向日葵畑の向こう
「あー、しんど。」
「ほんま、しんど。」
「主の明石国行化が進んでいる・・・!」
年末年始は忙しかった。年末には体調を崩し、歌仙の世話になったくらいだ。何度か目を覚ましたが、その度に歌仙がいて安心した。そんな歌仙のためにも、今は梅林入手に力を入れている。歌仙のやる気は我が本丸のやる気に繋がっているのだ。
「パン祭りで鶴さんを呼ぶって言い出した時はどうしたのかと思ったよ。」
「次は日本号って言ってたからね。」
「だって政府が日本号くれるって言うから。」
そんな日本号は今は長谷部に扱き使われている。
「それにしても、甘酒でそんなに酔えるなんて羨ましい。」
「別にいいだろー。」
「いいけど羨ましい。」
ザルというわけではないが、普段日本酒を嗜んでいるのであまり酔うことはない。甘酒程度で酔えるなんて、なんて安上がりなんだろう。しかも身体にいい。
「次のパン祭りはどうするんだい?前に決めた順番はもう終わったよね?」
「次は静ちゃん呼ぶよ。」
「薙刀かー。・・・デカいな。」
毎回、次のパン祭りで引き換える刀剣男士は三振り先くらいまで決めている。以前髭切を引き換えた際、日本号、鶴丸国永、数珠丸恒次という順だったが、数珠丸恒次は鍛刀で、日本号は政府から配布されたので今回のパン祭りは鶴丸国永と引き換えた。
うちは日向くんや大般若さんは実装されていないらしい。代わりに短刀が数振りと、小豆長光が来た。
「主は鍛刀運があるんだかないんだかわからないよね。」
「神社に行く度に『ご縁がありますように』ってやってるからね。」
「そのせいかがいわとおしですね!」
「そうそう。いつも通り神社行ったら岩融来た。」
相棒が顕現したのが嬉しかったのか、岩融に肩車を強請る今剣をよく見かけるようになった。向日葵畑からひょっこり今剣が見えるので、それを微笑ましく見るのが私の日課になった。
「梅林の景趣入手したら、向日葵畑はどうするの?」
「菊は一度も出してないね。」
「歌仙の気分かなぁ。」
「なんでも僕を頼るんじゃないよ。」
お盆に桜が描かれた茶碗と急須、それになんだかまだ温かそうなクッキーが乗っていた。
「小豆長光からだよ。」
「わーい!」
「俺たちのは?」
「あとは厨にあるから好きにするといい。」
「歌仙くんはなんやかんやで主大好きだよね。」
「主はんの分しか湯呑用意してないとか、主はん大好きとしか思われへんなぁ。」
「主はまだ本調子じゃないんだよ。昨日の騒ぎを忘れたかい?」
昨日、私は熱を出した。身体中が痛く、泣きながら近侍の清光を呼んだのだが、何故か歌仙まで一緒に来た。
「君もいい歳なのだから、服装に気をつけてあまり薄着をしないように。」
「はーい。」
「タイツを履くといいよ!」
「乱の意見に賛成だなー。主、スカートしか履かないし。」
「そう思って、現世から取り寄せました!」
黒、赤、グレーのタイツを出すと、「結構可愛いじゃん」と清光が言った。
「手持ちの服に合わせたらこうなった。」
「あるじさんのふぁっしょん、好きだなぁ。」
「ふぇみにん、っていうんだっけ?」
私の手持ちの服は、フェミニン系が多い。女性的なシルエットが昔から好きで、スカートばかり履いている。
「そういえば、近々現世の新年会に参加するんだけど誰かお迎え頼める?」
「俺行きたい!」
「ボクも行きたい!」
新年会に参加するメンバーには他所の審神者もいる。きっと向こうもお迎え部隊を組んでいるだろう。
「清光と、乱と、」
「俺も行こう。」
「おおう?!」
突然の巴形に驚きはしたが、慕ってくれてるのだと思えば嬉しい。
「じゃあ巴ちゃんもね。」
「歌仙は過保護だからなー。」
「そうだね、歌仙くんは過保護だからね。」
「みなさんがびっくりしちゃいますね!」
「いや、そもそも僕は行くとは言っていないよ?」
歌仙はなし、と。まぁ、私としても歌仙には留守番をしてもらって、帰ったらお茶漬けでも作ってもらいたいところだし。
「現世に行くなら俺も行きたいかな。少し買い物をしたい。」
蜂須賀。
「贋作は荷物持ちだよ。」
「俺もか。」
長曽祢。
「君はどうだい、明石国行。」
「自分ですか。」
「主待望の一振だもんなぁ。」
「行くしかないよね!」
「えー、めんど。」
「あるじさんのお迎え任務は楽しいと思うけどなぁ。」
「楽しいのと面倒なのとはまた別やし・・・、」
「よし!清光、乱、巴ちゃん、蜂須賀、長曽祢、明石で決まりね!」
「シカトやもんなー。」
小豆長光の作ったクッキーと、歌仙が淹れてくれたお茶をお腹に収めながら新年会お迎え部隊を編成した。うちの子たちは皆どこに出しても恥ずかしくない子たちばかりだけど、浮き過ぎない編成だと思う。蜂須賀が少々美しすぎるが。
「決まったなら長谷部くんに報告しないとね。」
「巴ちゃんが行きたいって言ったの意外だったなー。」
「確かに意外だったね。」
「自分の意見は総無視やもんなー。」
明石国行のそんなボヤきを無視しつつ長谷部の元へ報告に行くと、日本号が出迎えてくれて「今立て込んでるから少し待ってくれ」と言った。多分、私のタイツの領収書のせいだと思う。久々に雷が落ちるかな。
20190129
「ほんま、しんど。」
