第一章「ドロボウの都編」
空欄の場合、名前は”アルマティーニ”になります
ジン「君のこと知りたいな」年齢:20代 性別:女
職業:カメラマン兼新聞記者
「星さえも盗む王ドロボウ」を取材するべく追い求め続ける新聞記者。
カメラを愛し、カメラさえあれば十分と考えている。
「世界を映すのにカメラはあって、その撮影者である私は、世界を表す現像者になる」がモットー。
”王ドロボウを探し、取材していく中で彼女の景色は変化していく――”
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ウォッカ達の作戦会議はつつがなく行われ、正面突破やら何やらを繰り返すが、全て失敗に終わっていた。
(ちゃんとその失敗はアルマティーニのカメラの中に納められていた)
「なあ坊主、さっきから俺たちの行動を見るだけで、なぁんにもしねぇのか? なにかしら案を出してみろってんだ」
欠伸を噛み締めながら、ことごとく失敗する作戦に、ただ黙って見ていたジンにしびれを切らしてウォッカは言葉を促した。
「案ねぇ……」
「あれに乗って飛べばいい」
キールはジンの方に向き、ウォッカ達から見えない程度の目線を彼らに向け、ジンは柱の近くにいるでかい緑色をした左右に小さい羽を六つほどつけた動物を指さす。
その先を見たウォッカは大爆笑し始めた。
「おいおい坊主、あれはな昔は飛べていたんだが、今じゃ体が肥えて羽が小さくなってから飛べられなくなった鳥だ。どうやっても空に羽ばたけるような動物じゃねぇんだよ」
「あいつは飛ぶことは出来ないな。オレが言うんだから間違いない!」
「なんだかかわいそう……(パシャ」
「「……」」
ウォッカの仲間達はげらげらとジンの発言を笑い、キールも頷いて賛同する。
アルマティーニはカメラのバインダーを除きシャッターを押して呟くその様子をジンとキールは呆れて見ていた。
「さてと、何かいい案は……と、……ん!? そうだ、閃いた!! お前等! 服を脱げぇ!!!」
話しを戻そうとウォッカは目を閉じて考えようとしたその時、ウォッカの頭の電球が光り輝いた。そして、周りにいる全員に号令をだす。
「へっ……!? わたしも!!!?」
「え……脱ぐの!?」
アルマティーニは自身を指さすとウォッカに問いかけ、キールも驚くが目がランランに獣じみていた。
「い、いや……お嬢ちゃんはさすがに脱がなくて良いぞ……。坊主は……」
「……(スッ)」
ウォッカはしまった、という顔をして申し訳なさそうにアルマティーニを見やり、ジンの方を向くが、断るというふうに無言で隠しナイフを出していたので言葉を飲み込んだ。
「じゃあ、お前等だけ脱ぎな!」
「え~……親方ぁ……何で服を脱がなきゃ……」
「つべこべ言わず脱げ!! 上も下も全部だ!!」
「へ……へぇ~い!」
視線を逸らすように文句を言う部下たちにウォッカは怒鳴り散らし、しぶしぶながら仲間達はその場で服を脱ぎ始めた。
「わ……私はちょっと散歩してきますね!」
「お……おぉ、すまんな嬢ちゃん。場所をわきまえずにあいつ等は……」
場所も構わず脱ぎ始めた男達に背を向けるようにぐるりと周り、脱げと言った張本人は、アルマティーニに向かってすまなさそうに顔をゆがます。
「じゃあ、オレも~。……ジンはついて来なくて良いからな?」
「何でだよ……。俺も行くって」
そして、ついて行くと言ったキールはアルマティーニの肩に乗って、ジンを睨みつけるが、ジンは呆れながら、当たり前のようにスっと隣に歩み寄る。
「なんだ、坊主も行くのか……? ……何だお前等、そういう……・」
目を丸くして驚くウォッカだったが、なにを勘違いしているのかいやらしさを含んだ笑みをした。
「そんなんじゃないけど、心配だし」
「そうかそうか……じゃあ、ちゃんと守ってあげないとな?」
ジンは素っ気なくウォッカに逆らうが、ウォッカはまだ先ほどの笑みを絶やさず、ジンの肩にポンッと手を置いた。
「……そうね」
「守るのはジンじゃなくてオレだ!!」
「?」
ジンはウォッカに頷き、キールは勢いよく宣言していた。
話しの中心であるアルマティーニは首を傾げて二人のやりとりを見ていた。
「さてと、ここに着いてから人物ばっかり撮ってた気もするし、風景でもとるかなー」
