およげ!たいやきくん
老舗のたい焼き屋の総本店会長が他界した。
享年86歳。
記事を読んで驚いた。
なんとアノ昭和の名曲、未だに破られない歴代1位のクアドラブルミリオンセラー「およげ!たいやきくん」のモデルになった店だそうだ!
知らなかった…
「およげ!たいやきくん」にモデルの店があったのか?
と、いう事は…アノ歌詞の話はまんざら作り話でも無い訳だ…
これは色々と検証しない訳にはイカンだろう!?
ただ店といっても、アノ歌に店が出て来るのは歌の冒頭だけ…
「毎日、毎日、僕らは鉄板の上で焼かれて…」
…至って普通の店である。
たい焼き屋なんだから、毎日、毎日、たい焼きを鉄板の上で焼くのは当たり前だし、歌を聴く限り特別焼き方などに特徴が有る様には見て取れない。
歌の中で店が舞台になるのは、たいやきくんが店のオジサンとケンカして海に逃げ込んだAメロ迄だから、Aメロ部分だけで、店や店のオジサンの人物像を判断するしかない。
この場合のケンカとは、拳でボカスカ殴り合いではなく、おそらく口論であったと思われる。
オジサンがストレス解消にモノ言わぬたい焼きを一方的に恫喝していた可能性もあるが、歌の中でたいやきくんの目線で「ケンカして…」と表現されている以上それは無いだろう。
一方的に恫喝する事をケンカとは言わない。
ケンカとは、相手と目線を合わせ、対等の立場で相手の言い分と、自分の言い分の食い違いを激しく話し合う事だ!
普通のたい焼き屋ならば、たい焼きごときにナニを言われようが、問答無用で焼いてしまうところを、一応膝を付け合わせて話し合った事から、なかなか寛容で理解のある人物であった事が見て取れる。
上司としては理想的な人物かも知れん。
ただ、気になるのは、店の所在地が東京港区麻布十番だった事だ。
麻布十番から東京湾まで、およそ2kmは有る。
歌では、たいやきくんはケンカして海へ逃げ込んだ…とあるから、てっきり海辺に店が有るのかと思っていたが、どうしてどうして?思いっきり都会のど真ん中じゃないか?
するとたいやきくんはケンカして店を飛び出し、海に逃げ込むまでの間、麻布十番→三田→芝浦と移動し、東京湾まで辿り着いたという事になる。
よく海までの方角と道のりが解ったモンだが、やはり移動距離がスゴイ!
少なくとも首都高の高架下を2本、国道を2本、線路を5本を通り、現在のレインボーブリッジの辺りまで辿り着いた訳だ。
さらに驚愕すべきは、彼が桃色サンゴの海を泳いでいる事だ!
東京湾にサンゴはいない。
たいやきくんは、命からがら辿り着いた東京湾から、サンゴの生息する小笠原諸島近海まで泳いで行った事になる。
しかも、彼は後半の釣り上げられる前「一日泳げば、腹ペコさ」と歌っている。
彼が店をとび出してから、何かを口にした様子は無かったように思える。
「たまにはエビでも…」との歌詞は「最低でもエビくらいは…」とも解釈できる。
その上で「一日泳げば…」とは、最後の食事をとってから丸一日以上は経過している事を物語っている。
そう、あの話はわずか1日の出来事なのだ!
たい焼きくんの言う「一日」を最大の24時間と考えれば、ある朝、店のオジサンとケンカしてからの事だから、一泊二日である。
歌詞から察するに、桃色サンゴに手を振られたのは初日の出来事。
難破船を住家としたんだから、小笠原諸島に着き桃色サンゴに手を振られた後、難破船で一晩開かしたと推測出来る。
つまりたいやきくんは、ある朝店のオジサンとケンカしてから小笠原諸島到着まで、初日の内にやりきった事になる。
話を時系列に添って整理してみよう。
たいやきくんが店のオジサンとモメて、店を飛び出したのを朝の7時00分と仮定して、小笠原諸島に辿り着いたのがサンゴの色がハッキリ解る夕方の5時00分。
どのように陸上を移動したかは解らないが、たい焼きである以上ベースが魚と考えれば、水中より陸上の方が移動は困難なバズである。
まぁ、陸上移動には最低でも2時間は掛かると考えれば、たいやきくんは東京湾から小笠原諸島までの、およそ8時間で着いたという事になる。
8時間で約1000kmの距離を泳ぎきったとすれば、なんと時速125km!
カジキマグロにも匹敵する猛スピード!
たくましい!
流線型とは程遠いあのフォルムで。
たい焼きのブンザイで大人の男にケンカ売った度胸から、ただ者ではないとは思ってはいたが、たいやきくんは思った以上にマッチョなお菓子だった!
相当身が絞まっていたんだろうなぁ…
浜辺でたいやきくんを釣り上げた、見知らぬオジサンが美味そうに食べたのも解る気がするなぁ…
話はだいぶそれたが、実在したたい焼き屋があのミリオンセラーを生み出すきっかけとなった事は間違いない。
プロの作詞家に一つのファンタジーを発想させるほどの、情緒を持った偉大なたい焼き職人に敬意を払いご冥福をお祈りします。
【注釈】
↓[東京湾にサンゴはいない]
全くいない訳ではない。
東京湾は黒潮の影響で水温が温かく、比較的南方を好む生物が多く生息しており、サンゴの仲間も多少は生息している。
ただ、いわゆる珊瑚のイメージである色鮮やかなサンゴが海底を埋め尽くした光景は、やはり南方へ行かねば見る事は出来ない。
サンゴの生育には太陽光が欠かせず、淡水が多く流れ込み透明度の低い東京湾はサンゴの生息には適していないのだ。
ちなみにサンゴと一言で言っても、その種類は多種多様。
サンゴとは、刺胞動物門花虫鋼サンゴ亜鋼の総称で、イソギンチャクなどもこの分類に含まれる。
↓[1日の出来事]
たいやきくんはサメのイヤガラセに悩まされていたようだが、それもわずか1日の出来事。
しかも「時々サメにいじめられる」と歌っているので、1~2回の事ではないようだ。
つまりサメは、ほんの数時間の内に何度もやって来ては、新参者のたいやきくんを執拗にイビッていたのだ。
イヤな奴である。
たいやきくんは、このサメのイヤガラセに逃げる事で対応していたようだが、これは正しい。
サメ類の最高泳速度は、最も速いアオザメでも時速35~40km程度と、たいやきくんの125kmの1/3にも満たない。
125kmで走る車と40kmで走る車を想像してみてほしい。
至近距離から突然、追いかけられたとしても、毎秒23mずつ引き離し、1分間逃げただけでもその差は1.38km、公式の陸上競技トラック3周分以上もの差が広がる。
たとえサメが死にもの狂いで猛追して来たとしても、たいやきくんは軽いジョギング程度でも充分逃げられるので、サメごときなんの驚異でもない。
↓[カジキマグロ]
自分で書いておいてナンだが…
「カジキ」を「カジキマグロ」と呼ぶのは、たいてい魚屋や料理屋など、魚を食べ物として扱う人達である。
これはカジキの刺身の味がマグロとよく似ているからであり、分類上カジキはスズキ目カジキ亜目の総称で、スズキ目サバ亜目のマグロとは別の種類の魚。
固有種も「メカジキ」や「マカジキ」と呼び、「カジキマグロ」という種は存在しない。
本文中に「カジキマグロ」と書いたのは単に文章的に響きが良かったからです。
ちなみに最速はバショウカジキで時速140km近いと言われている。
1/1ページ