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プロポーズ大作戦

令和元年五月二十六日。
よく晴れた午後。少々暑いくらいの日だった
私は有栖川誉という詩人、兼、役者の男性からプロポーズされた。場所は有栖川家の別荘には負けるが、それでも立派な花の咲く薔薇園。


「こうも暑いとキミはすぐ脱ぎ出すから、暫く脱げないドレスなどを着るといい。」
「流石に外では脱がない。」
「キミの髪に薔薇をさして皆に見せてあげたいね。」
「その後はちゃんといけてあげないとね。」
「キミはきっと十二単なども似合うだろうね。」
「紫式部の絵を自画像だと思ったくらいだしね。」
「どうしたら伝わるのだろうか。」
「飾った誉じゃなくていいよ。」
「共に歩んでくれるかい?」
「・・・。」
「・・・結婚してください。」
「はい。」


そんなやり取りだった。
少し前から様子がおかしかったのは気づいていた。サプライズは好きだが、それを隠しておけない人なのだ。だから誉の言葉にはいつも嘘はなかった。


「やっと伝えられたよ。」
「どれくらい前から考えてたの?」
「・・・ホワイトデーの辺りだったね。」
「は?」
「キミは躱すのが上手いから。」


誉はそう言うが、私はそんな前からだったなんて気づいていなかった。一度、食事の支度をしている際にプロポーズ紛いのことを言われたのはよく覚えている。その時、吃驚した私は誉に包丁を突きつけてしまったのだ。いや、「今!?」と振り返った時に包丁を手に持っていただけで事件性は皆無だ。それからのことは私は気づいていなかった。私は他人からの好意に鈍い。


「伝えられてよかった。」
「・・・そんなに待ってくれてありがとう。」
「キミの体調が悪いと言う姿を見て、時期を早めたつもりだったのだが・・・少し時間がかかってしまったね。」
「ありがとう。」


私と誉は晴れて婚約期間に入ったわけだが、また一悶着あるのだった。




20190720
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