置いてけぼりにされてから、時間がどのぐらい過ぎたのか分からない。しかし、爆発音やら何やらの音は聞こえなくなっていた。
その代わり、前触れもなく上空からポツポツと不定期に水滴が落ちてくるようになってきていた。
迎えに来るといってくれたレオナルドはいつまでたっても来ることは無く、遥菜は喧騒の中に向かって行った彼に、大丈夫かな。と不安がだんだんと募って来た。
「様子……見に行った方がいいよね……」
誰かに問うわけでもなく独り言を呟いて、ホコリを叩きながら立ち上がって元の場所へ足を運んだ。
「え……？ なんで？」


ずっと日陰にいたからか、ビルの隙間から眺める光に眩しさを感じながら、大通りに出た遥菜の目は見開かれた。
さっきまであんな騒ぎがあったはずなのに、何事も無かったかのように人が徘徊していた。
しかも、人間以外の異形も徘徊しているし……この場所は一体なんなの？
「ヘルザレムズ……ロッド……」
茫然としながら遥菜はザップが呼んでいた街の名前を口にした。
「あっ！いた！どうして待ってなかったんですか？」
「え、あ。レオナルドさん！……と？後ろの2人は誰、なんですか？」
遥菜は探し人の声に振り向くと、背が高く赤髪で、メガネをかけたガタイのいい男性と、黒髪で頬に傷のある、細くやつれたハンサム顔の男性を連れていた。
「あ、この人達はボクの上司で、クラウスさんとスティーブンさんです」
「初めましてお嬢さん。私はクラウス・v・ラインヘルツと申します」
「俺はスティーブン・A・スターフェイスだ。よろしく」
「あ、えっと、私の名前は遥菜です。よ、よろしくお願い致します……」
レオナルドは体格差のある2人を紹介して、遥菜は名乗って頭を下げる。
そして、疑問に思っていた事を三人に問いかけた。
「あ、あの！ここって日本……じゃないんですか？人じゃない人がいっぱい……！！」
「ニホン……？ってあの東洋のジャパニーズ？」
レオナルドは首を傾げるも、思い出したように遥菜に問いかける。
「そうです！それでここは一体……？」
「お嬢さん、今君は何語で話してる？」
質問に答えるより先に、クラウスは確認というように、遥菜に訊ねる。
「え？何語って……に、日本語……ですけど……」
「日本語だって！？俺達は確かに英語で会話している。彼女の語源だって流暢な英語そのものだ……。一体どうなっているんだ？分かるか、クラウス」
「いや……私にも分からない」
「え？え？なに？私英語で喋ってるの！？」
遥菜は彼らの言っている事が分からず、耳に聞こえてくる言語に驚きを隠せず、キョロキョロと2人を見回す。
「と、とりあえず、詳しい話はライブラでしませんか？」
互いの言語が認識上、相違しているのにも関わらず、会話が成立している事に首を捻っているクラウスとスティーブンにレオナルドは提案し、頷く二人と共にエスコートされながら、遥菜はその場を移動した。
そして、その行動を指し示すかのように不定期に落ちはじめていた水滴は量を増して、本格的に雨が降り始めたのだった。