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向日葵畑の向こう

「主知らない?」


ある日の朝、初期刀で近侍の加州清光が審神者を探し歩いていた。後ろには見慣れぬ一振りが控えている。


「主なら、森殿のところへ向かったようだぞ。」
「そう。」


その姿を見た歌仙兼定は、一つ溜息を吐いた。そして帳簿をつけるへし切長谷部の元へ赴き、ある刀の名を出した。


「・・・明石国行だ。」
「?お前は歌仙兼定だろう?」
「君も察しが悪いな。」
「!まさか・・・!」
「そうだよ、遂に顕現したようだ。」
「主は?」
「三日月が言うには、森殿のところだそうだ。」
「なんて間の悪い・・・。」


そう、この本丸の主がずっと待っていた明石国行が顕現したのだ。


「なんや、変に皆さんキラキラした目で見てません?」
「あんたにはそれだけの価値があるってことだよ、この本丸では。」
「はぁ。」


明石国行は混乱している。

顕現して最初に出会った加州清光という刀は、自分を見るなり「よっしゃァァァ!!!!」などと叫び、その声を聞きつけた彼の相棒に「清光うるさい!」と叱られていた。


『だって、俺、めちゃくちゃ頑張った!』
『それは皆知ってるよ。』


自分を見るなり、その彼の相棒は大和守安定と名乗った。そして、この加州清光は一番最初の刀であり、主との出会いからずっと近侍で、この本丸のほぼ全ての刀の顕現の瞬間を見てきたと言う。
すれ違い、挨拶をして回っていると、この本丸での自分の扱いがまるで賓客のようであるかのように感じる。


「真っ先に主のとこに連れていきたかったのになぁ。」
「森殿、というのは?」
「主のいい人の名前だよ。」
「いい人がいらっしゃるんですか。」
「そ。結構変わってる人だけど、主も変わってるから。」
「お似合い、ゆーことか。」


どうやらこの本丸の主は変わり者らしい。主の話を聞けば聞くほどおかしくて笑ってしまう。


「主はあんたが来るの、ずっと待ってたんだ。」
「そないに期待されても、自分、働くの好きやないんですけど。」
「それは知ってる。蛍丸や愛染国俊がよく言ってたし。」
「二人もおるんや・・・、」
「そうだよ。主が夏のパン祭りで呼ぶって言い出した時には、二人して働かない働かないって主の趣味を疑ってた。」
「あんまりですわ。」


どうやら自分は待ちに待った刀らしい。期待に応えられるほどの働きはできないが、その姿で主を喜ばせることくらいはできるかもしれない。


「ほら、ここがあんたの部屋。蛍丸ー、愛染ー、入るよー?」


中から懐かしい声が聞こえた。本当に二人共いるようだ。


「えっ!国行!?」
「国行だ。」
「どーも。」
「主には?」
「主は森殿のとこだって。」
「そうだよな、国行が来たの知ってたら大騒ぎするもんな。一人で。」
「大騒ぎするね。一人で。」


主の認識がこの本丸の刀たちの間でどのようなものか、本丸を回っててわかった。加州清光の言う通り、随分と変わり者のようだ。


「主が来たら呼びに来るよ。」
「頼んます。」
「加州さん、お疲れ様。」
「お疲れ!」
「主に喜んでほしかったからね。」


そう言って加州清光は去っていった。
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