10
「中学生が見学に来る?」
友人に訝しげに首を傾げられた菅原は、にこにこと頷いて見せた。
「すごく上手だしやる気もあるのにほかに部員がいない、コーチも監督もいないって言われて。あんまりにももったいないから何かしてやりたくなってさー。先生と主将の許可貰っといた」
「…すごい行動力だな」
さっさと行動している菅原に、友人──澤村は顔を引き攣らせる。
「これぐらいは普通だべー」
「そうか…?」
なんとも言えない顔をしている澤村を余所に、鞄に荷物を詰めた菅原は立ち上がった。
「じゃ、迎えに行ってくる」
──良かったらうちの部活に来てみないか?
連絡先を交換した菅原からのラインでそう提案された日向と影山は、その日1日をそわそわとしながら過ごした。
「早く行こうぜ!」
「分かってる!」
放課後になった途端に教室を飛び出していった2人に周囲が驚いていたが、そんなことを気にする余裕はない。
「あの2人のことだから、バレー関係だな」
「そうじゃなかったら逆にびっくりするよ」
そんな中、関向と泉だけは、平然とバレー馬鹿2人を見送った。
バスに乗って烏野まで来た日向達は、懐かしい校門を目指して歩いていた。
門まで近付くと、菅原が待っているのが見え、2人は慌てて駆け寄る。
「すいません!」
「遅れました!」
「いやいや、早かったべー」
にこにこと頭を撫でられ、2人は思わずはにかんだ。
「…!」
何故かさらに撫でられたが、“前回”でも似たようなことがよくあった2人はあっさりと受け入れる。
(スガさん撫でるの好きだなあ)
(懐かしいな、これ)
(あああああかわいいなあ!)
約1名が心の中で荒ぶっていたものの、表面上は穏やかに体育館に向かった3人だった。
「細いなー中学生」
「ちゃんと食ってるかー?」
体育館に着いた2人の中学生は、話を聞いていたらしいバレー部員達に取り囲まれていた。“前回”は大して縁のなかった面々に、頭を撫でられ頬をつつかれ、日向も影山も困惑する。
「おい、困らせんなよ」
そこに割って入ってきたのは、がっしりとした体つきの少年だった。
「えー」
「えー、じゃない」
部員を散らした少年──現主将である黒川は、日向達に向き合う。
「悪いな」
「い、いえ」
「大丈夫っす」
先ほど挨拶を交わしたばかりの黒川に謝られ、2人はふるふると首を振った。
「………」
無言で手を伸ばした黒川は、途惑う2人の頭を撫でる。周囲から抗議の声が上がった。
「黒川ばっかずるいぞー」
「お前らは遠慮がなさすぎるんだよ」
と、言い合っている上級生達の後ろで、菅原が手招いているのが見え、日向と影山はそちらに移動する。そして、
「「!!」」
澤村と東峰、そしてその後ろにいた清水を発見し、心の中で歓声を上げた。
嬉しそうに寄ってくる中学生2人に、澤村と東峰は訝しげに菅原を見る。
「…俺が何か言ったわけじゃないべ? と言うか、なんであんな嬉しそうな顔されるんだうらやましい」
「「………」」
チームメイトの新たな側面が見えてしまった瞬間だった。
「…よく分からないけど」
不意に、黙っていた清水が真顔で発言する。
「清水?」
「とりあえず、かわいい」
「…うん、まあ」
「そうだね…」
マネージャーの新たな側面まで見てしまった2人は、この件はもう考えないことにした。
「「初めまして!」」
「初めまして」
「あ、えーと、初めまして」
「こんにちは」
とりあえず、ぺこんと頭を下げた中学生達は、確かにかわいかった。
友人に訝しげに首を傾げられた菅原は、にこにこと頷いて見せた。
「すごく上手だしやる気もあるのにほかに部員がいない、コーチも監督もいないって言われて。あんまりにももったいないから何かしてやりたくなってさー。先生と主将の許可貰っといた」
「…すごい行動力だな」
さっさと行動している菅原に、友人──澤村は顔を引き攣らせる。
「これぐらいは普通だべー」
「そうか…?」
なんとも言えない顔をしている澤村を余所に、鞄に荷物を詰めた菅原は立ち上がった。
「じゃ、迎えに行ってくる」
──良かったらうちの部活に来てみないか?
連絡先を交換した菅原からのラインでそう提案された日向と影山は、その日1日をそわそわとしながら過ごした。
「早く行こうぜ!」
「分かってる!」
放課後になった途端に教室を飛び出していった2人に周囲が驚いていたが、そんなことを気にする余裕はない。
「あの2人のことだから、バレー関係だな」
「そうじゃなかったら逆にびっくりするよ」
そんな中、関向と泉だけは、平然とバレー馬鹿2人を見送った。
バスに乗って烏野まで来た日向達は、懐かしい校門を目指して歩いていた。
門まで近付くと、菅原が待っているのが見え、2人は慌てて駆け寄る。
「すいません!」
「遅れました!」
「いやいや、早かったべー」
にこにこと頭を撫でられ、2人は思わずはにかんだ。
「…!」
何故かさらに撫でられたが、“前回”でも似たようなことがよくあった2人はあっさりと受け入れる。
(スガさん撫でるの好きだなあ)
(懐かしいな、これ)
(あああああかわいいなあ!)
約1名が心の中で荒ぶっていたものの、表面上は穏やかに体育館に向かった3人だった。
「細いなー中学生」
「ちゃんと食ってるかー?」
体育館に着いた2人の中学生は、話を聞いていたらしいバレー部員達に取り囲まれていた。“前回”は大して縁のなかった面々に、頭を撫でられ頬をつつかれ、日向も影山も困惑する。
「おい、困らせんなよ」
そこに割って入ってきたのは、がっしりとした体つきの少年だった。
「えー」
「えー、じゃない」
部員を散らした少年──現主将である黒川は、日向達に向き合う。
「悪いな」
「い、いえ」
「大丈夫っす」
先ほど挨拶を交わしたばかりの黒川に謝られ、2人はふるふると首を振った。
「………」
無言で手を伸ばした黒川は、途惑う2人の頭を撫でる。周囲から抗議の声が上がった。
「黒川ばっかずるいぞー」
「お前らは遠慮がなさすぎるんだよ」
と、言い合っている上級生達の後ろで、菅原が手招いているのが見え、日向と影山はそちらに移動する。そして、
「「!!」」
澤村と東峰、そしてその後ろにいた清水を発見し、心の中で歓声を上げた。
嬉しそうに寄ってくる中学生2人に、澤村と東峰は訝しげに菅原を見る。
「…俺が何か言ったわけじゃないべ? と言うか、なんであんな嬉しそうな顔されるんだうらやましい」
「「………」」
チームメイトの新たな側面が見えてしまった瞬間だった。
「…よく分からないけど」
不意に、黙っていた清水が真顔で発言する。
「清水?」
「とりあえず、かわいい」
「…うん、まあ」
「そうだね…」
マネージャーの新たな側面まで見てしまった2人は、この件はもう考えないことにした。
「「初めまして!」」
「初めまして」
「あ、えーと、初めまして」
「こんにちは」
とりあえず、ぺこんと頭を下げた中学生達は、確かにかわいかった。