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向日葵畑の向こう

今日も暑い。
ポケモンたちもぐったりしていたから、私は林太郎さんの書斎で一人、医学の本を開いていた。部屋の主の林太郎さんは担当編集者と応接間で打ち合わせをしている。そのうち春草さんが階段を上がってきて、挨拶するために部屋から出ると春草さんもぐったりとしていた。


「早く休んでくださいね。」
「君に言われなくても・・・と、言いたいところだけど、夏休みだって課題があるんだ。描き上げなくては。」


それだけ言うと、早々に部屋に籠ってしまった。

(私もそろそろ帰ろうかな。)

応接間ではまだ話をしている。厨にいたフミさんを少し手伝うと、フミさんが氷菓をくれた。現代に転生し、記憶がないのはフミさんだけだ。
そろそろいい時間だし、と、降りてきたが、屋敷の主に挨拶もせず帰るのは失礼だからと待っている。そのうちフミさんが帰る時間になり、そのくらいになると担当編集者も帰り支度を始めた。


「長居してしまってすみません。」
「お暑いですから、お気をつけて。」
「先生の婚約者さんだけあって、お気遣いが他の方より丁寧でいらっしゃる。」


そう笑うと、林太郎さんも「そうだろう、そうだろう」とご機嫌だった。


「悪かったね、折角来てくれたというのに。」
「いいえ、また来ます。」
「あぁ、是非また来ておくれ。」


笑顔で私の背中に手を添えて玄関先まで送ってくれた。
何度も振り返って挨拶をして、スマホを開くと本丸にいる陸奥守吉行からメッセージが来ていた。元の主同様、新しいものが好きなようだ。


『きょうはえんかいしゃきはやくかえられたし』


(『今日は宴会じゃき、早く帰られたし』かな?)

あとで変換とか濁点とか教えなきゃだなぁ。口許が緩んだ。
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