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花粉症には茉莉茶

「近頃の主は、花粉症というものらしい。」
「へくちっ、」
「誰だ、乙女のようなくしゃみをするやつは!」
「ごめん、僕だよ。」


燭台切が申し訳なさそうに挙手する横で、そういえば先日有栖川殿が茉莉茶を主に淹れていると言っていたのを思い出した。刀剣である我々にも花粉症があるとわかった以上、とある本丸のようにはーぶを育ててもいいかもしれない。


「・・・忙しないな、歌仙兼定。」
「ん?あぁ、茉莉茶なんてどうだろうか。」
「何の話だ。」
「花粉症の話だよ。」


手元では山姥切国広の布を引っ張りあっている。なかなか譲らないから苦労するのだ。


「あぁ、茉莉は身体を温める効果があって、花粉症の特に鼻の症状にいいらしいぞ。」
「薬研藤四郎もそう言ってることだし、はーぶを植えよう。」
「その!手を!離せ!歌仙!」
「君こそいい加減離さないか!」
「話してる最中だ!どっちもいい加減にしろ!」


主は口うるさい長谷部の雷よりも、文系の僕の小言の方が苦手だと言う。主を思ってこその小言なのだが、この長谷部よりも苦手だと言われると少々気が滅入る。


「まったく・・・主に伝えよう。主も花粉症ならば話が通るかもしれない。」
「確実に通るでしょ。俺が行こうか?」
「お前が行きたいだけだろう、加州清光。前回の話、俺の耳にも届いているぞ。」
「歌仙、チクったなー!」


前回、とは、主の恋人の前に我々が姿を見せた時の話だ。終始、加州は主の恋人である有栖川殿に嫌な視線を送っていた。気持ちはわからなくはないが、主の決めた人物なのだから間違いはないのだろう。


「ぼくもありすがわどのにあってみたいです!」
「ボクもボクも!」


初めの頃からこの本丸にいる短刀たちは、主に非常に懐いている。愛情深い人ではあるが、あれは博愛主義だと僕は見ている。


「歌仙兼定、引率を頼めるか?」
「僕がかい?」
「勝手のわかるやつがいた方がいいだろう。」
「わー!ぼくたちいいんですか!」
「やったね!」


僕が突然布を離したからか、山姥切国広が仰け反る。それを燭台切が支えて、事なきを得た。


「仕方ないな。用意をしてくるよ。」
「頼んだぞ。」
「ボクたちも準備準備!」
「まかせてください!」


かくして、僕を隊長とした現世へ向かう部隊は僕と、乱藤四郎、今剣の三振りとなった。
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