17
「なあなあ。えっと、君」
「え、はい」
近くまで寄ってきた高校生達をぽかんと眺めていた影山は、花巻に声を掛けられて我に返った。続けて松川も声を掛けようとして、不意に苦笑する。
「ゴメンゴメン、いきなり知らないやつに声掛けられてびっくりしたよな」
「あーそっかゴメン。俺達怪しい者じゃ…って言ったところで怪しいのに変わりはないか」
2人の視線の先を見た影山は、警戒心剥き出しの日向に気付いた。犬であれば今にも唸り出しそうな顔だ。
「おい、失礼だろ」
「………。会ったことないと思うんすけど、なんか用ですか?」
警戒心を緩めないまま質問した日向に、花巻は頭を掻きながら答える。
「えーっと、俺達そっちの黒髪の子の先輩のチームメイトでさ。しょっちゅう話聞くわ写真見せられるわでついつい知り合いみたいな感覚でいたんだわ」
「話はともかく…、写真…?」
日向が影山のほうを見ると、影山は首を捻って考えていた。
「あー、及川さんのことなら、なんか時々撮られた気が…」
「そうそう及川。ちょくちょく北一に遊びに行ってんだろ?」
「俺がいた頃はそうでしたね」
「ああ、転校したんだっけ」
「…そんなことまで知ってるんすか」
「落ち込んでたぞー」
にやにやと笑う松川に向かって影山は眉をひそめる。
「落ち込んでたんすか? なんで嫌ってるやつがいなくなって落ち込むんすか?」
花巻と松川は一瞬目を丸くしてから吹き出した。
「マジか…っ」
「全然気付かれて、ないと、は…っ」
「気付かれてない?」
「こっちの話、だか、らっ、気にしなくていいぞ…っ」
「はあ」
ますます訳が分からなくなってきた影山は、素直に気にするのをやめる。
気にしなくていいと言いつつ笑いが止まらないらしい花巻に代わり、どうにか笑いやんだ松川が、警戒心がいまだに解けていない日向に視線を向けた。
「友達?」
「チームメイトっす」
「じゃあそっちの子達は後輩か」
松川の視線に、長身の高校生の襲来に縮こまっていた1年生達がびくっと震える。特に影山の隣に座っている鈴木が可哀想なほどに緊張しているので、影山は鈴木の頭をぽんぽんと撫でた。
それを見た松川も、ようやく笑いやんだ花巻も瞳を和ませた。
「転校しても元気そうだな」
「ずっと聞かされてたトビオちゃんの話を聞かなくなったからさ、なんとなく気になってたんだよな」
「…トビオちゃんはやめてください」
と、ここで少し警戒心を解いたらしい日向が口を挟む。
「転校しても、じゃなくて、転校したら、です」
「? 転校する前から俺は元気だ」
「体はな」
「…そんなことこの人達に言ってもしょうがねえだろ」
日向が何を言いたいのか察した影山は呆れ顔になった。呆れ顔をされたほうは膨れてそっぽを向く。この件に関しては、日向は"前回"でも"今回"でも譲ろうとしない。
2人の言い合いを見てこちらも色々察したらしい高校生2人は、揃って眉を下げる。
「なんかうちのチームメイトがすまんね」
「次何かあったら連絡してくれりゃあ止めに行く」
「え、連絡先知らないっすけど」
「じゃあラインのID教えておくからさ」
そう言って携帯を取り出した2人に釣られて、影山と日向も携帯を取り出した。
【青城1年LINE】
花:なあ
及川さん:えーなになにーどうしたのかなー?
岩泉:テンションうぜえ
及川さん:ひどっ
及川さん:うざくないよ(*`へ´*)
岩泉:その顔文字もうざい
松:確かにうざい
及川さん:まっつんまで!
花:そんなことより
及川さん:スルーしないで!?
岩泉:うぜえ
及川さん:岩ちゃんさっきからうざいしか言ってないんだけど!
花:話進めていいか?
松:いんじゃね?
及川さん:で、何?
花:【揃ってピースをしている雪ヶ丘メンバー】
花:トビオちゃんと仲良くなった
及川さん:
岩泉:
松:ちなみに周りはチームメイトだそうで
及川さん:ちょ
及川さん:えええええええええええええええええええ!?
及川:なんでトビオがいるの!?つか揃ってピースとかするキャラじゃないくせに!
岩泉:
岩泉:
松:大変!岩泉が息してないの!
