健全読切
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花江はるは、今の状況に混乱していた。
なぜならば、自分はなぜか布団に寝ていて、藍染隊長に顔をのぞき込まれていたからだ。
(なんで?! 藍染隊長がいるの?! てか近い! めっちゃ顔と体ちかい! すっごいいい匂いするしなんだこれ)
藍染隊長に微かに淡い、恋心に似た思いを抱いていたが如何せんモブでヒラな自分。
真面目な所が取り柄でそこを評価してもらいなんとか五番隊に所属できたが、書類仕事くらいしか出来ないから、席官以下の役職なし。藍染隊長にはなんとも思われて無さそう〜、顔と名前なんか覚えられて無さそう〜とか思っていた。
藍染隊長が近いのにびっくりなのと、あと私はなんでこんな太陽が高い時間から寝てるんだ?
「花江くん、目が覚めたようでよかった」
今の状況を把握してから、数秒の逡巡を知ってか知らずか、藍染隊長は目が覚めた私を見て、ホッとしたように静かに微笑んだ。
これはなんだ? 幻覚? 白昼夢?
「花江くん。今はそんなに忙しくないのだから無理はするな」
藍染隊長はそういいながら、私の頭に手を乗せ、髪の流れにそって、その手を滑らせた。
――これって頭ポンポン?
「あの、藍染隊長……?」
おそるおそる私が声を出すと、思ったよりか細い弱気な声が出た。
その声音を聞いたからか。藍染隊長はなぜか、ますます強く頭を撫でてきてから、その手を自らの頬に添えて頬杖にし、藍染隊長は誰もが安心するような微笑みに顔を書き換えた。
「花江くんは、五番隊の他の隊員が分からない書類だとか雑用を全部引き受けて、知らず知らずのうちに心労を溜めていてしまったらしい。朝、君の部屋の前を通りがかった四番隊の隊員が居たからよかったものの、それがなかったら重大なことになっていたかもしれないよ」
そう言われてみれば、ここ最近は熱っぽかったりだるい感じがして仕事が捗らなかった気がする。
朝、いつもより重い体を無理やり起こしたけど、辺りが極彩色に明滅、歪んでからその後のことは覚えていない。
藍染隊長の言い方的に、倒れて頭を強く打った上に、打ちどころが悪かったか、熱発のせいでかなりヤバめな状況だったのだろう。
「すみません。……藍染隊長のために、ひいては五番隊、護廷十三隊……いえ、尸魂界<みんな>のために私が役立てることってこれくらいしかないんです……っ」
言いながらなんか情けなくなってきた。だって今やってる書類なんか魂魄の実数と今後の予想の推移などが色んな隊員がバラバラに報告してくるのを、ひとつにまとめてるだけだし……。
体調が悪いのもあってか、やってる仕事は大したことないのに、藍染隊長の時間を奪っている事がとても申し訳なく思い、心に暗く重い澱が積みあがってきた。
気づいたら少し涙が流れてきていた。
「花江くん?! すまない、少し強く言いすぎたね」
「っ、グズ……。藍染隊長は優しいですね」
私が涙を流している、と認識した藍染隊長は慌てて辺りを見渡し、ちり紙を見つけて手渡してくれた。
私は、一度崩れた精神<メンタル>によってそのちり紙を渡してくれる優しさも申し訳なくなってきて、早くここから消えて無くなりたくなっていた。
藍染隊長も、看病と見張りは四番隊の人とかに任せてくれたらいいのに。なんで憧れの人に近づくことができたかと思ったら、こんな醜く情けない姿なんだろう。そこにいられたら泣けないじゃない……。
洟もすごい出てきて、ぐちゃぐちゃな泣き顔が完成。
僅かな乙女としての羞恥心と自尊心が勇気をだして出てきてくれたので、どうにか藍染隊長には退場願おう。
その時だった。
花江はるは、今の状況に混乱していた。
なぜなのか。藍染隊長が私を抱きしめてきた。
「あまり思い詰めるな」
抱きしめるその強い力と、放たれた言葉。その全てがお母さんのように優しかった。
たまらず私は藍染隊長の胸の中で、乳飲み児のように思い切り声を上げ涙を流して泣いた。
甲高く声を上げて泣くのには疲れてきてきたけれど、なおもヒックヒックと小さくしゃくり上げて泣き続ける私に、藍染隊長は、また頭を撫でながら、なおも強く抱き締めてくれる。
感覚的に藍染隊長の召し物は私の涙や洟とかで汚くなってしまった。本人は気にしてない様子だけど。
(その優しさがつらいなあ)
「僕もだよ」
藍染隊長の優しさを実感して、私の心の卑屈なところをつついたお陰で私の大号泣が第二章に入りかけた、その瞬間に頭の上から藍染隊長の声がした。
びっくりして泣きやんだ私に、藍染隊長は今から言うこれは事実だぞ、と念押しするよう再び同じ言葉を口から放った。
「僕もだよ。はるくんが、僕のためを思って行動した優しさの結果が、はるくんを苦しめるのがつらい」
びっくりして、なおも固まっている私に藍染隊長はちり紙で私の顔を綺麗にしてくれた。
もうこれ以上泣くなよ、と言わんばかりに硬めの材質のちり紙でゴシゴシ拭かれて鼻の下が痛い。
あれ? 今、なんかサラッと名前で呼ばれた?
