝のように汗が流れていく。
「シンくん、おかえり」
商店の扉が開くと、花澄がうれしそうに顔を出す。あまりにもタイミングが良すぎて、まるで帰ってくるのを待たれていたかのようだ。そう考えただけで、暑い中配達に行ってきたかいがあったのかも、なんて思ってしまうので単純だなと頭の中で苦笑した。
「ただいま」
「はい、タオル」
「準備いいな。サンキュ」
本当に自分が帰ってくるのを待っていたのかもしれない。ニヤけそうになる口元を、汗を拭う振りをしてタオルで隠した。
「……あとね、これ食べない?」
タオルを差し出した方とは反対の手を目の前に突き出される。そこには水色とピンクの小さな小袋が二つ。よく見ると、それはソーダ味とストロベリー味の棒付きアイスだった。
「私の奢り」
「奢りって、それ商店に売ってるやつだろ」
「そうなんだけどね。まぁ、いいから早く食べよ!」
商店の前にあるベンチへと手を引かれ、仕方なく隣に座る。中で食べた方が涼しくていいのでは、と言ったら『暑い中食べるのもおいしいでしょ』なんて言われてしまった。
シンはソーダ味のアイスを受け取り、袋から中身を取り出す。ひんやりとした空気が指まで伝わってきた。涼し気な色合いをしたアイスは、もう溶け出しているのか表面がテカテカと光っている。一口囓ると、ソーダの爽やかで甘みのある味と氷のシャリシャリとした食感が口の中に広がる。
「おいし〜」
隣を見ると、花澄もおいしそうに大きく口を開けて頬張っている。その姿をじっと見つめていれば、いつもとどこか雰囲気が違うことに気付いた。普段は下ろしている髪が結ばれていたり、腕や足の露出が多かったり。暑いからそういう格好になるのは仕方がない。けれど、このことに一度気付いてしまえばシンにとっては目に毒だった。日に焼けていない白い素肌、汗が滲んだ項。きゅっと喉が鳴ったような気がした。
「シンく――えっ⁉」
「ッ!?」
気付けば目と鼻の先に花澄の顔があり、シンは驚く。彼女の瞳に驚く自分の姿が映っているのが分かるくらい距離が近い。いつの間にか前のめりになっていたようだ。シンと同じく驚いた花澄は、飛び退くように離れていった。
(いや、何やってんだ……)
二人の間に変な空気が流れる。沈黙に耐え切れず、シンは口を開いた。
「あ〜、いや、花澄のもおいしそうだな〜って見てたんだよ!」
そうは言ったが、今の花澄の顔は思考を読まなくても分かるぐらい『本当に?』と言っているようだった。あんな至近距離で見ていたのだから疑うのも仕方がない。
「……じゃあ、食べる? 私の」
「え? いいの?」
「まぁ、うん」
こちらにストロベリー味のアイスが差し出される。その頬が、まるでアイスと似たようなピンク色に染まっていたのはなぜなのだろうか。こっちの味も気になっていたので、シンはありがたく一口頂戴することにした。
「じゃあ、遠慮なく」
差し出されたまま、一口囓る。その時、シンはあることに気づいた。これは先程まで花澄が食べていたのだ。ということはシンがこれを食べると、間接キスになってしまうということで――
(シンくん本当に食べちゃった……)
思考を読むつもりはなかったのだが、半分パニックになってしまったシンの頭に花澄の思考がなだれ込む。顔を上げると、さっきよりも真っ赤に染まった顔がそこにはあった。シンも次第に顔に熱が集まっていく。これは夏の暑さのせいではない。一口食べたストロベリーのアイスは、味なんて一切分からなかった。
「あっつ……」
坂本商店から一歩外へ出るだけで、汗が噴き出してしまうのではないかと思うぐらいの暑さがシンを襲う。このぐらいの暑さ、今まで繰り広げた数々の死闘と比べればなんてことはない。そうは思うが、最近暑すぎではないだろうか。これは配達に行くのも一苦労だなと頭の片隅で考えながら、箱を持つ手に力を入れ直した。
バイクの荷台に箱を置き、落ちないように紐で縛っていると、何やら人の気配を感じたので顔を上げた。
「お疲れさま、シンくん」
そこには坂本商店常連客の花澄の姿があった。
「おー、買い物?」
「ううん。花ちゃんに勉強を教えに来たの」
そういえば、朝から花がしきりに花澄が来ることを言っていたような気がする。
「シンくんは配達?」
「そう」
