MANKAIカンパニーとの出会い、運命の出会い
夢より素敵な
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誉は実は冷え性だ。
私に触れる時はできるだけ指先を温めてから触れてくる。紳士かよ。・・・紳士だった。
たまに冷えたまま首筋に触れてくるという悪戯をする。私は体温が低いくせに手は温かいので、その手を貸せ!と誉の手を取って温める。大体そんな悪戯をしてくる時は誉が私に構ってほしい時なので、喜んで手を差し出してくる。
「キミに触れるのに手袋をするのはおかしいだろう?」
「はいはい。」
今の距離感に落ち着いて暫く経った。お互いに居心地のよさを感じている。
「キミの手に包まれると、心が落ち着く。」
「よく言われたなぁ。」
「それは、」
「歴代彼氏じゃなくて、仕事で。」
十年以上前、私は歯科助手をしていた。病気で辞めることにはなったが、天職だと思っていた。抜歯で落ち着かない子どもやお年寄りの手を握ると、「あなたのお陰で安心できた」と言われた。私の手は温かく、柔らかいらしい。
「誉は指が細くて長いね。」
「そうだろうか?気にしたことはなかったが。」
私はこの指が好きだ。なによりも愛しげに私に触れる指が大好きだ。
「指輪をしてくれているのだね。」
私の左手薬指には、私たちが交際を始めた日と私たちの名前が刻まれた指輪が光る。以前、誉が左手薬指をスルスルと撫でていたことには気づいていたが、その意味がわからないほど私は子どもではなかったのでいつか来るとは思っていた。予想より早かったが。
最初は石のついたものだった。昼寝から覚めると、恭しく私の手を取ってそれを嵌め、「キミに触れて起こしたくなかったし、目を擦った時にキミに傷をつけたくなかったからね」と、シレッと言ってのけた。その時に私が、いつか石のないものもほしいなんて我儘を言ったら、一週間も待たずに石のない、裏側に名前の刻まれたこの指輪を嵌められた。
「案外独占欲強いのね。」
「ワタシも男だからね。」
口紅もプレゼントされた。昔から私には貢がれ癖があり、度々なにかをもらう機会が多かったが、誉には貢ぎ癖があるのかもしれない。
初めてのキスは、誉が選んだ真っ赤な口紅を塗って頬にしたあと、唇にもした。男が女に口紅を贈る意味は、そういうことだと理解していたから。
指輪より先にもらったブレスレットもある。ブレスレットも手錠のように繋ぎ止めたい男の独占欲の証拠だ。誉が帰ったあとに一人で笑ってしまったほどには嬉しかった。その独占欲が。
(私はあんたしか見てないのに。)
一度、会うことをやめようと言われたことがある。デートの回数が両の手を過ぎようとしていた頃。誉の過去の恋愛話を聞かされ、まぁ、多少の嫉妬はした。誉に愛された女。誉を呪った女。だが、私はこれから先も誉を愛する女だ。そんな過去から解放してあげたくて、話を聞いていたら笑ってしまった。『壊れたサイボーグ』だなんて、流石誉の恋人だった女だ。語彙力が凄まじい。
「なにを笑っているのかね?」
「ただの思い出し笑い。」
不思議そうに私の顔を覗き込む誉が可愛くて愛しくて、段々と思い出し笑いが本当の笑いに変わっていった。
「随分と楽しい思い出があるようだね。」
「ふふ、なに、嫉妬?」
「嫉妬もするよ、ワタシだって。」
「今日は素直ね。」
天才が聞いて呆れる。一丁前に嫉妬なんかしちゃって、本当に可愛い。五つも年下なんだなって、思い出してまた笑ってしまった。
「キミの笑顔は好きだが、そこにワタシがいないようで複雑な気持ちになるよ。」
「大丈夫。誉のことだよ。」
あなたが本当に愛しくて、そうやって自分に嫉妬してる姿が可愛くて。それから、普段は温めてから触れてくる紳士的な指先が大好きで。悪戯を仕掛ける冷たい指先が大好きで。そんなこと、調子に乗るから言ってやらないけれど。