「主の明石国行化が進んでいる・・・!」
年末年始は忙しかった。年末には体調を崩し、歌仙の世話になったくらいだ。何度か目を覚ましたが、その度に歌仙がいて安心した。そんな歌仙のためにも、今は梅林入手に力を入れている。歌仙のやる気は我が本丸のやる気に繋がっているのだ。
「パン祭りで鶴さんを呼ぶって言い出した時はどうしたのかと思ったよ。」
「次は日本号って言ってたからね。」
「だって政府が日本号くれるって言うから。」
そんな日本号は今は長谷部に扱き使われている。
「それにしても、甘酒でそんなに酔えるなんて羨ましい。」
「別にいいだろー。」
「いいけど羨ましい。」
ザルというわけではないが、普段日本酒を嗜んでいるのであまり酔うことはない。甘酒程度で酔えるなんて、なんて安上がりなんだろう。しかも身体にいい。
「次のパン祭りはどうするんだい?前に決めた順番はもう終わったよね?」
「次は静ちゃん呼ぶよ。」
「薙刀かー。・・・デカいな。」
毎回、次のパン祭りで引き換える刀剣男士は三振り先くらいまで決めている。以前髭切を引き換えた際、日本号、鶴丸国永、数珠丸恒次という順だったが、数珠丸恒次は鍛刀で、日本号は政府から配布されたので今回のパン祭りは鶴丸国永と引き換えた。
うちは日向くんや大般若さんは実装されていないらしい。代わりに短刀が数振りと、小豆長光が来た。
「主は鍛刀運があるんだかないんだかわからないよね。」
「神社に行く度に『ご縁がありますように』ってやってるからね。」
「そのせいかがいわとおしですね!」
「そうそう。いつも通り神社行ったら岩融来た。」
相棒が顕現したのが嬉しかったのか、岩融に肩車を強請る今剣をよく見かけるようになった。向日葵畑からひょっこり今剣が見えるので、それを微笑ましく見るのが私の日課になった。
「梅林の景趣入手したら、向日葵畑はどうするの?」
「菊は一度も出してないね。」
「歌仙の気分かなぁ。」
「なんでも僕を頼るんじゃないよ。」
お盆に桜が描かれた茶碗と急須、それになんだかまだ温かそうなクッキーが乗っていた。
「小豆長光からだよ。」
「わーい!」
「俺たちのは?」
「あとは厨にあるから好きにするといい。」
「歌仙くんはなんやかんやで主大好きだよね。」
「主はんの分しか湯呑用意してないとか、主はん大好きとしか思われへんなぁ。」
「主はまだ本調子じゃないんだよ。昨日の騒ぎを忘れたかい?」
昨日、私は熱を出した。身体中が痛く、泣きながら近侍の清光を呼んだのだが、何故か歌仙まで一緒に来た。
「君もいい歳なのだから、服装に気をつけてあまり薄着をしないように。」
「はーい。」
「タイツを履くといいよ!」
「乱の意見に賛成だなー。主、スカートしか履かないし。」
「そう思って、現世から取り寄せました!」
黒、赤、グレーのタイツを出すと、「結構可愛いじゃん」と清光が言った。
「手持ちの服に合わせたらこうなった。」
「あるじさんのふぁっしょん、好きだなぁ。」
「ふぇみにん、っていうんだっけ?」
私の手持ちの服は、フェミニン系が多い。女性的なシルエットが昔から好きで、スカートばかり履いている。
「そういえば、近々現世の新年会に参加するんだけど誰かお迎え頼める?」
「俺行きたい!」
「ボクも行きたい!」
新年会に参加するメンバーには他所の審神者もいる。きっと向こうもお迎え部隊を組んでいるだろう。
「清光と、乱と、」
「俺も行こう。」
「おおう?!」
突然の巴形に驚きはしたが、慕ってくれてるのだと思えば嬉しい。
「じゃあ巴ちゃんもね。」
「歌仙は過保護だからなー。」
「そうだね、歌仙くんは過保護だからね。」
「みなさんがびっくりしちゃいますね!」
「いや、そもそも僕は行くとは言っていないよ?」
歌仙はなし、と。まぁ、私としても歌仙には留守番をしてもらって、帰ったらお茶漬けでも作ってもらいたいところだし。
「現世に行くなら俺も行きたいかな。少し買い物をしたい。」
蜂須賀。
「贋作は荷物持ちだよ。」
「俺もか。」
長曽祢。
「君はどうだい、明石国行。」
「自分ですか。」
「主待望の一振だもんなぁ。」
「行くしかないよね!」
「えー、めんど。」
「あるじさんのお迎え任務は楽しいと思うけどなぁ。」
「楽しいのと面倒なのとはまた別やし・・・、」
「よし!清光、乱、巴ちゃん、蜂須賀、長曽祢、明石で決まりね!」
「シカトやもんなー。」
小豆長光の作ったクッキーと、歌仙が淹れてくれたお茶をお腹に収めながら新年会お迎え部隊を編成した。うちの子たちは皆どこに出しても恥ずかしくない子たちばかりだけど、浮き過ぎない編成だと思う。蜂須賀が少々美しすぎるが。
「決まったなら長谷部くんに報告しないとね。」
「巴ちゃんが行きたいって言ったの意外だったなー。」
「確かに意外だったね。」
「自分の意見は総無視やもんなー。」
明石国行のそんなボヤきを無視しつつ長谷部の元へ報告に行くと、日本号が出迎えてくれて「今立て込んでるから少し待ってくれ」と言った。多分、私のタイツの領収書のせいだと思う。久々に雷が落ちるかな。
20190129
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