「そういえば、アルマティーニはさ、君はなんでカメラをそんなにも持ってるの?」
アルマティーニはカメラのレンズを傾き始めた地平線に向け、写真を撮ろうとしていたら、ジンが首を傾げながら尋ねて来た。
「え、あ……っと、わたしプロのカメラマンで雑誌記者なの。それで人の話を聞いたり、写真を撮ったりして、雑誌に載せて、見ていてくれる人たちに刺激を与えるのが、私たち雑誌記者の役目なの」
「へ、へぇ~……、自分からプロとは言わないと思うけど……で、どうしてプロのカメラマンもとい雑誌記者さんが、物を取られそうなこのドロボウの都にやってきたんだ? ドロボウ達の私生活や行動を取材に来たのかい?」
苦く笑って、ジンはアルマティーニにドロボウの都に来た理由を聴く。
「あ、ううん。私は今、王ドロボウを追ってて……。あ、別に捕まえて警察に送り出そうとは思ってないけど、雑誌読者のための貢献をしたいの。王ドロボウに直撃インタビューしていろいろ聞いて、それを記事にするって決めてるんだ。だって読者は刺激を求めているはずだって思うし、そしてなによりーーーまだ、ここで王ドロボウがダブルマーメイドを盗んだという情報はないからね!」
ジンの質問に答えるアルマティーニは息を荒くし、自身の思いを強くぶつけた。
「なるほどね。ところでアルマティーニ。俺が今、君が探してる王ドロボウだ。っていったらどうする? アルマティーニ的にはあり得ないと思うかい」
「お……おい! ジン!!?」
「え……?」
ジンはアルマティーニに挑発するかのように尋ね、キールは焦りながらジンの肩に止まり、聞かれた本人はキョトンと目を見開いていた。
なにかを思案してアルマティーニはジンに諭すように首を振った。
「えーと、ジンくん? 言っていい事と悪い事があるの、知ってる? 嘘はいけないわ。王ドロボウが子供のわけないもの、末裔というのなら話は別だけれど、そんな話は聞いたことないし……。それにジンは、私の盗まれたカメラを取り戻してくれたんですもの、あなたが悪い人じゃないんだってわかっているから」
「そ……そう……。まあ、君がそう思うなら(嘘じゃないんだけどなぁ……)」
そしてニッコリと笑いかけるアルマティーニに、まさか否定されるとは思わなかったジンは、呆れを通り越した笑みを口元に浮かべた。
「おや、おふたりさんお揃いで」
「あ! あの時のお婆さん!」
「あの時の!」
会話の区切りに声をかけてきたのは、アルマティーニにドラゴン・パウを教えてくれたお婆さんだった。
「あれ? もしかして知り合い?」
「ん? あなたも?」
キールと同じ反応に気付いたジンは首を傾げて問いかけると、アルマティーニもジンを見てコテンと傾げた。
「ん?」
そんな中、遠くから地を揺るがす排気音の音があたりを響かせながら、1台の大型バイクが現れて、ジンたちの前に停まった。
「やあ、ジン。……両手に花かい?」
「やあ、ポスティーノ。あんたは相変わらず仕事熱心ね」
ニヤリと口角上げてジンと言葉を交わし、バイクの両サイドにかけられた鞄からポスティーノのが一通の手紙を取り出し、アルマティーニに差し出す。
「お陰様でな。と、そうだ。お嬢さんに手紙が届いてるぜ」
「え?」
手渡された手紙を見ると本当にアルマティーニ宛であった。しかし、肝心の差出人が未記入になっていることに、不思議に思いながら首を傾げる。
「知ってるか。ダブルマーメイドの中には、とても素晴らしい宝が眠っているらしいぜ」
話を変えるようにポスティーノはジンに伝えると、届け物を開始するため走り去っていった。
「?(どういう意味だろう……)」
「ばあさんはどういう意味か知ってる?」
ポスティーノがナゾナゾのように言い残した言葉に、首を傾げて考えるアルマティーニと、ジンはお婆さんに問いかけていた。
「それはきっと、しょっぱいんだろうね……」
遠くを見つめながら、お婆さんはジンの問いに答えた。
「日も落ち掛けてきたし、ウォッカさんのところに行きましょう。もう終わっているだろうし!」
少しの沈黙の後、沈みゆこうとする太陽をみて、アルマティーニは手を打ち、ジンたちに笑いかけるようにして、ウォッカたちがいる場所へ戻ったのだった。