第一章「ドロボウの都編」
空欄の場合、名前は”アルマティーニ”になります
ジン「君のこと知りたいな」年齢:20代 性別:女
職業:カメラマン兼新聞記者
「星さえも盗む王ドロボウ」を取材するべく追い求め続ける新聞記者。
カメラを愛し、カメラさえあれば十分と考えている。
「世界を映すのにカメラはあって、その撮影者である私は、世界を表す現像者になる」がモットー。
”王ドロボウを探し、取材していく中で彼女の景色は変化していく――”
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お嬢ちゃんと坊主! 良いところに戻ってきたな! 見よ! この気球を!!」
ウォッカ達のところに戻ると、身ぐるみを剥がされた服で糸で縫い合わせられた、不格好な気球が出来上がっていた。
そして既に、気球の台にウォッカ達が立っていて、何故かウォッカ以外の部下は下着もなにも身につけておらず、せいぜい大事な所を手で隠しているだけで精一杯のように見えた。
「なるほど……服を気球代わりにしたのね……」
全裸の男たちをちゃんと見ることはなく、アルマティーニは小さく頷きながら、即席で作られた粗末な気球を写真に納める。
「知恵がないと頭が回るんだな……」
「そーか?」
ジンとキールは半目になって、ぼそりと呟きながら呆れていた。
「うるへぇ!! ……いいかお嬢ちゃんと坊主。俺たちがお宝を盗んでいる間に宴の準備をしてろよな! じゃあ、行くぜ!!」
「「「おぉーー!」」」
ウォッカの一声に部下たちは咆哮を上げて、つなぎ止めていたロープを切ると、気球は暗闇の空へ上がっていった。
「うまく行くと良いんだけど……」
「いやあ、あれは無理だろうなぁ……」
ファインダーを覗きながら、祈るようにアルマティーニは呟くとジンはかぶりを降る。
「なんで?」
「たぶん見てるとわかる……まあ、見なくていいと思うけど」
「?」
――ぱぁぁんっっ!! ひゅるるるるるるるr……
ジンは空を睨み、アルマティーニが首を傾げた丁度、上空から張り裂けるような音が聞こえたかと思いきや、空を切る音と同時にウォッカたちが落ちてきていた。
「へ!? 落ちてきたぁ!!?」
「目が腐る!!」
上下逆さまな格好をして落ちてくる手下たちから守るようにキールとジンにアルマティーニは目元を覆い隠される。
大地を揺るがしてウォッカたちは地面にめり込み、タフなのか頑丈なのか、奇跡に近いほど土ぼこりを纏うのみで大した怪我もなく、自身が開けた穴から這い上がる。
「この……役たたずぅぅぅ!」
「とりあえず、起き上がってから怒鳴れば」
ウォッカと云えば大声を張り上げるも、ジンの指摘通り二の腕を組んでめり込んだままだった。
「大丈夫ですか?」
アルマティーニはウォッカの所に行き、起き上がるのを手伝った。
「ありがとな、嬢ちゃん……。お前ら、どいつもこいつも……この給料ドロボーめが!!」
「だって、ドロボーだもん」
起き上がったウォッカはアルマティーニにお礼を言うと、部下たちに向けて声を荒げた。
そんな中、隅にいた鳥がうめき声を上げたのに気が付いて、ジンとキール、アルマティーニは視線を向けた。
「産まれた!」
アルマティーニは奇跡の瞬間に立ち会ったのをすかさず、ファインダーに収める。
「やっと産みやがった……」
「早くコニャック様の所へお持ちしようぜ」
その後を見越して、塔の中から二人の男性が現れ、ぼやきながら産みたての卵を抱えてしまった。
「…………」
卵を持って行った二人に対して、否、持って行かれた卵に悲しそうな声を荒げる鳥に、おばあさんは表情を曇らせて呟く。
「コニャックってやつは、いつも家族を引き離す……」
「お婆さん……」
アルマティーニはお婆さんが流した一筋の涙を見兼ねて、隣に寄り添った。
「よーし、お前ら! 次の作戦を考えるぞ!!」
「……必要ない」
「なに?」
ウォッカは新しい作戦会議をしようと声をかけるも、ジンの一言で怪訝そうに眉を寄せた。
「あの鳥を使って塔のてっぺんに行く」
「はぁ? 何言ってんだ坊主、あの鳥はもう飛べねぇって……」
「ジィイン。こいつは無理だ。羽根の捥がれた鳥は飛べない仕様なんだって……」
「肥えただけだよね……?」
ジンの言葉に驚きながらも現実を見ろと言わんばかりに、ジンの言葉にウォッカとキールは口をそろえて否定する。
「……何をそんなに悲しんでいるんだ? 卵を取られたからか?」
「……ジン?」
そんな二人の言葉を無視して、泣きそうな表情で塔の方を見る鳥にジンは語り始めた。
「まあ、アンタの卵、いま目玉焼きになってたりして」
「それともゆで卵!」
「スクランブルエッグとか……?」
「ちょっとあんたたち!」
挑発的な言葉を鳥に向け、アルマティーニはジンに倣って卵料理の一つを呟いた。
お婆さんの叱咤を他所にジンはじっと鳥を見据える。
すると、二人の言葉の応酬で怒りに打ち震える鳥から、どこからか蒸発するような音が聞こえた。
「あ! 今ジュッって音がした!」
「羽根が……!!」
ことが吹っ切れたのか、鳥はうめき声を上げながら、だんだんと羽が大きくなっていくのをアルマティーニは目の当たりにする。
「そうだ……卵を取り戻せるのは、自分の翼だけだ。子供を助けられるのはお前しかいない。お前なら飛べるはずさ!」
完璧に羽根の大きさを取り戻した鳥は、咆哮を上げた。
その咆哮を合図にジンはお婆さんの手首を捕まえてアルマティーニに声掛けする。
「行くぜ、婆さん! 君も一緒に!」
「うん!」
「アルマティーニはともかく、こんな婆さんエスコートするつもりかぁ!?」
ジンたちはキールの困惑する声を聴きながら鳥の甲羅に乗り込む。
三人が乗ったのを見計らったのか、鳥は大きく翼をはためかせて、繋ぎとめられていた足枷を引き抜き、ウォッカたちを威嚇すると空へ飛び立った。
「わぁ!! 空を飛んでる!!」
アルマティーニは風を全身に感じながら、空の旅を堪能する。
「アルマティーニ。危ないからしっかり掴まっていて」
「アルマティーニ。オレにしっかり掴まりな」
「ありがとう! ……きゃっ!!?」
ジンの注意とキールの優しさに頷くとすぐに、何かが鳥を目がけて飛んできた。
しかしそれは硬化な甲羅に当たり、無残にも壊れていった。
「突っ込むぞ!!」
ジンが叫ぶと鳥はアルマティーニたちを乗せたまま、塔の壁を壊し粉塵を上げながら中に入ることに成功したのだった。