向日葵畑の向こう
夜になり、膝丸が顕現した。
自己紹介もそこそこに「兄者は・・・」と言うので、聞いていた通りだなと思ったが、生憎、彼の言う『兄者』こと髭切は我が本丸にはいないのである。それを伝えると「そうか」と言って肩を落とした。
「私も早くあなたのお兄さんにお目にかかりたいです。」
「気を遣わせてすまない。」
「本当のことだから、別に気を遣ってなんていませんよ。」
彼が顕現する約一時間前に、向日葵畑の準備の準備ができた。もう眠ってしまった短刀たちを明日の朝一番に驚かそうと、起きている男士たちがせっせと働いている。まだ時間がかかりそうだ。
「あなたが今夜ここに来たのは、もしかしたら一緒に働いて早く馴染めるようにってことかもしれませんね。」
さっと顔を上げる膝丸に笑いかけると、「んんッ」という咳払いが聞こえた。振り返ると歌仙がいる。
「うちの主は『立ってる者は親でも使え』という人だから、気をつけた方がいい。」
あと、すぐに猫を被る。
失礼な。ただ、皆でやった方が早いと思っただけなのに。
どうやら、余った向日葵の種を歌仙と光忠が炒っていたから、次郎と少々失敬したのがバレたらしい。(みっちゃんにシーッてしたのに。)見ると、後ろで光忠が申し訳なさそうに手を合わせていた。
「まったく、燭台切の優しさにつけ込んで碌なことしない。」
「ごめんなさい。」
「それから、森殿を巻き込んでじーてぃーえすとやらに入れ込んでいたそうだね?」
GTSとは、ポケモン交換の方法の一つだ。インターネットを使い、手持ちのポケモンを預けて、ほしいポケモンを待つ。一、二分で来る時もあれば、三日程待つこともある。
そして、森殿、とは、私のいい人のことだ。
「森殿に愛想尽かされて嫁に行けなくなっても知らないよ?」
「林太郎さんは嬉々としてやってました。」
「新しいもの好きな方だからねぇ。」
光忠も部屋に入ってくる。状況がわかっていない膝丸は、村正と亀甲が早々に連れ出していた。ヤバい雰囲気だった。
「ててふを待っていたらしいじゃないか。」
「はい。」
「まだ扱えないだろう?」
「・・・はい。」
いつの間にか来ていた加州が「ててふ可愛いじゃん」と言うので、お前も可愛いよと撫でてあげたら顔を真っ赤にして「そんなことより見せてよ!」と言ってきた。
「あれ?テテフって桃色の子だよね?もういなかったっけ?」
「君、二匹目なのかい!?」
「すみません・・・。」
テテフが可愛くて、つい二匹目を引っ張ってしまった。まだ扱えないのに。だからボールから出すことも躊躇している。本当ならすぐに出して皆に自慢したいくらいなのだ。
「で?」
「?」
「なにを出したんだい?」
「・・・フェローチェです。」
歌仙は溜息を吐いた。
「あれくらいで来て主は運がいいなぁ。」
「まぁ、あれならまだ何匹かいるだろうから大目に見るけれど、気をつけてもらわないと・・・まだ長谷部には言っていないしね。」
「ありがとうございます!」
長谷部の小言は長い。歌仙より長い。
「よかったね、主。」
「ありがとう、清光。」
向日葵畑の準備があるからと皆が部屋を出るのを見送っていると、怪訝そうな顔をした歌仙が振り返った。
「なにをしているんだい?君も手伝うんだよ。」
「・・・ですよねー。」
朝になってはしゃげるのは、限られた者だけなのであった。
自己紹介もそこそこに「兄者は・・・」と言うので、聞いていた通りだなと思ったが、生憎、彼の言う『兄者』こと髭切は我が本丸にはいないのである。それを伝えると「そうか」と言って肩を落とした。
「私も早くあなたのお兄さんにお目にかかりたいです。」
「気を遣わせてすまない。」
「本当のことだから、別に気を遣ってなんていませんよ。」
彼が顕現する約一時間前に、向日葵畑の準備の準備ができた。もう眠ってしまった短刀たちを明日の朝一番に驚かそうと、起きている男士たちがせっせと働いている。まだ時間がかかりそうだ。
「あなたが今夜ここに来たのは、もしかしたら一緒に働いて早く馴染めるようにってことかもしれませんね。」
さっと顔を上げる膝丸に笑いかけると、「んんッ」という咳払いが聞こえた。振り返ると歌仙がいる。
「うちの主は『立ってる者は親でも使え』という人だから、気をつけた方がいい。」
あと、すぐに猫を被る。
失礼な。ただ、皆でやった方が早いと思っただけなのに。
どうやら、余った向日葵の種を歌仙と光忠が炒っていたから、次郎と少々失敬したのがバレたらしい。(みっちゃんにシーッてしたのに。)見ると、後ろで光忠が申し訳なさそうに手を合わせていた。
「まったく、燭台切の優しさにつけ込んで碌なことしない。」
「ごめんなさい。」
「それから、森殿を巻き込んでじーてぃーえすとやらに入れ込んでいたそうだね?」
GTSとは、ポケモン交換の方法の一つだ。インターネットを使い、手持ちのポケモンを預けて、ほしいポケモンを待つ。一、二分で来る時もあれば、三日程待つこともある。
そして、森殿、とは、私のいい人のことだ。
「森殿に愛想尽かされて嫁に行けなくなっても知らないよ?」
「林太郎さんは嬉々としてやってました。」
「新しいもの好きな方だからねぇ。」
光忠も部屋に入ってくる。状況がわかっていない膝丸は、村正と亀甲が早々に連れ出していた。ヤバい雰囲気だった。
「ててふを待っていたらしいじゃないか。」
「はい。」
「まだ扱えないだろう?」
「・・・はい。」
いつの間にか来ていた加州が「ててふ可愛いじゃん」と言うので、お前も可愛いよと撫でてあげたら顔を真っ赤にして「そんなことより見せてよ!」と言ってきた。
「あれ?テテフって桃色の子だよね?もういなかったっけ?」
「君、二匹目なのかい!?」
「すみません・・・。」
テテフが可愛くて、つい二匹目を引っ張ってしまった。まだ扱えないのに。だからボールから出すことも躊躇している。本当ならすぐに出して皆に自慢したいくらいなのだ。
「で?」
「?」
「なにを出したんだい?」
「・・・フェローチェです。」
歌仙は溜息を吐いた。
「あれくらいで来て主は運がいいなぁ。」
「まぁ、あれならまだ何匹かいるだろうから大目に見るけれど、気をつけてもらわないと・・・まだ長谷部には言っていないしね。」
「ありがとうございます!」
長谷部の小言は長い。歌仙より長い。
「よかったね、主。」
「ありがとう、清光。」
向日葵畑の準備があるからと皆が部屋を出るのを見送っていると、怪訝そうな顔をした歌仙が振り返った。
「なにをしているんだい?君も手伝うんだよ。」
「・・・ですよねー。」
朝になってはしゃげるのは、限られた者だけなのであった。