花:wwwwwww
「…こんな顔見たことない」
ぽつんと呟いた及川は、もう一度載せられた画像を見直した。
写真の左側には、満面の笑みの少年と困ったように笑っている少年に挟まれ、ほんのりと笑っている影山がいる。
(急にいなくなったと思ったら…いつの間にか自然に笑うようになってるし)
「一体どこに引っ越したのさ」
現在の住所は花巻も聞かなかったらしい。あまり遠い所に行ったわけではないことは分かったが、逆に言えばそれしか分からない。
布団に突っ伏した及川は、小さく溜息をついた。
「え、はい」
近くまで寄ってきた高校生達をぽかんと眺めていた影山は、花巻に声を掛けられて我に返った。続けて松川も声を掛けようとして、不意に苦笑する。
「ゴメンゴメン、いきなり知らないやつに声掛けられてびっくりしたよな」
「あーそっかゴメン。俺達怪しい者じゃ…って言ったところで怪しいのに変わりはないか」
2人の視線の先を見た影山は、警戒心剥き出しの日向に気付いた。犬であれば今にも唸り出しそうな顔だ。
「おい、失礼だろ」
「………。会ったことないと思うんすけど、なんか用ですか?」
警戒心を緩めないまま質問した日向に、花巻は頭を掻きながら答える。
「えーっと、俺達そっちの黒髪の子の先輩のチームメイトでさ。しょっちゅう話聞くわ写真見せられるわでついつい知り合いみたいな感覚でいたんだわ」
「話はともかく…、写真…?」
日向が影山のほうを見ると、影山は首を捻って考えていた。
「あー、及川さんのことなら、なんか時々撮られた気が…」
「そうそう及川。ちょくちょく北一に遊びに行ってんだろ?」
「俺がいた頃はそうでしたね」
「ああ、転校したんだっけ」
「…そんなことまで知ってるんすか」
「落ち込んでたぞー」
にやにやと笑う松川に向かって影山は眉をひそめる。
「落ち込んでたんすか? なんで嫌ってるやつがいなくなって落ち込むんすか?」
花巻と松川は一瞬目を丸くしてから吹き出した。
「マジか…っ」
「全然気付かれて、ないと、は…っ」
「気付かれてない?」
「こっちの話、だか、らっ、気にしなくていいぞ…っ」
「はあ」
ますます訳が分からなくなってきた影山は、素直に気にするのをやめる。
気にしなくていいと言いつつ笑いが止まらないらしい花巻に代わり、どうにか笑いやんだ松川が、警戒心がいまだに解けていない日向に視線を向けた。
「友達?」
「チームメイトっす」
「じゃあそっちの子達は後輩か」
松川の視線に、長身の高校生の襲来に縮こまっていた1年生達がびくっと震える。特に影山の隣に座っている鈴木が可哀想なほどに緊張しているので、影山は鈴木の頭をぽんぽんと撫でた。
それを見た松川も、ようやく笑いやんだ花巻も瞳を和ませた。
「転校しても元気そうだな」
「ずっと聞かされてたトビオちゃんの話を聞かなくなったからさ、なんとなく気になってたんだよな」
「…トビオちゃんはやめてください」
と、ここで少し警戒心を解いたらしい日向が口を挟む。
「転校しても、じゃなくて、転校したら、です」
「? 転校する前から俺は元気だ」
「体はな」
「…そんなことこの人達に言ってもしょうがねえだろ」
日向が何を言いたいのか察した影山は呆れ顔になった。呆れ顔をされたほうは膨れてそっぽを向く。この件に関しては、日向は"前回"でも"今回"でも譲ろうとしない。
2人の言い合いを見てこちらも色々察したらしい高校生2人は、揃って眉を下げる。
「なんかうちのチームメイトがすまんね」
「次何かあったら連絡してくれりゃあ止めに行く」
「え、連絡先知らないっすけど」
「じゃあラインのID教えておくからさ」
そう言って携帯を取り出した2人に釣られて、影山と日向も携帯を取り出した。
【青城1年LINE】
花:なあ
及川さん:えーなになにーどうしたのかなー?
岩泉:テンションうぜえ
及川さん:ひどっ
及川さん:うざくないよ(*`へ´*)
岩泉:その顔文字もうざい
松:確かにうざい
及川さん:まっつんまで!
花:そんなことより
及川さん:スルーしないで!?
岩泉:うぜえ
及川さん:岩ちゃんさっきからうざいしか言ってないんだけど!
花:話進めていいか?
松:いんじゃね?
及川さん:で、何?
花:【揃ってピースをしている雪ヶ丘メンバー】
花:トビオちゃんと仲良くなった
及川さん:
岩泉:
松:ちなみに周りはチームメイトだそうで
及川さん:ちょ
及川さん:えええええええええええええええええええ!?
及川:なんでトビオがいるの!?つか揃ってピースとかするキャラじゃないくせに!
岩泉:
岩泉:
松:大変!岩泉が息してないの!
花:wwwwwww
「…こんな顔見たことない」
ぽつんと呟いた及川は、もう一度載せられた画像を見直した。
写真の左側には、満面の笑みの少年と困ったように笑っている少年に挟まれ、ほんのりと笑っている影山がいる。
(急にいなくなったと思ったら…いつの間にか自然に笑うようになってるし)
「一体どこに引っ越したのさ」
現在の住所は花巻も聞かなかったらしい。あまり遠い所に行ったわけではないことは分かったが、逆に言えばそれしか分からない。
布団に突っ伏した及川は、小さく溜息をついた。