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他人護衛 ヒトオモリ

「さて」

 久しぶりにこの地を踏みしめたが、これは。ふむ。やけに騒がしい。前回来たときはこんなでは無かった筈だが。まあさほど気に留めることでも無いだろう。

 暫くがやがやと喧しいまち中を進む。真っ直ぐ奥まで伸びたみちの左右にはもじが書かれたかんばんを掲げているみせの数々がみっしりと並んでいる。しかし一つも理解はできない。様子を見なければ。どこかに入ってみるかと思い立ち、葉色のはたが旗めくみせへ立ち入る。

 ふうむ、そこそこ騒がしい。空いているいすが一つしかない。つまりあそこに座るしか無いのだろう。かこんといすを揺らしながらよじ登って座る。

 「いらっしゃい。……子一人か?親はどうしたんだ」

 「それは所持していない。ここは何のみせだ」

 「変な餓鬼だな。払える金があるのなら別だがねえのなら帰ってくんな」

 隣の男が言う。

 「こんな汚ねえ餓鬼つまみ出すぐらいすりゃあいいだろうが、ええ?主人さんよ。おら、出てけ出てけ」

 と手を引かれる。

 「離せ」

 「は?」

 「汚らわしい人間の分際で」

 そのことばが癪に障ったらしく、おとこは激昴した。そしてそのおとこのなかまらしき者がわらわらと集まってくる。

 「聞き捨てならねえな。誰にそんな言い草を吹き込まれた」

 「貴様達だ」

 「おい、この餓鬼とち狂ってんじゃねえか」

 「こんな餓鬼一人死んでも誰も損しねえよなあ」

 「身寄りもねえしな」

 おとこはぱっはっはと笑う周りのなかま達に囲まれてぐるりとてんないを見渡す。きゃく達は各々めを逸らし、関わらないようにしている。

 「あは、満場一致だな」

 ちゃきとかたなを抜き出し片手で振り上げる。
 ああ、やはり。

 「おやすみだ糞餓鬼」

 振り下ろす――その寸前に視界の端で一人が動くのを見た。
 何をするのかと思ったがその刹那、がいいいいいんというおとが鳴り先程の人間がおとこのかたなをかたなで受け止めていた。

 「危ないじゃないですか、こんな事したら」

 「なんだ貴様。邪魔だ、どけ」

 「ふむ、このお嬢ちゃんに手を出さないというのなら退きましょう」

 「馬鹿か貴様。邪魔するなら貴様とて殺す」

 「邪魔致しましょう。ええ。安心してください、お嬢ちゃん。僕はとても弱いので」

 その言葉を皮切りに二人は争い始めた。周りにいた仲間達は徐々にそれに加わって邪魔をした男を消耗させていく。
 


 どのくらい経っただろうか。多勢に無勢も良いところ、邪魔男はぼろぼろになってしまっていた。はあぜえひゅうという呼吸音が聞こえるが、決して膝を着こうとはしなかった。

 「なんなんだお前!気持ち悪い」

 「社会的弱者です、あはは」

 こちらに目線だけ寄越して言う

 「安心してくださいね」
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