窮鼠と子猫は、仲が悪い《シリーズ》
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きらきら
きらきら
お星様みたいに眩しい
でもお日様みたいに暖かくはない。
お月様みたいに何かの光を反射してるわけでもない。
だからこの人は、自分で燃えてきらきら輝く、お星様。
「あっれ〜ここだったと思ったんだけどなぁ〜」
そんなお星様と私は、現在完全に迷子である。
「また間違えたの?これで3度目だし…とゆか同じ道通るのは5回目なんだけどいつになったらその酒場にたどり着くの???」
いらいら
いらいら
人は多いし、眩しいこの人は悪びれもせず道に迷うし。
「あっはっはっもーしわけないっ!」
口先だけで謝られたら、さらにいらいらしちゃう。
ここはとある街のとある繁華街。
太陽はすでに傾きかけ、街はオレンジ色に染まりかけていた。
そんなところで何してるかって?
このきらきらしてる男の、
ハンター協会副会長にして、十二支んの子である、パリストン=ヒルの護衛らしい。
いやー僕戦闘あんまり得意じゃないので、よろしくお願いします〜
なーんてこのトリプルハンターはほざきやがって、お呼び出しを受けたわけなんだけど…
「トリプルハンターが戦闘不得意なわけないでしょーが…」
「あ、あっちかなー?」
「そっちはさっき行ったじゃん!!」
完全に、ただの嫌がらせで呼び出された模様…。
オレンジに黒が溶け始めた頃、周りはもう人だらけで、背の高いパリストンを見失わないだけで精一杯。
一人で歩くならともかく、こういう時はぐれないように歩くには、私は小さくて、
そんな気も知れずに、振り向きもしないでその長い御御足で颯爽と前を歩くパリストン。
ほんっっっといらいらする!!!
きーーーって思っていたら横から思いっきりぶつかられてバランスを崩す。
別に盛大に転んだりなんてしないけど(ほらだって、私ちゃんとハンターだもん)よろけた所にさらにぶつかられて前に進むどころじゃない。
「もーっ、ちょっとは避ける努力くらいしてよ!!」
逃げるように町の隅に追いやられて、顔を上げてパリストンを探すが時すでに遅し。
「…はぐれた、」
私の身長じゃ、手前を行き交う人々で道の真ん中ら辺なんて全然見えやしない。
電話するにも人混みで音が聞こえないのか一向に出る気配もない…
あとはもう、あのパリストンが私が居ないことに早く気がつくのを待つだけなんだけど、
「気がついてても、そのまま置いていかれそうだなぁ…」
とか、仮にも役職上の人に向かって、ひどい言い様だよなぁ。
でも本当にやられそう。
なんならこのまま帰ってもバレなさそう。
流石にクビが飛ぶか、、、
「お嬢ちゃん一人でなにしてんだよ?」
「おっ、かわいいねー!ねぇねぇ俺たち飲みに行かない??」
そしてまぁ、お決まりのように変なのに絡まれるわけで。
「連れがいますので。」
面倒ごとは勘弁してほしい…
「えっ、どこにいるのー?」
「連れの子も女の子かなぁ、だったら店入ったらそこにきて貰えばいいだろ、おら行こうぜひっひっ」
下卑た笑い声が頭に響く。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、
ただでさえ人混みで疲れているのに、
早くあのきらきらうざい男と合流しなきゃならないのに、
そもそもあいつが一向に用事を済ませられないからこんな時間までかかってっ、
あーーーーもうっ!!!
「痛っ、、、ちょっと!!」
腕をぐっと掴まれて、無理やり連れて行かれそうになる。
これはいよいよボコるか?と瞳をぎらりと光らせたところに「あの〜」と全ての原因の男の声が聞こえた。
「あ"?」
「んだよ、にーちゃん。」
まぁ当然私に絡んでた男たちは、突然割って入ってきたパリストンにいい顔はしないわけで。
すごい、顔に「邪魔すんなよ。」って書いてある人初めてみたー、、、
「お取り込み中申し訳ないのですが、彼女のこと、離してください。」
きらきら
きらきら
にこにこ
にこにこ
不釣り合い爽やかな笑顔。
「おいおい聞いたかよ!!」
「なんだよ王子様気取りか?優男さんよー」
そこに、まぁまぁこの場には似合っている下卑た笑い声が響く。
「あれっ?ご理解いただけない??」
あまりにもパリストンが不釣り合いだから、むしろこのおっさんどもの方がこの場には馴染んでるよ、、、キモいけど。
あといい加減手を離してほしいなぁ…
なんて、すごい人ごとみたいに思っていたら、
私の手を掴んでる男の手首を、パリストンが掴んだ。
あ、背も大きいから、手も大きいんだなぁ…
なーんて、こんな思考も不釣り合い。
「僕、お願いもお伺いも立ててないのですが、ご理解いただけないならもう少しわかりやすく言いますねー!」
「うっ?!?!」
「あ"?どうしたんだよ。」
「う、腕っ、腕がっ、、あ、あ、あ、」
「彼女を離せ。不愉快だ。」
ーぽきっ
「い"っ?!い"だだだだだだだだだ」
「あっ!もーーーしわけない!少し強くつかみすぎましたかぁ?」
不穏な音が聞こえたが、パリストンが何か話しかけるたびに後退り、男二人は逃げるように人混みに消えて行った。
「…やっぱり、全然弱くないじゃん…」
ちょっとモヤモヤして、口を尖らせる。
「いやーヒヤヒヤしました〜見つけたと思ったら、シアさんあの人たち殺しそうな目をしてたんだもんなー!」
「別に…こんなところで殺さないし。」
そして、ふとお互い無言になる。
いや!しゃべれよ!!!
うざいくらい喋るのがあなたでしょうが!!!!
このタイミングで黙らないでよ!!!
「シアさん」
いつものマシンガンみたいな話し方じゃなくて、心にストンって落っこちるみたいな声で呼ばれる。
そんな声につられて、顔を上げたら、大きな掌がするりと私の頬を撫でた。
「お怪我はありませんか?」
「…ないよ。」
「手首、赤くなってますね。」
言われて確認して、あぁ、本当だ。って間抜けな声が出る。
でもお生憎様、こんなのを怪我だなんて呼ぶほど、生ぬるい生き方してないの。
「行きましょうか。」
その一言で、また人混みを進むべく一歩を踏み出す。
頬に触れてた手を、こちらを向きもしないで私の方に寄せるパリストンを仰ぎ見て、
なんの躊躇もなくその手を取った。
「あはは、シアさんって意外とツンデレですよねー」
「パリストンは意外と不器用だよね。」
空には燃え尽きるまできらきらひかる星。
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