「今一番暑いから大変だね」
花澄が空を見上げるのに釣られて、シンも顔を上に向けた。雲一つない澄んだ青空に、燦々と光り輝く太陽が浮かんでいる。それを見つめていると、じわりとまた額に汗が滲んだような気がした。まるで、体力もやる気も削がれていくようだ。でも、坂本に頼まれた仕事だ。行かなければならない。
紐をキツくギュッと結び、ヘルメットをしっかりと被る。
「気をつけてね。いってらっしゃーい!」
花澄に手を振られ、軽く振り返しながらシンは配達へと向かった。
***
配達を無事に終え、坂本商店に戻ってくると、シンの全身は汗だくになっていた。いくら拭っても滝のように汗が流れていく。
「シンくん、おかえり」
商店の扉が開くと、花澄がうれしそうに顔を出す。あまりにもタイミングが良すぎて、まるで帰ってくるのを待たれていたかのようだ。そう考えただけで、暑い中配達に行ってきたかいがあったのかも、なんて思ってしまうので単純だなと頭の中で苦笑した。
「ただいま」
「はい、タオル」
「準備いいな。サンキュ」
本当に自分が帰ってくるのを待っていたのかもしれない。ニヤけそうになる口元を、汗を拭う振りをしてタオルで隠した。
「……あとね、これ食べない?」
タオルを差し出した方とは反対の手を目の前に突き出される。そこには水色とピンクの小さな小袋が二つ。よく見ると、それはソーダ味とストロベリー味の棒付きアイスだった。
「私の奢り」
「奢りって、それ商店に売ってるやつだろ」
「そうなんだけどね。まぁ、いいから早く食べよ!」
商店の前にあるベンチへと手を引かれ、仕方なく隣に座る。中で食べた方が涼しくていいのでは、と言ったら『暑い中食べるのもおいしいでしょ』なんて言われてしまった。
シンはソーダ味のアイスを受け取り、袋から中身を取り出す。ひんやりとした空気が指まで伝わってきた。涼し気な色合いをしたアイスは、もう溶け出しているのか表面がテカテカと光っている。一口囓ると、ソーダの爽やかで甘みのある味と氷のシャリシャリとした食感が口の中に広がる。
「おいし〜」
隣を見ると、花澄もおいしそうに大きく口を開けて頬張っている。その姿をじっと見つめていれば、いつもとどこか雰囲気が違うことに気付いた。普段は下ろしている髪が結ばれていたり、腕や足の露出が多かったり。暑いからそういう格好になるのは仕方がない。けれど、このことに一度気付いてしまえばシンにとっては目に毒だった。日に焼けていない白い素肌、汗が滲んだ項。きゅっと喉が鳴ったような気がした。
「シンく――えっ⁉」
「ッ!?」
気付けば目と鼻の先に花澄の顔があり、シンは驚く。彼女の瞳に驚く自分の姿が映っているのが分かるくらい距離が近い。いつの間にか前のめりになっていたようだ。シンと同じく驚いた花澄は、飛び退くように離れていった。
(いや、何やってんだ……)
二人の間に変な空気が流れる。沈黙に耐え切れず、シンは口を開いた。
「あ〜、いや、花澄のもおいしそうだな〜って見てたんだよ!」
そうは言ったが、今の花澄の顔は思考を読まなくても分かるぐらい『本当に?』と言っているようだった。あんな至近距離で見ていたのだから疑うのも仕方がない。
「……じゃあ、食べる? 私の」
「え? いいの?」
「まぁ、うん」
こちらにストロベリー味のアイスが差し出される。その頬が、まるでアイスと似たようなピンク色に染まっていたのはなぜなのだろうか。こっちの味も気になっていたので、シンはありがたく一口頂戴することにした。
「じゃあ、遠慮なく」
差し出されたまま、一口囓る。その時、シンはあることに気づいた。これは先程まで花澄が食べていたのだ。ということはシンがこれを食べると、間接キスになってしまうということで――
(シンくん本当に食べちゃった……)
思考を読むつもりはなかったのだが、半分パニックになってしまったシンの頭に花澄の思考がなだれ込む。顔を上げると、さっきよりも真っ赤に染まった顔がそこにはあった。シンも次第に顔に熱が集まっていく。これは夏の暑さのせいではない。一口食べたストロベリーのアイスは、味なんて一切分からなかった。
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