7
夏休みが終わり、新学期が始まった。
途中まで影山と登校した日向は、職員室に行く相棒と別れ、教室に向かう。
「おはよー!」
「おはよ」
「おはよう!」
戸口の近くで駄弁っていた関向と泉に声を掛けると、2人が振り向いて挨拶を返した。
こちらに踏み出した2人だったが、ふいに目を丸くする。
「「あ」」
「え?」
「なーみんな聞い「うお!?」
クラスメイトの1人が騒々しく飛び込んできた。泉達が驚いた理由はこれらしい。背後から衝突されかけた日向は、慌てて飛び退いた。
「危な!」
「ごめんごめん! それでさー」
軽い調子で謝ったクラスメイトは、教室を見回して何故か得意気に叫ぶ。
「さっき先生が言ってたんだけど、うちのクラスに転校生が来るって!」
「えー!?」
「それ本当?」
「男? 女?」
途端に興味を示すほかのクラスメイト達に、新しい情報をもたらした少年が得意満面になった。が、
「あいつ、うちのクラスになったんだな」
「そう言えば、今日は翔ちゃんが連れてきたの?」
「玄関までは一緒に来た!」
その状況を意図せずに壊す者が3人。
周りの視線が日向達に集まり、知らせをもたらしたクラスメイトは若干むくれた。
「え、3人の知り合い?」
「俺んちの向かいに引っ越してきた」
「俺らも何回か一緒に遊んだことあるんだ」
「翔陽とは前から仲良かったらしい」
3人の説明に、質問をした者は納得しかけ、ふと首をかしげる。
「一緒に来たって、どうやって?」
「どうやってって、自転車」
「…日向の家から学校って、山越えしないといけないんじゃなかったっけ」
「うん」
「………」
まだ見ぬ転校生が、日向に負けず劣らずの体力馬鹿であることが発覚した瞬間だった。
チャイムと共に入ってきた担任教師は、後ろにいた影山を教室に招き入れた。
「もう聞いたかも知れないが、転校生だ。影山、簡単に自己紹介してくれるか?」
「はい」
声を掛けられた影山は頷き、一歩前に出る。
「影山飛雄です。北川第一中から来ました。よろしくお願いします」
興味津々な視線を向けられていることに気づいた中身25歳の少年は、にこりと笑って見せた。
幼さが残る顔に浮かぶ柔らかい笑みに、クラスメイト達が思わず固まる。耐性ができていた泉と関向、日向の3人だけは、周りの反応に思わず吹き出しかけたが。
「影山の席は窓際の最後部にしたからな」
担任にそう言われた影山が視線を向けると、窓際の席にいた日向がひらひらと手を振る。
影山も小さく手を振り返し、日向の後ろの空席に向かった。
休み時間になった途端、影山の周りに人がわらわらと集まる。
「夏休みに引っ越したの?」
「なんで引っ越してきたんだ?」
「日向とはいつから知り合い?」
「影山さ、タッパあるしバスケ部入らねえ? 泉もいるし」
質問の嵐の中、いきなり勧誘を始めたのは、先程転校生の知らせを持ってきた男子だった。
「おい、抜け駆けずるい! 影山、サッカー興味ある?」
「バドミントンもあるぞ!」
男子達がわいわいと盛り上がる中、隣の席になった少女が問い掛ける。
「影山くんは、前の学校で何の部活に入ってたの?」
「ん? バレー部だったけど」
その返答に、周りが気の毒そうな顔になった。
「あー、うちバレー部ないんだよ」
「愛好会はあるんだろ? 日向に聞いた」
名前が出たことで視線を向けられた日向は、にかっと笑ってピースをする。
「…日向あああ!」
「抜け駆け禁止いいい!」
「抜け駆けも何も、知り合った理由がバレーだしー」
「言い方ムカつく!」
(賑やかなクラスだな)
ぎゃあぎゃあ言い合うクラスメイト達を余所に、1人呑気にしている影山であった。
