血界戦線
「ハロー。設定を見ていく?」
「ここは、君に関しての資料だ。己を知ることはいい機会だと思うよ」職業:高校三年のアルバイター
年齢:10代後半
バイトの帰り道、ひょんな事からHLに来てしまったヒロイン。
右も左もわからず、異形が蠢く世界に来てしまった少女は、知り合った少年が属している組織に保護されたのだったーー。
【レオナルド・ウォッチが恋愛対象です】
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裏路地や店の中を通りながら、四方に扉が付いた空間に入り、ひとつの扉を抜けると開けた室内に着いた。
室内には観葉植物が陽の光に当たる場所に置かれ、パソコンが鎮座したデスクがひとつと、デスク付近に皮のソファが向かい合い、その真ん中には膝上程のある机が挟まれていた。
「ほぇ……」
「驚きますよね。ボクも初めて来た時はビックリしちゃいましたよ」
エレベーターに乗ったわけではないのにも関わらず、ビルの高層にある室内に入ったことに対して、瞼を瞬かせていると、レオナルドが顔を覗かせて微笑む。
「取り敢えず、君の事を教えて貰おうかな。いいかな?」
「はい。大丈夫です」
スティーブンはソファに腰掛け、遥菜に向かいに座るように進める。
遥菜がおずおずとソファに座ると、スティーブンの隣にクラウスが腰掛け、遥菜の横にレオナルドが座った。
全員が腰かけると、「さて」とスティーブンは前置きをした。
「君の発言と現状から把握するに、ニホンという場所からやって来て、HLという場所を知らない。そして、どうしてか言語が違うのに相互理解が出来ていることから、日常会話が可能……だという事が分かった」
両手を組んだスティーブンは真っ直ぐ見つめながらまとめ、遥菜に質問をする。
「それで、ここに来た時の記憶とかはあるかい?」
「えっと……、アルバイトの帰りに事故に合って、気が付いたら来ていた。みたいな……?」
不思議そうに尋ねたクラウスに応えようとも、本人でさえ、どうして来れたのかが分からないため、出来事を話すしかなく、首を捻りながら答える。
「なるほど……。では君がいた場所でのニューヨークの様子はどうなんだ?」
「ニューヨーク……そう、ですね……、普通だと思います」
「普通? 何か異変があったとかはないって事かい?」
メガネを曇らせたクラウスの質問に遥菜は答えると、首を傾げたスティーブンが問いかける。
「だと思います。ヘルサレムズロッド、なんて初耳ですし」
「なるほど……。ということは君は別の時空間からやってきた異世界人って事になるだろうね。ここはどんなことでも起きてしまう不思議な場所だ。君みたいに迷い込んでしまう事もあるだろう」
「じゃあ、どうやって帰れるか知ってますか!?」
「いや……それは残念ながら……」
「そう……ですか……」
遥菜は期待に声を上げるも、濁すようにバツの悪そうな顔をしたスティーブンの言葉に肩を落とす。
「一つ考えられる事は、この世界に来た原因が君自身に降り注いだ事故。という事になるのであれば、同じような事を起こす他ないが……そういうのは嫌だよね?」
一つの方法を開示し、提案するスティーブンの質問に遥菜は頷く。
「だよね。まあ、元の世界に帰る方法は、後で考えればいいか。さて、考察はこのぐらいにして、君をどうするかだけどーー……」
「ちょっとーー!!何このかわい子ちゃんはー!?」
「ふぇ!?」
ソファから立ち上がったスティーブンの言葉を遮るように、扉から女性の声が部屋に響き、抱き着かれた遥菜は驚いて肩を揺らす。
「んもー、隅に置けないわねぇあなた達ぃー。この子誰のコレなの?クラっち?それともレオっち貴方なの!?」
「いや……そう言うのではないのだが」
「い……いえ!?違いますよー!?」
「え?え?え?」
テンションMAXの女性に、名指しされたクラウスは冷静に応え、反対に焦りながら否定するレオナルドと混乱する遥菜は、頭をグリグリと撫で回されている。
「困ってるじゃないか、KK……。というか、選択肢に俺の名前はないのか」
「あら、やだ!ごめんなさいネ?」
スティーブンに、KKと呼ばれた金髪で集眼の女性は遥菜から謝りながら離れて、声のトーンを落としてから言葉を続ける。
「そりゃそうよ。あんたみたいな冷血男には、この子は不釣似合いだからよ」
「ははっ……。そうだKK、彼女ーー遥菜を保護して貰えないだろうか」
少し寂しそうに笑ったスティーブンは、KKに提案する。
「えー……イヤよ。と言いたい所だけど、こんなに可愛い子なら大歓迎!!」
「あの、……良いんですか?」
おずおずと尋ねる遥菜に、KKはニカリと嬉しそうに笑う。
「いいのいいの!むしろ娘が出来たみたいで嬉しいわー!」
「決まりだな」
「あぁ。遥菜さん、今日からお世話になるといい」
KKの言葉を聞いて頷くスティーブンと、口元を緩めたクラウスは、メガネ越しに柔らかく笑む。
「はい!よろしくお願いします!」
「よろしく任されたわ!」
遥菜は元気よく挨拶して、任せなさいというようにKKは胸をトンっと軽く叩いた。
「それでKK。何か用事があったんじゃないか?」
「そうそう!忘れていたわ!さっき珍しく雨が降ってきたから、傘を借りに来たのよ」
「ーー雨?」
珍しくHLに降り始めた雨に遥菜は、どうしてか血の気が引く気持ちになる。
「どうしたんですか?」
「え?ううん。なんでもない」
顔色をうかがうようにレオナルドが遥菜の瞳を覗き込み、気の所為だと頭を振ってぎこちなく微笑む。
「とりあえず、君は我々ライブラが預かろう。異世界人とはいえ、君は一般人だ。危険が伴う場所ではあるがKKとたまに来るといい。我々が護ると誓う」
「ーーはい!よろしくお願いします」
クラウスの口上に、その場にいたライブラのメンバーが、神妙な面持ちで頷き、遥菜はできる限り元気な返事をする。
「では、遥菜くん。ようこそ、ライブラへ」
笑むようにして口角を上げたクラウスは、遥菜を歓迎した。