13
4月になり、日向達は3年生になった。2年の終わり頃から各教科の先生達に繰り返し言われているが、受験の年だ。
が、
「後輩ができる!」
「おう!」
男子バレー愛好会の2人は、今のところそれを忘れている。
“前回”の通りなら、今年は3人の1年生が愛好会に入ってくるはずだ。そうすれば、愛好会は部に昇格する。
正式な部になれば、大会にも出られるし、僅かでも部費が貰える。2人が楽しみにするのも当たり前だった。
「3人はたぶんうちに入ってくれる。けど、絶対じゃないし、合わせて5人じゃ大会に出られない」
「そーいや“前”は泉達がいたな」
「あれは無理に頼み込んだからなー」
できれば助っ人無しで出場したい、と日向達は考えていた。つまり、少なくとも4人以上の新入部員が欲しい。
部員を獲得するにはアピールが必要だ。正式な部であれば、4月始めにある部活動紹介の時間に宣伝することができたが、まだ愛好会である以上それは不可能。
2人にできるのは、ポスターを作って貼ること──ただし生徒会公認ではないので、黙認して貰っている状態だ──と、
「こんにちはー!バスケ部です!」
「吹奏楽に興味ありませんかー!?」
「野球部です!初心者歓迎します!」
部活動紹介の日の放課後、よその部員達に交じってビラを配ることぐらいだった。
この放課後のアピールタイムも、正式な部、それも人数が多い部が優先的にいい場所を取るので、本来は愛好会などは隅に追いやられる。実際、日向達と同じように人数が少ない占い愛好会や歴史愛好会は、人通りの少ない場所にいた。
日向達がよその部員達に交じっていられるのは、女子バレー部の場所を少し借りているからだ。男子と女子なら新入生の取り合いにならない、と考えた日向が如月と交渉した結果、荷物運びを手伝うことと、バレーに興味がある女子がいたら紹介することという条件で許可を貰っていた。
「…それ、いいのかよ」
「いーんだよ。そもそも、小さい部と愛好会は隅っこっていう決まりはない」
「そうそう。うちの場所を貸してるんだから、文句は付けられないよ」
「………」
ふっふっふっ、と笑う日向と如月に、影山は比喩でなく一歩引いた。
1時間後。
「成果出てるー?」
先ほどまで女子生徒を熱心に勧誘していた如月が、日向達のほうに寄ってきた。
「うーん、微妙」
「2人しかいないっつうと、断られる」
返事をした2人の手にはかなりのビラが残っている。まったく減っていないわけではないにせよ、状況ははかばかしくない。
「うーん、もうアピールタイムも終わりだしなー」
そろそろ撤収しなくてはならないし、1年達もほとんどいなくなっている。
「まあ、チラシを受け取ってくれた子の中には、興味持ってくれる子もいるはずだよ。あ、うちもそろそろ撤収するから、荷物よろしくー」
若干黄昏ていた2人の背中を、如月はポンポンと叩いた。
日向達がバレー部について話がある、と職員室に呼び出されたのは、数日後の放課後だった。
「なあ、もしかして」
「うん、“前回”と同じ状況。…新入部員だ」
そわそわしながら2人が向かった先で待っていたのは、
「おお…」
「4人もいる…」
“前回”も入部してきた森と川島、鈴木の3人と、日向も見覚えがない生徒が1人。
4人の中でとりわけ緊張した顔になっているその少年は、厚木浩太と名乗った。
が、
「後輩ができる!」
「おう!」
男子バレー愛好会の2人は、今のところそれを忘れている。
“前回”の通りなら、今年は3人の1年生が愛好会に入ってくるはずだ。そうすれば、愛好会は部に昇格する。
正式な部になれば、大会にも出られるし、僅かでも部費が貰える。2人が楽しみにするのも当たり前だった。
「3人はたぶんうちに入ってくれる。けど、絶対じゃないし、合わせて5人じゃ大会に出られない」
「そーいや“前”は泉達がいたな」
「あれは無理に頼み込んだからなー」
できれば助っ人無しで出場したい、と日向達は考えていた。つまり、少なくとも4人以上の新入部員が欲しい。
部員を獲得するにはアピールが必要だ。正式な部であれば、4月始めにある部活動紹介の時間に宣伝することができたが、まだ愛好会である以上それは不可能。
2人にできるのは、ポスターを作って貼ること──ただし生徒会公認ではないので、黙認して貰っている状態だ──と、
「こんにちはー!バスケ部です!」
「吹奏楽に興味ありませんかー!?」
「野球部です!初心者歓迎します!」
部活動紹介の日の放課後、よその部員達に交じってビラを配ることぐらいだった。
この放課後のアピールタイムも、正式な部、それも人数が多い部が優先的にいい場所を取るので、本来は愛好会などは隅に追いやられる。実際、日向達と同じように人数が少ない占い愛好会や歴史愛好会は、人通りの少ない場所にいた。
日向達がよその部員達に交じっていられるのは、女子バレー部の場所を少し借りているからだ。男子と女子なら新入生の取り合いにならない、と考えた日向が如月と交渉した結果、荷物運びを手伝うことと、バレーに興味がある女子がいたら紹介することという条件で許可を貰っていた。
「…それ、いいのかよ」
「いーんだよ。そもそも、小さい部と愛好会は隅っこっていう決まりはない」
「そうそう。うちの場所を貸してるんだから、文句は付けられないよ」
「………」
ふっふっふっ、と笑う日向と如月に、影山は比喩でなく一歩引いた。
1時間後。
「成果出てるー?」
先ほどまで女子生徒を熱心に勧誘していた如月が、日向達のほうに寄ってきた。
「うーん、微妙」
「2人しかいないっつうと、断られる」
返事をした2人の手にはかなりのビラが残っている。まったく減っていないわけではないにせよ、状況ははかばかしくない。
「うーん、もうアピールタイムも終わりだしなー」
そろそろ撤収しなくてはならないし、1年達もほとんどいなくなっている。
「まあ、チラシを受け取ってくれた子の中には、興味持ってくれる子もいるはずだよ。あ、うちもそろそろ撤収するから、荷物よろしくー」
若干黄昏ていた2人の背中を、如月はポンポンと叩いた。
日向達がバレー部について話がある、と職員室に呼び出されたのは、数日後の放課後だった。
「なあ、もしかして」
「うん、“前回”と同じ状況。…新入部員だ」
そわそわしながら2人が向かった先で待っていたのは、
「おお…」
「4人もいる…」
“前回”も入部してきた森と川島、鈴木の3人と、日向も見覚えがない生徒が1人。
4人の中でとりわけ緊張した顔になっているその少年は、厚木浩太と名乗った。