固まっていた私を現実に戻す衝撃が今になって襲いかかった!
しかし、硬直からとけてようやく藍染隊長とちゃんと向き合う気になった私は、優しさの中に何か苦しみを秘めた、困ったように笑う藍染隊長を見てたまらず胸が締め付けられた。
「藍染隊長は、私の事をどのように思われているのでしょうか……?」
自信の無い私は色んな答え方ができる質問をしてしまったが、聡い藍染隊長は、私の気持ちを最初から見抜いていたらしい。
「花江くんは、ちゃんと五番隊に入れる実力があるのに自信がなくて、自己評価がとても低く、自分に厳しいかと思いきや自己管理が甘いが故に体調不良で倒れてしまったね。周りの目をすごく気にするのに、周りのことをきちんと見えていないのも気になるな」
私みたいな下っ端でもここまで見てもらえていたなんて、顔と名前なんか覚えてなさそうとか思っててすみませんでした!
藍染隊長の言葉がめちゃくちゃ全身に刺さった私は、どうにか藍染隊長のパーソナルスペースから抜け出そうとした。よく考えたら、目覚めた時からずっと近くにいて、冷静になってきた私には居心地が悪すぎる。
もぞもそ、キョロキョロとしはじめた私に藍染隊長は何かを察して距離を詰めてきた。
「逃がさないよ。はるくん」
(よく考えたら、私の部屋の前って他の隊員の部屋とか、通路とかの関係でめちゃくちゃ人通りあるのに今日は廊下が軋む音ひとつしないなー。
今日の午後までに出さなきゃ行けない書類とか取りに来て欲しいなー。)
物理的に逃げられないのなら、思考は逃げよう。そう思って外に意識を向けたら上記の事実に気づき、震えた。
「逃げるな、はる。僕を――私を見なさい」
この胸の高鳴りは、元から藍染隊長を慕っていた心からくるトキメキなのか、それともこのある種の危機的状況からくる警鐘なのか。
藍染隊長の瞳と視線が交差したあと、分析する思考をやめ、藍染隊長を見つめた。
【了】
2026/03/12
なぜならば、自分はなぜか布団に寝ていて、藍染隊長に顔をのぞき込まれていたからだ。
(なんで?! 藍染隊長がいるの?! てか近い! めっちゃ顔と体ちかい! すっごいいい匂いするしなんだこれ)
藍染隊長に微かに淡い、恋心に似た思いを抱いていたが如何せんモブでヒラな自分。
真面目な所が取り柄でそこを評価してもらいなんとか五番隊に所属できたが、書類仕事くらいしか出来ないから、席官以下の役職なし。藍染隊長にはなんとも思われて無さそう〜、顔と名前なんか覚えられて無さそう〜とか思っていた。
藍染隊長が近いのにびっくりなのと、あと私はなんでこんな太陽が高い時間から寝てるんだ?
「花江くん、目が覚めたようでよかった」
今の状況を把握してから、数秒の逡巡を知ってか知らずか、藍染隊長は目が覚めた私を見て、ホッとしたように静かに微笑んだ。
これはなんだ? 幻覚? 白昼夢?
「花江くん。今はそんなに忙しくないのだから無理はするな」
藍染隊長はそういいながら、私の頭に手を乗せ、髪の流れにそって、その手を滑らせた。
――これって頭ポンポン?
