ポッキーゲームしよ!
エクラは、自室の机の上に何やら赤い菓子の箱が置いてあるのを見つけた。
「へぇ〜っ、ポッキーだ。久しぶりに見たなあ……どうしたんだろ、これ」
箱を手に取り裏表に回して眺めてみる。
それは召喚師の元居た世界で作られているもので、アスクに来てからは目にする事は勿論、口にする事もなく懐かしさが込み上げた。
「折角置いてあるんだし有難くもらおうかな」
***
アルフォンスはエクラの部屋にある目的のために向かっていた。
部屋の前につき、ノックをする。
「エクラ、居るかい?」
「あぁ、鍵開いてるから勝手に入っていいよ」
部屋の奥からエクラの声がする。
中に入ると、風呂上がりらしいエクラがゆったりとした服装で机に向かって仕事をしていた。
「どうしたのこんな時間に。何かあった?」
濡髪のままニコリと微笑みかけてくる。湯気に当てられた頬がほんのり桜色で、思わずドキリとしてしまう。
アルフォンスは何となく要件を切り出し難く、適当な話をし、エクラは書類に何やら書き込みながら相槌を打った。
暫くして、召喚師は王子の方を向くと、訝しげに問いかけてきた。
「何かきみ、、ソワソワしてない?気になる事でもある?」
答えるタイミングは今しかないと思い、アルフォンスは応えた。
「実は、君の机の上に置いておいたお菓子のことなんだけれど……」
「あ!あれ?アルフォンスが置いたの?……さっき食っちゃったな……」
「えっ?!全部?!」
「いや、まだ入ってると思うけど。ほしいの?」
エクラは机の中をゴソゴソと探ると、中身が半分程になったポッキーの箱をポイ、と投げて寄越した。
全部食べられなくて本当に良かったと思った。
「あの、さ、エクラ。今日が何の日か知っているかい?」
「ん……?今日……11月11日?なんだろう…誰かの誕生日とかそういうこと?」
エクラは全く心当たりがないようで頭の上に「?」が浮かんだ顔をしている。
「ポッキーの日というらしいんだ」
アルフォンスは真剣に説明する。
「君の世界のことを調べていたら、文献に記載されていてね。11月11日はポッキーというお菓子を愛し合う者同士が咥えて食べさせ合う儀式を行う日だと書かれていた」
「おー!なるほどね、だから置いてあったのか。ははは、確かにそんな遊びあったあった。かなり湾曲して伝わってるようだけど。
……きみ、そういうアツアツカップル行事みたいなの好きなんだ、ふふ、意外だな。まぁどっかで好きな様にやってくればいいんじゃない?」
エクラはくすくすと機嫌が良さそうに笑っている。
「だから、やりたいなと思って。僕と、君で」
「……ンッ?!ぼくと、、??きみで?何で?ちょっと意味がわかんねぇや……」
「愛し合う者同士でする儀式なんだろう?丁度良い相手だと思う」
目を輝かせるアルフォンス。
「え、……ぼくらって愛し合ってる事になってんの……?」
顔が引き攣るエクラ。
アルフォンスはどうしても「ポッキーゲーム」というのをやってみたいらしい。
しかもその為に異界から菓子を取り寄せたというから驚きである。
エクラは、ポッキーを1本箱から出すと端を口に咥えてみせる。
「はい、じゃ、ほら、がんばってここまで来て。」
しかしアルフォンスは怪訝な表情で、答えた。
「それで、僕はどうしたらいいんだい?」
ポッキーゲームの方法は書物に記載がなかったらしい。エクラはめんどくせえな……と思いつつ、
菓子を両側から食べていき、最後に唇が触れるかどうかで遊ぶものだと教えてやる。
「成程……よく分かった、やってみるよ」
アルフォンスは逆側から咥えるとぽりぽりと齧っていく。ポッキーは少しずつ短くなる。
こんなの、オトコふたりでやるもんじゃないだろ……そう思っていると、
ふいに至近距離のアルフォンスとバチリと目が合った。
一瞬、ふたりして恥ずかしさが込み上げてしまい、菓子がポキ、と小さな音を立てて折れた。
「あ。折れちゃった……ザンネン」
「結構難しいんだね、、最後までいきたかった」
アルフォンスはシュンとしてしまった。
「もしかして……きみ、ゲームがしたかったんじゃなくて、、ちゅーがしたかったの?」
エクラは最近は忙しくしていてアルフォンスの要求に応える事が少なかったのを思い出した。
「!! ち、ちゅーって……!…………うん、……。そうだね、、君、中々相手をしてくれないし」
アルフォンスは顔に手をやって溜息をついた。
「なんだあ……分かったよ、ちゅー、してやるから機嫌直してよ、ね」
エクラは、アルフォンスの肩に腕を回すと少し引き寄せた。
そして慰めるように一度触れるだけのキスしてやり、少しずつ何度も柔らかく食むように唇を啄んでいく。
ちゅ、ちゅ、と甘い音してくるとアルフォンスは次第にむず痒い感覚になってくる。
(もっと……深く、して欲しい……)
アルフォンスが口を開いてエクラの口内に舌を差し込むと、エクラは ふ、と一瞬微笑んで、応えるように舌を絡ませてくる。舌先で遊んだかと思うと、また深く吸い付いてくる唇。
「……ふ……っン………はっ…」
ちゅくちゅくといやらしい水音と、熱を孕んだ吐息。
蕩けるような感触に我慢ならなくなり、アルフォンスは思わずエクラの服のなかに手を入れ、白い身体を弄りだす。
「おっと、」
その瞬間、エクラはアルフォンスからぱっと離れると、にっこりと微笑んだ。
「明日早いんだった。今日は身体に負担をかけたくないから、、おしまい」
「エクラ?!そんな、、こんな所でっ……あんまりだ」
身体の興奮とは裏腹に、ガックリと肩を落とすアルフォンス。
「はは、ちゅー、出来て良かったね。…おやすみ」
エクラはさっさとアルフォンスを追い出すとベッドに入ってスヤスヤと眠りにつき、
アルフォンスは、悶々とした眠れない夜を過ごしたのだった。
おしまい
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