20181128
私に触れる時はできるだけ指先を温めてから触れてくる。紳士かよ。・・・紳士だった。
たまに冷えたまま首筋に触れてくるという悪戯をする。私は体温が低いくせに手は温かいので、その手を貸せ!と誉の手を取って温める。大体そんな悪戯をしてくる時は誉が私に構ってほしい時なので、喜んで手を差し出してくる。
「キミに触れるのに手袋をするのはおかしいだろう?」
「はいはい。」
今の距離感に落ち着いて暫く経った。お互いに居心地のよさを感じている。
「キミの手に包まれると、心が落ち着く。」
「よく言われたなぁ。」
「それは、」
「歴代彼氏じゃなくて、仕事で。」
十年以上前、私は歯科助手をしていた。病気で辞めることにはなったが、天職だと思っていた。抜歯で落ち着かない子どもやお年寄りの手を握ると、「あなたのお陰で安心できた」と言われた。私の手は温かく、柔らかいらしい。
「誉は指が細くて長いね。」
「そうだろうか?気にしたことはなかったが。」
私はこの指が好きだ。なによりも愛しげに私に触れる指が大好きだ。
「指輪をしてくれているのだね。」
私の左手薬指には、私たちが交際を始めた日と私たちの名前が刻まれた指輪が光る。以前、誉が左手薬指をスルスルと撫でていたことには気づいていたが、その意味がわからないほど私は子どもではなかったのでいつか来るとは思っていた。予想より早かったが。
最初は石のついたものだった。昼寝から覚めると、恭しく私の手を取ってそれを嵌め、「キミに触れて起こしたくなかったし、目を擦った時にキミに傷をつけたくなかったからね」と、シレッと言ってのけた。その時に私が、いつか石のないものもほしいなんて我儘を言ったら、一週間も待たずに石のない、裏側に名前の刻まれたこの指輪を嵌められた。
「案外独占欲強いのね。」
「ワタシも男だからね。」
口紅もプレゼントされた。昔から私には貢がれ癖があり、度々なにかをもらう機会が多かったが、誉には貢ぎ癖があるのかもしれない。
初めてのキスは、誉が選んだ真っ赤な口紅を塗って頬にしたあと、唇にもした。男が女に口紅を贈る意味は、そういうことだと理解していたから。
指輪より先にもらったブレスレットもある。ブレスレットも手錠のように繋ぎ止めたい男の独占欲の証拠だ。誉が帰ったあとに一人で笑ってしまったほどには嬉しかった。その独占欲が。
(私はあんたしか見てないのに。)
一度、会うことをやめようと言われたことがある。デートの回数が両の手を過ぎようとしていた頃。誉の過去の恋愛話を聞かされ、まぁ、多少の嫉妬はした。誉に愛された女。誉を呪った女。だが、私はこれから先も誉を愛する女だ。そんな過去から解放してあげたくて、話を聞いていたら笑ってしまった。『壊れたサイボーグ』だなんて、流石誉の恋人だった女だ。語彙力が凄まじい。
「なにを笑っているのかね?」
「ただの思い出し笑い。」
不思議そうに私の顔を覗き込む誉が可愛くて愛しくて、段々と思い出し笑いが本当の笑いに変わっていった。
「随分と楽しい思い出があるようだね。」
「ふふ、なに、嫉妬?」
「嫉妬もするよ、ワタシだって。」
「今日は素直ね。」
天才が聞いて呆れる。一丁前に嫉妬なんかしちゃって、本当に可愛い。五つも年下なんだなって、思い出してまた笑ってしまった。
「キミの笑顔は好きだが、そこにワタシがいないようで複雑な気持ちになるよ。」
「大丈夫。誉のことだよ。」
あなたが本当に愛しくて、そうやって自分に嫉妬してる姿が可愛くて。それから、普段は温めてから触れてくる紳士的な指先が大好きで。悪戯を仕掛ける冷たい指先が大好きで。そんなこと、調子に乗るから言ってやらないけれど。
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