「あの、藍染隊長……?」
おそるおそる私が声を出すと、思ったよりか細い弱気な声が出た。
その声音を聞いたからか。藍染隊長はなぜか、ますます強く頭を撫でてきてから、その手を自らの頬に添えて頬杖にし、藍染隊長は誰もが安心するような微笑みに顔を書き換えた。
「花江くんは、五番隊の他の隊員が分からない書類だとか雑用を全部引き受けて、知らず知らずのうちに心労を溜めていてしまったらしい。朝、君の部屋の前を通りがかった四番隊の隊員が居たからよかったものの、それがなかったら重大なことになっていたかもしれないよ」
そう言われてみれば、ここ最近は熱っぽかったりだるい感じがして仕事が捗らなかった気がする。
朝、いつもより重い体を無理やり起こしたけど、辺りが極彩色に明滅、歪んでからその後のことは覚えていない。
藍染隊長の言い方的に、倒れて頭を強く打った上に、打ちどころが悪かったか、熱発のせいでかなりヤバめな状況だったのだろう。
「すみません。……藍染隊長のために、ひいては五番隊、護廷十三隊……いえ、尸魂界<みんな>のために私が役立てることってこれくらいしかないんです……っ」
言いながらなんか情けなくなってきた。だって今やってる書類なんか魂魄の実数と今後の予想の推移などが色んな隊員がバラバラに報告してくるのを、ひとつにまとめてるだけだし……。
体調が悪いのもあってか、やってる仕事は大したことないのに、藍染隊長の時間を奪っている事がとても申し訳なく思い、心に暗く重い澱が積みあがってきた。
気づいたら少し涙が流れてきていた。
「花江くん?! すまない、少し強く言いすぎたね」
「っ、グズ……。藍染隊長は優しいですね」
私が涙を流している、と認識した藍染隊長は慌てて辺りを見渡し、ちり紙を見つけて手渡してくれた。
私は、一度崩れた精神<メンタル>によってそのちり紙を渡してくれる優しさも申し訳なくなってきて、早くここから消えて無くなりたくなっていた。
藍染隊長も、看病と見張りは四番隊の人とかに任せてくれたらいいのに。なんで憧れの人に近づくことができたかと思ったら、こんな醜く情けない姿なんだろう。そこにいられたら泣けないじゃない……。
洟もすごい出てきて、ぐちゃぐちゃな泣き顔が完成。
僅かな乙女としての羞恥心と自尊心が勇気をだして出てきてくれたので、どうにか藍染隊長には退場願おう。
その時だった。
花江はるは、今の状況に混乱していた。
なぜなのか。藍染隊長が私を抱きしめてきた。
「あまり思い詰めるな」
抱きしめるその強い力と、放たれた言葉。その全てがお母さんのように優しかった。
たまらず私は藍染隊長の胸の中で、乳飲み児のように思い切り声を上げ涙を流して泣いた。
甲高く声を上げて泣くのには疲れてきてきたけれど、なおもヒックヒックと小さくしゃくり上げて泣き続ける私に、藍染隊長は、また頭を撫でながら、なおも強く抱き締めてくれる。
感覚的に藍染隊長の召し物は私の涙や洟とかで汚くなってしまった。本人は気にしてない様子だけど。
(その優しさがつらいなあ)
「僕もだよ」
藍染隊長の優しさを実感して、私の心の卑屈なところをつついたお陰で私の大号泣が第二章に入りかけた、その瞬間に頭の上から藍染隊長の声がした。
びっくりして泣きやんだ私に、藍染隊長は今から言うこれは事実だぞ、と念押しするよう再び同じ言葉を口から放った。
「僕もだよ。はるくんが、僕のためを思って行動した優しさの結果が、はるくんを苦しめるのがつらい」
びっくりして、なおも固まっている私に藍染隊長はちり紙で私の顔を綺麗にしてくれた。
もうこれ以上泣くなよ、と言わんばかりに硬めの材質のちり紙でゴシゴシ拭かれて鼻の下が痛い。
あれ? 今、なんかサラッと名前で呼ばれた?
固まっていた私を現実に戻す衝撃が今になって襲いかかった!
しかし、硬直からとけてようやく藍染隊長とちゃんと向き合う気になった私は、優しさの中に何か苦しみを秘めた、困ったように笑う藍染隊長を見てたまらず胸が締め付けられた。
「藍染隊長は、私の事をどのように思われているのでしょうか……?」
自信の無い私は色んな答え方ができる質問をしてしまったが、聡い藍染隊長は、私の気持ちを最初から見抜いていたらしい。
「花江くんは、ちゃんと五番隊に入れる実力があるのに自信がなくて、自己評価がとても低く、自分に厳しいかと思いきや自己管理が甘いが故に体調不良で倒れてしまったね。周りの目をすごく気にするのに、周りのことをきちんと見えていないのも気になるな」
私みたいな下っ端でもここまで見てもらえていたなんて、顔と名前なんか覚えてなさそうとか思っててすみませんでした!
藍染隊長の言葉がめちゃくちゃ全身に刺さった私は、どうにか藍染隊長のパーソナルスペースから抜け出そうとした。よく考えたら、目覚めた時からずっと近くにいて、冷静になってきた私には居心地が悪すぎる。
もぞもそ、キョロキョロとしはじめた私に藍染隊長は何かを察して距離を詰めてきた。
「逃がさないよ。はるくん」
(よく考えたら、私の部屋の前って他の隊員の部屋とか、通路とかの関係でめちゃくちゃ人通りあるのに今日は廊下が軋む音ひとつしないなー。
今日の午後までに出さなきゃ行けない書類とか取りに来て欲しいなー。)
物理的に逃げられないのなら、思考は逃げよう。そう思って外に意識を向けたら上記の事実に気づき、震えた。
「逃げるな、はる。僕を――私を見なさい」
この胸の高鳴りは、元から藍染隊長を慕っていた心からくるトキメキなのか、それともこのある種の危機的状況からくる警鐘なのか。
藍染隊長の瞳と視線が交差したあと、分析する思考をやめ、藍染隊長を見つめた。
【了】
2026/03/12
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