途中まで影山と登校した日向は、職員室に行く相棒と別れ、教室に向かう。
「おはよー!」
「おはよ」
「おはよう!」
戸口の近くで駄弁っていた関向と泉に声を掛けると、2人が振り向いて挨拶を返した。
こちらに踏み出した2人だったが、ふいに目を丸くする。
「「あ」」
「え?」
「なーみんな聞い「うお!?」
クラスメイトの1人が騒々しく飛び込んできた。泉達が驚いた理由はこれらしい。背後から衝突されかけた日向は、慌てて飛び退いた。
「危な!」
「ごめんごめん! それでさー」
軽い調子で謝ったクラスメイトは、教室を見回して何故か得意気に叫ぶ。
「さっき先生が言ってたんだけど、うちのクラスに転校生が来るって!」
「えー!?」
「それ本当?」
「男? 女?」
途端に興味を示すほかのクラスメイト達に、新しい情報をもたらした少年が得意満面になった。が、
「あいつ、うちのクラスになったんだな」
「そう言えば、今日は翔ちゃんが連れてきたの?」
「玄関までは一緒に来た!」
その状況を意図せずに壊す者が3人。
周りの視線が日向達に集まり、知らせをもたらしたクラスメイトは若干むくれた。
「え、3人の知り合い?」
「俺んちの向かいに引っ越してきた」
「俺らも何回か一緒に遊んだことあるんだ」
「翔陽とは前から仲良かったらしい」
3人の説明に、質問をした者は納得しかけ、ふと首をかしげる。
「一緒に来たって、どうやって?」
「どうやってって、自転車」
「…日向の家から学校って、山越えしないといけないんじゃなかったっけ」
「うん」
「………」
まだ見ぬ転校生が、日向に負けず劣らずの体力馬鹿であることが発覚した瞬間だった。
チャイムと共に入ってきた担任教師は、後ろにいた影山を教室に招き入れた。
「もう聞いたかも知れないが、転校生だ。影山、簡単に自己紹介してくれるか?」
「はい」
声を掛けられた影山は頷き、一歩前に出る。
「影山飛雄です。北川第一中から来ました。よろしくお願いします」
興味津々な視線を向けられていることに気づいた中身25歳の少年は、にこりと笑って見せた。
幼さが残る顔に浮かぶ柔らかい笑みに、クラスメイト達が思わず固まる。耐性ができていた泉と関向、日向の3人だけは、周りの反応に思わず吹き出しかけたが。
「影山の席は窓際の最後部にしたからな」
担任にそう言われた影山が視線を向けると、窓際の席にいた日向がひらひらと手を振る。
影山も小さく手を振り返し、日向の後ろの空席に向かった。
休み時間になった途端、影山の周りに人がわらわらと集まる。
「夏休みに引っ越したの?」
「なんで引っ越してきたんだ?」
「日向とはいつから知り合い?」
「影山さ、タッパあるしバスケ部入らねえ? 泉もいるし」
質問の嵐の中、いきなり勧誘を始めたのは、先程転校生の知らせを持ってきた男子だった。
「おい、抜け駆けずるい! 影山、サッカー興味ある?」
「バドミントンもあるぞ!」
男子達がわいわいと盛り上がる中、隣の席になった少女が問い掛ける。
「影山くんは、前の学校で何の部活に入ってたの?」
「ん? バレー部だったけど」
その返答に、周りが気の毒そうな顔になった。
「あー、うちバレー部ないんだよ」
「愛好会はあるんだろ? 日向に聞いた」
名前が出たことで視線を向けられた日向は、にかっと笑ってピースをする。
「…日向あああ!」
「抜け駆け禁止いいい!」
「抜け駆けも何も、知り合った理由がバレーだしー」
「言い方ムカつく!」
(賑やかなクラスだな)
ぎゃあぎゃあ言い合うクラスメイト達を余所に、1人呑気にしている影山であった。